最強魔族の俺が最弱の女勇者を鍛えるワケ ~魔王軍二番手の冥王は人間界でもSランク冒険者のようです~

八神 凪

文字の大きさ
141 / 155
第八章:過去の清算を

その138:目指すは打倒、大魔王

しおりを挟む

 「落ち着きましたか?」
 「ん、すまないな。もう大丈夫だ」
 「ザガムは子供のころから泣くことなんてなかったから新鮮でいい……あ、痛!? パパになんてことをするんだい!?」
 「うるさい」
 
 母のこと、クロウラーのこと。そして、憎みながらも俺を引き取り育ててくれた叔父……色々な想いが頭を、胸中を巡り、俺はしばらく泣いた。
 大魔王の息子であれば、危険度を考えると処分されてもおかしくはないはずだが、自分たちの体を魔族に変えてまで守ってくれていたことが嬉しかった。

 「で、では、大魔王様は元人間ですかい!? しかし、そこまで強くなれるとは……」
 「まあ、僕は大賢者と呼ばれるくらいには強かったからね。クロウラーの足元にも及ばなかったけど、ご先祖様ならもしかしたら倒せていたかもしれない。千年以上前のアーヴィング家はそれこそ世界最強だったらしいから」
 「そうなんですね、じゃあザガム=アーヴィングが本名?」
 
 ファムが唇に指を当ててそう言うと、フェルは頷く。
 この珍しい黒髪もその時から受け継いでいるらしい。

 「大賢者と呼ばれた初代は神をも倒したとか? まあ、よくある伝説だけど、実際ウチの家系は強者が多いんだ。それで姉さんが勇者となったためクロウラーは倒せると思ったんだけど」
 「逆に返り討ちに、ということですね。それにしてももっと早く打ち明けても良かったのではありませんか?」

 マルクスが少し不満げに漏らすと、ロックワイルドが代わりに口を開く。

 「ザガムにそれを話すのは時期を考えていたからな。少なくとも、感情を取りもどすまではと思っていた。
 感情が無いままであれば、クロウラーの操り人形にされる可能性もあるのだ」
 「最初出会った時は不愛想だったもんねあんた」
 「……」

 ルーンベルが意地悪く笑いながら俺に言う。
 確かに、いま思えば人間を支配するとか恥ずかしいことを言っていたなと。
 どこかで大魔王の血がそうさせていたということにしておこう。

 「ま、僕達のことはこんなところだけど他に聞きたいことはあるかな?」
 「はい」
 「ユースリアか、どうぞ」
 「結局メギストス様はこの魔族領をどうされるおつもりですか? この後、恐らくクロウラーの討伐をすると思うのですが」

 俺の方をチラリと見ながらユースリアが手を上げた。
 姉や母代わりとして面倒を見てくれた記憶は残っていて、冥王になる前の生活基盤は彼女の持ってくる海産物だったなと思い起こす。

 「僕やメモリー、ロックワイルドの悲願はクロウラーを倒すことのみ。それさえ達成できれば君たちの誰かに大魔王の座を譲ってもいい。余生がどれくらいあるのか知らないけど、ひっそりと過ごすよ。ザガムでもいいけど」
 「いや……もはや、事実を知った今、その椅子に用は無い。ヴァルカンでもなればいい」
 「なんで俺なんだよ!?」
 「拘ってそうですもんねえ。コギーちゃん、大きくなったら美人になりますよーきっと」
 「なんであのガキが出てくんだよ!?」

 イスラがからかう中、ユースリアは続ける。

 「メギストス様の意向、承知しました。……でも、まさか本当に甥っ子とは思いませんでした」
 「悪いねえ、ザガムの姉役をずっとしてもらっていて。僕ら三人は『知っているが故』に接し方が難しいんだ。育てるなら、何も知らない方がいいかと思って」
 「いいですけど。ザガムは大人しい子でしたし。私が愚痴をこぼしていると、花を持ってきてくれる優しい一面もありました。無言でしたけど」
 「やめろ」
 「うーん、可愛がられていたんですねえ」

 ファムが生暖かい目で俺を見るのでこめかみを抑えてやった。
 とりあえず、真実はいいとして今後の話に移らなければならないと席に戻ってからフェルへ尋ねることにした。

 「フェル、これからのことだが――」
 「パパでいいのに」
 「――やはりクロウラーを倒すのか?」
 「冷たい……!? まあ、そうなるね。ザガムは冥界で姉さんに会ってきたようだし、戦力的には申し分ない。これでクロウラーと五分ってところかな? ああ、【王】達に戦いは強制しない。魔族領で極北へ行くメンツは募集するけど」

