最強魔族の俺が最弱の女勇者を鍛えるワケ ~魔王軍二番手の冥王は人間界でもSランク冒険者のようです~

八神 凪

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第六章:『神霊の園』

その107:【王】達の動き

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 「話とはなんだ?」
 
 その場に残った俺とユースリア。
 おおよそ【王】としての話だろうとは思うが、切り出さないので口火を切ってみた。すると、ようやく重い口を開くユースリア。

 「……大魔王様のことよ。あんた、あれだけやられてもまだ抵抗するつもりなの?」
 「そのことか。ああ、俺はやられてまま終わるつもりはない。俺次第で勝てるということを知った。だからこの話は続行だ」
 「なに言ってるのよ!? 確かに成長の余地があると思うけど、場所はバレてるのよ? ファムちゃんと倒すつもりだろうけど、あの子はまだ未熟。たまたま見逃されたけど、今度こそ殺されるかもしれないわ」

 ユースリアは続けて『悪いことは言わないから謝って魔族領で暮らすか、あの屋敷を出て誰も知らない土地へ行け』と言う。
 確かにファムやルーンベルが死ぬところを想像すると頭痛がするが、

 「俺が強くなってトップになればいいのだ。そのヒントももらった」
 「……さっき黒髪の女のこと? そんな夢をアテにするなんてどうかしているわよ!」
 「それを決めるのは俺だ。細かいところまではわからんが、感情と記憶を失っているらしい。取り戻すことで能力があがると聞いた」
 「それは……」

 俺の言葉にユースリアは口を噤む。
 
 「少し前から思っていたのだが、ユースリアはなにか知っているのではないか?」
 「いいいいいや、ししししし知らないわよ……」
 
 目が凄く泳いでいるな。
 冷や汗も出して、動揺が激しい。
 ……かと言って知っている情報を教えてくれるとは思えないが。

 「まあ、いい。とりあえず俺はヤツを倒す。お前はどうする? 戦いたくはないが、阻むなら容赦はしない」
 「……」

 俺の言葉に本気度を感じ取ったのか、ユースリアは黙って俺を睨みつけてくる。
 だが、すぐにため息を吐いてから首を振る。

 「はあ……言い出したら聞かないもんねザガムは。小さいころからずっとそう。誰に似たのかしら」
 「さあな。両親のどっちかに似ているのかもしれないが、知る由もない。そういえばメギストスはどこで俺を拾ったのか……そこに俺のルーツがあるのかもしれない」
 「さあね。それじゃ、私は魔族領に帰るわ」
 「そうか。……次に会ったら敵同士か?」
 「どうかしらね。ファムちゃん達によろしくね、いい子達だから死んじゃったら許さないから」

 ファム達に挨拶はしないようで、扉を出ると静かに立ち去って行った。
 あいつが敵になるのは避けたいが、あくまでも大魔王の部下であるユースリアが立ち塞がることは十分に考えられる。

 【王】達の中で俺は最強ではあったが、決して奴らが弱いわけではない。
 苦戦することもあるだろう。
 まあ【炎王】は除くが。

 どちらにせよメギストスに知られた以上、引き返すことはもう難しい。
 敵対する者には容赦しない、俺が唯一尊敬できる部分なのだからな――


 ◆ ◇ ◆

 
 ――大魔王城――

 「ふーんふふん、ふふふふふん♪」
 「ごきですね。いえ、ご機嫌ですね大魔王様」
 「あ、分かるかい? そうなんだよ、ザガムにお嫁さんが出来ててさ、なんか悔しいから胸に一撃お見舞いしてやったんだ」
 「それは……。メリーナが黙っていなかったのでは……」
 「ああ、大丈夫。嫁の勇者とシスター、それと貧乳な魔法使いしか居なかったからね。死にかけたと知ったら君の妹も激怒して襲ってきただろうね」

 さっさと城へ戻ったメギストスはサキュバスと共に通路を歩いて部屋へ戻ろうとしていた。
 
 実際には思ったよりも勇者の力が強いことに満足を得ていたので、次に会う時は夫婦そろって自分を倒せるほどの力をつけて来るに違いないと確信していた。
 
 「(ザガムが死んでいればそれは無いが、恐らく彼女は出てくるだろうし)」

 次に試練を与える必要があるかと、メギストスが考えていると――

 「大魔王様! ここでしたか!」
 「おや、【炎王】ヴァルカン。どうしたんだい、珍しいじゃないか」
 「ハッ……ザガムの行方を知らないかと思いまして……」
 「ああ、それなら――」

 と、メギストスは答えようとしてすぐに思い直す。
 忠誠心が強いヴァルカンを焚き付けてみるかと。
 
 ザガムには及ばないが、戦闘力を考えれば仲間を守りながら戦うのは難しいはず。
 特に炎を操るこの男ならば面白いことになるのではないか? と。

 「……うん、ザガムの居場所は判明したよ。それと目的も。あいつは勇者と一緒に私を倒すつもりらしいんだ」
 「なんですと……!? 野郎、自分ひとりで倒せないからと、つまらない手で謀反を企てたか……」
 「うんうん、それで悪いんだけど倒しに行ってくれるかい? ザガムと勇者。それにイザール達魔族も居るけど」
 「もちろんですとも! 裏切者は始末する必要があります。……それはそうと、その頬はどうされたのですか?」
 「ん? ああ、これは勇者にやられたんだ。私の10枚あった防御壁を全部割ってね。ザガム以外では久しぶりにいいのをもらったよ」

 その瞬間、喉を鳴らすヴァルカン。
 メギストスにダメージを通すのがどれだけ大変かを物語る。

 「一人じゃなくてもいいよ。【王】を連れて行けばいい」
 「はっ……」
 「【霊王】の兄妹は知っているだろうし、【樹王】メモリーあたりも搦め手を使えるから面白いと思うんだ。マルクスとユースリアでもいいけど」
 「あの二人はザガム寄り。手助けしてくれるとは思えません」
 「そうかい? ま、人選は任せるよ」

 そう言ってメギストスはヴァルカンの肩を叩いてすれ違う。
 
 すれ違いざまに見えたヴァルカンの表情は満面の笑みに満ちていた――

 「(大魔王様の養子だということで手加減していたが、どうやら殺していいらしいぞ、ザガム? くく……ようやく雪辱を果たせるというものだ)」
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