最強魔族の俺が最弱の女勇者を鍛えるワケ ~魔王軍二番手の冥王は人間界でもSランク冒険者のようです~

八神 凪

文字の大きさ
57 / 155
第三章:堕落した聖女

その55:マイホーム

しおりを挟む

 「どこに行くんですか?」
 「こっちって住宅街の中でも土地が高いところじゃなかった?」
 「ああ。……ルーンベルが一緒ということはザガムについて知っているのか?」
 「今日からパーティを組むことになった、ということで察してくれ」

 スパイクは顔を顰めてため息を吐いてから、顔半分だけこっちを向いた。

 「ならいい。ルーンベルも頑張ったんだろうが、どうせお前が解決したんだろう? 俺達の目は誤魔化せん。それで陛下が報酬だけではということで用意したんだ」
 「確かにトドメをさしたのは俺だが」
 「……」
 「気にするな」

 あの村のことを話すとファムが沈む。ファムの頭に手を置いてそういうと、くすぐったそうな顔で微笑んだ。

 「国王か。プレゼントとはなんだ? 金が一番いいんだが」
 「同意するわ」
 「本当に聖女見習いなんですか、ルーンベルさんって」

 ギャンブルはするわ、金に数着するわでファムの言う通りだなと、俺とスパイクが無言で頷いていると、目的地についたらしく豪邸の前で立ち止まって振り返る。

 「さ、今日からここに住んでくれ」
 「プレゼントとは家か?」
 「ああ、どうせファムちゃんを鍛えるためしばらくこの町に居るんだろ?」
 「まあ、そうだな」

 移動するのも面倒だから頷くと、スパイクは小声で俺達へ言う。

 「なんだかんだでお前の力は強力だ。どうしようも無くなった時にこっそり依頼したい俺としては居場所がハッキリしている方が助かるんだよ。宿だとほら、人が多いし」
 「目立つことはしないぞ」
 「だから、こっそりだって! ここなら夜は誰も聞いていないから、いいだろ? ルーンベルも増えたなら部屋も有効活用できる。これが鍵だ、なんかあったらギルドまで来てくれ!」
 「おい、いいのか?」
 
 俺が引き留めようと声をかけるが、背中を向けたまま片手を振って去っていった。

 「宿代が要らないのは助かるか。荷物を取りに――」
 「ザガムさん、先に中を見てみましょう!」
 「いい案! パーティメンバーなんだから私も住んでいいのよね?」
 「問題ないだろう、三人で住むには広すぎる」

 目を輝かせたファムとルーンベルに押され、鍵束を使い豪邸の門を開けると、二人は早速駆け出していく。

 「わあ……お庭が綺麗ですよ! お花を植えたら賑やかになりそう。あ、真ん中に噴水がありますね」
 「庭でお茶を楽しむためのテーブルセットがあるわ。ちょっと汚いけど、掃除すれば全然いけるわ! セレブっ!」
 「金が無いくせに何を言っているんだ? とりあえず屋敷に入るぞ」
 「はーい!」

 返事だけはいいな。
 それはともかく目の目に聳え立つ屋敷は俺が住んでいたものよりもやや小さい。
 だが建物は立派で、魔族のそれとは違う建築技術が随所に光っている。
 悪くないと思いつつ、玄関を開けると――

 「うわあ……」
 「へえ……」

 庭の状態といい、あまり手入れをされていないのだろう。少々埃っぽい匂いが鼻をつく。
 しかし女性二人が感嘆の声を上げたように、内装は豪華でここだけ見ればウチよりもいいかもしれない。イザールや使用人達が喜び勇んで掃除をしそうだな。

 「カーテンを開けていきましょう!」
 「オッケー! 私二階ー!」
 「俺は適当に回るぞ」

 片っ端からカーテンと窓を開けて換気をしていく俺達。
 陽が差し、空気が流れ込むと今まで眠っていた屋敷が目を覚まていく。

 「私、こういう家に住むのが夢だったんです! すごい! 部屋がいっぱい!」
 「はしゃぐな、こけるぞ」
 「お掃除道具が欲しいわねー。ねね、ザガムはどこの部屋にする?」
 「まずは見てからだろう。ここは俺が居るから掃除道具を買ってきてくれないか?」
 「合点承知! あ、お金をいただけると……」
 「5000ルピで足りるか」
 「いやっほぅ!!」

