最強魔族の俺が最弱の女勇者を鍛えるワケ ~魔王軍二番手の冥王は人間界でもSランク冒険者のようです~

八神 凪

文字の大きさ
80 / 155
第四章:魔族領からの刺客

その78:天秤

しおりを挟む

 いつもより騒がしい暗い町の中を進み、俺は城へと辿り着く。
 アンデッドと魔法生物であるゴーレムが混ざっていたとあの二人が言っていたのが、その後始末に追われているのが現状だ。

 「すまない、国王に会いに来た。入ってもいいか?」
 「うえ……臭い……。んあ? ちょっと取り込み中……って、あ、あなたは! か、確認してきますので少々――」
 「いいよ、私が対応しよう」

 城にも結構な数が侵入していたらしく、門は破られ、動かない屍が散乱していた。
 吐きそうな顔をした兵士が好機とばかりに城へ戻ろうとしたところで、騎士団長のエイターが背後から現れて俺の横に並んだ。

 「エイター様! お戻りになられたんですね、では申し訳ありませんがお願い遺体します!」
 「はは、お願いいたしますだろう? それじゃ行こうかザガム殿」
 「助かる」

 アンデッド処理から逃れられると思っていた兵士は明らかに肩を落としてスコップを動かしていく。残念だが世の中こんなものだ。

 「町では見かけなかったが、どこに居たんだ?」
 「色々と残務処理をね。ギルドにも顔を出したけど、死屍累々って感じだったよ」
 「ふむ、それは悪いことをしたな」
 「ん? なにかあったのかい」
 「ああ、ちょうどその話をしようと来たんだ」

 エイターに案内され、謁見の間ではなく別室で待機するように言われてしばらく待つ。

 「……遅いな」

 待つこと数十分。
 意外と来ないものだと首を傾げていると、その瞬間満身創痍の国王と大臣、それとエイターが入って来た。

 「やあ、お待たせ。陛下も戦いに参加していてね、急に動いたから全身疲労が酷いみたいで」
 「うおおおお……ザ、ザガム……遅くなったな……」
 「陛下、ご無理をしないでと言いましたのに……」
 「戦いに出ていたのか?」

 あの怠慢な国王が戦いに参加していたとは少々驚いた。
 俺が尋ねると、二人の肩を借りてソファに座ってから得意気に言う。

 「そうだ! お前が王としての責務を果たせと言うから、最近鍛えておったのだよ! まあ、まだまだだが、スケルトンを一、二体倒せるくらいはやってやったわ」
 「ほう、それは凄いな。あれからひと月程度しか経っていない。ふんぞり返っているだけだった男が頑張ったな」
 「う、うむ。そう言われて悪い気はせんな」

 照れる国王が少し気持ち悪いと思ったが、口には出さないでおく。
 ただ、俺の言ったことを実践しているのは素直に褒めるべきだと思べきだ。
 人間、魔族に限らず人から指摘されたことを受け入れるのはなかなか難しい。
 
 俺もメギストスに突っかかるのはヤツが『人間に対して関せず』ということに納得できないからだしな。

 「考え方が変わっただけでもいいと思う。ただ、訓練の最中なら自らの身を守る方を優先しろ。強くなるまでは前衛は騎士と兵士に任せておけばいい。ただ前に出ればいいというものでもない」
 「なるほど……」
 「適材適所というやつだな。部下をないがしろにしない意識があれば王にきちんと仕えてくれるものだ」

 少なくとも、税や領地全体の安全を俺一人で見るのは不可能だ。そのために部下を使い、労いや金で感謝を表せば良いのである。

 「まあ、それは続けて行けば良いだろう。それで今回の件だが、俺のせいだった」
 「ん? どういうことだ?」
 「大魔王の命を狙う俺を始末するために送り込まれた刺客というやつだ。一応死人は居なかったようだが、謝罪したい。すまなかった」
 「なんと……」

 頭を下げると大臣が呟く。
 とりあえず刺客であることは嘘ではないし、アレを誤魔化すのは無理がある。
 だが、一つ嘘を吐かねばならない。

 「首謀者の魔族は俺が追い払ったからしばらくは安全だ。一応、町で戦っていた者達には回復魔法をかけておいた」
 「そうか、ご苦労だった。その報告が話したいことか?」
 「いや、本題はここからだ。今後もこういった刺客が来るかもしれない、なので俺達はこの町を出て行こうと思う。短い間だったが屋敷を引き払う予定だ」

 俺は一同にそう告げる。
 
 メギストスにバレているのであれば今後もこちらへ【王】を送り込んでくる可能性は高い。ユースリアやマルクスあたりなら穏便に済ませることが出来るだろうが、【炎王】ヴァルカンはまずい。
 メギストスが人間を攻撃するなと言っても俺が相手なら町を巻き込んで破壊するのも躊躇しない男なのでここに居座るのはデメリットしかないのだ。

 「町についてはすまない、立ち去る前には一度スパイクに声をかけておく」
 「ちょ、ちょっと待て!? 決断が早すぎるぞ!?」
 「はは、もうちょっと私達にも考える時間が欲しいね?」
 
 俺が立ち上がると、国王とエイターが慌てて引き留めてきた。
 考えるも何もないと思うが……

 「とりあえず話は分かった。だが、どこへ行くつもりだ? すでに追跡の手が入っていたらどの町でも危険じゃないのか?」
 「それはある。だから適当な山中に身を潜めるつもりだ。修行をするのに場所は選ばん。金も幸いあるからな」
 「……むう、まあそう慌てるな。ここでお前をはいそうですかと出て行ってもらっても困るのだ」
 「なに?」

