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第七章:荒れる王都
その132:合流
しおりを挟む「殺さなかったんですねえ」
気絶した三人の騎士を縛り上げて黒竜の背に乗せていると、なぜかワイバーンを乗りこなせているイスラに声をかけられた。
「腹は立つがとりあずの目的は達した。ワイバーン部隊も地上で拾い上げているぞ、全部捕虜だ」
「ということは……」
「考えている通りだが、その前にファム達を迎えに行くぞ。そうだ、お前達このまま一緒に行ってくれるか? 騎士達よりも先に屋敷へ返したい」
「グ、グルゥゥ……。グル!」
「そうか、行ってくれるか。では、スパイクとメリーナもこのまま行くか。黒竜達よ、いいな?」
俺が尋ねると二頭は激しく頭を振り、着いて来てくれるらしい。
しかし、そこでスパイクが口を開く。
「俺はこいつらのことを説明しないといけないから降りるぜ。ワイバーンを貸してくれるか?」
「え? 嫌ですけど」
「なんでだよ!?」
「ブレイブ君はもうわたしのモノです! 貸したりしませんよ」
「ぴぎゃ!」
ぴしゃりと言い放つイスラにワイバーンも呼応する。
「意外だな、メリーナと一緒に行くと思っていたが」
「仕事は仕事だ。一緒に行きたいが、陛下に説明も必要だろう? 騎士団長は話が分かるからいいけどな」
「ふふ、いい心がけですよぅ♪ とりあえず、帰ったら屋敷で会いましょうねぇ」
「……! は、はい!」
イスラが動かないので仕方なく一旦地上へ降り、俺とメリーナが一頭ずつ乗り、もう一頭は無人で引っ張ることにした。
何故か従順なので扱いやすい。やはり訓練の賜物だろう、今後はさらに強化してメギストスやヴァルカン相手に差し向けるのも面白そうだ。
「にしても早かったですね?」
「そうか? 俺は冥界とやらで長いこと過ごしていた感じだったがな」
「一日は経っていますからねぇ。冥界はどうでしたか?」
「……そのあたりも全員が揃ってからだな。俺について色々と分かったことがある」
俺がそう言うと、イスラとメリーナが顔を見合わせて目をパチパチしていた。
「ザガムさんのこと、ですか? すでに冥王だってことは知っていますけど?」
「ルーンベルか。それはそうだが、それ以外にもあった」
「あった、ですかぁ」
俺の雰囲気がいつもと違うと判断したのか、メリーナはそれからなにも言わなかったので、イスラも黙ってワイバーンを操る。
程なくして一つ目の町の上空に来るが平和そうだったので、次の町へ。
俺が飛ぶよりは遅いがそれなりに速いので、日が暮れる前に二つ目の町に到着する。上からヴァルカンの目立つ髪が見えたので俺は黒竜から降りて自分で空を飛ぶ。
「どうしたんです?」
「このまま降りたら弓で狙われるぞ。俺が先に降りて事情を説明してくるから待っていろ」
「おお、さすが。賢い」
アホなことを言うが、あれで黒竜三頭を相手にしていたのだから能力は高い。
【王】相手にどこまでやれるかだが、そもそも、ヴァルカン達と戦う意味があるとは、思えない。
「あ……! ザガムさんだ! おーい、こっちですよ!」
「なんだぁ? なんでここに来てるんだ……?」
ファムの大声と手振りですぐに位置が特定でき、ヴァルカンも訝し気な目で俺を迎えてくれた。
「ちゃんと帰って来てくれました! ……あれ?」
「ああ、当然だ。で、あのドラゴン達を降ろしたい。責任者は居るか? ファム、どこに手を振っている?」
「あっちの兄ちゃんがそうだぜ」
「そうか」
「行きましょう♪」
抱き着いてくるファムと共に、ヴァルカンの案内で騎士の男と接触を図り、ドラゴンについて説明。
広場なら問題ないとのことで都合四頭のドラゴンが降り立つと、
「うおーかっけぇえ!!」
「岩みたーい!」
「……グル!」
「ぴぎゃ」
「はいはい、蹴ったりしたらダメですよー。触るだけならオッケーみたいです」
子供たちに大人気だった。
とりあえずルーンベル達も集めて、情報のすり合わせをすることにしようか。
「おかえりザガム。で、イスラもお疲れ様」
「大活躍でしたぁ」
「この大魔法使いには不可能の文字はありませんね!」
「大規模範囲の魔法は見事だったぞ」
ツメが甘いのはこいつの欠点だが、あれだけの数を相手にしていたのだから今日くらいは目を瞑る。
「俺の件は屋敷に帰ってから話したい。こっちは緊急で聞くことはあるか?」
「それなんだけどねー」
「ちょっと不覚をとったわ」
メモリーとルーンベルが肩を竦めて話し始めた内容は、有り得るかといったものだった。
ヴァラキオンとやらと同じく俺の知らない魔族ゼゼリック。
奴らは大昔の大魔王クロウラーの配下と口にしていたらしいが、ヴァルカンは知らないらしい。
メモリーは古き【王】の一人なので存在は知っていて、封印戦争とやらに参加もしていたとのこと。
……解せないのは俺が封印戦争を知らず、メギストスも教えてくれなかったことだ。それと魔族領を出てから大きいことが起こりすぎている?
いや、それは考えすぎか。『神霊の園』は以前から占領されていた。帝国とやらも、偶然に近いのだろう。ヴァラキオンを倒されたことで焦ったのかもしれない。
「逃がしたのは仕方がない。お前達が無事でなによりだ」
「ザ、ザガムさん?」
「ちょ、ちょっと、恥ずかしいんだけど……」
「あら、女性の発作はなくなったのー?」
「ああ、むしろファムやルーンベルは俺を好いてくれているが、どうやらそれが嬉しいらしい」
俺がフッと口元を緩めてファムとルーンベルを抱きしめながら言うと、その場に居た全員が目を丸くしていた。
そこでヴァルカンが咳ばらいをしながら俺の背中を軽く小突いてくる。
「……まあ、俺は別にそのあたりどうでもいいんだがよ、ガキ共はどうした?」
「それは戻れば分かる」
「上等だ、失敗してたらタダじゃおかねえからな!」
「覚えておこう。移動は黒竜だ、騎士の皆には申し訳ないが一足先に戻るぞ」
近くにいた責任者に声をかけると、
「かしこまりました。帝国兵は敗走……というより、町から追い出した後、どこに潜んでいるのか分からない状況です。もしかするとまた襲い掛かってくるかもしれません」
「ふむ、そうなると少々不安は残るか」
どうするか?
ここで話してもいいが、ずっといるわけにも行かないしな。
「なら私が残りますですにゃ」
「大丈夫、私も残るからー」
ミーヤとメモリーが手を上げて町に残ると言ってくれた。
「ゼゼリックとの相性は悪いのではないか?」
「手負い相手なら余裕かしらね? 帝国兵の数はもうちょっといるから、攻められた時は私の方がいいわ。ヴァルカンよりね」
「承知した。なら、悪いがお前に任せる」
「リョウカイー♪ 帰ったら高級はちみつでも飲ませてくれればいいわー」
それくらい安いものだと、俺達は頷き、いざドラゴンへ騎乗するため踵を返す。
すると――
「うおお! たけぇええええ!」
「私も乗るー!」
「尻尾だけで俺達三人分あるー」
……町中の子供たちが群がっていた。ドラゴンはやはり人気の魔物だと再確信した瞬間だった。
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