最強魔族の俺が最弱の女勇者を鍛えるワケ ~魔王軍二番手の冥王は人間界でもSランク冒険者のようです~

八神 凪

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第七章:荒れる王都

その116:狼煙

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 「があははは! 俺達はいい時に来たな!」
 「そうね。あ、ルックネス、私は果実酒でね」
 「……なんか増えてるし……」
 「あいつも強そうだな、おい……」

 さも当然のように鎮座しているヴァルカンとメモリーに、ルガードやマイラが呆れた顔で呟く。

 「すまないな、古くからの友人が訪ねて来たのでそのまま混ぜた」
 「友人が居たことに驚きだけど……。ていうか、また呼んでくれたけどいいのかしら?」
 「まあ、この町で名前と顔を知っている人間は少ない。宴を開くなら多い方がいいだろう」
 「なにげに友人枠で招待されているのは嬉しいですねー」
 「お料理、一緒に運びますよルックネス様~♪」
 「はは、お客様にそれはさせられませんよ」

 レティが手を合わせて微笑む中、ニコラは相変わらずルックネスに言い寄っていた。

 他には昨日も居たコギーとクリフに、コギーの父、スパイク、クーリというまあ、ある意味いつものメンバーだ。

 「お兄さん強そうですけど、甲斐性は無さそうですよねえ、イスラさん」
 「食い物と酒でお金を使っちゃいそうなのは認めますよ、クーリさん」
 「いきなり失礼な人間達だなおい!? ガキの方がしっかりしてんぞ……」
 「コギーだよヴァルカンにいちゃん!」
 
 「あ、あのメリーナさん、なにかお手伝いをしましょうかっ!」
 「うふふ、お客さまは座っていてくださいねぇ?」

 相変わらずの光景にヴァルカンとメモリーが加わり賑やかさが増したな。
 まあ、たまの祝いだそれも悪くないだろう。
 この宴が終われば――
 
 「はいはい、皆さんお静かに! これで全員みたいですので、乾杯の挨拶をしますよー。コホン……それでは、ザガムさんのBランクとファムちゃんのEランク昇格を祝して――」
 「かんぱーい!!」
 「うあああああ! ルーンベルさんが奪ったぁぁぁぁぁ!?」
 「長いのよ! 早く飲みたいの、私は!」
 「おお、これ美味いヤツじゃねぇか!?」
 「俺にもくれよ、シスターの姉ちゃん!」
 「まだありますよ?」
 「すごっ!? 一本10万はするんだけど!?」

 乾杯の音頭が取られた後、一瞬だけ静かになったがすぐに騒然となる。
 やはり呼んでいたエイターが持ってきた酒に食いつく。

 「後で遊ぼうねー! 今日はいっぱい人がいるからたのしそー!」
 「おう、今日は泣かせてやる!」

 不敵に笑い合うヴァルカンとコギーを見ながら俺も酒を一口。
 
 「……なんでコギーはヴァルカンに懐くんだろうな?」
 「ザガムさんが居ない時に、遊んでいた時に、本気で悔しがるヴァルカンさんが面白かったみたいですよ」
 「ファムか。そんなもので懐くか? 顔怖いぞ」
 「あはは、ザガムさんは表情とかあんまり変わらないから珍しいんじゃないですか?」

 珍獣扱いか。
 俺はそう思いながら酒を飲み干すと、ファムが笑ながら俺に言う。

 「ふふ、楽しいですね。ザガムさんと出会ったころはこんなに賑やかになるとはおもいませんでしたもん」
 「そうだな」
 「ルーンベルさんが居て、イザールさんやメリーナさん、ユースリアさん……いろんな人がザガムさんのところに集まって賑やかになりましたよ! これで大魔王を倒したら、結婚して楽しく過ごしたいです」

 そう言って俺の隣に座り、肩に頭を預けてくるファム。
 少し驚いて顔を向けると、にこりと微笑み、俺はその笑顔に胸がどきりとなった。

 「……ありがとうございますザガムさん。あの時、助けて貰えたのは本当に幸運でした。私はザガムさんのためならなんでもしますよ!」
 「……いや、勇者を探していたんだから助けるのは当然だろう」
 「ふふ、あの時は私が勇者だと知らないで助けてくれましたよ?」

