最強魔族の俺が最弱の女勇者を鍛えるワケ ~魔王軍二番手の冥王は人間界でもSランク冒険者のようです~

八神 凪

文字の大きさ
111 / 155
第六章:『神霊の園』

その108:蓋を開けてみれば

しおりを挟む

 「え? ユースリアさん帰ったんですか?」
 「ああ、俺と話し終えた後に発った」
 「……大魔王にさらわれないでしょうか……」
 「ま、ユースリアさんなら大丈夫でしょ。それより私達よ」

 ファムが心配そうにするが、ルーンベルがフォローをする。
 あいつはユースリアが【王】であることを知っているから、問題としていないのだろう。
 確かにどちらかと言えば『俺達の方』が危険度が高い。

 「……」
 「あれ? ほっかむりなんかしてどこに行くんですかイスラさん?」
 「ぎくぅ!? は、離してファムちゃん! あんた達とはここでお別れです! 大魔王と戦うだなんてとんでもない! この施設の奪還は終わりました、もういいでしょう……わたしを自由にしてください……」
 「まあ、漏らすくらいだし……」
 「シャラップ!? 記憶から消しなさい!」
 「ふむ。まあ、俺達のことを言いふらさなければ解放しても構わんぞ?」
 
 俺が顎に手を当ててそう言うと、イスラは満面の笑みで手を握ってきた。
 だが、この言葉にはもちろん後に続くものがある。

 「言いふらすと体がバラバラになる呪いをかけて放逐するがな。ギルドでバラバラになると他の人間の迷惑になるが――」
 「どこまでも着いていきますザガム様ぁ!!」
 「そうか」

 どうやらついてくるらしい。そこでファムが笑いだす。

 「あはは、ザガムさんが冗談を言うのは珍しいですね!」
 「いや、冗談じゃないぞ?」
 「逆にタチが悪いけど……」

 ため息を吐きながら苦笑するルーンベル。
 俺は今後のことを踏まえて彼女に声をかける。
 もうここに滞在して七日、そろそろ移動してもいい時期だと判断したからだ。

 「ルーンベル、『神霊の園』はどうだ? お前やメリーナ達が居なくても大丈夫そうか?」
 「あ、そうね。クラフィアート様に話をしに行きましょうか」
 「そういえばメリーナやミーヤ達も休ませてやらないとな」
 「そういうところは気が利くんですねえ……」

 イスラが呆れたように口を開いていたが、部下は大切にしないといけないからな。
 一人でなんでも出来るように鍛えられたがやはり限界はある。
 この先、メギストスと戦うならなおのことだ。

 それはともかく、俺達はイザールやメリーナ、ミーヤと合流。

 「ああ……メリーナお姉さま、行ってしまうのですね……」
 「是非わたしも連れて行ってください!」

 「ミーヤさんのかっこよさに憧れます!!」
 「素敵……」

 「大人のおじさま……好み、です!」

 「うふふ、わたしはザガム様のモノだからねぇ♪」
 「かっこいいなんて照れるにゃあ」
 「はっはっは、わたくしめのような老いぼれにご冗談を。もっといい人が見つかりますよ」

 大人気だった。

 「ここにルックネスさんが居たら女の子の大半はそっちに行ったかもしれませんね」
 「なに? イケメン?」
 「イスラさんも帰れば会えますよ! ザガムさんほどじゃないですけどかっこいいです!」
 「うーん……ファムはザガム以外の男は芋と同じ扱いか。というかありがとうメリーナ、色々手伝ってくれて」
 「大丈夫ですよぉ♪ ……ザガム様の手駒にするのにちょうどい……いえ、なんでもありませぇん♪」
 「本当に大丈夫なの……?」

 大半は元気になったらしい聖女見習いたちをその場に置き、俺達は聖女の下へ。
 そういえばあのヘッベルとかいうやつがどうなったか気にしてなかったな。
 そんなことを考えていると、聖女の居る部屋へと到着した。

 「クラフィアート様、今よろしいですか?」
 「どうぞ!」
 
 元気な返答が返って来て、ルーンベルは扉を開ける。
 中へ入るとそこには、お茶を嗜む聖女が柔らかに微笑んでいた。

 「すみませんクラフィアート様、休憩されていましたか」
 「大丈夫ですよ。丁度、見習いの子達のお話を聞いていたところですから。それで私になにか?」
 「ああ、そろそろここも落ち着いたようだし帰ろうと思ってな」
 「え!?」

 俺の言葉に椅子から転げ落ちる。
 そんなに驚くことだろうか?

 「だってまだザガム様と子作りをしておりませんよ!? 逞しいナニで私の――」
 「わー!? なに言い出すんですか!? ザガムさんはそういうの結婚するまでしないって言ってました! ちなみに私とルーンベルさんがお嫁さんです」
 「あ、そうなんですね。では結婚しましょうザガム様!」
 「どうしてそうなる。お前は聖女だろうが、国を支えなくてどうする」
 「ザガム様の竿を支える方が……」
 「嫁は間に合っている。悪いが結婚するつもりはない」
 「うう……ならルーンベルさん、聖女代わって……」
 「軽いなあ……」

 なんかよく分からんが聖女を落ち着かせ、踏みとどまってくれた。
 曰く、ヴァラキオンに憑かれていた時に俺のことを目を通して全部見ていて惚れたのだとのこと。

 「うう……早く聖女を交代したい……」
 「ならば早く育てることだな。女性だけで回せばそれなりに問題は減るだろう。もしくはこの施設を破棄して城下町に作るとかだな」
 「コホン……そうですね、それについては進めています。そもそも私が魔族に操られさえしなければこんなことにはならなかったのですが……」

