最強魔族の俺が最弱の女勇者を鍛えるワケ ~魔王軍二番手の冥王は人間界でもSランク冒険者のようです~

八神 凪

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第五章:陰湿な逃亡者

その84:目には目を

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 「また……!?」
 「俺の勝ちだな。ほら、ご主人様もチップを出しな」
 「……」

 さて、14ゲーム目終了。
 この時点でルーンベルの持ちチップは290枚程度。細々と勝負を続けてきて大きな負けは無いが勝ちも少ない。
 ヴェリナントは相変わらず狙いをルーンベルに絞っているので俺はまだ安全な位置に居る。

 ……そろそろだな。

 ◆ ◇ ◆

 ククク……ルーンベルめ、悔しがっているな。
 だが、もう遅い。
 このままお前のチップをゼロにしていただくのは確定だ。
 
 今回は逃がすつもりはない。
 前は一気に賭けたところにレイズして一気に借金を背負わせたが、まさか自分から奴隷になるとは思わなかった……。
 俺が買おうとしても頑なに拒否しやがった上にイカサマ呼ばわり。
 今夜はどんなに喚いても逃がしはしねえ……ベッドでひいひい言わせてやる。

 まあ……イカサマはしているがな?
 だが、それがどういうものなのかはこいつらには分からないだろう。
 こっちの兄ちゃんは表情が分かりやすくて助かるがルーンベルはやはり手強い。

 しかし、あいつは癖で数字を左から揃えようとする傾向にあるから手の動きを見ればある程度予測ができる。

 後は仕込みを出すかどうか。単純に手札が強ければイカサマをする理由も無いしリスクを負う必要もない。
 兄ちゃんはともかく、ルーンベルを負かせば少なくともあいつは俺のもの。
 というかこの兄ちゃんはクソ弱いし、こいつは適当にやっても勝てるだろう。
 
 とりあえずそろそろトドメを刺しにかかるか。夜も更けてきたしな――
 
 ◆ ◇ ◆

 「これじゃ勝てない……もう一枚……」
 「どうぞ」

 ディーラーから受け取るルーンベルの表情は焦燥感に満ちている。
 焦りは隙を生み、ミスを誘発させやすい。
 こちらは準備と確証ができたので、ここでヴェリナントを倒すとしようか。

 「……4枚交換だ」
 「悪あがきかい?」
 「どうかな?」
 「せいぜい奴隷を取られないよう頑張りな! 二枚交換だ」
 
 そういって交換をするヴェリナント。
 瞬間、イザールの指が小刻みに震えた。
 
 「ん? なんだ……?」
 「さて、それではレイズと行こう。100枚乗せる」
 「……ほう、よほどいい手か?」
 「ザガム……」

 乗ってくるか? 降りればそれはそれ。もしここでゲームを張るようなら間違いなくイカサマだが……

 「おもしれぇ、勝負だ。ご主人からも根こそぎ頂いてやるぜ!」
 「ではオープンを」

 そこでルーンベルから一斉にめくる。

 「私はスリーカードよ」
 「俺はツーペアだ」

 すると手札を開きながらヴェリナントが笑う。

 「はははは! 気の毒になあ! 俺はストレートだ!」
 「ほう、それがか?」
 「あん? 負け惜しみはよせ、9から13の――」
 「ハイカードじゃない」
 「な……!?」

 9、10、11、2,13の並びで役無しのハイカードが並んでいるのを見てヴェリナントが驚愕の表情で手札を見る。

 「フッ、2と12を間違えるのは少し難しいんじゃないか?」
 「くっ……」
 「ということは……私の勝ちね! ザガムの分が多いから心苦しいけど」
 「気にするな」

 これでルーンベルも少し平静を取り戻すだろう。
 
 「次だ」
 「……いいぜ」

 続けて3ゲームはヴェリナントが二回、ルーンベルが一回勝ち、相変わらずの流れだった。

 ……では、この辺りで種明かしと行こうか。

 「5枚交換」
 「え!? ザガム!?」
 「勝てなくて勝負を捨てたか? こっちは三枚交換だ。……ほう」

 手札を見てほくそ笑み、俺達を見る。
 そこで俺は宣言する。

 「……レイズ、300枚上乗せだ」
 「なに!? 五枚交換した上で!? 正気か!?」
 「特に問題ないが?」
 「イカサマか? いや、こいつはカードを貰った後、手を動かしていない……」
 
 訝しむヴェリナントがぶつぶつと何か呟き、やつも宣言する。

 「コールだ……400枚」
 「相当いい手ってことかしら? 私は降り――」
 「必要ないぞルーンベル。そのまま行け」
 「ええ……? 信じていいんでしょうね」
 「ああ」

 確信はあった。
 ヴェリナントが確実にしくじる未来は見えている。
 ルーンベルは小さく頷き、手札を前に出す。

 「オープン」

 楽し気なディーラーの声で俺達はカードを開く。

 「ストレート! これならどう!」
 「ふぇっへへ……甘いな、見ろ商人のストレートフラ……な!?」
 「なんだそれは?」

 ストレートフラッシュどころか騎士や農民といったバラバラの絵柄で構成されていた。

 「ば、馬鹿な!? 俺は確かに三枚変えたはず……」
 「そうだな、その結果だろう?」
 「う、うるさい! 五枚変えたてめぇはなんなんだ!?」
 「見せてやろう」

 俺は手札を開けてやる。
 そこにはツーペアの役が並ぶ。

 「ぜ、全然大したことないじゃねぇか……!? ブラフ……」
 「そうれもあるが、ルーンベルに少し余力を持たせたくてな。さて、では種明かしといこうか。ヴェリナントと言ったな。上着を脱いで袖を見せてもらおうか」
 「……!? な、なにを」
 「動くな」
 「ひっ、い、いつの間に……」
 「ザガム……?」

 ではお披露目といこうか――
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