119 / 155
第七章:荒れる王都
その116:狼煙
しおりを挟む「があははは! 俺達はいい時に来たな!」
「そうね。あ、ルックネス、私は果実酒でね」
「……なんか増えてるし……」
「あいつも強そうだな、おい……」
さも当然のように鎮座しているヴァルカンとメモリーに、ルガードやマイラが呆れた顔で呟く。
「すまないな、古くからの友人が訪ねて来たのでそのまま混ぜた」
「友人が居たことに驚きだけど……。ていうか、また呼んでくれたけどいいのかしら?」
「まあ、この町で名前と顔を知っている人間は少ない。宴を開くなら多い方がいいだろう」
「なにげに友人枠で招待されているのは嬉しいですねー」
「お料理、一緒に運びますよルックネス様~♪」
「はは、お客様にそれはさせられませんよ」
レティが手を合わせて微笑む中、ニコラは相変わらずルックネスに言い寄っていた。
他には昨日も居たコギーとクリフに、コギーの父、スパイク、クーリというまあ、ある意味いつものメンバーだ。
「お兄さん強そうですけど、甲斐性は無さそうですよねえ、イスラさん」
「食い物と酒でお金を使っちゃいそうなのは認めますよ、クーリさん」
「いきなり失礼な人間達だなおい!? ガキの方がしっかりしてんぞ……」
「コギーだよヴァルカンにいちゃん!」
「あ、あのメリーナさん、なにかお手伝いをしましょうかっ!」
「うふふ、お客さまは座っていてくださいねぇ?」
相変わらずの光景にヴァルカンとメモリーが加わり賑やかさが増したな。
まあ、たまの祝いだそれも悪くないだろう。
この宴が終われば――
「はいはい、皆さんお静かに! これで全員みたいですので、乾杯の挨拶をしますよー。コホン……それでは、ザガムさんのBランクとファムちゃんのEランク昇格を祝して――」
「かんぱーい!!」
「うあああああ! ルーンベルさんが奪ったぁぁぁぁぁ!?」
「長いのよ! 早く飲みたいの、私は!」
「おお、これ美味いヤツじゃねぇか!?」
「俺にもくれよ、シスターの姉ちゃん!」
「まだありますよ?」
「すごっ!? 一本10万はするんだけど!?」
乾杯の音頭が取られた後、一瞬だけ静かになったがすぐに騒然となる。
やはり呼んでいたエイターが持ってきた酒に食いつく。
「後で遊ぼうねー! 今日はいっぱい人がいるからたのしそー!」
「おう、今日は泣かせてやる!」
不敵に笑い合うヴァルカンとコギーを見ながら俺も酒を一口。
「……なんでコギーはヴァルカンに懐くんだろうな?」
「ザガムさんが居ない時に、遊んでいた時に、本気で悔しがるヴァルカンさんが面白かったみたいですよ」
「ファムか。そんなもので懐くか? 顔怖いぞ」
「あはは、ザガムさんは表情とかあんまり変わらないから珍しいんじゃないですか?」
珍獣扱いか。
俺はそう思いながら酒を飲み干すと、ファムが笑ながら俺に言う。
「ふふ、楽しいですね。ザガムさんと出会ったころはこんなに賑やかになるとはおもいませんでしたもん」
「そうだな」
「ルーンベルさんが居て、イザールさんやメリーナさん、ユースリアさん……いろんな人がザガムさんのところに集まって賑やかになりましたよ! これで大魔王を倒したら、結婚して楽しく過ごしたいです」
そう言って俺の隣に座り、肩に頭を預けてくるファム。
少し驚いて顔を向けると、にこりと微笑み、俺はその笑顔に胸がどきりとなった。
「……ありがとうございますザガムさん。あの時、助けて貰えたのは本当に幸運でした。私はザガムさんのためならなんでもしますよ!」
「……いや、勇者を探していたんだから助けるのは当然だろう」
「ふふ、あの時は私が勇者だと知らないで助けてくれましたよ?」
そして次に胸がうずく。
確かにそうだ。だが、どうあれ、俺はこいつを利用するため引き入れた。
ファムに本当のことを言うべき時が来たのかもしれない。
……俺は、許されるだろうか。
「ずっと一緒に居てくださいね、ザガムさん」
「……」
俺はその言葉に答えることが、出来なかった。
◆ ◇ ◆
――ブライネル王国 国境付近――
「今日も平和だねっと……」
「しかしキナ臭い噂もあるぜ、オルソネリア公国とヒズリーン帝国がブライネル王国を狙ってるらしいしな」
「オルソネリア公国はフェイクだろ? 来るとすりゃ――」
その時、月が翳った。
国境の砦壁を守る兵士二人が首を上に向けると、そこには翼竜……ワイバーンの群れが見え、息を飲む。
「ワイバーン!?」
「あの数が野良とは思えない……伝令を出せ! これは――」
「うおおおお!?」
直後、降ってくる巨大な岩石。
砦を直撃し、兵士達が逃げ惑う。
そしてさらに悪夢は続く。
「みんなを起こせ! ヒズリーン帝国だ! あいつら仕掛けてきやがった!」
「射れ! ……ぐあ!?」
「ワイバーンを近づけさせるな! 徹底抗戦ー! ぐあああ!?」
地上の門にも敵兵が取りつき、攻勢に出るブライネル王国の兵士達。
しかし、空から襲い来るワイバーンの火球や背に乗った敵の槍が襲い掛かり、手を焼いていた。
「陛下に必ずお伝えしろ、行け!」
「も、持ちこたえてくれよ! すまん、みんな!」
そんな中、敵が攻めてきたことを知らせるため伝令が数人、バラバラに散りながら城へ向かう。補足された場合、一網打尽にされるのを避けるために。
「戦の準備をしている噂は本当だったか……単独の部隊程度なら砦がそう簡単に落ちるとは思えんが、城はここから三日の距離……ワイバーンが先行したら伝える前に町が火の海になる」
兵士達は焦りながら馬を走らせる。
しかし、願いは空しく――
◆ ◇ ◆
――宴から二日が経った。
相変わらず食っちゃ寝するヴァルカンとメモリー。
そろそろ叩きだすかと思っていると、
「うおおおお……! 勝った! 俺はコギーに勝ったぞっ」
