142 / 155
第八章:過去の清算を
その139:母、その助言
しおりを挟む『ちょっと前に会ったばかりだけど、久しぶりね! お母さんよ』
「なにを言っているんだ? 俺は母に会った覚えはないぞ?」
『冥界で会ったわ。まあ、あの時はナルって名乗ってたけど』
「なに……?」
あの案内を務めてくれた女性が母親だという。
もう姿が見えないのでなんとも言えないが、俺はとりあえず尋ねてみることにする。
「確かに黒髪ではあったが、なぜその時に名乗らなかったのだ?」
『あと一息。まずはフェルディナントに話を聞いて欲しかったからよ。いきなり名乗っても信用してもらえるか怪しいし』
「話さないのは約束だったしね。会えて嬉しいよ、姉さん」
少し涙ぐむフェルにはファムではない姿が見えているのかもしれない。
再会の中で悪いが、俺は話を続行する。
「隠す理由が見当たらないが……母、ユランで間違いないのだな?」
『うんうん! はあ……大きくなった我が子を抱きしめることが出来た……ありがとうファムちゃん』
「ファムは帰ってくるんだろうな」
俺が尋ねると笑顔のまま固まり、一歩下がる。そして片手を上げてから踵を返し――
『じゃ、また後で!』
「逃がすか……! おい、本当に大丈夫なんだろうな!」
『あはは、冗談よ。話が終わったら解放するわ』
「まったく……本当に母親なのか……?」
軽いノリはフェル叔父と同じかなどと思いながら、ため息を吐く。
そこでルーンベルがファムの横に回り込んだ。
「でも、早く打ち明けて良かったんじゃ?」
『いやいや、だって聖女補佐のあなたも私が見えなかったんでしょ? どうやって知らせるのよ。ずっと一緒に居たんだけど誰も気づいてなかったし、このポゼッションもようやくファムちゃんが認識してくれたからできたもの』
口をとがらせて抗議する母親。だが、ルーンベルの言うことももっともで、俺は二度あった出会いについて聞く。
「冥界や夢の中で話すくらいは出来たろう」
『母親だと名乗る前に色々とやることがあったからね。打ち明けると気がそがれると思ったのよ』
ルーンベルが『なるほど、ザガムは真面目だし……』と呟き、納得した様子だった。まあ、考えがあってのことならいいかと椅子に座りなおす。
「それで、母さん……は、なにかを伝えに来たのか?」
『んふふ、照れない照れない♪』
「やめろ、ファムの顔で撫でるな」
『もう、ファムちゃん大好きなんだからー。……そうね、クロウラーのことを話さないといけないと思って』
俺から離れた母は真顔になり、席を立ったまま俺達に告げる。
クロウラーに囚われていた時、幾度か戦いを挑んでは負け、犯され嬲られたことを。だが、ヤツとて無敵ではなく、倒すことは可能であるとも。
『今のザガムとフェルが戦えば勝てると踏んでいるわ。ファムちゃんには私がバックアップするし、ルーンベルちゃんとイスラちゃんも強いしね。ただ、捕まると私みたいに慰み者にされるからそこは要注意かな』
「それは俺がさせん。弱点はないのか?」
『ハッキリ言って無いわ。ダメージは通るし、腕を落としたこともあるから、回復されるまえに心臓を抉ってやればいいと思う』
「わたしはそういう方が解りやすくて助かりますね。空からぶっこんでやりますよ」
イスラが得意気に無い胸を反らし、母さんが肩に手を置いて頷いていた。あれは憐みの目だ。
それはともかく、大魔王の得意魔法や攻撃手段、部下はだいたい分かった。
後は現在の戦力がどうなっているかと、『復活してどれくらい経っているのか』が気になるところ。
以前、ヴァラキオンは女を復活の糧にすると言っていたので、完全ではないのかもしれない。となると勝機はかなりある。
「偵察へいきますか?」
マルクスが提案を口にするが、フェルは首を振って応える。
「いや、このまま侵攻する。魔族達に募集をかけつつ、僕達も準備を進めるぞ。各【王】達も配下に一応、声をかけておいてくれ」
「はーい。ま、わたし達はアンデッドが居るからそれを連れて行くだけで役に立つと思うけどね」
「ご先祖様は凄いスケルトンを連れていたらしいけど、なんとかならないかな」
【霊王】兄妹もやる気のようだ。彼らはまだ若い、死なないよう気を付けてやらねばならんな。
『それじゃ、頼むわね。……私達の悲願、大魔王クロウラーの討伐。アレが復活したらまた世の中は混乱の渦に巻き込まれる……それを避けるためには今度こそ消し去るのみよ』
母さんの言葉に全員が頷き、結束を固める俺達。
『それじゃ、しばらくファムちゃんの中に居るからなにかあればまた出てくるわねー』
「ザガムさんのお母さんにしては軽いですねえ。結構好きですけど」
「そうね。私も身寄りがなかったから、ちょっと憧れるかも」
