125 / 155
第七章:荒れる王都
その122:君は何のために
しおりを挟む「フッ! ハァ!」
『んー、いい太刀筋だネ』
コギーの魂をナルに預け、俺は骸骨との激闘を繰り広げていた。
そう、激闘である。
驚いたのはこの骸骨……いや、死神か。どっちでもいいが、こいつの強さは予想を遥かに上回っており、8割程度の力を出しているにも関わらず軽くいなしてくる。
明らかに立ち回りにくい大鎌のはずだが、鎌の腹と束の使い方が上手く、剣で懐に入ればすぐにケリがつくと考えていた俺は苦戦していた。
「<ブラックフレア>」
『<リフレクトウォール>』
「甘い……!」
『へエ、フェイントとは驚いたヨ。正面からぶつかるばかりだったのにサ』
「知ったような口を!」
首を刎ねれば動きが止まるか? いや、こいつのことだ。そこは読んでいるはず。
ならばそっちに意識を向けてから足を砕く。
「そこだ」
『ふン、単調ナ……。む!』
「もらった!」
俺の蹴りは世界でも有数な硬度を持つブリアント鉱石の柱すらへし曲げることが出来る。骨くらいならたやす――
「ぐああああああ!?」
『狙いはいいけド、私を甘ク見てもらっては困るなア』
ぐ……!? 膝を砕かれた……!
俺の剣を紙一重で回避しながら束を足に落としてきたのだ。
確実に、見えない角度からの攻撃だったはずだが見切られてしまった。
「ザガム!」
「<ヒーリング>……」
完全にいってはいないが、恐らく骨に亀裂が入っていたはず。
その急激な痛みで目の前がチカチカとし、ナルの声が遠くに聞こえたが回復魔法でなんとか堪えることができた。
『いやはヤ、頑張るねエ。今の君が私に勝つことなド到底不可能なのにサ』
「……やって見なければわからん」
『いや、わかるネ。君はなんのためにあの娘を救ウ?』
「いきなり問答か、時間稼ぎなどさせん」
構わずブラッドロウを死神へ振り下ろす。
最初の一撃を回避されるが、さらに一歩踏み込み。あらゆる角度からの斬撃を全力で繰り出す。
「おおおおお!」
『ほっほウ、久しぶりの全力はどうですカ? さテ、あなたはこの娘を助けたイ。それは何故カ?』
「うるさいぞ……!」
『まあ聞きなさイ。少し大人しくしてもらいましょうウ……ジェノサイドリッパー』
「鎌が増えた……!? チッ、冥哭斬翔!」
手にもった大鎌に加え、ヤツの周囲に鎌の刃だけが無数に展開され俺を囲む。
この数を捌くなら冥哭斬翔の手数でと思い、二歩先に居る死神へ肉薄する。
「う、おおおおお!」
『……いケ』
「ぐ……!?」
弾いてもすぐに別の場所から襲ってくる刃。
死神が指を鳴らす度に、数は増え捌ききれないほどの数になっていく。
ならば……!
「一点突破だ<リフレクトウォール>、ヴァンガードストライク……!!」
『おオ……! やるネ。だが――』
俺の渾身の一撃。
だが、一歩及ばず。
俺の剣が届く前に、刃が全身に刺さり動きを封じられていた。出来たのは、死神のローブを吹き飛ばしたくらい、か……
「強い……メギストスと同じかそれ以上……」
『……さテ、君はこの娘を、町の人間ヲ助けに来たと言っていタ。それは誰のためダ。勇者のためカ? 仲間のたメか?』
「はあ……はあ……さあな……両方じゃないか?」
コギーたちが帰ればファムは喜ぶ。
もちろんルーンベルやヴァルカンもそうだろう。そう考えれば……
「……自分のためかもしれんな」
俺がそう返すと、死神は首を振ってカタカタと口を動かした。
『おかしな話だネ。君は大魔王を倒すために勇者を利用しようとしたんじゃないのかイ? 勇者など使い捨てでいいじゃないカ。もし死んだら次に現れるまで待てばサ? あの国も君が冥王だと知っていル。大魔王を倒すなどと言わず、まず国を一つ掠め取ってしまえばいいじゃないかネ』
ペラペラとやけに饒舌に喋る死神に、片膝をついた俺は睨みつけながら死神に返す。
「使い捨てだと? ファムは一人しかいない。鍛えると約束したからには最後までやる。国を蹂躙するのは全てを終わらせてからだ……!」
『ふうン、ならその時に君に逆らう人間も出てくるだろう。折角復活させてもこの娘は死ぬかもしれないネ? だったら、今、死なせたままでも良くいかネ?』
「そんなことは――」
無いと反論しようと口を開くが、その前に死神は酷く静かな口調で、俺に言う。
『……ザガム。君は無感情だが、優しい。魔族領を拡張したいのも本当だろうし、勇者を大事に思っているのも間違いない。尤も、勇者に会うまでは微妙なラインだったがネ』
「……? なにが……言いたい……」
俺はヒーリングで傷を癒しながら目を細めて尋ねる。
『実のところ、君の行動理念は‟大魔王を倒す”という一点に過ぎなイ。それはそう認識しているだろウ。しかし、そう思うのはどうしてかナ? 大魔王を君は『どうして倒したい』のか――』
「それは……あの男が魔族の未来を……ぐ……」
死神の空虚な目を見ていると頭が痛くなる……何故だと? 魔族の領地をもっと……
「本当に、そう?」
「なに……?」
「貴方は忘れているものを、感情を、取り戻さないといけない――」
いつの間にか俺の後ろに立っていたナルが一言、呟く。
その瞬間、頭に映像が流れてくる。
「――貴方を恐れ、全てを奪った‟大魔王”を倒すと誓ったあの日を」
「お、お前は……ぐうううう!?」
目まぐるしく頭の中で動く記憶と映像。
その中には以前にも見た、胸から血を出す女の姿もあった。
そうだ……あれは――