 人間状態の俺より速いのではと思わせるくらいの勢いで屋敷から出ていくルーンベルを見送り、俺はどこかへ走り去ったファムを探して屋敷を散策。
 
 しばらく周囲を見渡しながら歩いていると窓の外を眺めながらにこにこしているファムを見つける。それと同時に一瞬ファムの姿が歪み、別の女性の姿がぶれ、胸がドクンと跳ね上がる。

 ……なんだ、今のは……? どこかでこの光景を見たことが――

 「ザガムさん?」
 「……!」

 不意にファムの顔が目の前に出てきて驚く。
 しかし、それを悟られないよう目を合わせたままファムにお願いをすることにした。
 
 「……ルーンベルが掃除用具を買いに行った。すまないがファムは宿のチェックアウトと荷物を取りに行ってくれないか?」
 「お安い御用ですけど……大丈夫ですか?」
 「問題ない。頼んだぞ」
 「はい。辛かったら休んでてくださいね!」

 心配そうなファムを見送り、俺は再び屋敷の空気を変えるため、あちこちの窓を開けていく。
 
 「ここは広いな、元主人の部屋のようだな」
 
 寝室、書斎がそれぞれ部屋の中で繋がっていて、執務机があった。
 自宅なら色々と承認しなければならない書類などがあったことを思い出す。まあ、イザールが代わりにやってくれているに違いない。

 「……そういえばそろそろ出てきて15日は経つか。イザールに手紙を書いておくか」

 俺は収納魔法から紙とペンを取り出して筆を走らせ、さっと書いてから魔法を使う。

 「<ホーミングピジョン>」

 魔法で作った魔物鳩に手紙を括り付けて空へと放つ。
 この鳩は俺の魔力で出来ているため空の魔物が襲ってきても防御力が高いため逃げ切れる。
 魔族領まで距離があるが、まあ二日もあれば到着するだろう。

 「……さて、すこし掃除でも進めておくか」

 久しぶりに一人の部屋で過ごせるかと、少し気分が高揚している俺だった。
しおりを挟む
感想 304

あなたにおすすめの小説

理想の男性(ヒト)は、お祖父さま

たつみ
恋愛
月代結奈は、ある日突然、見知らぬ場所に立っていた。 そこで行われていたのは「正妃選びの儀」正妃に側室? 王太子はまったく好みじゃない。 彼女は「これは夢だ」と思い、とっとと「正妃」を辞退してその場から去る。 彼女が思いこんだ「夢設定」の流れの中、帰った屋敷は超アウェイ。 そんな中、現れたまさしく「理想の男性」なんと、それは彼女のお祖父さまだった! 彼女を正妃にするのを諦めない王太子と側近魔術師サイラスの企み。 そんな2人から彼女守ろうとする理想の男性、お祖父さま。 恋愛よりも家族愛を優先する彼女の日常に否応なく訪れる試練。 この世界で彼女がくだす決断と、肝心な恋愛の結末は?  ◇◇◇◇◇設定はあくまでも「貴族風」なので、現実の貴族社会などとは異なります。 本物の貴族社会ではこんなこと通用しない、ということも多々あります。 R-Kingdom_1 他サイトでも掲載しています。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる

僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。 スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。 だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。 それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。 色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。 しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。 ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。 一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。 土曜日以外は毎日投稿してます。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

異世界翻訳者の想定外な日々 ~静かに読書生活を送る筈が何故か家がハーレム化し金持ちになったあげく黒覆面の最強怪傑となってしまった~

於田縫紀
ファンタジー
 図書館の奥である本に出合った時、俺は思い出す。『そうだ、俺はかつて日本人だった』と。  その本をつい翻訳してしまった事がきっかけで俺の人生設計は狂い始める。気がつけば美少女3人に囲まれつつ仕事に追われる毎日。そして時々俺は悩む。本当に俺はこんな暮らしをしてていいのだろうかと。ハーレム状態なのだろうか。単に便利に使われているだけなのだろうかと。

ペットたちと一緒に異世界へ転生!?魔法を覚えて、皆とのんびり過ごしたい。

千晶もーこ
ファンタジー
疲労で亡くなってしまった和菓。 気付いたら、異世界に転生していた。 なんと、そこには前世で飼っていた犬、猫、インコもいた!? 物語のような魔法も覚えたいけど、一番は皆で楽しくのんびり過ごすのが目標です! ※この話は小説家になろう様へも掲載しています

アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。 ふとした事でスキルが発動。  使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。 ⭐︎注意⭐︎ 女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。

処理中です...