イスラとルーンベルがそんなことを口にしたその時、ファムの体がビクンと跳ねて喋り出す。
「ハッ!? も、戻りました! ユランさん、面白いですね、私も内側から聞いていました!」
「そうか。悪いな」
「いいえ、ザガムさんのお母さんですもの! 結婚の許可はもらえました!」
「そんなことを聞いていたのか……」
俺が呆れて笑うと、いつの間にか近くに来ていたフェルが俺とファムの肩に手を置いて口を開いた。
「さて、それじゃファムちゃんも戻ったことだし、宴の準備をしようか!」
「さんせーい!」
かくして、大魔王城にて俺の誕生パーティが開催されることになる。
待っていろクロウラー……母の仇だ、必ずこの手で倒す。
0
あなたにおすすめの小説
理想の男性(ヒト)は、お祖父さま
たつみ
恋愛
月代結奈は、ある日突然、見知らぬ場所に立っていた。
そこで行われていたのは「正妃選びの儀」正妃に側室?
王太子はまったく好みじゃない。
彼女は「これは夢だ」と思い、とっとと「正妃」を辞退してその場から去る。
彼女が思いこんだ「夢設定」の流れの中、帰った屋敷は超アウェイ。
そんな中、現れたまさしく「理想の男性」なんと、それは彼女のお祖父さまだった!
彼女を正妃にするのを諦めない王太子と側近魔術師サイラスの企み。
そんな2人から彼女守ろうとする理想の男性、お祖父さま。
恋愛よりも家族愛を優先する彼女の日常に否応なく訪れる試練。
この世界で彼女がくだす決断と、肝心な恋愛の結末は?
◇◇◇◇◇設定はあくまでも「貴族風」なので、現実の貴族社会などとは異なります。
本物の貴族社会ではこんなこと通用しない、ということも多々あります。
R-Kingdom_1
他サイトでも掲載しています。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる
僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。
スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。
だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。
それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。
色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。
しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。
ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。
一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。
土曜日以外は毎日投稿してます。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
異世界翻訳者の想定外な日々 ~静かに読書生活を送る筈が何故か家がハーレム化し金持ちになったあげく黒覆面の最強怪傑となってしまった~
於田縫紀
ファンタジー
図書館の奥である本に出合った時、俺は思い出す。『そうだ、俺はかつて日本人だった』と。
その本をつい翻訳してしまった事がきっかけで俺の人生設計は狂い始める。気がつけば美少女3人に囲まれつつ仕事に追われる毎日。そして時々俺は悩む。本当に俺はこんな暮らしをしてていいのだろうかと。ハーレム状態なのだろうか。単に便利に使われているだけなのだろうかと。
ペットたちと一緒に異世界へ転生!?魔法を覚えて、皆とのんびり過ごしたい。
千晶もーこ
ファンタジー
疲労で亡くなってしまった和菓。
気付いたら、異世界に転生していた。
なんと、そこには前世で飼っていた犬、猫、インコもいた!?
物語のような魔法も覚えたいけど、一番は皆で楽しくのんびり過ごすのが目標です!
※この話は小説家になろう様へも掲載しています
アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜
芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。
ふとした事でスキルが発動。
使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。
⭐︎注意⭐︎
女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる