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第六章:『神霊の園』
その95:イスラと襲撃作戦
しおりを挟む「へいへい、イスラちゃんはもう逃げられないにゃ」
「ひい、ワータイガー!?」
「うふふ、どこまで堕ちるか楽しみですわぁ」
「サキュバス!?」
「ふっふ、生きのいい小娘ですな」
「伝説のブラッディフェンリル!?」
「よく知ってるわねー」
グェラ神聖国を早々に出発し、俺達は一路『神霊の園』を目指していた。
ファムはまだ寝ているので毛布にくるんで馬車の座席へ。
今は山中まで潜り込んだので一旦休憩し、その間、イザール達は正体を現してイスラを詰めているところだった。
「おい、脅かすな」
「ひい、ザガムさん!?」
「お前もうるさいぞ」
「ひぃん尻はダメです!? というか、どうしてこんなに魔族を引き連れているんですか!?」
「そりゃ、今目の前にいるザガムは冥王だからよ?」
「は?」
ルーンベルが軽く言い放つと、脂汗を垂らしながらイスラが俺に顔を向ける。
「冥王……? は、はは、まさかこんなところに……」
「これでどうだ?」
「いやああ!? とんでもない魔力ぅぅ! 本物……!? わ、わたしをどうするつもりですか! さてはこの魅惑のボディを好きにして性欲のはけ口に……。サキュバスがいるのはそのため……」
「いや、ファムより年下には興味がないぞ」
「ぐは……!? わたしは22歳ですよっ!」
「私より年上……!? 貧相な体なのに……」
ルーンベルが驚愕の表情を浮かべ冷や汗を流す。
そんなに驚かなくてもいいと思うが。
「乳か……! そんなに乳がいいんか!!」
「ちょ、やめなさい……あははは!」
「うふふ、小さいのが好みの人も居ますよぅ」
「なぜ私のは揉まないにゃ……?」
「だから落ち着け」
「スパンキングッ!? 尻はやめてください……」
「まあ、とって食うということはない。嫁はもう二人候補がいるしな」
「どうどう、イスラちゃん」
「ふーふー……二人ってファムちゃんとルーンベルですか? 魔族が人間と結婚……」
「魔族って言ってもこいつなんだかんだで優しいしね。ミーヤもメリーナも気が合うし」
「頬をつつくな」
「冥王をこいつ呼ばわり……!? ルーンベル騙されてません?」
「信じるも信じないもあなたの勝手だけど……どうしてこんな重要な話をしたと思う?」
不意に、ルーンベルが嫌らしい笑いをしてイスラに詰め寄る。
後ずさる彼女に、告げた。
「もうあんたは協力するしかないってことよ。逃がすつもりはないわ」
「な……!?」
「もし逃げたりしたら……分かっているわよね? ついうっかりオークの巣に投げ込まれちゃうかも……」
「あ、あわわ……」
「欲をかいた自業自得ね♪ イスラの魔法は役に立ちそうだし、向こうでは頑張ってもらうわ!」
俺達に協力を頼まなかったくせにイスラには脅迫まがいにいったな。
すぐに資料を手渡さなかったことを根にもっていたようだ。
「わかりましたよ。取って食うならもう少し早くヤられていたでしょうし。それで、これからどうするんです?」
「切り替えが早くて助かるわ。このまま『神霊の園』をぶっ潰す! ……で、いいかしら、ザガム」
「まあ、現状の確認後にそうなら手伝ってやる。問題は聖女だな。間違いなく抵抗してくるぞ」
俺が相手をすれば済むことだが、神聖な力でイザール達は弱体化させられている気がする。それでも人間に負ける要素はない。
ルーンベルが嘘をついているとも思えないのでひと暴れすればいいかというところか。
「……まあ、クラフィアート様はなんとかするわ。潜入の方が大変だから気を付けてね」
「正面から行けばいいではないか」
「いきなり!? ……とりあえずわたしの隠蔽魔法を使えば大丈夫でしょう。ルーンベルが逃げ出した道、あるのでしょう?」
「三年で塞がっていなければ、ね」
そんな話し合いをしていると、荷台からひょこっと寝ぼけまなこのファムが顔を出してきた。
「あー……ここ、どこですか? 聖女様は?」
「聖女は敵になった。今は『神霊の園』へ向かう途中だな」
「あ!? そ、そうでした……すみません、気づいたら記憶が……私、やられちゃったんですね……」
「大丈夫だ、お前のせいじゃない」
がっかりしているファムだがあれは俺のせいなのでなだめておく。
すると、
「まあ、めいお……スパンキンっ!? 尻はやめてください!?」
「悪さをすれば尻を叩くのは常識だろう?」
「そういやあの兄妹魔族にもやってたわね」
余計なことを言おうとしたのでイスラの尻を叩き、口をふさぐ。
悶絶しているイスラにルーンベルが説明をしているので、とりあえず任せよう。
「い、痛そう……あんまりいじめたらダメですよ?」
「いじめてなどいない。それより、この後のことだ――」
俺はファムにこれからのことを説明。
少なくとも、危険はあると思うが乗り気だったので特に問題なく話は終わる。
「邪悪な教団を倒すために、いざ行かん! ……初めて勇者っぽい感じがします!」
「ああ、それもそうかも? 修行ばかりだったものね」
「さっきはダメなところをお見せしましたが、イスラさん頑張りましょうね!」
「ああ、うん、そうねー。知らないって幸せねー」
すっかり青い顔をして項垂れているイスラとはしゃぐファム。
さて、施設を潰すこと自体は簡単だが、ルーンベル曰く相当数、女が囚われていると聞く。
巻き添えにしないよう、救出できるだろうか?
現地の様子をまずは伺ってみるか――
◆ ◇ ◆
――深夜
「まったく冗談じゃありませんよ! 冥王に魔族、それも一級品レベルの。そんなのと一緒にいたら命がいくつあっても足りません!」
隠蔽魔法を使い野営から抜け出したイスラが文句を呟きながら足を進める。
話は聞いた。理解した。故に逃走をはかった、というわけだ。
「……まあ、冥王はイケメンでしたから、ファムちゃんやルーンベルが嫁になりたいというのも頷けますが。ま、10万ルピは返還してもらいましたし、後は好きにしてくださいってかん、じ……あ、あれ? 体がうごか――」
「いい夜にゃね」
「うふふ……淫靡な気持ちにさせられますわぁ」
「……なぁ!?」
耳元で声が聞こえたと思った瞬間、赤と金色の双眸が両脇に浮かび上がり腰を抜かす。
見れば両腕をがっちり掴まれていたので動けなかったのだ。
「ど、どうして……声も聞こえなくなる私の<サイレンスエンド>が破られたんです!?」
「私の鼻を甘く見てはダメにゃ。普段は利きすぎるからカットしているけど、万倍の嗅覚を持っているにゃよ?」
「だ、誰にも言いふらしたりしませんから――」
「うふふ、もうあなたはザガム様から離れられないのよお♪ さ、戻りましょう」
「あああああああああああああああ!?」
イスラの叫びはサイレンスエンドにかき消されてしまうのだった。
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