 国王の渋い顔をしながらそんなことを言い、俺は訝しむ。するとエイターが軽く頷いてから口を開く。
 
 「私から説明する。今の話はとても分かりやすいし、こちらのことを考えてくれているのが伝わってくる。だけどザガム殿がこの町を去った後、まだ居ると思っている魔族が攻めてきたらどうだろう? 私達も負けるつもりはないが、今回のように犠牲が無い状態で終われるとは思えない」
 「ふむ」

 一理ある。
 魔族にも色々なタイプが居るから、先の兄妹のように無差別に襲うやつも居れば、俺が居ないと分かれば撤退するやつもいるだろう。
 
 「では、俺がこの町で迎撃していた方がいいということか?」
 「できればな。まあ無理にとは言わんが……」
 「私としては勇者を手放したくありませんし、色々助かるので残って貰いたいですがね。……使用人も強いみたいですし?」

 エイターがにこり笑い、俺は思考を巡らせる。
 罰金のようなものを言うわけでもなく、むしろ残ってくれと言う。
 
 ……まあ、イルミス達はすぐに来ないだろうし、ファルクスが上手いこと言ってくれている可能性がある。少しは持つか。

 「分かった。ではお言葉に甘えさせてもらおう、俺にできることがあれば言ってくれ」
 「そうだねえ、とりあえずファムさんと一緒にまずはEランクから上がっておこうか。流石にあれだけ回復魔法を使って、Eランクというのはないかな」
 「……考えておく」
 「頼むよ、ファムさんもいい感じになってきたみたいだし」

 扉に向かう俺に、エイターが手を振るのが目の端に入り、肩越しに手を上げて城を出た俺は休むため屋敷に帰路についた。


 ◆ ◇ ◆


 「……行ったか?」
 「ですな……。エイター殿、これで良かったんですか?」
 「そうですね。最善策とは言えませんが、ザガム殿が冥王である限りメリットはあります。あの子供達も手練れと見るなら、ザガム殿は圧倒的でした。しばらくこちらに来る軍勢はいないかと」
 「まあ、来てもザガムの性格上、あいつが相手をする、か」
 「はい。どちらかと言えば私達の方が助けられるかもしれません」
 「魔族同士、人間同士で争うか。目が覚めた私だから分かるが、力の差以外は愚かなことには変わりはないのかもな」

 ――エイターはザガムが冥王であることを報告し、性格上暴れることもなかろうとこのまま屋敷に住んでもらうことにした。
 体が痛いという演技はザガムと会う前に三人で決めていて遅くなったからである。

 もちろん、国側にもメリットはある。

 その不穏な影が形となるまでもう少しまで迫っていた。
  
しおりを挟む
感想 304

あなたにおすすめの小説

理想の男性(ヒト)は、お祖父さま

たつみ
恋愛
月代結奈は、ある日突然、見知らぬ場所に立っていた。 そこで行われていたのは「正妃選びの儀」正妃に側室? 王太子はまったく好みじゃない。 彼女は「これは夢だ」と思い、とっとと「正妃」を辞退してその場から去る。 彼女が思いこんだ「夢設定」の流れの中、帰った屋敷は超アウェイ。 そんな中、現れたまさしく「理想の男性」なんと、それは彼女のお祖父さまだった! 彼女を正妃にするのを諦めない王太子と側近魔術師サイラスの企み。 そんな2人から彼女守ろうとする理想の男性、お祖父さま。 恋愛よりも家族愛を優先する彼女の日常に否応なく訪れる試練。 この世界で彼女がくだす決断と、肝心な恋愛の結末は?  ◇◇◇◇◇設定はあくまでも「貴族風」なので、現実の貴族社会などとは異なります。 本物の貴族社会ではこんなこと通用しない、ということも多々あります。 R-Kingdom_1 他サイトでも掲載しています。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる

僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。 スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。 だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。 それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。 色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。 しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。 ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。 一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。 土曜日以外は毎日投稿してます。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

異世界翻訳者の想定外な日々 ~静かに読書生活を送る筈が何故か家がハーレム化し金持ちになったあげく黒覆面の最強怪傑となってしまった~

於田縫紀
ファンタジー
 図書館の奥である本に出合った時、俺は思い出す。『そうだ、俺はかつて日本人だった』と。  その本をつい翻訳してしまった事がきっかけで俺の人生設計は狂い始める。気がつけば美少女3人に囲まれつつ仕事に追われる毎日。そして時々俺は悩む。本当に俺はこんな暮らしをしてていいのだろうかと。ハーレム状態なのだろうか。単に便利に使われているだけなのだろうかと。

ペットたちと一緒に異世界へ転生!?魔法を覚えて、皆とのんびり過ごしたい。

千晶もーこ
ファンタジー
疲労で亡くなってしまった和菓。 気付いたら、異世界に転生していた。 なんと、そこには前世で飼っていた犬、猫、インコもいた!? 物語のような魔法も覚えたいけど、一番は皆で楽しくのんびり過ごすのが目標です! ※この話は小説家になろう様へも掲載しています

アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。 ふとした事でスキルが発動。  使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。 ⭐︎注意⭐︎ 女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。

処理中です...