最強魔族の俺が最弱の女勇者を鍛えるワケ ~魔王軍二番手の冥王は人間界でもSランク冒険者のようです~

八神 凪

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第五章:陰湿な逃亡者

その94:問答無用

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 「ほうほう、『神霊の園』で女の子が食い物にされていると……」
 「はい、見なくなった子も居ます。噂によると売られたという話も耳にしたことがあります」
 「なるほど……宰相、この件、聞いたことは?」
 「いえ、初耳です」
 「そうですか。……では――」
 「あ!?」

 聖女クラフィアートはルーンベルの持ってきた資料を真っ二つに引き裂き、さして面白くも無いといった様子でその場に捨てる。
 
 「な、なにを!?」
 「逃げ出した聖女見習いの話は聞いています。忠実な司祭と逃亡者……どちらの言葉が信用できるとお思いですか?」
 「そ、それはそうですが……調査、一度調査だけでも! 本当なんです!」
 「……汚らわしい魔族を引き連れておいてよく言いましたね……!」
 「……!」

 バレているだと?
 伊達に聖女ではないということか。そういえばイザール達の体調不良はこの城に入ってからだ。なにか仕掛けがあったと考えるべきか。
 
 それよりも――

 「ルーンベルは魔族に魂を売りました。恐らくこの国を支配するつもりでしょう。捕えなさい! であえ、であえ!」
 「ちょ、違います!?」
 「魔族なんでどこにも居ませんよ?……うっ」

 ファムが訝しんで口を開いたので、俺は背後に回り首筋を軽く叩いて気絶させる。

 「危ないところだった」
 「なんでファムさんを気絶させているんですか!?」
 「気にするな。さて、聖女よどういうつもりだ? ルーンベルの言うことが真実かどうか、そを調べるのが公平さではないか?」
 「あり得ません。わたくしが信頼して地を預けているのです。もしそうであればわたくしの目が曇っていたということになります」

 目と口を歪めて笑う聖女。
 ふん、自身の地位を守るためにというやつか。どっちが魔族か分からんな。

 「クラフィアート様、お願いです!」
 「ルーンベル、あの手合いにはなにを言っても無駄だ、イザール達のこともある。逃げるぞ」
 「わたくしから逃げられると?」
 
 するとイスラが緊張に耐え切れず頭を抱えて叫び出した。

「ああああ! もうダメです! おしまいです!? せめて痛くないようにしてくださいぃぃぃ」
 「魔族に誑かされたその根性を直すべく女たちは『神霊の園』へ行ってもらいましょう。そして悔い改めるのです」
 
 にこやかに笑いながら左手でわっかを作り、右手の人差し指をその中に入れる。

 「この人、『神霊の園』の正体知ってますよ絶対!?」
 「いいから逃げるぞ。<ガイアクラッシュ>」
 
 俺はファムを抱きかかえながら拳を床に突き立てる。
 その瞬間、部屋全体が大きく揺れ、聖女以下全員がバランスを崩すかひっくり返った。

 「ルーンベル、イスラ」
 「う、うん……!」
 「はいぃぃ!」

 二人を抱えこむとそのままバックステップで扉を破壊しながら通路へ踊り出る。
 
 その時――

 (たす、けて……)
 
 不意に背後から声が聞こえた気がした。
 
 「今なにか喋ったか?」
 「なに? なんのこと?」
 「ぞろぞろ出てきましたよ!?

 後ろをチラ見すると、聖女以下武装した兵士が迫ってくる。通路はそれないに幅があるので囲まれると面倒だ。
 そこで、にたりと笑みを浮かべた聖女が手を前に突き出した。

 「ふうん、やりますわね……<ホーリーランス>」
 「げ!? なんですかあの魔力量!? <ドラゴンブレス>! あーんど<レジンタイル>加えて<スパイダーネット>!」
 「……!」

 ふむ、不思議な魔法を使っていたがなかなかやるものだ。
 ホーリーランスを相殺しながら追跡者の妨害対策まで連続して魔法を使っていた。
 足を滑らせ、粘性の糸に絡まり、人の壁が天然の妨害対策となる。

 「ふはははは! 捕まって嬲られてなるものですか! さあ、ザガムさん、全力でお願いします!」
 「問題ない。イザール達は――」
 
 「ザガム様、ご無事でしたか! 茶に一服盛られていたのでもしやと思い探しておりました」
 「私達が魔族だってバレているにゃ」
 「話は後だ、抜けるぞ」
 「はぁい<ギガファイアボール>」

 閉じようとしていた門をメリーナが魔法で破壊し外に出ることに成功。
 そのまま速度を緩めず宿へ向かう。

 「ルーンベル、『神霊の園』の場所は分かるな?」
 「ええ、もちろんよ。……まさか……」
 「そのまさかだ、魔族だとバレた以上……潰すぞ」
 「……あれ魔族って全員? もしかしてわたし、どっちに居てもまずい……?」

 イスラがそんなことをぽつりと呟き、イザール達がニヤリと、笑った。


 ◆ ◇ ◆
 
 
 ――謁見の間――

 「申し訳ございません、奴等は城から脱出。すでに追手は仕向けていますが……」
 「まあ、いいでしょう。どうせ彼等の目的は『神霊の園』でしょう、先回りすれば良いことです」
 「ハッ! では部隊を揃えておきます!」
 「頼みましたよ。あの魔法使いは脅威ですし、ルーンベルも‟外典”を所持しているはず。アレを使えるのは優れた聖女のみ……油断なきよう。わたくしも行きます」

 兵士は壊れた扉から出ると、イスラの魔法で出来た油の道で転びながら伝令に向かう。
 一人残ったクラフィアートが口元に笑みを浮かべて口を開く。

 「……ルーンベル、歴代でも最高の能力を持つ聖女見習い……捜索は不可能だと思っていましたが自ら戻ってくるとは。アレを手に入れればわたくしの力と美貌は永遠に近づく……くくく……ほほほ……ほーっほっほ……! げほっ!? げふ!?」
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