最強魔族の俺が最弱の女勇者を鍛えるワケ ~魔王軍二番手の冥王は人間界でもSランク冒険者のようです~

八神 凪

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第五章:陰湿な逃亡者

その82:真打ち

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 「ダメじゃない勝手に手を出したら!!」
 「すまん」
 「ご、ごべんなざい……」

 ルーレットで遊んでいた俺とファムだったが、まったく勝てずにいたところでルーンベルからストップがかかった。
 
 (子供を叱るお母さん……)
 (お母さんだ)
 (お母さんだな)

 「周りうるさい! ったく……ルーレットに数字一個だけで賭けて当たるわけないでしょうが!」
 「ええ!? 数字にかけるんじゃないんですか?」
 「ルールがあるのよ、この一列のどれかの数字に入ったら当たりってやつとかね」
 「あー」
 「ふむ」

 なんでも赤と黒どちらが当たるかを賭けるようなルールもあるらしい。ギャンブルは奥が深い。

 「で、いくら負けたのよ」
 「俺はたまに勝っていたから1万ルピほど損失だ」
 「わ、私は1万5千……」
 「はあ……その程度で良かったわ。まあ、初めて入ったなら遊びたくなるのは仕方ないけど……イザールさん、ちゃんと見張っていてくださいよ?」
 「面目ありません。しかしザガム様がこういったことに興味を持つのが嬉しくてつい……」
 「やめないか」

 ハンカチを手にするイザールをもう子供じゃないと諫め、ルーレットから離れる。
 見れば結構時間が経過していたので、時間も忘れるギャンブルは魅力的だが怖いなと思いつつルーンベルに成果を聞く。

 「もういいのか?」
 「そこそこ稼げたわ。25万ってところかしら」
 「ほぼ負けなしだったよ、凄かった」
 「凄いですね! 奴隷の借金すぐ返せそうです」
 「……別にお金が目的じゃないんだけど、今日のところは出てこないかしら?」
 「出てくる……?」
 「ああ、こっちの話。折角だし、他のゲームも見ていく? お金はあるしね」

 ウインクをする彼女の後について、クラップスやブラックジャックという名前のゲームを楽しんでいく。

 「いやあ、面白いですねえ……」
 「ブラックジャックは面白いな。カードを買ってコギーに『あっち向いてホイ』のリベンジといこう」
 「意外と根に持っているのね……まあ、負け分は少し取り返せたみたいだし、私もさらに7万増えたわ」
 「くっそー……相変わらずつえぇ……」
 「こんなに勝って賭博場のお金って大丈夫なんです?」
 「心配いらないわよ。勝ってる人も居れば負けている人も居るし、お店としては儲けているはずよ」
 「ま、そういうこった。もうっちょやらないかい?」

 どうやらルーンベル好調だったようで、金は結構稼いだらしい。
 俺とファムが管理しているルーンベルの奴隷貯金も潤うだろう。
 しかし解せないのは、運が悪いわけでも無いのに、どうして大負けをしたのか、というところだ。
 
 「よう、久しぶりだなルーンベル」
 「……ヴェリナント」
 
 ちょうどブラックジャックのゲームが一区切りしたところで、背後から声がかかる。
 振り返ると趣味の悪い紫のスーツに、茶髪をオールバックで固め、葉巻を口にくわえている男が立っていた。

 「おいおいそんなに怖い顔するなって。あれは賭けに負けたお前が悪いんだろ? 俺のせいじゃあない」
 「それはそうね。……あんたがイカサマをしていなかったらの話だけど?」
 「ほう、俺を疑うってのか? 証拠はあるのか」