 その後『これは150年前の復讐だ』と笑いながら告げる。
 数が居れば有利になるが、私怨でもあるためあまり巻き込みたくないという意向が汲み取れる。
 
 フェルと俺、メモリーにロックワイルド。それにファム達が居ればおおむねなんとかなるだろう。
 ただ、俺でも勝てないフェルをあっさりと倒すクロウラーの強さが未知数なのが博打ではあるか。

 「俺は行くぜ。ザガムに負けっぱなしで、死なれたら困る。それにあの町の連中もまた死にたくはねえだろ」
 「友人として、見過ごすわけにはいくまい」

 俺が戦力について考えていると、ヴァルカンとマルクスが不敵に笑い、参戦を表明。

 「もちろん姉を置いて行かないわよね? 結婚式、楽しみにしているんだから」
 「ザガム様、あたしも連れて行ってね♪」
 「行く気はしないけど、キルミスが行くなら仕方ないね」
 「お前達……」

 【王】は全員参加のようだ。まさか【霊王】の兄妹がついてくるとは思わなかったが。

 「よろしくね、キルミスちゃん!」
 「な、慣れなしくしないでよ! あんたはザガム様を巡るライバルなんだから!」
 「いや、もう嫁として認識されているからファムの圧勝だと思うけど……」
 「ええ!?」
 「ありがとうみんな。僕みたいな大魔王についてきてくれてさ。それじゃ……」
 「ごくり……」

 軍団員を集めるのかと思い言葉を待つ。
 しかし、フェルは笑いながらとんでもないことを口にする。

 「今日のところはお祝いといこう! 実は今日、ザガムの誕生日なんだよねえ」
 「あら、そうなの?」
 「そうだよルーンベルさん! というわけで、今日は騒ごう! ルックレスが面白い料理を覚えて来たらしいし」

 その言葉に全員が椅子からずり落ちる。
 まあ、時間は必要だしな……もう少し訓練をしておくかと思った矢先――

 「あ……」
 「ん? どうしたファム」
 「あの、私に憑いてきた女性が話したいってジェスチャーを。え? 体、を、イン? ふあ!?」

 ファムの体がビクンと跳ねた後、がくりと項垂れ、俺は慌てて肩をゆする。
 すると、顔を上げてにっこりと微笑み、抱き着いてきた。

 『ザガム!』
 「お、な、なんだ……!?」
 『お母さんよ!』
 「なにを言っているんだ……?」

 ファムがおかしくなった。
 そう思ったが、どうやら違うようで――
しおりを挟む
感想 304

あなたにおすすめの小説

理想の男性(ヒト)は、お祖父さま

たつみ
恋愛
月代結奈は、ある日突然、見知らぬ場所に立っていた。 そこで行われていたのは「正妃選びの儀」正妃に側室? 王太子はまったく好みじゃない。 彼女は「これは夢だ」と思い、とっとと「正妃」を辞退してその場から去る。 彼女が思いこんだ「夢設定」の流れの中、帰った屋敷は超アウェイ。 そんな中、現れたまさしく「理想の男性」なんと、それは彼女のお祖父さまだった! 彼女を正妃にするのを諦めない王太子と側近魔術師サイラスの企み。 そんな2人から彼女守ろうとする理想の男性、お祖父さま。 恋愛よりも家族愛を優先する彼女の日常に否応なく訪れる試練。 この世界で彼女がくだす決断と、肝心な恋愛の結末は?  ◇◇◇◇◇設定はあくまでも「貴族風」なので、現実の貴族社会などとは異なります。 本物の貴族社会ではこんなこと通用しない、ということも多々あります。 R-Kingdom_1 他サイトでも掲載しています。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる

僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。 スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。 だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。 それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。 色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。 しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。 ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。 一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。 土曜日以外は毎日投稿してます。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

異世界翻訳者の想定外な日々 ~静かに読書生活を送る筈が何故か家がハーレム化し金持ちになったあげく黒覆面の最強怪傑となってしまった~

於田縫紀
ファンタジー
 図書館の奥である本に出合った時、俺は思い出す。『そうだ、俺はかつて日本人だった』と。  その本をつい翻訳してしまった事がきっかけで俺の人生設計は狂い始める。気がつけば美少女3人に囲まれつつ仕事に追われる毎日。そして時々俺は悩む。本当に俺はこんな暮らしをしてていいのだろうかと。ハーレム状態なのだろうか。単に便利に使われているだけなのだろうかと。

ペットたちと一緒に異世界へ転生!?魔法を覚えて、皆とのんびり過ごしたい。

千晶もーこ
ファンタジー
疲労で亡くなってしまった和菓。 気付いたら、異世界に転生していた。 なんと、そこには前世で飼っていた犬、猫、インコもいた!? 物語のような魔法も覚えたいけど、一番は皆で楽しくのんびり過ごすのが目標です! ※この話は小説家になろう様へも掲載しています

アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。 ふとした事でスキルが発動。  使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。 ⭐︎注意⭐︎ 女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。

処理中です...