最強魔族の俺が最弱の女勇者を鍛えるワケ ~魔王軍二番手の冥王は人間界でもSランク冒険者のようです~

八神 凪

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第五章:陰湿な逃亡者

その83:執事の眼

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 「あんなこと言って……負けたら全部失うのよ、大丈夫なの?」
 「まあ、策が無いわけではない」

 ゲーム開始まで少し休憩をする中、ルーンベルが俺に指を突き付けて来た。
 そのままルーンベルの耳に顔を近づけて言う。

 「……もしイカサマが本物なら俺とイザールが見破れるはずだ。時にイザールの眼は素早い動きでも捉えることができる」
 「イカサマが無かったら――」
 「お前はあると信じているのだろう? 奴隷の身とはいえ、同じ屋敷に住むもの。信じてやろうじゃないか」
 「も、もう、恥ずかしいわねあんたって……でもなにもかも失ったら?」
 「まあ、適当に暴れて逃げ出すかな」

 俺はそういってエイターに目をやると、苦笑しながら片手を上げた。
 『そんなことにならないよう頼むよ』と訴えているようだ。

 「が、頑張りましょう! 今回はお役に立てそうもありません……」
 「なら、カードをいくつか買っておいてくれ。ファムのランクアップ祝いで遊べるだろう」
 「! ……は、はい!」

 後ろで見られていて利用されそうな気もするので、悪いがファムにはこの場から引いてもらおう。
 
 「……さて、と」
 「へへ、準備は整ったか? 勝負と行こう」

 ヴェリナントがカードをシャッフルしながら俺達に声をかけてきた。
 カードの束をディーラーに渡したが、俺は念のため口にする。

 「待て。そのカードになにも仕込んでいないか確認させてもらおうか」
 「あん? 疑ってるのか? まあ、別にいいけどよ」
 「どうぞ」

 先ほど色々と教えてくれたディーラーが笑顔で差し出してきたので、それを受け取りチェックをかける。

 「お前達がイカサマをするんじゃあねえだろうな?」

 だが、今度はヴェリナントがニヤニヤと笑いながら難癖をつけてきたので、俺は手を止めてカードをまとめる。

 「ふむ、そちらから見たら確かにそうも見えるか」
 「では新しく開けましょうか」
 「頼む」

 ディーラーが俺はカードを別の人間に渡して席に着く。
 半月状のテーブルは間がそれなりに離れており、中央が俺、ルーンベルが俺の左、ヴェリナントが右に位置する。これによりお互いの顔を見ながらブラフを仕掛けることができるのだ。

 正直なところ、ヴェリナントの対面に座りたかったが、そこはイザールに任せようと思う。

 「……」

 察してか、イザールは無言でルーンベルの後ろに立つのが見えた。
 目配せをしていると、ルーンベルが目を細めて口を開く。

 「勝負の方法は?」
 「通常のポウカーで、チップを失うまでのデスマッチでどうだ?」
 「オッケー」
 「では始めますか?」

 ディーラーがそう言うと、俺達三人は頷く。
 直後、カードが配られゲームが開始された――


 「まずは小手調べってところか。腕が落ちてないか試させてもらうぜ」
 「ほえ面かくんじゃないわよ! 一枚交換」
 「どうぞ」
 「俺はこのままで……いや、三枚交換だ」
 「……」

 俺達の動向を舐めるように見てくるな。イカサマを疑っているのだろうが、それはこちらも同じこと。

 「二枚くれ。……ま、こんなもんか」
 「私はこれでいいわ。くっく……レイズよ」
 「俺はこのままだ」
 「勝負すんの!?」
 「ははは、こいつは何もしなくても勝てそうだな!」

 ドローしたカードを入れ替えてほくそ笑むヴェリナントと俺に驚愕の表情を向けるルーンベル。
 ……動向を探るためさっさとカードを伏せて横目でヤツを見る。

 特に怪しい動きはない、か。
 イザールに目を向けても小さく首を振っていたのでそういったことはなさそうだ。
 
 「(ザガム様、今のところは怪しげな動きはありません。手の中にあるカードのみで勝負しているようです)」
 「(そうか。引き続き頼む)」
 「……? 今のなに?」

 魔族でのみ伝わる言葉を小さく発し、意思疎通を取る俺とイザール。
 とりあえず勝負を続けてみるとしよう。
 
 「オープン」
 
 ディーラーの声で俺達はカードを開く。
 
 「……ツーペア」
 「スリーカードだ」

 俺のよりもヤツが上か。そこはまあいい、ルーンベルはどうだ?

 「フッ、私はこれよ」

 ルーンベルの手札は僧侶のマークでそろえたフラッシュだった。
 今回はディーラーは参戦していないので、ルーンベルの一人勝ちだな。

 「やるじゃねぇか! さすがは俺の女だ」
 「違うわ! さ、チップを出しなさい」

 俺とヴェリナントがチップを渡す。
 一応、総計10万ルピでチップ一枚が1000ルピなので100枚が手持ちだ。
 初回ということで賭けていた枚数は2枚程度だったから痛手はない。

 「まあまあ、始まったばかりだゆっくりやろうぜ……」
 「ではカードを――」

 さて、ここからが本番と言ったところか。どう出てくるかな?



 ◆ ◇ ◆
 
 

 「……ドロー」
 「俺はストップだ。へへ、こりゃまた頂きだな」
 「俺もストップだ、さらに上乗せでレイズだ」
 「ほう、行くねえご主人様は」

 口笛を吹くヴェリナントの声は無視して俺はカードをドロー。

 「よし」
 「お、いい手が来たのか? ……さて、それなら俺は一枚変えるか」

 「オープン」

 「……ストレートだ」
 「私はフルハウスよ」
 「おっと惜しいな、フォーカードだ」
 「くっ……」

 ルーンベルが舌打ちをしてテーブルを叩くが、それも無理もない。
 現在11ゲーム目だが、3ゲーム目までは普通に勝ったり負けたりだったが、いけると踏んだルーンベルが大量に賭けた時は必ずルーンベルを上回る手で負けていた。

 明らかにルーンベルを狙い撃ちしていると思っていいほどに。

 「……前回と同じね。大量に賭けた時にやられていたの」
 「ふむ」
 「へへ、悪いな。今度こそお前は俺のモノだ……」
 「きもいっての」

 強がるルーンベルだが、顔は青ざめている。
 それもそのはずで、1000枚あったチップはすでに300枚程度まで切り崩されている。
 俺はまだ700はあるが、ヴェリナントの目的はルーンベルの心を折ることにあるようなので俺には興味がないというところだろう。

 「ま、まだよ! カード、早く!」
 「へへ……」
 「……む?」

 手札を貰った瞬間、イザールが俺にコインを飛ばして意識を向けさせてきた。
 
 「(ザガム様、ヤツを見てください)」
 「……なるほど」
 
 イザールがイカサマの正体というやつを掴んだようだな。
 さて、もう少し泳がせてみるか。
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