 ルーンベルの言葉に周囲にどよめきが起こり、ヴェリナントという男が不快を露わにして言う。
 
 「ないわ。だけど、私はそう思っている」
 
 すると対するルーンベルは、証拠はないと言い放ちながらも引かずに睨みつけていた。こいつが奴隷になった原因と言うことで間違いなさそうだ。

 「ふん、話にならねえな」
 「待ちなさい、私の荷物。返してもらえないかしら? あれを買い戻すのにこれだけあれば十分でしょ」

 ルーンベルが今しがた稼いだ金の内10万を差し出す。
 踵を返して立ち去ろうとしたヴェリナントは振り返って目を細めると、嫌らしい笑みを浮かべてルーンベルの顎を指で掴む。

 「……はした金だ。まあ、返してやらんでもないが……一勝負してお前が勝ったらってのはどうだ?」
 「なんですって?」
 「俺はギャンブラーだ。賭けで決めるのは当然だろ? ポウカーで勝ったらお前の望むようにしてやる。なんなら奴隷解放できるだけの金もやろう」
 「あんたが勝ったら?」
 「俺が勝ったらお前は俺の女になる」
 「……」

 もしルーンベルの言う通りヤツがイカサマをするのであれば罠だ。
 自信ありげな態度を見るに黒かそれに近いものだと思う。
 受けるべきではないと、今ボロ負けした俺はファムと顔を見合わせるが――

 「……いいわ、乗った。あんたのイカサマを見破るチャンス。こっちには騎士団長のエイターさんも居るし、知れた時点でお縄確定よ」
 「……おもしれえ、そんな戯言を言っていられるのも今の内だ」

 睨みあう二人を見て、ファムが俺の袖を引っ張る。

 「あわわ……ルーンベルさんが怖いです……。だ、大丈夫ですよね?」
 「わからん。が、ルーンベルには実力があるのは確かだ。そこに賭けるしかない」
 「でも負けたら屋敷から居なくなっちゃいますよ……」
 「あん? そこの兄ちゃんと嬢ちゃんはルーンベルの知り合いか?」
 
 俺達が話しているところに割り込んできたヴェリナントへ、返答をする。

 「そうだな。ルーンベルを買ったのは俺達だから当然だ」
 「150万ルピを払ったのか……? ということはもうヤっちまったか?」
 「ん? どういう――」
 「あー、そうそう! もうやったもやった! ガンガンに攻められたわ! そりゃご主人様と奴隷の関係よ? あんたの持っている剣の束よりもでかいのでやられまくったわ!」
 「な、なんだと……!? くっ……羨ましい……」
 
 「大人しそうな顔して特大か……」
 「ああいうのに限ってってやつだな……」
 「イケメンだから私もめちゃくちゃにされたいわぁ」
 「あの嬢ちゃんも毒牙に……?」

 急にルーンベルが俺に抱き着いてきて、捲し立てるように言い放つと、ヴェリナントが悔しそうな顔で呟き、周りの野次馬が首を振りながら『ほう……』とため息を吐く。

 「?」
 「?」
 「ははは、注目の的だねザガム殿!」
 「なんのことか分からないが……」
 「はいはい、いいのいいの。勝負するわよ」

 手を叩きながら場を仕切るルーンベル。
 そこでヴェリナントが俺に目を向けて口を開いた。

 「……おい、主人ってんならお前も勝負しろ。金、もってんだろ? あの嬢ちゃんもお前のか」
 「ふむ。金はある。ファムもルーンベルも、二人が言うには俺のものということにはなるな」
 「「「おお!」」

 俺の言葉に周囲が沸く。
 だが、ルーンベルはその提案に納得がいかないと声をあげた。

 「ザガムは初心者なんだからダメに決まってるでしょ!」
 「ふうん……なら賭けは無しだ。主人だからって無効にされたら困るしな。じゃあな」
 「な!? ちょっと、荷物を返しなさいよ!」

 ヴェリナントは振り返ることなく立ち去っていく。
 
 そこで――

 「よかろう、俺も勝負してやる。俺が勝ったら、身ぐるみを剝がさせてもらうぞ?」
 「……いいねえ、そうこなくっちゃあな」

 ――挑発に乗ってやることにした。
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