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第七章:荒れる王都
その109:屋敷へ帰ろう
しおりを挟む『神霊の園』を救った報酬として金をいくらかもらった。
最後まで自分の体も報酬にと言っていた聖女を気絶させ、あの場を後にした。
現在はあの野盗達を捕まえた街道を走っている。
「なんだかよくわかりませんでしたが、解決して良かったですね」
「そうね。帰ったらファムとザガムのランクアップ祝いをしないと」
「そういえばそんな話もあったな……」
俺は不可抗力だがな。
それはともかく、ファムの言う通りなにも分からないまま立ち去ったのは心残りではある。だが、メギストスの襲来に備えなければならないので長居するわけにもいかない。
変わったことと言えばルーンベルは聖女見習いから聖女補佐に肩書きが変わったらしい。
少し話が出ていたが能力的には聖女になれる器なので、本来なら残って欲しかったと言っていた。
外典についてはそのまま持っていていいと言われたそうだが、アレの詳細は教えてくれなかったな。
ファムはメギストスに与えた一撃から少し能力が高くなった気がするとのこと。
イザールが言うには『わざとそう仕向けた』ようにも見えたと。
メギストスは強すぎて戦う相手が居ないから俺達を焚きつけているのだろうか?
俺とあの黒髪の女のことも知っているようだし、狙いが分らん。
なんにせよファムの能力が上がったなら屋敷に戻り次第確認してみたいものだ。
それと結局ついてきたメンバーが一人。
「そういえばイスラ、お前はずっと一人旅なのか?」
「ひゃい!? えへへ……あたしゃしがない魔法使い……ザガム様に話すことなどございませんや……」
「早く元に戻れ」
「ほっぺたが伸びる!? ……ハッ! わたしは一体……」
「うわぁ痛そう」
目に色が無く、なにやら親指の爪を噛んでぶつぶつ呟くイスラの両頬を引っ張ると、ようやく正気に戻る。
「知らん。お前はなにか目的があって旅をしているのか?」
「わたしですか? そうですねえ、10歳の時に親から逃げてそれからいけ好かない師匠に弟子入り。死に別れてからは一人ですね」
「亡くなったんですか?」
「まあいい歳でしたからね。大往生ですよ。目的は特にありませんね、金持ちのボンボンをこの魅惑のぼでーで誘惑して金持ちになりたいくらいで」
「金持ちが被っているし、魅惑ではないと思う……ちょ、止めなさい!?」
「このおっぱいお化けが! みんなそれが好きやと思うなよ! 大きいのがそんなにええんか!?」
「うるさいぞ」
「にゅう!?」
いきなりルーンベルに襲い掛かったので落ち浮かせるためチョップを食らわす。
とりあえず動かなくなったが、こいつもなかなかハードな人生を送っているようだ。
「なんでご両親から逃げて来たんですか?」
「いたた……いわゆる毒親ってやつですよ。兄が一人いるんですけど、そっちばかりにかまけて、わたしを売り飛ばそうかなどという位にはクソです」
「酷いです……」
「ファムが悲しむ必要はありませんよ。これでも楽しく生きていますからね。でも、ありがとうございます」
笑顔でファムの頭を撫でるイスラ。
おかしなやつだが、親のように性根が腐らなかったようだ。それにきちんと師匠に教わったからこそ、色々な魔法が使えるのだろう。
「ふむ、ついてくるなら衣食住は提供できる。金は報酬であちこちから貰っているし、依頼で増やすこともできるだろう」
「ザガム様、一生ついて行きます」
「うむ」
「イスラを手名付けたところでアレだけど帰ったらどうするの?」
膝をついて忠誠を誓うイスラをよそに、ルーンベルが口を開く。
戻ったら、か。
まずしなければならないことはあの屋敷を引き払うことだな。
訓練をするにしても居場所を突き止められているのは困る。あいつは気まぐれだ、いつ牙を剝いて襲ってくるか分からない。
ルックネスが居ればこのまま別の土地へ行っても良いとは思うが、それも不義理というものだろ。【霊王】の件は記憶に新しいしな。
「とりあえず国王に屋敷を引き払うように言ってから新しい土地へ行こう。少しずつ魔族領へ近づくためにな」
「オッケー。それじゃ私はちょっと休むわ……ふあ……最近忙しかったからね……」
「ああ。毛布を使え」
「ありがと」
俺が収納魔法から毛布を取り出してルーンベルにやると、イスラが驚いた顔で言う。
「うお!? 収納魔法を使えるんですか!?」
「まあな」
「あ、ザガムさんの得意気な顔初めて見ました!」
「得意気でいいですよ、この魔法って空間把握ってのができないと無理ですからね。流石は、というところですか」
「ザガム様はほぼ最強だからにゃあ」
ミーヤが御者台から振り返る。
とりあえず冥王であることを伏せてくれているのは助かるが、そろそろファムに打ち明けておくのもいいかもしれないな、と、ふと思う。
そんなファムが不意に表情を曇らせて口を開いた。
「……私は見ていないですけど、極北を口にしていた魔族が気になりますね」
「ヴァラキオンは確かにそうだな。しかしあれもメギストスが殺したので、口を封じられた」
「【王】っていう6人の内の一人じゃないんです?」
「あんなやつは居なかった……はずだ」
今の【王】は結構前から居る。少なくとも俺が入った150年以内では……150年……だったか? それくらい顔ぶれが変わっていないので確実に知らない。
「殺す必要があったんでしょうか? 口封じをするならザガムさんや私達を殺した方が早いと思いますけど」
「気まぐれだからな。昔、メギストスにいらんことをしたとかそう言う理由でもあいつは殺る」
「そ、そうなんですね……やっぱり怖いなあ大魔王。よく助けてくれたなあ」
「ほら、わたし達可愛いですから」
「否定はできんな」
「あれ!? ザガムさんがそんなことを……も、もう一回お願いします!」
口が滑ったか。
メギストスなら女を手に入れるため生かしておくことはしそうだと思っただけなのだが。
まあ、喜んでいるならいいか。
俺達はやがて馴染んだ町へと戻っていく。謎を残したまま……
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