最強魔族の俺が最弱の女勇者を鍛えるワケ ~魔王軍二番手の冥王は人間界でもSランク冒険者のようです~

八神 凪

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第八章:過去の清算を

その139:母、その助言

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 『ちょっと前に会ったばかりだけど、久しぶりね! お母さんよ』
 「なにを言っているんだ? 俺は母に会った覚えはないぞ?」
 『冥界で会ったわ。まあ、あの時はナルって名乗ってたけど』
 「なに……?」

 あの案内を務めてくれた女性が母親だという。
 もう姿が見えないのでなんとも言えないが、俺はとりあえず尋ねてみることにする。

 「確かに黒髪ではあったが、なぜその時に名乗らなかったのだ?」
 『あと一息。まずはフェルディナントに話を聞いて欲しかったからよ。いきなり名乗っても信用してもらえるか怪しいし』
 「話さないのは約束だったしね。会えて嬉しいよ、姉さん」

 少し涙ぐむフェルにはファムではない姿が見えているのかもしれない。
 再会の中で悪いが、俺は話を続行する。

 「隠す理由が見当たらないが……母、ユランで間違いないのだな?」
 『うんうん! はあ……大きくなった我が子を抱きしめることが出来た……ありがとうファムちゃん』
 「ファムは帰ってくるんだろうな」

 俺が尋ねると笑顔のまま固まり、一歩下がる。そして片手を上げてから踵を返し――

 『じゃ、また後で!』
 「逃がすか……! おい、本当に大丈夫なんだろうな!」
 『あはは、冗談よ。話が終わったら解放するわ』
 「まったく……本当に母親なのか……?」

 軽いノリはフェル叔父と同じかなどと思いながら、ため息を吐く。
 そこでルーンベルがファムの横に回り込んだ。

 「でも、早く打ち明けて良かったんじゃ?」
 『いやいや、だって聖女補佐のあなたも私が見えなかったんでしょ? どうやって知らせるのよ。ずっと一緒に居たんだけど誰も気づいてなかったし、このポゼッションもようやくファムちゃんが認識してくれたからできたもの』
 
 口をとがらせて抗議する母親。だが、ルーンベルの言うことももっともで、俺は二度あった出会いについて聞く。

 「冥界や夢の中で話すくらいは出来たろう」
 『母親だと名乗る前に色々とやることがあったからね。打ち明けると気がそがれると思ったのよ』

 ルーンベルが『なるほど、ザガムは真面目だし……』と呟き、納得した様子だった。まあ、考えがあってのことならいいかと椅子に座りなおす。

 「それで、母さん……は、なにかを伝えに来たのか?」
 『んふふ、照れない照れない♪』
 「やめろ、ファムの顔で撫でるな」
 『もう、ファムちゃん大好きなんだからー。……そうね、クロウラーのことを話さないといけないと思って』

 俺から離れた母は真顔になり、席を立ったまま俺達に告げる。
 クロウラーに囚われていた時、幾度か戦いを挑んでは負け、犯され嬲られたことを。だが、ヤツとて無敵ではなく、倒すことは可能であるとも。

 『今のザガムとフェルが戦えば勝てると踏んでいるわ。ファムちゃんには私がバックアップするし、ルーンベルちゃんとイスラちゃんも強いしね。ただ、捕まると私みたいに慰み者にされるからそこは要注意かな』
 「それは俺がさせん。弱点はないのか?」
 『ハッキリ言って無いわ。ダメージは通るし、腕を落としたこともあるから、回復されるまえに心臓を抉ってやればいいと思う』
 「わたしはそういう方が解りやすくて助かりますね。空からぶっこんでやりますよ」

 イスラが得意気に無い胸を反らし、母さんが肩に手を置いて頷いていた。あれは憐みの目だ。
 それはともかく、大魔王の得意魔法や攻撃手段、部下はだいたい分かった。
 後は現在の戦力がどうなっているかと、『復活してどれくらい経っているのか』が気になるところ。
 
 以前、ヴァラキオンは女を復活の糧にすると言っていたので、完全ではないのかもしれない。となると勝機はかなりある。

 「偵察へいきますか?」

 マルクスが提案を口にするが、フェルは首を振って応える。
 
 「いや、このまま侵攻する。魔族達に募集をかけつつ、僕達も準備を進めるぞ。各【王】達も配下に一応、声をかけておいてくれ」
 「はーい。ま、わたし達はアンデッドが居るからそれを連れて行くだけで役に立つと思うけどね」
 「ご先祖様は凄いスケルトンを連れていたらしいけど、なんとかならないかな」

 【霊王】兄妹もやる気のようだ。彼らはまだ若い、死なないよう気を付けてやらねばならんな。
 
 『それじゃ、頼むわね。……私達の悲願、大魔王クロウラーの討伐。アレが復活したらまた世の中は混乱の渦に巻き込まれる……それを避けるためには今度こそ消し去るのみよ』
 
 母さんの言葉に全員が頷き、結束を固める俺達。
 
 『それじゃ、しばらくファムちゃんの中に居るからなにかあればまた出てくるわねー』
 「ザガムさんのお母さんにしては軽いですねえ。結構好きですけど」
 「そうね。私も身寄りがなかったから、ちょっと憧れるかも」

 イスラとルーンベルがそんなことを口にしたその時、ファムの体がビクンと跳ねて喋り出す。

 「ハッ!? も、戻りました! ユランさん、面白いですね、私も内側から聞いていました!」
 「そうか。悪いな」
 「いいえ、ザガムさんのお母さんですもの! 結婚の許可はもらえました!」
 「そんなことを聞いていたのか……」

 俺が呆れて笑うと、いつの間にか近くに来ていたフェルが俺とファムの肩に手を置いて口を開いた。

 「さて、それじゃファムちゃんも戻ったことだし、宴の準備をしようか!」
 「さんせーい!」

 かくして、大魔王城にて俺の誕生パーティが開催されることになる。
 待っていろクロウラー……母の仇だ、必ずこの手で倒す。
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