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第七章:荒れる王都
その117:燃える町
しおりを挟む「フレイムファング!」
「ふん、軌道が読める。単調な攻撃だ、修行はどうした?」
「へっ、まだ始まったばかりだろうが、お楽しみはこれからだぜ! ブロウクンレッグ!!」
「リフレクトウォール」
鋭い攻撃だが、正直すぎるので回避はそれほど難しくない。
念のため防御魔法を使い、俺も技を繰り出す。
「シャドウブレイド」
「ッチ……、掠ったか」
「避けるのは上手くなったようだな?」
「しゃらくさい……!!」
俺の剣を払いながら悪態をつき、燃え盛る拳を振り下ろしてくる。
構わず前に出てリフレクトウォールをわざと割らせ、鳩尾へ剣の柄を叩き込む
「うぐお!? 相変わらずむちゃくちゃな戦法を取るぜ……! だが近づきすぎたな、ヴァルカンブロウ!」
「む……! ぐっ!?」
苦悶の表情を浮かべて後退をしながらも、ヴァルカンは俺の襟を掴んで持ち上げ、渾身の拳を何度も叩きつけてきた。
今までは俺の攻撃を受けるとそのまま崩れ落ちるか、距離を取って仕切り直す戦い方だったが、今回はダメージ覚悟の超々至近距離で仕掛けてきた。
爆発を伴う拳が俺の胸や腹を打ち付けてくる。
かなり威力があるため、逃れようとブラッドロウを肩口に振り下ろす。
「はっ! 効かねえな。その体勢からは無理があるなぁ!」
「チッ、ならばこれでどうだ<ブラックフレア>!」
「うお!?」
左手から放たれた黒い炎がヴァルカンを包み込み、慌てて俺から手を離す。
「もらった!」
「まだだぁ! ニュークリアエラプト!」
「うぬ……!?」
黒い炎に飲まれながらも俺に拳を突き出してきた。
俺は咄嗟に剣でガードするが、肌が焼け、大きく吹き飛ばされ地面を転がる。
なるほど、やるものだ……!!
俺はしばらく転がったがすぐに立ち上がりヴァルカンへ向かう。
「あれを受けてまだ立つか、化け物だなマジで!」
「今のは良い一撃だった、俺も全力でいくぞ! 冥哭斬翔!」
「速……すぎる!? ん、ちょっと待て、なんか聞こえねぇか」
俺の剣がヴァルカンの胸を切り裂くかと思われた瞬間、ヴァルカンが王都の方に目を向けてそんなことを口走る。
咄嗟のブラフかと思ったが、こいつがそんな高等テクニックを使えるとは思えず急停止した。
「いてぇええ!?」
「すまん、これでも頑張ったが止まらなかった。なにが――」
俺も王都の方へ視線を向けると、確かになにか音が聞こえる。
よく目を凝らすと、黒煙が上がっていることに気づく
「……煙が上がっているだと?」
「なんかあった……うお!? 爆発だと!?」
「嫌な予感がする、戻るぞ。勝負はお預けだ」
「仕方ねぇ!」
俺達が急いで町に戻ると、そこはまさかの事態になっていた。
「うわあああ!? な、なんだ!?」
「空から火のついた樽が……ば、爆発す――」
「うわああああん! おかあさーん!」
「火を消せ!」
『馬鹿言え、救出が最優先だろ!」
「な、なんだこりゃ……」
「呆けるなヴァルカン! 上だ!」
「……! ワイバーン!」
「よく分からんがあの樽に爆発するものが入っているらしい。俺が行く、お前は人間達の救援に回ってくれ。この町の人間には世話になっている」
「おう! なんかキナくせぇ、気をつけろよ!」
さっきまで殺し合いをしていた相手を心配するとはおかしなやつだと思いながら俺は全速で空へ上る。
「……!」
一瞬、下を見ると屋敷が半壊し、町中に火の手が上がっていた。
ファムたちは無事だろうか? イザール達が居るから大事には至らないだろう。
それよりも原因を取り除く方が先決だ。
