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第四章:魔族領からの刺客
その68:メギストスの笑み
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「ほら、大魔王様にお茶とお菓子をもってきなさい」
「ああ、すぐ帰るからいいよ、お構いなく」
スケルトンに命令を出すキルミスに、メギストスは笑顔のまま手で制しているとイルミスが話を続ける。
ただ、イルミスは大魔王が【王】とはいえ屋敷に訪問してくるのは有り得ないだろうと訝しむ。
「……メギストス様、本日はどうされたのですか?」
「そう固くならなくていいよ、君もまだ幼いのにしっかりしているね。今日は少し話をしようと思ってお邪魔させてもらったよ」
「話ー? ……ですか」
無理をして敬おうとするキルミスに苦笑しながらメギストスは頷いて答える。
「ああ、まずは君たちの話だ。【王】になったからには色々とやることがあるからね。実力は申し分ないけど、二人で【王】だ、注意すべき点も多い」
「部下とか手下が悪さしないよう見張っていればいいんだよね?」
「それもあるけど、領地の運営は必要だ。元No.2の【冥王】だったザガムは定期的に見回りをしていたし、困っている魔族を助けたりしていたかな」
「えー、面倒くさそう……」
キルミスが明らかに不満げな顔をするが、イルミスは口元に笑みを浮かべて口を開いた。
「まあ、それでも僕達の領民なのだから面倒はみてやりますよ。あいつらの顔が目に浮かぶね。ところで、急に交代して領民は納得しているんですか?」
「うーん、もちろん納得している者もいるけど、そうじゃない者も居る。今度、ザガムより下手な統治をしていたら反逆はあるかな」
「なるほど」
「まーでも、ボク達なら蹴散らしてやれるってイルミス!」
「はっはっは、期待しているよ。魔族は実力主義、負けたらなにも残らないと思って頑張ってくれ」
「……はい」
軽い口調で重い言葉を放つメギストスにイルミスが目を細めて小さく頷く。キルミスは能天気で気にしていないが、今の言葉を要約すると『別に【王】だからと言って助けてやらない』と言っているのだ。
(元々他人を期待していないから構わないけど……妹は……キルミスは守らないと)
イルミスは今までのことを振り返ってそんなことを考えていると、メギストスが手をポンと打ってからにっこりと微笑む。
「まあ、領地経営は【天王】のマルクス君や【樹王】メモリー君あたりに聞けば親切に教えてくれる。で、君たちにひとつ頼みがあるんだけどいいかな?」
「なーにー? 大魔王様の命令なら聞いちゃうかも!」
「結構なことだね。それで頼みなんだけど、冥王ザガムを倒してくれないかな?」
「!」
「わお♪」
メギストスが笑顔のまま、自分たちが考えていたことを口にし、驚くイルミスとキルミスはどういうことかと続きを待つ。
「いやあ、彼は私の命をずっと狙っていて、大魔王の座を奪おうと企んでいるんだよ。私が倒してもいいんだけど、一応ほら、養父なんで心苦しいのさ。だから全然知らない者が倒してくれると助かるんだよね」
「息子……だったんですか」
「そう息子『だった』よ。どうだろう、ザガムを倒せるかな? どうやら人間を焚きつけて魔族領に攻めてくるつもりみたいでね、とある国に潜伏していることを突き止めた」
「へー! 人間とつるんでるんだ! あれ? でも大魔王様は干渉しないって話じゃなかったかなぁ?」
キルミスが歓喜の声を上げ、イルミスが神妙な顔でメギストスを見る。そんな二人を見ながらメギストスは大仰な演技をしながら説明を始めた。
「そうだね、私としてもか弱い人間と争いをしたくないんだけど、ザガムがなにかを企んでいて我が魔王軍の領地になにかあったら困るわけなんだ。かと言って、【王】が全員で攻めると他の国も戦争だと動き出しちゃうからね。だから、まずは君たちだけが先制してほしい」
