最強魔族の俺が最弱の女勇者を鍛えるワケ ~魔王軍二番手の冥王は人間界でもSランク冒険者のようです~

八神 凪

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第二章:勇者

その30:圧倒的なEランク冒険者

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 「ま、まずいですよ、ルガードさん死にかけてませんか……」
 「そのようだな……<ヒーリング>」
 
 そうそう、ルガードという名前だったなと思いながら血だらけの男を回復してやり、呼吸が落ち着いたのを確認してからゴブリンロードに目を向ける。

 「さて、次はあれか」
 「で、ですね……レティさんが捕まっているので迂闊に動けないですけど、どうしますか……?」

 ファムが剣を構えて尋ねてくるが、手は震えて声も掠れている。
 無理もない、ゴブリンロードともなれば相当鍛えた戦士でなければ戦いにならないのだ。すると赤い髪の女性が俺達に叫ぶ。

 「あんた……ファムちゃんじゃない!? な、なんでここに居るのよ! ゴブリン討伐は私達が受けたでしょ!」
 「え、えっと……他の依頼を受けていたんですけど、爆発音が聞こえてそれでザガムさんが……」
 「そういえば受付で見た男ね……? Eランクじゃなかったっけ……? ていうかどうやってここに来たの……?」
 「なんダ……? ガハ……女が増えたじゃないカ! 今日はツイているナ!」
 「に、逃げて……」

 足を取られて宙づりになっている女が俺達に逃げろと言う。ふむ、嫌な奴等かと思ったが、意外とそうでもないようだな。

 「男は殺して女だけ連れて帰ルか。動くなよ? 動いたらこの女が――」
 「どうなるんだ?」
 「……!? アガっ!?」
 「え?! ザ、ザガムさん!?」

 ゴブリンはリーダー、キング、ロードと強くなり、パワーやスピード、賢さも桁違いに変化する。先ほど上空から見ていたところ、この個体は皮膚と素早さが特に強化されているようだ。
 とはいえ俺からすれば誤差の範囲程度。ゴブリンということに変わりはないため、奴よりも速く動けば問題はない。

 「受け取れ」
 「嘘……見えなかった……って、ちょっと!?」

 俺はゴブリンロードに一撃をおみまいし、捕まっていた女性を、気の強そうな赤い髪の女に放り投げる。

 「貴様ァ……! お前達、なにを見ていル、襲え!!」
 
 俺が殴った左腕が痺れたのか、右手で抑えながらこちらを囲んでいるゴブリンに号令をかける。

 だが――

 「遅い。嬲るつもりだったのだろうが、俺がお前に接近した時点でかけるべきだったな。……ふん!」
 「グギャ!? ば、かナ……!? やれ、この男を殺せ!」
 「「「グギャガガ!!」」」

 俺がゴブリンロードの腹を殴ると、勢いよく吹き飛び、5メートルほど先の木にぶつかり片膝をつき、追撃させまいとゴブリン達が襲い掛かってくる。

 「勢いはいいが、相手の力量を感じ取れなければ早死にすることになる。冥土の土産に覚えて、生まれ変わった時にでも活かすんだな。<ギガサンダー>」
 「はぁ!? Eランクが使える魔法じゃないんですけど!?」
 「気にするな。それより、早くゴブリンロードから距離を取れ、また捕まるぞ」
 「う、うん! お姉ちゃん二人でレティを!」
 「気にするわよ! ……もう、なんなのあいつ!」
 「こっちですよ!」

 赤い髪の女が俺の放った魔法を見て驚愕の声を上げ、緑の髪をした弓使いが我に返り俺の投げ渡した女を連れてファムの方へ移動する。

 さて、あまり人前で派手にやりたくはないがこの数はファムに害が及ぶ可能性があるので一気に殲滅させるべきだ。
 森を燃やさないよう、素早く円を描くように駆け抜け、俺の手から放たれる雷光がゴブリン達を黒い塊へと変えていく。
 ゴブリンロードがいる群れはこのまま拡大するとリーダーやキングが増えていき手に負えなくなるので、こいつらには悪いがここは全滅させる。
 
 「ゲヒィィィ……」
 「これで全部か?」
 「う、噓でしょ……」
 「さすがザガムさん!!」

 喜ぶファムの声を背に受けながら俺はゴブリンロードに近づいていく。

 「ニ、人間が……たった一人デ……!? 二百は居たはずだゾ……!!」
 「まあ、ゴブリン相手なら1000でも足りない。……さて、折角そこまで成長したというのにすまないが、その命……貰い受けるぞ」
 「クソ……俺の全力を受けて立っていられるカ!!」

 ゴブリンロードが俊足を活かして斧を回収し、そのまま俺へ突っ込んでくる。
 しかし、その一連の動作が俺に見えている時点でこいつに勝ち筋はすでに無く、フェイントをかけたつもりのステップに合わせて目の前に立つ。

 「うオ……!?」
 「せめて痛みも感じることなく一撃で楽にしてやろう。唸れ、ブラッドロウ。千破虚空閃」
 「あ――」

 断末魔の悲鳴を発する間もなく、頭と胴体に別れを告げたゴブリンロードはその場に崩れ落ちた。
 
 「……ファム、こいつは金になると思うか?」
 「た、多分、相当なお金になりますけど、目立ちたくないなら持って帰らない方がいいと思いますよ?」
 「ああ、そうか。こいつは結構脅威なんだったな。仕方ない、スィートビーの報酬を貰って飯を食うか」
 「そうですね。それじゃマイラさん、私達はこれで!」

 ファムが俺に並び、町へ帰るため歩き出そうとしたところで、

 「待ちなさーい!! なに普通に帰ろうとしてんのよ!」
 「そうよ、きちんと――」
 「……! 危ないニコラさん!」
 「む!」

 俺達が振り返って話を聞こうとしたところで、女性たちにゴブリンが襲い掛かっているのが見え、その瞬間、ファムが素早く駆けてゴブリンの胸に剣を突き立てていた。

 「ご、ごめんね……!」
 「グギュウ……」

 ゴブリンは目から光を失い、その場に倒れる。それはいいが、それよりも重要なことを俺は考えていた。

 ……今のファムは相当速かった。俺も動くつもりだったが、ファムの方が初動は速かったので任せたのだ。なるほどこれが勇者というやつか、面白い。

 「おーい、聞いてる? 町まで帰るなら一緒に帰りましょ。……聞きたいこともあるし、ね?」
 「……」

 ファムの潜在能力を垣間見て楽しくなってきたが、やはり面倒なことになりそうだと俺はため息を吐いてから女性たちに合流するのだった。
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