 不意に真面目な表情を作り、聖女は俯く。
 そういえばあいつのこと、もう少し思い出していないか聞いてみるか。

 「ヴァラキオンは魔族らしいが、大魔王も見たことがないと言っていた。あいつはどこから来たんだ?」
 「そのあたりは警戒してかなにも話していませんでしたね。ただ『復活』のためには女性が必要ということと、極北を気にしていたようですが」
 「極北……?」

 ファムが不思議そうに呟くが、それも無理はない。
 極北は人の住まない荒れ果てた大地。
 実態は不明で、俺達のような魔族でも近づくことが無いからだ。
 そもそも、海も荒れていて空を飛ぶ以外に辿り着く方法が無いので、人間はなおのこと見ることのない大地だ。

 「そこから来たとでも言うのか……?」
 「わかりません。ただ、ヘッベルがどこかへ女性を売っていたらしいですが、消息は不明なんです。奴隷商人に売ったなら証明書があるはずですが」
 「そういえばルーンベルさんの時もそうでしたね」
 「ええ」
 「ヘッベルは人間なのか?」

 少し気になることを聞いてみたところ、聖女はにやりと笑って言う。

 「ええ、彼は人間でしたね。他の男性と一緒におちん――」
 「はいストップ!? 拷問にかけたんですねわかります! ……ってことはそのヴァラキオンってやつが全部知っていたってわけなので。なんで殺したの?」
 「……メギストスのやつが殺した。あいつはなにかを知っている口ぶりだった」
 「ということはやっぱり大魔王と戦うことが近道なんですかねえ……」

 イスラが諦めたように言うが、それしかない。
 結局、この『神霊の園』を魔族であるヤツが占拠した理由が不明のまま。
 女が必要らしいが、どうしてなのか? 仲間は居るのか? そこが気になっている。
 城下町に建設を勧めるのもそれが一つで、もしヴァラキオンに味方が居ればまたこの施設を掌握する可能性が高いからだ。

 「まあ、そこは聖女である私がなんとかします。もし襲撃などがあれば連絡させていただきたいので、居場所だけ教えてくださいね」
 「……直接来たりしないですよね?」
 「……?」

 ファムが怪しいと目を向けるが、聖女はニコニコと笑顔のまま首を傾げていた。
 
 まあ、そういう訳でこの『神霊の園』を巡る戦いは終わった。
 ルーンベルの暴走から始まった事件だったが、思いの外、進展と謎が残る、後味の悪いものとなった。

 「帰りましょうか、ザガムさん!」
 「……そうだな」

 黒髪の女と大魔王は知り合いのようだが、やはり直接聞くしかないか。
 後ろ髪惹かれる思いでグェラ神聖国を後にした。

 聖女が大魔王と戦う際は協力するという言葉を残して。
しおりを挟む
感想 304

あなたにおすすめの小説

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

理想の男性(ヒト)は、お祖父さま

たつみ
恋愛
月代結奈は、ある日突然、見知らぬ場所に立っていた。 そこで行われていたのは「正妃選びの儀」正妃に側室? 王太子はまったく好みじゃない。 彼女は「これは夢だ」と思い、とっとと「正妃」を辞退してその場から去る。 彼女が思いこんだ「夢設定」の流れの中、帰った屋敷は超アウェイ。 そんな中、現れたまさしく「理想の男性」なんと、それは彼女のお祖父さまだった! 彼女を正妃にするのを諦めない王太子と側近魔術師サイラスの企み。 そんな2人から彼女守ろうとする理想の男性、お祖父さま。 恋愛よりも家族愛を優先する彼女の日常に否応なく訪れる試練。 この世界で彼女がくだす決断と、肝心な恋愛の結末は?  ◇◇◇◇◇設定はあくまでも「貴族風」なので、現実の貴族社会などとは異なります。 本物の貴族社会ではこんなこと通用しない、ということも多々あります。 R-Kingdom_1 他サイトでも掲載しています。

~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる

僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。 スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。 だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。 それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。 色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。 しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。 ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。 一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。 土曜日以外は毎日投稿してます。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界翻訳者の想定外な日々 ~静かに読書生活を送る筈が何故か家がハーレム化し金持ちになったあげく黒覆面の最強怪傑となってしまった~

於田縫紀
ファンタジー
 図書館の奥である本に出合った時、俺は思い出す。『そうだ、俺はかつて日本人だった』と。  その本をつい翻訳してしまった事がきっかけで俺の人生設計は狂い始める。気がつけば美少女3人に囲まれつつ仕事に追われる毎日。そして時々俺は悩む。本当に俺はこんな暮らしをしてていいのだろうかと。ハーレム状態なのだろうか。単に便利に使われているだけなのだろうかと。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

ペットたちと一緒に異世界へ転生!?魔法を覚えて、皆とのんびり過ごしたい。

千晶もーこ
ファンタジー
疲労で亡くなってしまった和菓。 気付いたら、異世界に転生していた。 なんと、そこには前世で飼っていた犬、猫、インコもいた!? 物語のような魔法も覚えたいけど、一番は皆で楽しくのんびり過ごすのが目標です! ※この話は小説家になろう様へも掲載しています

処理中です...