「……あの時、俺を庇って死んだのは……母さん……か?」
「……」
「殺したのは……大魔王……? だが、どうして俺は母親とあんなところに――」
『ふム』
そこで俺の意識はぷっつりと、途切れた。
◆ ◇ ◆
『少しずつ、戻り始めましたね姉上』
「……そうね」
『心中、お察ししますよ』
倒れたザガムをナルが膝枕し、死神が横で首を振る。
全身の傷を癒し、寝息が落ち着いたところでナルは口を開く。
「本当なら静かに、勇者……ファムちゃんと静かに暮らして欲しいんだけどね。大魔王はザガムを見つければ必ず手に入れようとする。その時、力が無ければ大魔王の操り人形になってしまう」
『だからこそ鍛え、失われた感情と記憶を取り戻す手助けをしているのですから』
「……あなたには感謝しているわ。人間達の下へ行かせたのは、良かったようだし」
『ええ。勇者も聖女見習いも、魔法使いもいい腕をしています。私、いや、僕達のようにはならないでしょう』
「あと一息……か。後はザガムに力の上手い使い方を教えるとしましょう」
『そうですネ』
安らかな寝顔のザガムに、ナルと死神は笑顔を向けるのだった。
0
あなたにおすすめの小説
大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!
古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。
その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。
『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』
昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
理想の男性(ヒト)は、お祖父さま
たつみ
恋愛
月代結奈は、ある日突然、見知らぬ場所に立っていた。
そこで行われていたのは「正妃選びの儀」正妃に側室?
王太子はまったく好みじゃない。
彼女は「これは夢だ」と思い、とっとと「正妃」を辞退してその場から去る。
彼女が思いこんだ「夢設定」の流れの中、帰った屋敷は超アウェイ。
そんな中、現れたまさしく「理想の男性」なんと、それは彼女のお祖父さまだった!
彼女を正妃にするのを諦めない王太子と側近魔術師サイラスの企み。
そんな2人から彼女守ろうとする理想の男性、お祖父さま。
恋愛よりも家族愛を優先する彼女の日常に否応なく訪れる試練。
この世界で彼女がくだす決断と、肝心な恋愛の結末は?
◇◇◇◇◇設定はあくまでも「貴族風」なので、現実の貴族社会などとは異なります。
本物の貴族社会ではこんなこと通用しない、ということも多々あります。
R-Kingdom_1
他サイトでも掲載しています。
~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる
僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。
スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。
だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。
それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。
色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。
しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。
ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。
一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。
土曜日以外は毎日投稿してます。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
異世界翻訳者の想定外な日々 ~静かに読書生活を送る筈が何故か家がハーレム化し金持ちになったあげく黒覆面の最強怪傑となってしまった~
於田縫紀
ファンタジー
図書館の奥である本に出合った時、俺は思い出す。『そうだ、俺はかつて日本人だった』と。
その本をつい翻訳してしまった事がきっかけで俺の人生設計は狂い始める。気がつけば美少女3人に囲まれつつ仕事に追われる毎日。そして時々俺は悩む。本当に俺はこんな暮らしをしてていいのだろうかと。ハーレム状態なのだろうか。単に便利に使われているだけなのだろうかと。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
ペットたちと一緒に異世界へ転生!?魔法を覚えて、皆とのんびり過ごしたい。
千晶もーこ
ファンタジー
疲労で亡くなってしまった和菓。
気付いたら、異世界に転生していた。
なんと、そこには前世で飼っていた犬、猫、インコもいた!?
物語のような魔法も覚えたいけど、一番は皆で楽しくのんびり過ごすのが目標です!
※この話は小説家になろう様へも掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる