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第二章:勇者
その27:ギルドの態度と依頼
しおりを挟む「おはようございますザガムさん」
「おはようファム。……そういえば昨日から同じ部屋だったな」
目が覚めて上半身を起こした早々に、隣のベッドに座るファムが笑顔で挨拶をしてきて昨日のことを思い出す。
イザール以外に挨拶をされるのは久しぶりだな。まあ、少し気恥ずかしいがこういうのも悪くない。
「それじゃ今日は一緒に依頼を受けるんですよね」
「そうだな、流石に一日経っているから国王からギルドに通達がいっているだろう、まともに受けられるはずだ。そういえばギルドカードは変えて貰った方がいいのか?」
「どうですかね、このカード自体特殊ですし。あ、でもちゃんとランクはつけて欲しいかも」
「それも聞いてみよう」
着替えてから食事をするため食堂へ行くと、女性が笑顔……というより、ニヤニヤとした嫌らしい顔でテーブルについた俺達に声をかけてきた。
「んっふっふ、おはようございます! 昨晩はお楽しみでしたか!?」
「なんのことだ?」
開口一番で意味の分からないことを口走る女性に訝しんで聞き返すと、ファムが微妙な顔で首を振っていた。
「まったくですよ……」
「あー……鈍感そうですもんね……なるほど、それは失礼しました! 朝食はどうなさいますか」
「今日は通常の飯で頼む」
「あ、私も!」
女性が奥へ引っ込んだ後、俺はファムに聞いてみる。
「さっきのはなんだったんだ?」
「知りません!」
何故か頬を膨らませてそっぽを向かれてしまった。納得がいかないが、女同士にしか分からないこともあるのかもしれない。
そんな感じで朝食を終えるとそのままギルドへ向かい、受付に居るオーラム……ではなく、最初に話かけてきたクーリに声をかけた。
「すまない、なにか依頼を受けたい。それと、ファムのギルドカードを通常のものに変えることは可能か?」
「あ、ザガムさんでしたっけ? ……ファムちゃんと一緒……城からファムちゃんについて是正がありましたけど、なにがあったんです?」
「俺に聞かれても困るがな。こいつは俺と同じくEランク相応みたいだから協力することにした」
「そ、そうなんです……えへへ」
クーリは片目を細めて俺とファムを交互に見た後、頭を掻きながらため息を吐いて話し始める。
「まあ、王様からの指示は通っていますし問題ありません。カードは依頼を受けた後にでも作り直しましょうか。……その前にザガムさん、ちょっと」
「?」
クーリが手招きをしてファムから離れると、小声で俺に尋ねてくる。
「……本当になにがあったんです? ファムちゃん、ギルドで冷遇するよう指示があったのに昨日から一転して勇者の力を育てるために協力しろ、ですよ? 訝しむに決まっているじゃありませんか」
「近い、離れてくれ。考えが変わったんだろう、お前もファムを心配していたらしいし、良かったじゃないか」
そう、クーリは最初の印象とは違い、ファムが言うには世話を焼いてくれていたらしい。城からの通達で冷遇を受けたものの、あまりにも酷いと怒ってくれていたと語っていた。
「……ザガムさんと一緒に居るだろうから、丁重にとも聞いていますけどね?」
チッ、余計なことまで吹き込んだようだな。これは後で抗議をしておく必要があるかもしれんな。
「俺のことは気にするな。たまたま大けがをしていたところを助けたことがあってな」
「そうですか。まあ、ファムちゃんにこれ以上危害がいかないならいいでしょう。あなたは良いイケメンと認識しておきます」
「意味がわからないが」
「いいんです、分かっています。デート一回で手を打ちましょう」
「……」
もはや語るまいと踵を返すと、受付から身を乗り出して俺の腕を掴んできた。
「ああああ、帰らないでくださいぃぃぃぃ!?」
「ええい、離せ。ファム、手伝え」
「え!? あ、はい」
ファムがクーリを引きはがしてくれ、俺はファムから依頼の話をするように伝える。
「わ、分かりました……! クーリさん、Eランクの私達ができる依頼、お願いできますか?」
「もちろん! とりあえず二人はパーティを組むってことでいいのね?」
「その認識で問題ない。オーラムにパーティメンバーが居ればDランク相当の依頼も出来ると聞いたがどうなんだ?」
「そうですねえ……ファムちゃんはFランクですから、まだ難しいですね」
「F……そんなのがあったのか……?」
確かEが最低だったはずだがと思っていると、クーリは少し困った顔で続ける。
「……本来はEランクが最低なんですけど、勇者ではありますが、ファムちゃんはまだ覚醒していないみたいで、適正検査をした時は測定不能だったんですよ」
「あ、あはは……」
「なるほど、あくまでもベースは村娘だからか。歴代の勇者はどうしていたんだろうな?」
「百年位前でしたっけ、最後に現れたのは。さすがに当時を知っている人がいるかどうかですね。とりあえずこの辺りいっときますか!」
クーリが提示してきた依頼は‟スィートビー”の討伐依頼だった。
こいつは人間の子供程度の大きさをしていて、巣に大量の蜜を溜め込む性質を持つ蜂型の魔物で、こいつ自身も蜜もかなり美味なお得な相手である。
「いいのか? 確かに強くはないが」
「ええ、スィートビーは逆に高ランク冒険者には狩らせない相手なんですよ。あまり強くないので乱獲されると姿を消してしまう危険がありますから」
「なるほど」
考えているな。
魔族領だと採れるだけとってしまうからこういう措置は必要だ、帰ったらイザールにお触れを出させよう。
「ファムの練習には丁度いいか、これで行こう」
「はい!」
「ではでは頑張ってきてね~♪」
クーリが受理のサインをしていると、バツが悪そうな顔でオーラムが近づいてきてクーリへと話しかける。
「……なあクーリ、ルガード達は戻って来たか?」
「え? そういえば戻ってきてないわね……でも、ゴブリン達相手に手間取る彼らじゃないですよ」
「うーん、大丈夫かな?」
「今日もどってこなかったら救援隊を呼ぶ必要があるかもしれませんが、一日くらいなら野営して戦っている可能性もありますよ」
「……そうだね。あの、ファム、色々申し訳なかった、すまない……」
「え? ああ、大丈夫ですよ! 王様の命令だったら仕方ないですもん」
「ありがとう、ごめんよ。これからはバックアップしていくから」
オーラムはそう言って深々と頭を下げた。
「ふむ、まあファムが許すというのであればいいだろう」
「何故上から!? ま、まあ、怒っているのは分かりましたけど……Eランクなのに……」
「では行くとするか」
「はい!」
俺とファムは早速外に出てスィートビーを探しに森へと向かい、俺はファムの力に――
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