最強魔族の俺が最弱の女勇者を鍛えるワケ ~魔王軍二番手の冥王は人間界でもSランク冒険者のようです~

八神 凪

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第三章:堕落した聖女

その45:村で存在感を出す冥王

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 「あ、いいんですか?」

 老婆にモモノキの実を渡されて首を傾げるファム。俺は横から実と老婆を見比べてから手を差し出す。

 「待て、まずは毒見をする。俺にもくれ」
 「ちょ、ちょっとザガムさん、失礼だよっ」
 「うふふ、いいんだよ。お兄さんにもね」

 ファムの抗議は無視して老婆から実を受け取り、すぐにかぶりついてみると、

 「うむ。……なるほど、これは甘いな、問題無さそうだ。食べていいぞ」
 「いただきます♪ うん、あまぁい……ジューシィです、お腹が満たされてきました」
 「それは良かったねえ。それにしても大勢で来たものだねえ? いったいどうしたんだい?」
 「それは今からスパイクが話してくれるだろう、丁度村人も集まって来たようだ、行くぞ」
 「もぐもぐ……ふぁーい」

 頬をリスのようにしたファムを後ろに、俺達は村の真ん中へと移動。そこで村長らしき男とスパイクが……揉めていた。

 「確かに書状で許可はしたが、こんな大勢だとは聞いていないぞ。駐留させろとは無理な話だ」
 「しかし村長、道中でもゴーストに出会ったがとんでもない数でした。近日中にどうにかしないと村の結界といえど危ないかもしれないですよ」
 「むう、だが――」

 村に休ませるところが無いという村長と、広場や村の隅で野営でも構わないからゴースト退治に協力しろというスパイク。
 村長の言い分は分からんでもないが、村の危機で渋る理由は無いはずだと思っていると、集まった村人の間をかき分けてローブの男が前へ出てきた。
 
 「村長、ここは協力すべきです。確かに結界は壊れそうになれば私が修復できますが、根本的に駆除しておいた方が良いと考えます。これほどの僧侶と神父が集まっているのはとても珍しいことですし」
 「アムレート様」
 「貴方は?」
 「私は旅の司祭でアムレートと申します。道に迷ったところ、この村に助けられまして、結界を張り直すなどの処置を行わさせていただいております」

 そう言ってにこやかに笑う灰色の髪をした目の細い男が会釈をしながら村長へ告げる。
 どうやら安心しきっているのはこの男が居るからか。しかし結界を張れる人間はそう居ないと聞いたばかりでいきなり出てきたから少し驚いた。
  アムレートの言葉に追従するようにスパイクも意見を言う。

 「彼の言う通り、これだけのメンバーを集めるのはなかなか難しい。騒がしくして申し訳ないですがご了承いただきたい。このままでは町にまで波及する」
 「……ふう、分かったここの広場や空いているところは使っても構わない。空き家もいくつかあるからそっちで選別して使ってくれ」
 「ありがとうございます。……よし、各パーティのリーダーは集まってくれ、空き家を使う順番を決めるぞ」

 村長は村人の説得、スパイクは冒険者達のリーダーへ声をかける。

 「ザガムさんは行かないんですか?」
 「別にテントはあるし、その辺で野宿でいいだろう」
 「そうですね、これも修行です!」

 いい心構えだとファムに頷いていると、スパイクの声が耳に入って来る。

 「ランクではなく公平にじゃんけんで決めるとしよう」
 「……じゃんけんか」
 「あれ、行くんですか!?」
 「これも修行だ」

 誘われるようにスパイクの下へ向かい、じゃんけん勝負へ。

 そして――

 「ぶはははは! ザガム、全敗かよ!」
 「マジか、澄ました顔をしたイケメンでいけすかねえと思っていたが面白いやつだな!」
 「ま、まあ、こういうこともあるって!」
 「うるさい」
 「いて!? なんで僕を殴るんだ!?」

 ――俺は全敗だった。とりあえず大笑いしたザガートの頭をはたいてファムの下へ戻った。

 「あはは、ダメでしたね」
 「一体なにが悪いのか分からんな。コギーにコツを聞いてみるか」
 「あ、いいですね! コギーちゃん可愛いですし」

 とりあえず最初は村人たちも難色を示していたが、冒険者達も人格者が多いため、横柄な態度を取る者もおらずなんとか駐留する形を取ることができた。
 夕飯は各々中央広場に作った焚火を使って調理をして食事。
 その後は歩哨のローテーションをじゃんけんで決めて、残りは就寝となる。

 「この木でいいか」
 「テントは張らないんですか?」
 「哨戒任務があるならすぐに動ける方がいい。お前はテントを張って休んでいいぞ」
 「うーん……私だけってのはなんか嫌だなあ。じゃあこうしましょう」
 「おい、何をしている」

 ファムは俺の毛布をはぎ取り胡坐をかいている俺の前に座って毛布を被る。

 「これなら暖かいですし、私も安心して眠れます!」
 「人が見ているしマズイんじゃないか?」
 「え、気にしませんよ? 気になります?」

 そう言われて、別にファムが良ければ困ることは無いのか? と、曖昧な思考になる。そこへあの聖女見習いがやってきた。

 「こんなところで寝るの? ……確かにイケメンだけどEランクでしょ? 将来性はあるの?
 「あ、ルーンベルさんこんばんは! ザガムさんは優しいですし強いですよ!」
 「余計なことを言うな」

 ファムがペラペラと余計なことを言うので頭のてっぺん
 「あう!? 顎で頭を叩くのは止めてください!?」
 「バカップルめ。ねえ、この前も言ったけど、私を買ってくれたらサービスしまくるけど、どう?」
 「……ぐう」
 「あ、ザガムさん寝ちゃいましたね、疲れてたのかなあ」
 「こ、こいつ……」

 疲れているのか、眠気が襲ってきたのであまり色々反論をしたかったが、ファムとルーンベルがなにか話しているのが遠くなり、意識を手放した。


 ◆ ◇ ◆


 「ん? ……おい、あれ見ろよ」
 「お、ファムちゃん……と、新入りか!? え、凄い羨ましい……」
 「あれもう恋人でしょ……」
 「くっ……陛下の命令をスルーして優しくして居ればあそこには俺がいたはずなのに……!!」
 「お前じゃ顔面的に無理だっての……って、どうしたんですか村の皆さん?」

 ザガムの膝にファムが座って寝ているのを見て夜間哨戒をしている冒険者に村人が数人話しかけてきた。

 「こんな夜分遅くまでご苦労様です、村の者で夜食を作りましたので如何でしょうか」
 「お、美味そうな匂い……ギルドマスターに許可を貰えれば大丈夫です」
 「ええ、それでは参りましょうか」

 ――到着初日の夜はこうして終わるのだった。
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