旋回するワイバーンに近づいて来た時、下卑た笑い声が聞こえてきた。
「はっはっは! ワイバーンの背中から火薬樽を落とされてはひとたまりもあるまいよ!」
「まったくだ。魔法も矢もこの高さなら安心安全ってものよな!」
「さて、そろそろ戻るとするか、残っている樽は全部落とせよ! 最後は派手にワイバーンの火球で町を焼いて――」
「貴様等か……!」
そんなくだらない会話をしているワイバーンの騎手と、樽を落とす役割の男、そしてワイバーンの首を瞬時に切り裂くと血しぶきをあげて絶命し、落ちていく。
「消えろ」
「……な!?」
落ちていくゴミをブラックフレアで燃やし尽くし、ワイバーン達の前に立ちふさがった。
「そ、空を飛んでいる、だと……!?」
「馬鹿な、そんな高度な魔法を使えるやつがいるはずは……」
「何者だ貴様等? なぜこんなことをした?」
俺が睨みつけて尋ねると、フルフェイスの兜を装備した騎士達が騒ぎ出す。
「チッ、わざわざ言う馬鹿が居るかよ! おい、撤退だ。こんなやつが居るとは聞いてねえ!」
「「「おう!!」」」
「逃げられると思うなよ」
「ギャァァァァ!?」
即座に逃げようとした騎士達を追い、一匹と二人を始末すると、奴らは後ろを振り返り驚愕の表情を浮かべていた。
「馬鹿な、速すぎる!? 翼竜に追いつけるなど化け物か!?」
「全滅はまずい、地上部隊に報せなければ! 俺が囮になる、お前達は行け!」
「来るか」
残り四体のワイバーンの内、一体が大きく旋回して俺に向かってきた。
ワイバーンが火球を吐き、それを回避した俺に槍で追撃を仕掛けてくる騎士。
「食らえ!」
「敵ならば倒すのみだ、死んでも恨むなよ」
「お前がな!」
「む……!」
すれ違いざまに槍をへし折ると、ワイバーンは急上昇し、俺の上に。
直後、樽が投下され、それに火球が放たれた。
「くっ……」
「はっはー! 流石にこれなら……ぐはっ……!?」
「スティール! ぐあ!? ば、かな――」
「貴様等には色々と吐いてもらうとしようか」
俺は使えるかと思い、ワイバーンと騎士達を気絶させて地上へと戻る。
残りはさすがの速度と言うべきか、夜ということもあるが、すでに見えなくなっていたので追跡をせず、町の方へ向かうことにした。
逃げられないようにして屋敷に置いとくかと庭に降り立つと、ファムが駆けつけてきた。
「ザガムさん!!」
「ファムか、他の者は?」
「ルーンベルさんとイスラさんは治療と鎮火に行きました! メモリーさんも傷薬があるからと手伝ってくれています」
「そうか。助かるな」
「はい!」
「俺も治療と回復に行こう」
――町中は大混乱していた。
【霊王】の時とは違い、あちこちの家屋が壊れ、人がケガをし、火の手が上がる。
冒険者、騎士、兵士達も駆けつけて救助や救援に当たっているのが見え、【霊王】との戦いの教訓が活かされていると感じる。
「酷い……」
「あいつらの目的は破壊活動か? ん? 今、ヴァルカンの声が聞こえたぞ」
「こっちみたいです!」
ファムの誘導で走っていくと、見慣れた場所に到着する。
そこも崩れ去っていて、広場にはヴァルカンが膝をついて大声で叫んでいた。
「おい、ガキ! しっかりしろ! おい!」
「ヴァルカン、どうし――」
「……あ!?」
ヴァルカンが抱きあげている人間を見て息を飲む。恐らく、こんなに喉が渇いたのは初めてかもしれない。
隣にいたファムも驚愕の声をあげ、慌てて駆け寄る。
「コギーちゃん……息、してません……」
「……」
ファムの言葉に、俺は一瞬、頭の中が白く、なった――
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