「どうして僕達なんですか? 【炎王】あたりなら喜んで行くと思いますけど」
「そりゃあ君たちの力が最適だからだよ。国と戦うなら数がいるよね?」
メギストスは手を広げて『ね?』と首を傾げてイルミスへ目を向ける。
「(試されているのかな、これは?)」
確かに自分たちが【霊王】としての力を行使すれば国と戦うだけの能力はあるし、逃げ出して人間の力を借りようとする冥王程度なら訳は無いと考えるイルミス。
「分かりました。その話受けましょう。最初の仕事にしては少々度が過ぎているとは思いますが?」
「もちろん辞退してもらっても構わないよ?」
「えー、やろうよイルミスー。力を使いたくてたまらないんだよね」
やる気の妹に、手を握りながら微笑むイルミス。
「準備ができたらでいいから期限は設けない。君たちが邪魔をしてくれればその分、私は枕を高くして眠れるからね」
「はーい!」
「それじゃあ場所はね――」
◆ ◇ ◆
「メギストス様、いいんですか? ザガム様相手にあの兄妹は役不足かと思いますよ?」
「まあ、単体で戦ったら無理だろうね。私と戦えるし『そういう風に育てた』のだからさ」
「でしたら何故このようなことを?」
「まあ、気まぐれだよ気まぐれ。君の妹であるメリーナやイザール、ユースリアの後をハントドラゴンにつけさせたら人間の国に居るってわかったから、挨拶みたいなものさ。私はお前の居場所を知っているって」
【霊王】兄妹の屋敷から戻って来たメギストスは側近兼愛人のサキュバスに質問され、先のような答えを返し、さらに言う。
「確かにザガム一人なら圧勝……だけど人間達を襲われたらどうするかな? 城下町を襲うよう指示しているけど楽しみだねえ」
「人間とは干渉しないと言っていたような……ま、いいか! メリーナちゃんの手助けはしたいけどなあ」
「ま、そこはザガム次第だよ」
そういってメギストスは口の端を歪めて笑う。
「(さて、勇者と一緒みたいだけど、この一ヶ月弱でどう変わったか見せてもらうかな)」
「ああ、すぐ帰るからいいよ、お構いなく」
スケルトンに命令を出すキルミスに、メギストスは笑顔のまま手で制しているとイルミスが話を続ける。
ただ、イルミスは大魔王が【王】とはいえ屋敷に訪問してくるのは有り得ないだろうと訝しむ。
「……メギストス様、本日はどうされたのですか?」
「そう固くならなくていいよ、君もまだ幼いのにしっかりしているね。今日は少し話をしようと思ってお邪魔させてもらったよ」
「話ー? ……ですか」
無理をして敬おうとするキルミスに苦笑しながらメギストスは頷いて答える。
「ああ、まずは君たちの話だ。【王】になったからには色々とやることがあるからね。実力は申し分ないけど、二人で【王】だ、注意すべき点も多い」
「部下とか手下が悪さしないよう見張っていればいいんだよね?」
「それもあるけど、領地の運営は必要だ。元No.2の【冥王】だったザガムは定期的に見回りをしていたし、困っている魔族を助けたりしていたかな」
「えー、面倒くさそう……」
キルミスが明らかに不満げな顔をするが、イルミスは口元に笑みを浮かべて口を開いた。
「まあ、それでも僕達の領民なのだから面倒はみてやりますよ。あいつらの顔が目に浮かぶね。ところで、急に交代して領民は納得しているんですか?」
「うーん、もちろん納得している者もいるけど、そうじゃない者も居る。今度、ザガムより下手な統治をしていたら反逆はあるかな」
「なるほど」
「まーでも、ボク達なら蹴散らしてやれるってイルミス!」
「はっはっは、期待しているよ。魔族は実力主義、負けたらなにも残らないと思って頑張ってくれ」
「……はい」
軽い口調で重い言葉を放つメギストスにイルミスが目を細めて小さく頷く。キルミスは能天気で気にしていないが、今の言葉を要約すると『別に【王】だからと言って助けてやらない』と言っているのだ。
