最強魔族の俺が最弱の女勇者を鍛えるワケ ~魔王軍二番手の冥王は人間界でもSランク冒険者のようです~

八神 凪

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第二章:勇者

その25:本来の姿

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 ――死屍累々といった感じだった城内部も一時間ほどで収束し、装備は破損したが人的被害はゼロ。
 まあ、俺がそういう風に倒していったから死者は間違いなくおらず、回復魔法で治癒をして回ったのでほぼ通常営業だ。
 門番のウチ一人が慌てて城へ駆けつけた時の顔はなかなか面白かったな。

 「さて、勇者ファムよ。改めて謝罪を言わせてくれ、すまなかった」

 とりあえず俺とファムは謁見の間にて本来ファムが受け取るべきだった装備と金をもらうべく対面している。
 この場には騎士団長のエイターに大臣のザップ、それと俺の倒した兵士達の内数人が色々な感情を俺にぶつけながら立っていた。 

「あの、本当にもう大丈夫ですから! 私が弱いのは事実ですし、ガッカリされたのは仕方ありませんし……」
 「まあ、そこの生意気な男が言うように排除するのではなく援助をするべきだったのだ。ザップ、エイター、あれを」
 「は」
 「承知いたしました」

 国王に合図を送られてザップが札束、エイターが装備を持って近づいてきてそれぞれファムに渡す。

 「じゅ、十万ルピ……こ、こんなに!?」
 「それとこれも。装備できるかな? 良かったよ、君が出て行った後、気になっていたから」
 「あ、ありがとうごじゃいまふ……。う、うーん……これ、重いです……」
 「やっぱり力が無いとダメかあ。ギルメタルっていう魔族が住む地で採れる金属で出来ているいい装備なんだけどな」
 「ふむ、ギルメタルか……確かに悪くないな」
 「だろう? でもこの分じゃ持っていくのも難しいかも」

 ガントレットを装備してそのまま立ち上がれなくなったファムを見てエイターが困ったように頭を掻いて言うが、鎧の形状を見て俺はふと胸アーマーに手を伸ばす。

 「この鎧は……」
 「あ! バラバラになっちゃいましたよ!?」
 「いや、これでいい。ほら、一つずつつけてみろ。ガントレットは外せ」
 「は、はい……。あれ、ぴったりだ」

 俺が一つずつ解体していくと、胸アーマー、短くなったガントレット、腰アーマー、膝まであるすねあてとなり、ファムはいっぱしの戦士のような姿になる。

 「わあ、カッコいいです!」
 「これは驚いたな、こんな仕掛けがあったなんて……」
 「恐らく魔族が……いや昔、似たようなものをみたことがあったんだ。魔法防御も高いようだし魔物退治は少し楽になるだろう。後は剣だな」
 
 エイターが頷いてファムに剣を差し出すと、彼女は真顔になって受け取り膝をつく。

 「陛下、このような立派なものを授けていただきありがとうございます。必ずやご期待に応えられるよう精進します」
 「うむ、遅れてしまったが頼むぞ。その剣はこの城にある物としてはエイターが持つ‟ディストラクション”と寸分たがわぬ強度を持つ。細身の剣だが、女のお前には丁度よかろう」
 「銘は”ネメシス”という。大事にしてやってくれ」
 「はい! えへへ……」

 剣を胸に抱いて笑顔を見せるファムに、国から連れ出すつもりだったが結果的にプラスとなったことは僥倖だった。

 「良かったな。勇者ならなにか特別な力もあるだろう。精進するんだな」
 「もちろんです! 最初はどうなるかと思ったけど……ありがとうございます! ってどこへ行くんですか!?」
 「ん? 気が済んだから俺は帰るぞ」
  
 踵を返して立ち去ろうとする俺にファムがしがみつき、動きにくいなと振りほどこうとしたところで国王が呆れた顔で

 「本当におかしな男だのう……お前はなにか欲しいものは無いのか?」

 そんなことを言ってきた。俺は首だけ振り返って返事をする。
 
 「俺が騒ぎを起こしたのだから貰う権利はあるまい。俺は【王】が民に対してやったことが気に入らなかっただけだ。なにも要らん」
 「くく、本当におかしなやつだ。私も目が覚めたから一つ借りにさせてもらおうか。なにか私に頼みごとや金が欲しければ遠慮なく言うがいい。……しかし、貴様ほどの強さがあってEランクとはギルドのやつらの目は節穴か?」
 「……目立たないようにランクを下げて登録してもらっただけだ」
 「意味があるのか……?」

 そこでファムが唇に指を当てて緒も出したように口を開く。

 「そういえば私……いえ、勇者に会いに来たと言っていましたっけ? 用はなんだったんですか?」

 覚えていたか……。
 しかし俺の目的を今更伝えたところで、ファムが役に立たないのは明白なので意味は無い。

 「……」
 「だーかーらー! 待ってくださいって!」
 「離せ、俺は女が苦手なんだ」
 「嫌です……! ザガムさんが私に会ってなにをしたかったのかを教えてください!」
 「彼女もこう言っているんだ、話してみてはくれないか?」
 「面白い話じゃないが――」

 ファムを引き離そうとするが、物凄い力で振りほどけないので、俺はため息を吐いてから向きなおる。

 「俺は大魔王を倒したい。そのためには勇者の力が必要だと思い噂を聞きつけてここまでやって来たのだ」
 「だ、大魔王を……!?」
 「打倒するだと!?」
 
 ザップとエイターが驚愕の声を上げると、国王も玉座を立ち上がり口を開く。

 「大魔王メギストス、奴は日和見と聞いているが……人間の領地に侵攻してきたのか?」
 「……まあそうだ、大切な人を失ったのだ。奴は脅威……だが、ファムはまだ未熟。奴には到底勝つことは出来まい。故に、もうここに用はないということだ」
 「そんな……」
 「ではな」

 謁見の間に居た人間が呆然としている間に、俺はファムの手から抜けてこの場を後にする。進行してくる、というのは真っ赤な嘘だが問題はあるまい。

 「……さて、勇者が使えないとなった今、メギストスを倒す手を考えねばならんが、どうしたものか――」
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