最強魔族の俺が最弱の女勇者を鍛えるワケ ~魔王軍二番手の冥王は人間界でもSランク冒険者のようです~

八神 凪

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第四章:魔族領からの刺客

~幕間3 大魔王メギストス~

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 「……ということで、失敗しました……」
 「ました……」
 「あはははは、やっぱり勝てなかったか。こっぴどくやられたね、ごめんよ、尻たたきは私がザガムの躾でやっていたことなんだ」
 「あ、はあ……」

 キルミスが曖昧な返事をするが、イルミスはメギストスの言葉に不満げな様子で抗議の声を上げた。

 「……大魔王様『やっぱり』ということは僕達が勝てないことを分かってて頼んだんですか?」
 「気を悪くしたなら謝るよ。けど、君達には未知の可能性もあった。だからお願いしたんだ。で、ザガムは強かったろう?」
 
 軽く笑いながら弁解するメギストス。
 納得は出来ないものの、そう言われては引き下がるしかないとイルミス達は顔を見合わせた後、前を向いて口を開く。

 「強かった、です……【炎王】が言っていたブラフとかありえないくらい……勝てるのは【王】達でも難しいんじゃないかな」
 「うん、でもあんなことまでしたのに殺されなかった……」
 「そうだね、現状、一対一で勝てるのは私だけかもしれない。まあどこかに私より強い者もいるかもしれないが、確認できる中では居ないかな」
 「そこまで!? 私達が殺されちゃったらどうする気だったのよ!」

 キルミスが机を叩きながら立ち上がると、メギストスは手で制する仕草をしながら返事をする。

 「死者を出さなければザガムは無益な殺しはしないからそこは大丈夫だ。私の言いつけを守ったおかげだね?」
 「……彼はどうして大魔王様を倒そうと? あの力があれば不自由なく暮らせるのに」
 「ザガムは魔族領地を増やしたいと言っている。そのためトップになりたいと私打倒を考えているんだ」
 「でもザガム様は人間の領地にいて守ってるけど……」
 「『様』?」
 「な、なんでもないわ! あいつが蹂躙すれば終わるじゃない!」

 キルミスが声を荒げてそう言うと、メギストスは笑顔を崩さないまま二人に告げる。

 「もしそんなことをすれば私が止めるよ。人間との争いは目が黒いうちはやらせない。もしそんなことすれば死を覚悟しておいて欲しいと思っているし、ザガムにもそう言っている」
 「「……」」

 顔は笑っているがこれは本気だと冷や汗をかく二人。一歩間違えば自分達がそうなっていたかも、と。
 メギストスはそんな気配に気づき、慌てて明るい声色に変えた。

 「ああ、普通に生活していたらそんなことは無いから安心してくれ! ほら、そんなに震えてないでさ」
 「は、はい……」
 「とりあえずザガムは元気そうだね。今回はありがとう、お礼はまたさせてもらう。他に関してなにかないかな?」
 「うーん」

 キルミスが口への字にして考えていると、代わりにイルミスが口を開く。

 「そういえば僕達と同じメイドと獣人に加えて、人間の女が二人仲間になっていました。キルミスが殺そうとしたんですが、それでザガムが怒ったみたいで一瞬で返り討ちに……」
 「ほう……詳しく。その子達は可愛いかな?」
 「え? ええ、見た目は問題ないかも……なんかザガムの嫁だとかシスター服の女が言ってましたけど……」
 「言ってたわね、くっ……羨ましい……」
 「キルミス?」
 「シスター……ふむ、私の息子らしくなかなかいいチョイスじゃないか。あのむっつりスケベめ。他には?」
 「他は特に……」

 尻を叩かれたくらいだと告げるイルミスに、メギストスは小さく頷く。
 
 「ありがとう二人とも。今日はこれで終わりでいいよ、またなにか頼むかもしれないけど、とりあえずは領地経営よろしく頼むよ」
 「このまま【王】でいいんですか?」
 「実際、他の魔族よりは頭一つ抜けているから問題ないよ、これからもよろしくね」
 「……わかり、ました、。失礼します。行こうキルミス」
 「はーい」

 てっきり解雇でもされるかと思っていたイルミスは狐につままれたような気持ちでキルミスを連れて謁見の間を出て行く。
 それを見送ったメギストスは一人になり、目を細めて呟く。

 「使用人という立場ならいいけど女性が苦手なザガムに嫁ねえ。大丈夫かな? ……ん? どうぞ」
 
 色々と面白くなってきたと思ってきたところで謁見の間がノックされる。
 メギストスが招き入れると、

 「……失礼します。【霊王】様とのお話は終わりで?」
 
 元ザガムの部下であるファイクルが敬礼をして立っていた。

 「うん、もう大丈夫だけど、ファルコンだっけ? なんだい?」
 「ファイクルです! ……その、申し上げるか迷ったのですが、義理とはいえご子息のことなので報告、します」
 「なんだい、深刻なこと?」
 「え、ええ……【霊王】様とザガム様が戦っていたのを目の当たりにしていたのですが、恋人と思われる女の子が刺された瞬間、その、ザガム様が笑っていまして……」
 「……! それは本当か!」
 「え、ええ!?」

 今まで見たことが無かったのでファイクルは一応報告しておこうと口にしたが、メギストスが立ち上がって驚くほどの態度を見せて驚愕する。

 「どれくらい笑っていた?」
 「え、っと……二回か三回ほどニヤリとしていました。初めて笑うところを見たので」
 「……だろうね、引き取ってから私も一度だって見たことが無い。君は貴重な光景を見たんだよファルコン」
 「ファイクルです。貴重な生物を見た言い方……というか大魔王様でも見たことが無かったんですか?」
 「ああ。それ以外になにか無かったか? 泣いたりとか」
 「いえ、なんだか怒っているような感じがあったくらいですかね。一応報告は以上です。ホント、笑うところ初めてみたんでびっくりしましたよ」

 そう言って会釈しながらファイクルは出て行き、メギストスが一人になる。

 ――満面の笑みを浮かべながら。

 「……そう、そうか……ザガムが笑ったのか。あの時から感情と記憶を失ったあの子が……。人間と触れ合う、いや、嫁だという女の子が変えてくれたのか……?」

 俯いて乾いた笑いに変えたメギストスはさらに呟く。

 「見たかったなあ……見に行こうかなあ……黙って行けば招いてくれるかな? イザールやメリーナ達も居るし、ユースリアを連れて行ってみようか。嫁さんが出来たならパパが挨拶しないといけないし! うん、そうしよう!」
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