最強魔族の俺が最弱の女勇者を鍛えるワケ ~魔王軍二番手の冥王は人間界でもSランク冒険者のようです~

八神 凪

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第七章:荒れる王都

その111:甘く見るな

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 「おお、スパイク殿どうなされました?」
 「ザガムが陛下と話があるとのことで、謁見の申し出に来た」
 「承知しました。今、問い合わせに行きます」

 門番の一人が中に居る兵士に声をかけて確認に向かうのを静かに見送る。
 久しぶりにうるさい娘たちが居ないので本当に静かだ。
 スパイクと無言で待つこと10分。

 「お待たせしました、中へ」
 「助かる」

 俺達は案内の後をついていき、見慣れた城の中へと入っていく。ファムのことで乗り込んだのが懐かしく思えるな。

 そんなことを考えているうちに謁見の間に到着。
 中央まで進むと、国王が口を開く。

 「よく来たな、ザガムにスパイクよ。謁見で良かったのか? 応接室でも構わなかったのだぞ」
 「いや、手短に話すつもりだからこれでいい。事情を知っているお前達には先に言っておこうと思ってな」
 「一体なんだ?」
 「近いうちにこの町を出るつもりだ。だから屋敷を返却する」
 「「なに!?」」

 国王とスパイクが同時に声を上げ、すぐにスパイクが俺の肩に手を置いて尋ねてくる。

 「ど、どういうことだ? 屋敷もあるしいいところだろう? メリーナさんはどうなる!?」
 「ん? ウチのメイドだからな、ついてくるに決まっているだろう」
 「馬鹿な!? お前、俺が彼女を好きなのを知っているのにこの仕打ちか!?」
 「ん? そうなのか?」
 「知らなかった……!?」
 
 膝をつくスパイクをよそに、国王は些か冷静のようで、玉座に座り直しながら俺に目を向けてきた。

 「……理由はなんだ? 昨日まで長期にわたり屋敷を空けていたようだがそれと関係があるのか? それとも先日の【霊王】とやらか?」
 「両方だ」

 俺は『神霊の園』であった出来事を話すことにした。
 ヴァラキオンという謎の魔族、それに大魔王メギストスが強襲してきたことなどを。
 流石に大魔王が直接仕掛けてくるとは思っていなかったようで、三人は硬直して俺の話を聞いていた。

 「――というわけで俺達は旅に出る。修行をしながら魔族領を目指すことに決めたのだ」
 「むう……」
 「なに、問題のある人間が町から居なくなるのは願っても無いことだろう? それに大魔王メギストスがこの町を攻撃し始めたら一瞬で終わる。だが、狙いである俺達が居なくなれば襲撃されることもあるまい」

 むしろ残っている方が危ないと俺は考えている。
 一度ファムと出ようとした時と同じだ。

 腹いせに焼き払う……ということはあるかもしれないがメギストスはそのあたり無差別殺人は行わない。やるとすれば前大魔王くらいなものだろう。

 ……ん? そういえば前の大魔王……どんなやつだったか?

 「大丈夫なのか?」
 「大魔王は人間をなるべく攻撃しないようにしている。【霊王】の時もファムに攻撃した時以外は本気では無かったしな」
 「あの時か……」
 「そういうわけだから折角用意してもらったが引き払うことにする。出発時期はまた言う」
 「ああ……メリーナさん……」

 スパイクを無視し、俺が踵を返すとそこには――

 「やあ、帰って来たんだねザガム」
 「エイターか。聞いていたのか?」
 「うん。陛下、申し訳ありません」
 「構わん。なにか火急の用か?」
 「まあ……彼がこの町を出て行くのは勿体ないですし、ね? 【冥王】ザガム」

 ……!
 こいつ、知っているのか?

 「……なんのことだ?」
 「隠さなくてもいいよ、名前と強さ、それと【霊王】との会話を聞いていたんだ。悪いね」

 ニコニコしながら経緯を口にする。
 あの時どこかに居たのか……伊達に騎士団を率いているだけのことはあるか。
 それにしてもバレていたとはな。それに逆に知っていて放置していたのも驚きだ。

 「どうして黙って放置していた?」
 「ああ、それは私がそう言ったんだ。泳がせておく、なんて小難しいことじゃなくて単純に戦力になるからさ」
 「戦力?」
 
 俺の問いにエイターは頷く。

 「私の見立てでは【王】クラスの魔族がまた来ると思っている。その時、君が居なければ壊滅するだろう?」
 「しかし、俺がいなければ……」
 「この前の【霊王】のように、ファムさんを殺しかけたりするかもしれないだろ? 大魔王にその気が無くても、個人は違う」
 「……」

 確かにその可能性は捨てきれないが、どちらかと言えば大魔王が襲ってくることの方が危険度が高そうな気がする。

 「もし他の【王】、それも大魔王が来たらどうする? メギストスに関しては俺でもまだ勝てないぞ」
 「『まだ』だろう? そのうち倒すつもりならいいんじゃないか?」
 「むう……あまり巻き込むわけにもいくまい」
 「はっはっは、魔族なのに面白いね君は。……あまり人間を甘く見るんじゃないぜ? 一人の力は弱いかもしれないけど、力を合わせれば勝てなくはないはずさ。それに加えて君も居ればね」
 「いいのか?」

 俺が国王に目を向けて尋ねると、

 「構わん。移動してあちこち戦火を広げられても困るしのう。それにグェラ神聖国と繋がりもできて、聖女を味方につけているのだろう? 大魔王は脅威だ、もし人間に牙を剝くようなら一丸となって戦わねばならんからな」
 「……ええ、昔の大魔王はそれこそ残虐だったと聞きますしな」
 「ふん、大魔王を倒したら俺が人間の領地に魔族を住まわせる。いい結果にはならんかもしれんぞ」
 
 俺がそう言うと四人は目を見合わせた後、笑い出す。

 「お前が支配するのか? ふはは、お前みたいな優しい魔族には無理だろう」
 「ですなあ……いや、結構いい政治をするかもしれんな」
 「なんだと……?」

 怯みもしなかった。
 なぜだ……

 「くく……まあ、そういうことで私たちは協力を惜しまないよ。なにか必要なことがあれば遠慮なく言ってくれ。逆に、兵士達を鍛えて欲しい気もするけど」
 「ふむ。承知した。一応、ファム達にも聞いてみないといけないが」
 「ま、どうしても出て行く場合は止めないけどね」
 「出て行くなよザガムう」
 「うるさいぞスパイク。……話はこれで終わりだ、時間を取らせたな」
 「良い。しかしお前も変わった男よなあ」

 去り際に国王が苦笑していることに少々苛立ったが、大魔王と戦うという心意気に免じて許してやるとするか。

 スパイクはそのまま残るとのことなので俺は一人で屋敷へと戻る。
 屋敷に近づいたその時、俺は聞き覚えのある声を聞いた。

 「うおおおおお! ぶっ殺してやるぅぅぅ!!」
 「……! 今のは【炎王】ヴァルカンの声か! もう動き出していたとは……迂闊だった――」

 俺は急いで屋敷内部へ飛び込んだ!
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