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第七章:荒れる王都
その110:謎は謎のままで
しおりを挟む「ふあー! やっぱりお家が落ち着きますね!」
「ああ。メリーナ、帰ったばかりで悪いがみんなにお茶を出してくれ」
「はぁい♪」
「でか……屋敷でか……玉の輿……いや、しかし……」
「ちょっと入り口で固まるの止めてもらえる?」
道中、魔物と少し戦ったが結局大した問題も無くブライネル王国へと戻って来た。
戻ったことをギルドに報告。
クーリは長い期間帰ってこなかったので驚いていたが、ルーンベルと一緒だったことでホッとした様子だった。
スパイクはメリーナが帰って来たことに喜んでいた。
なにがあったかはとりあえず話さなかったが後で登城するので声をかけるようにしている。
「今日は休むんですか?」
「ああ、流石に長旅で神経も使っただろう。ゆっくり風呂にでも入ったらどうだ?」
「ザガムさんはどうするんです?」
「俺は城へ向かう。この屋敷を放棄しないといけないからな」
「ええ!? これを捨てるなんて勿体ない!」
イスラが柱に抱き着きながら驚くが、ファムが困った顔で言う。
「私達、これから旅に出ないといけませんからね。まあ、大魔王さんを倒したらまたお金がもらえますよ」
「誰からもらえるんですか……誰も退治を頼んでいないんですよ?」
「あ、それもそっか」
ファムが舌を出しながら笑い、イスラが口を尖らせる。
そこでルーンベルが口を開いた。
「お金に変えてくれないかしら」
「真面目な顔でなにを言いだすんだお前は。どちらかと言えば俺が迷惑をかけていたからな、金をとられないだけマシだと思うべきだろう」
「【霊王】でしたっけ? 私、一撃でやられちゃったからよく覚えていないんですけど、みんなで戦って頑張りましたもんね」
「ですみゃ! ファム様も次はきっと勝てますにゃ」
「えへへ」
「お茶が入りましたよぉ。おやつはグェラ神聖国で買ったケーキです」
ミーヤが手放しで褒め、ファムが照れ笑いをしながら頭を掻く。
運ばれてきたお茶と菓子に舌鼓をうちながら、女性陣は『神霊の園』であったことを話していた。
男が手を出すのは良くないと思い、俺が殆んど関わっていないのでなかなか新鮮である。
「やっぱりファムの一撃は凄かったと思うわ。イスラなんてもらし――」
「やめてぇぇぇぇ!?」
「それはそれで見たかったですねぇ♪」
「メリーナさんは女の子になにをしたかザガムさんに話してあげましょうか?」
「うふふ、イスラさんはなにを言っているのかしらぁ?」
そんな調子で盛り上がる中、俺はお茶を飲み干してから席を立つ。
そろそろギルドへ行く時間だ。
「明日の昼間はファムの力を見てみるか。では、俺は少し出てくるぞ」
「一緒に行きますよ?」
「いや、俺だけでいい。スパイクも行くしな。ゆっくりしてくれ」
「わかりました! それじゃトランプやりましょうトランプ!!」
「フフフ、私に勝てるかしら?」
「もうスタンバってる!?」
女性陣の騒ぎを後にし廊下へ出ると、イザールが頭を下げて待っていた。
「どうした?」
「皆さまが部屋に残ったので、お待ちしておりました。『神霊の園』ではまるでお役に立てず申し訳ございませんでした……」
「そんなことか。お前の立場を考えると仕方がないことだろう。ファムたちの前で真の姿を出すわけにもいかないしな」
「それでも、ファム様達を退避させてから抗う術はあったかと」
「いや、あいつの目的はファムの力がどの程度か確認したかったようだ。下手に抵抗していたらお前は殺されていたかもしれない」
俺はすれ違いざまにイザールの肩に手を置いて気にするなと言ってやる。
するとイザールは礼を言いつつ、俺に振り返った。
「……あのヴァラキオンという名の魔族、どこかで見た覚えがあります」
「なに? 極北と関係があるらしいが、魔族領に居たのか?」
「そこまでは……なにぶん昔のことでして。調べるため少し魔族領へ戻ってもよろしいでしょうか?」
「ふむ……とりあえず旅に出るのにお前の力は必要だ。少し考えさせてくれ」
「承知しました。お気をつけて」
確かにイザールは古い魔族の一人なので、ヴァラキオンが本当に魔族であれば知っていてもおかしくはない。
しかし、ヤツはどこか……なにか違う気がする。
「……そういえばヴァラキオンは俺を人間だと言い張っていたな」
あれもどういうことか聞きたかったが、メギストスが殺したせいで台無しだ。
メギストス。あいつが全ての鍵を握っているのだろうか?
考えたくはないが、全てあいつの手の内……そんな気もしてくる。
「よう、ザガム。どうした、渋い顔をして」
「む、スパイクか。いや、なんでもない待たせたか?」
門を出ると、ちょうどついたというスパイクと合流し歩いていく。
「お前もあんな顔をするんだな」
「どういうことだ?」
「渋い顔だよ。お前、会った時はずーっと仏頂面で、変化が全然分からなかったからな」
「そうなのか? 自分じゃわからんものだ」
「そんなもんかね。そういやBランクに上がったらしいな」
「ふん、迷惑な話だ」
「普通は喜ぶんだがな……」
俺とスパイクはそんなやり取りをしながら登城する。
メギストスの放った脅威がすぐそばに居ることに気づかず――
◆ ◇ ◆
「ここか……」
「メギストス様の話だとこの屋敷らしいね。どうするの?」
「そりゃお前、ザガムを倒しに来たんだから戦うに決まってるだろうが!」
「はいはい。どうせ返り討ちでしょ」
「メモリー、お前から倒してやろうか?」
「炎が得意だからっていつまでも上だと思うの?」
――ここはザガムの屋敷前。そこでは【炎王】ヴァルカンと【樹王】メモリーが立って話をしていた。
メギストスからの命を受け、すぐに、文字通り飛んできたのだ。
【王】同士は「自分が一番」という自負があるので、こういう光景は珍しくない。
一触即発、そう思われた瞬間――
「あれ? お兄さんとお姉さん、ザガムお兄さんのお屋敷になにか御用ですか?」
「おう、なかなか強そうな男じゃのう」
「なんだ? ガキか。というか、見る目があるな爺さん」
「あたし達はザガムの友人でね、お嬢ちゃんは?」
「あ、そうなんだ! えっとねわたしはコギーって言うの。出かけていたみんなが帰って来たから遊びに来たの」
「そうなのね。じゃあ、わたし達もお邪魔させてもらおうかしらね」
「お友達なら大歓迎だと思うよ! こんにちはー-!」
コギーが大声で門の外から声をかけると、ミーヤがすぐに駆け付けてくるのが見えた。
「コギーちゃんにクレフ老、待ってたにゃ! ……って、げっ!? なんでヴァルカン様とメモリー様がいるんにゃ!?」
「お、ミーヤか。ザガムはどこだ、ぶっ殺してやりにきた」
「あたしは暇つぶしー」
「おおう……最悪にゃ……し、しかし、今は猫の手も借りたいところ……」
「猫はおめえだろ」
「それでも手が足りないにゃ! どうせ追い返す力もないから招き入れるにゃ」
「猫だけにかしら」
「つべこべ言わずに来るにゃ! もしかすると救世主かもしれないにゃ!」
「お、おう?」
慌てふためくミーヤに、気圧されながらヴァルカンとメモリーは顔を見合わせて屋敷へと入っていくのだった。
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