(元々他人を期待していないから構わないけど……妹は……キルミスは守らないと)
イルミスは今までのことを振り返ってそんなことを考えていると、メギストスが手をポンと打ってからにっこりと微笑む。
「まあ、領地経営は【天王】のマルクス君や【樹王】メモリー君あたりに聞けば親切に教えてくれる。で、君たちにひとつ頼みがあるんだけどいいかな?」
「なーにー? 大魔王様の命令なら聞いちゃうかも!」
「結構なことだね。それで頼みなんだけど、冥王ザガムを倒してくれないかな?」
「!」
「わお♪」
メギストスが笑顔のまま、自分たちが考えていたことを口にし、驚くイルミスとキルミスはどういうことかと続きを待つ。
「いやあ、彼は私の命をずっと狙っていて、大魔王の座を奪おうと企んでいるんだよ。私が倒してもいいんだけど、一応ほら、養父なんで心苦しいのさ。だから全然知らない者が倒してくれると助かるんだよね」
「息子……だったんですか」
「そう息子『だった』よ。どうだろう、ザガムを倒せるかな? どうやら人間を焚きつけて魔族領に攻めてくるつもりみたいでね、とある国に潜伏していることを突き止めた」
「へー! 人間とつるんでるんだ! あれ? でも大魔王様は干渉しないって話じゃなかったかなぁ?」
キルミスが歓喜の声を上げ、イルミスが神妙な顔でメギストスを見る。そんな二人を見ながらメギストスは大仰な演技をしながら説明を始めた。
「そうだね、私としてもか弱い人間と争いをしたくないんだけど、ザガムがなにかを企んでいて我が魔王軍の領地になにかあったら困るわけなんだ。かと言って、【王】が全員で攻めると他の国も戦争だと動き出しちゃうからね。だから、まずは君たちだけが先制してほしい」
「どうして僕達なんですか? 【炎王】あたりなら喜んで行くと思いますけど」
「そりゃあ君たちの力が最適だからだよ。国と戦うなら数がいるよね?」
メギストスは手を広げて『ね?』と首を傾げてイルミスへ目を向ける。
「(試されているのかな、これは?)」
確かに自分たちが【霊王】としての力を行使すれば国と戦うだけの能力はあるし、逃げ出して人間の力を借りようとする冥王程度なら訳は無いと考えるイルミス。
「分かりました。その話受けましょう。最初の仕事にしては少々度が過ぎているとは思いますが?」
「もちろん辞退してもらっても構わないよ?」
「えー、やろうよイルミスー。力を使いたくてたまらないんだよね」
やる気の妹に、手を握りながら微笑むイルミス。
「準備ができたらでいいから期限は設けない。君たちが邪魔をしてくれればその分、私は枕を高くして眠れるからね」
「はーい!」
「それじゃあ場所はね――」
◆ ◇ ◆
「メギストス様、いいんですか? ザガム様相手にあの兄妹は役不足かと思いますよ?」
「まあ、単体で戦ったら無理だろうね。私と戦えるし『そういう風に育てた』のだからさ」
「でしたら何故このようなことを?」
「まあ、気まぐれだよ気まぐれ。君の妹であるメリーナやイザール、ユースリアの後をハントドラゴンにつけさせたら人間の国に居るってわかったから、挨拶みたいなものさ。私はお前の居場所を知っているって」
【霊王】兄妹の屋敷から戻って来たメギストスは側近兼愛人のサキュバスに質問され、先のような答えを返し、さらに言う。
「確かにザガム一人なら圧勝……だけど人間達を襲われたらどうするかな? 城下町を襲うよう指示しているけど楽しみだねえ」
「人間とは干渉しないと言っていたような……ま、いいか! メリーナちゃんの手助けはしたいけどなあ」
「ま、そこはザガム次第だよ」
そういってメギストスは口の端を歪めて笑う。
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