「あー! 負けちゃった……。うん、頑張ったねヴァルカン兄ちゃん!」
「くっ、生意気なガキだ。……おっと、そろそろ夜も遅くなってきたな。親父さんが心配するだろうから送ってやる」
「あ、そうだね。今日もいいの?」
「おう。夜はあぶねぇからな。……ザガム、お前も来い」
「? なぜ俺が」
「たまにゃ散歩に付き合えよ。……な?」
「……少し出てくる」
「珍しいわね? ま、あんた達なら心配することもないか」
ルーンベルが苦笑しながら見送ってくれ、俺はコギーたちと屋敷を出る。
「面白かった! だんだん強くなるのが楽しいよね」
「そうだな。こいつに勝つためにずっと訓練していたのを思い出すぜ。今でもやってるけどよ」
「ザガムお兄ちゃんに勝ちたいの?」
コギーがヴァルカンに尋ねる。
すると、ヴァルカンはコギーを肩車しながら言う。
「ああ、力でな」
「えー、仲良くしようよー」
「男には、分かっていてもやらにゃならんことがあるのよ」
「お父さんみたいなこと言ってる! でも、やっぱりみんな笑っている方がいいよ……ふあ……」
「おう、寝てろ寝てろ。静かでいい」
「うん……」
「……」
そのままヴァルカンに連れられ、ギリィに返してから屋敷へ……と思っていたのだが、ヤツは無言で空を顎で指す。飛べと言いたいらしい。
ヴァルカンについていき町の外へ。
人気のない静かな平野に降り立つと、ヴァルカンは俺に向きなおり首を鳴らす。
「……さて、コギーに勝ったし、そろそろ目的を果たすとしようか」
「やる気になったか。そろそろ追い出そうと思っていたところだ」
「上等だ!? 行くぜ?」
ヴァルカンが人間の姿を解除し突っ込んできた。
俺も元の状態に戻り迎え撃つことにした。
0
あなたにおすすめの小説
理想の男性(ヒト)は、お祖父さま
たつみ
恋愛
月代結奈は、ある日突然、見知らぬ場所に立っていた。
そこで行われていたのは「正妃選びの儀」正妃に側室?
王太子はまったく好みじゃない。
彼女は「これは夢だ」と思い、とっとと「正妃」を辞退してその場から去る。
彼女が思いこんだ「夢設定」の流れの中、帰った屋敷は超アウェイ。
そんな中、現れたまさしく「理想の男性」なんと、それは彼女のお祖父さまだった!
彼女を正妃にするのを諦めない王太子と側近魔術師サイラスの企み。
そんな2人から彼女守ろうとする理想の男性、お祖父さま。
恋愛よりも家族愛を優先する彼女の日常に否応なく訪れる試練。
この世界で彼女がくだす決断と、肝心な恋愛の結末は?
◇◇◇◇◇設定はあくまでも「貴族風」なので、現実の貴族社会などとは異なります。
本物の貴族社会ではこんなこと通用しない、ということも多々あります。
R-Kingdom_1
他サイトでも掲載しています。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる
僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。
スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。
だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。
それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。
色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。
しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。
ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。
一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。
土曜日以外は毎日投稿してます。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
異世界翻訳者の想定外な日々 ~静かに読書生活を送る筈が何故か家がハーレム化し金持ちになったあげく黒覆面の最強怪傑となってしまった~
於田縫紀
ファンタジー
図書館の奥である本に出合った時、俺は思い出す。『そうだ、俺はかつて日本人だった』と。
その本をつい翻訳してしまった事がきっかけで俺の人生設計は狂い始める。気がつけば美少女3人に囲まれつつ仕事に追われる毎日。そして時々俺は悩む。本当に俺はこんな暮らしをしてていいのだろうかと。ハーレム状態なのだろうか。単に便利に使われているだけなのだろうかと。
ペットたちと一緒に異世界へ転生!?魔法を覚えて、皆とのんびり過ごしたい。
千晶もーこ
ファンタジー
疲労で亡くなってしまった和菓。
気付いたら、異世界に転生していた。
なんと、そこには前世で飼っていた犬、猫、インコもいた!?
物語のような魔法も覚えたいけど、一番は皆で楽しくのんびり過ごすのが目標です!
※この話は小説家になろう様へも掲載しています
アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜
芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。
ふとした事でスキルが発動。
使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。
⭐︎注意⭐︎
女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる