最強魔族の俺が最弱の女勇者を鍛えるワケ ~魔王軍二番手の冥王は人間界でもSランク冒険者のようです~

八神 凪

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第四章:魔族領からの刺客

その70:エーテルエリア

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 「いいお湯でしたー……ルーンベルさん、やっぱりお胸が大きくていいですねえ」
 「ファムの大きさも需要があるし、ザガムは気にしないんじゃない?」
 「そうそう、ザガムはそういうのに興味無いから中身で勝負よ」
 「そうですかね? ザガムさーん、お風呂どうぞー! 背中流しますー!」

 屋敷の中で大きい声で俺を呼ぶファム。
 しかし俺はちょうど庭に出るため玄関を出たところだった。
 目的はもちろん空にある魔法陣。

 「……魔族の仕業だろうが、随分と大胆なものを出してきたな。ひとつ試してみるか」

 俺は久しぶりに【冥王】状態になると、一足で屋根に飛び上がり魔法陣を眺める。
 
 「……最大戦力で……<黒炎《ブラックメギド》>

 門番のミーヤも屋敷に引っ込めているので、全力で魔法を魔法陣に向かって放ってみた。

 赤黒い閃光が真っすぐに魔法陣に飛んでいき、直撃をする瞬間――

 「……消えたか。吸収されたわけではなさそうだな、ふむ」

 屋根から空を飛んで魔法陣に近づいていく。
 高度は三千メートルと言ったところが、近づけばその大きさがとてつもないものだと分かる。

 「なるほどエーテルエリアか」

 正体がわかり、俺は呟く。
 エーテルエリアとは現実と虚実の狭間のことで、口で説明するのは難しいが、いわば鏡の向こう側みたいなものだ。
 
 『見えているが触れることができない』という虚の空間で、こちらも同じ条件を満たさなければ干渉ができないのである。
 例えば人がこの状態になると、ダメージを与えることができなくなるので相当強い。

 「なかなかの使い手だな。さて、これを使ってなにを仕掛けるつもりだ? 先日のヴァンパイアの身内だろうか」

 思い当たる節は無い。
 俺の居場所がバレてメギストスが手を出してきたのかもしれないとも考えられるが、すぐに仕掛けて来ないことに違和感がある。

 「……本気で破壊するか?」

 やれなくはないが、メギストスに居場所がばれるのは間違いない。
 これを出した正体がわかるまでは警戒するのが賢明か……

 「ザガムさーん! お風呂ー!」
 「わかった」
 「あれ!? なんで屋根に居るんですか?」

 ファムが俺を探しに玄関から出て来たので、すぐに能力を抑えてファムの前に降り立った。
 
 「風邪をひくぞ、中に入れ」
 「はい! ん!」
 「なんだ?」
 「手を繋いでください!」
 「すぐそこじゃないか……」
 「違うんですよーちょっとでも触れ合いたいんです!」

 そういうものなのかと思いながら差し出された手を繋ぎ、屋敷の中へと入っていく。風呂上りだからかファムの手は暖かかった。

 そんな空の魔法陣は朝になっても消えず、特になにも起こっていなかった。
 朝、他の者が起きる前にユースリアへ意見を聞いてみると、

 「……気にはなるけどエーテルエリアに手は出しにくいからね。様子を見たいけど、戻らないと怪しまれるからそろそろ領地へ帰るわ」
 「分かった。一応、メギストスの動向を探ってもらえると助かるんだが」
 「流石にそこまではできないわ。どちらかと言えばあんたの方が我儘しているって分かってる? 裏切り者はザガムなのよ?」
 「……」

 ユースリアは厳しい口調で俺にそう言うと颯爽と屋敷から出て行った。

 我儘、だろうか?
 俺は魔族達の暮らしがもう少し豊かになればと思っている。そのためには人間の領地が必要で、力があるのにそれを止めるメギストスは邪魔なのだ。
 
 「ユースリアさん帰っちゃったんですね……」
 「また来ると言っていたから、そう落ち込むな。今日は依頼を受けに行くぞ」
 「オッケー、借金を返さないとねえ」
 「頑張ってくださいねぇ♪ わたしもお買い物に行こうっと」

 そんな調子で朝食をとると俺達はギルドへ赴く。
 早朝なのでまだ冒険者達が依頼を吟味したり我先にと受領しているのが目に入る。
 だが、会話の内容は殆どあの魔法陣についてのことばかりだった。

 「やっぱり気になりますもんね」
 「あまり言いたくはないが、もし魔族の仕業であればあの時のヴァンパイアよりも強力な個体だろう。人間にあれほどの力を行使できるとは思えないからな」
 「確かに出来る人は少ないかもね、どっかの国の宮廷魔法使いとか賢者と呼ばれるお年寄りとかなら、ってところかしら?」

 ルーンベルも俺の意見に賛成らしい。というよりも『あんたの仲間じゃないの?』といわんばかりの目を向けてくる。
 とりあえず首を振り、依頼に目を向けることにした。


 ……結局、その日も次の日もなにも起こらず、気味は悪いがなにも起こらなければいいと慣れたのか五日ほど経ったあたりで人間達は気にしなくなっていた。

 だが――

 ◆ ◇ ◆

 「なんとも不気味なものですが、実害はないようですな」
 「うむ……スパイクや城の魔法使いが調査と噂を確認していたようだが、なにも分からないらしい」

 城でも国王や大臣は魔法陣を気にしていた。しかし冒険者達に怪しいところはなく、魔法使いも正体までは知れず手の打ちようがない。
 空を見上げる二人の背後から騎士団長のエイターが声をかけた。
 
 「ザガム殿は?」
 「冥王疑惑があるもののあやつに動きは無し。スパイクが言うには依頼を普通にこなしているらしい。実際犯人ならもう少し隠れると思うがな」
 「まだ結論は早いかと。時が来るのを待っている可能性もありますしな」
 「そうですね。そういえば忙しくて訪問できなかったザガム殿の屋敷へ赴いてみようと思うのですが如何でしょう?」
 「……ふむ、なにか分かれば儲けものだな……よし、許可する。明日にでも行ってくるのだ」
 「かしこまりました」

 エイターはきれいなお辞儀をして一歩下がると、そのまま踵を返して王の自室を後にするのだった。

 「さて、お土産は必要かな? 一度稽古をつけてもらいたいけど、どうかなあ」

 エイターが良いお酒をもって訪問すると――
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