 そして次に胸がうずく。
 確かにそうだ。だが、どうあれ、俺はこいつを利用するため引き入れた。
 ファムに本当のことを言うべき時が来たのかもしれない。

 ……俺は、許されるだろうか。

 「ずっと一緒に居てくださいね、ザガムさん」
 「……」

 俺はその言葉に答えることが、出来なかった。


 ◆ ◇ ◆

 ――ブライネル王国 国境付近――

 「今日も平和だねっと……」
 「しかしキナ臭い噂もあるぜ、オルソネリア公国とヒズリーン帝国がブライネル王国を狙ってるらしいしな」
 「オルソネリア公国はフェイクだろ? 来るとすりゃ――」

 その時、月が翳った。
 国境の砦壁を守る兵士二人が首を上に向けると、そこには翼竜……ワイバーンの群れが見え、息を飲む。

 「ワイバーン!?」
 「あの数が野良とは思えない……伝令を出せ! これは――」
 「うおおおお!?」
 
 直後、降ってくる巨大な岩石。
 砦を直撃し、兵士達が逃げ惑う。

 そしてさらに悪夢は続く。

 「みんなを起こせ! ヒズリーン帝国だ! あいつら仕掛けてきやがった!」
 「射れ! ……ぐあ!?」
 「ワイバーンを近づけさせるな! 徹底抗戦ー! ぐあああ!?」

 地上の門にも敵兵が取りつき、攻勢に出るブライネル王国の兵士達。
 しかし、空から襲い来るワイバーンの火球や背に乗った敵の槍が襲い掛かり、手を焼いていた。

 「陛下に必ずお伝えしろ、行け!」
 「も、持ちこたえてくれよ! すまん、みんな!」

 そんな中、敵が攻めてきたことを知らせるため伝令が数人、バラバラに散りながら城へ向かう。補足された場合、一網打尽にされるのを避けるために。

 「戦の準備をしている噂は本当だったか……単独の部隊程度なら砦がそう簡単に落ちるとは思えんが、城はここから三日の距離……ワイバーンが先行したら伝える前に町が火の海になる」

 兵士達は焦りながら馬を走らせる。
 しかし、願いは空しく――


 ◆ ◇ ◆


 ――宴から二日が経った。

 相変わらず食っちゃ寝するヴァルカンとメモリー。
 そろそろ叩きだすかと思っていると、

 「うおおおお……! 勝った! 俺はコギーに勝ったぞっ」
 「あー! 負けちゃった……。うん、頑張ったねヴァルカン兄ちゃん!」
 「くっ、生意気なガキだ。……おっと、そろそろ夜も遅くなってきたな。親父さんが心配するだろうから送ってやる」
 「あ、そうだね。今日もいいの?」
 「おう。夜はあぶねぇからな。……ザガム、お前も来い」
 「? なぜ俺が」
 「たまにゃ散歩に付き合えよ。……な?」
 「……少し出てくる」
 「珍しいわね? ま、あんた達なら心配することもないか」

 ルーンベルが苦笑しながら見送ってくれ、俺はコギーたちと屋敷を出る。

 「面白かった! だんだん強くなるのが楽しいよね」
 「そうだな。こいつに勝つためにずっと訓練していたのを思い出すぜ。今でもやってるけどよ」
 「ザガムお兄ちゃんに勝ちたいの?」
 
 コギーがヴァルカンに尋ねる。
 すると、ヴァルカンはコギーを肩車しながら言う。

 「ああ、力でな」
 「えー、仲良くしようよー」
 「男には、分かっていてもやらにゃならんことがあるのよ」
 「お父さんみたいなこと言ってる! でも、やっぱりみんな笑っている方がいいよ……ふあ……」
 「おう、寝てろ寝てろ。静かでいい」
 「うん……」
 「……」

 そのままヴァルカンに連れられ、ギリィに返してから屋敷へ……と思っていたのだが、ヤツは無言で空を顎で指す。飛べと言いたいらしい。

 ヴァルカンについていき町の外へ。
 人気のない静かな平野に降り立つと、ヴァルカンは俺に向きなおり首を鳴らす。

 「……さて、コギーに勝ったし、そろそろ目的を果たすとしようか」
 「やる気になったか。そろそろ追い出そうと思っていたところだ」
 「上等だ!? 行くぜ?」

 ヴァルカンが人間の姿を解除し突っ込んできた。
 俺も元の状態に戻り迎え撃つことにした。


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