最強魔族の俺が最弱の女勇者を鍛えるワケ ~魔王軍二番手の冥王は人間界でもSランク冒険者のようです~

八神 凪

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第三章:堕落した聖女

その44:冥王の違和感

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 「あるべき世界へ還れ<ピュリファイケーション>!」
 「「「<ピュリファイケーション>!!」」」
 
 【ギェアアァァァ……】
 【アアアアア……!?】

 ――不意打ち気味に襲ってきたゴースト達に対してルーンベルを始めとした僧侶がすぐに対応に入り、20体ほどが即座に消滅した。
 最初に気づいたのはルーンベルだったが、他の人間達も練度がいい。俺は胸中で魔族領に一人欲しいと考えていた。それくらいゴーストやレイスというのは厄介なのだ。

 「寄って来るなっての<メガファイア>」
 「姉さん頑張れー」
 「僕達じゃなにも出来ないか」

 他の冒険者もゴーストを塵に返す手助けをしているが、ザガートの言うように有用な魔法が使えない者は黙ってみているか逃げるしかない。
 なので俺はファムと共に魔法の修行を行うことにした。

 「練習がてらに撃ってみろ<ファイア>」
 「ふ、<ふぁいあ>!」
 【オオォォォ……】
 「あ、逃げましたね。……でも、まだ人の姿をしているから胸が痛いです……」
 「……勇者の力か筋はいいな、もう少し魔力の練りをやるか」
 「あはは……気を遣うならちゃんと褒めてくださいよー」

 「のんきだなあいつら……」
 「ザガートが言うにはEランクだって言うけど、ビビりもしねえな。こっちはとんでもないことになってんのに」

 「うわああ、こ、来ないでくれぇえ」
 「ロディ、こっちくんな!?」
 「聖水を投げるんだ!」

 まあ、こういった感じで一時騒然としたがことは概ね順調。

 「……」
 「ザガムさん?」

 ……ただ、気になるのは河原でも出会ったように『比較的新しい』ゴーストがいることだろう。
 ゴーストは時が経てばたつほど原形を留めていないものに変貌し‟なんだかよく分からないもの” と化すのだが、ファムの言う通りまだ人間の姿を保ったままの個体が多かったのが不思議だ。
 騒ぎが終わった頃、俺はギルドマスターのスパイクに近づいて声をかける。

 「スパイク」
 「おう!? ……な、なんだ、ザガムか!? 驚かすな……な、なんだ?」
 
 声をかけただけなのだが随分焦っているな。気配を消した覚えはないが、まあいい。

 「最近近くの村や町で大量に死者が出たことはあるか?」
 「ん? ……いや、聞いたことはないな。どうしてだ」
 「ゴーストが新しいと思わないか? 大人も子供も混ざっていたからおかしいと思ってな」
 
 俺の問いにスパイクは顎に手を当てて考えると、すぐにを振って俺へ返す。

「確かにそうかもしれん……。だが、北の村も、近くの町なんかでも死亡者が多数なんて話は無いな」
 「……そうか、邪魔したな」
 「あ、ああ……」
 「なんだ、あの新入り、スパイクさんに対して生意気な」
 「いいんだ、彼は。む……!」

 俺が立ち去ろうとしたところで再びゴーストの群れがあちこちから現れ、場がまた騒然とする。

 「ギルドマスター、移動しながら対応するぞ! とりあえず駐留地の村まで移動するべきだ。このままではこのメンツでも犠牲が出るぞ」
 「ああ! 搬送部隊は前へ、お祓い部隊を後続にして進むぞ!」
 「おお!」

 やはり、おかしい。
 生気を求めるにしても、これほど集中して襲ってくることは早々無いはず……

 「ザガムさん早く!」
 「分かっている」
 
 思考を張り巡らせるが、ファムに促されて荷車を引き始めると、すれ違いざまにルーンベルと目が合った。

 「あら、あなた達も居たの? ふふん、ここで活躍して借金をチャラにするのよ」
 「150万は無理だろう」
 「現実は厳しい!? じゃなくて、ふたりともランク低いんだし無理しないでさっさと先に行ってね。庇う方も大変なんだから」
 「あ、は、はい」
 
 それだけ言って彼女は再度ゴースト達へと向かい、少しずつ前進して予定より遅くなったが北の村とやらに到着することができた。

 「はあ……はあ……も、もう動けません……」
 「頑張ったな、ゆっくり休んで体力アップ間違いなしだ」
 「わーい! とりあえず村までは入ってこないんですね」

 村の中に入った瞬間、少しずつ数を減らしていたゴースト達は姿を消し、霧散していった。そこで何故か毎回やってくるマイラがファムに手を差し出しながら口を開いた。

 「ほら、ファムちゃん立てる? 村や町は国の政策で必ず結界が張られているからね。あなたの村もゴーストが入って来ることって殆んどなかったでしょ?」
 「あ、そうですね。魔物はたまに入って来てましたけど」
 「魔物除けが利かない個体だったり、結界の効力が薄くなっていたりするとね。ま、この村は大丈夫そうだけど」
 「へえ、ウチの村に司祭様が来ていたのはそういうことだったんですね」

 なるほど、各町村にそういう処置を施すのか。それは確かにアリかもしれない、魔族領の村は割と強力な魔物に蹂躙されてしまうケースが多数存在する。
 魔族とはいえ戦えないものはそういうことになってしまう。

 「ふむ、爺さん、結界は張れるか?」
 「なんじゃい藪から棒に!?」
 「ザガムさん!? すみません、いきなり」
 「い、いや、別にええが……わしは行くぞ」
 「どうしたんですか急に」
 「いや、町や村に結界を張れる人材が欲しいなと」
 
 俺が爺さんに声をかけていると、ファムが爺さんに頭を下げ、マイラが近づいてきてなにごとかと口を開く。

 「はあ……『国の』って言ったでしょ? これだけの‟維持結界”を張れるのはそうは居ないから、相当修行した人しかできないわ」
 「そうか」

 俺も張れるが【王】であっても何年も何十年も持つような結界は難しいのは確かだ。【樹王】のメモリーあたりなら出来る気がするが……あいつは何を考えているかわからないから頼りたくはない。
 
 「そういうことね、それじゃギルドマスターから指示があるまで休憩しましょ」
 「そうですね。……あ」

 マイラが立ち去るとファムの腹が盛大に鳴り、顔を赤くして立ち尽くす。

 「そういえば昼を食う暇もなく行軍していたからな。緊張が解けて空腹に気づいたというところか。飲み物はあるが、食い物は火を通さないと無理だな」
 「だ、大丈夫ですよ、我慢します! み、見られちゃいますよ……」

 ファムを影にして魔法収納を漁るがすぐに食えそうなものがなく、ファムが周囲を気にしていたのですぐに止める。
 
 すると――

 「あら、お客さんがいっぱいねえ。お嬢ちゃん、お腹空いているのかい? これで良かったら食べる?」
 
 ――老婆がファムにモモノキの実を差し出しながら笑っていた。
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