最強魔族の俺が最弱の女勇者を鍛えるワケ ~魔王軍二番手の冥王は人間界でもSランク冒険者のようです~

八神 凪

文字の大きさ
143 / 155
第八章:過去の清算を

その140:一致団結VS恐怖政治

しおりを挟む

 「さあ、今日はザガムの誕生日だ、みんな盛り上げてくれ! そして真に倒すべき敵の打倒のため協力して欲しい!」
 「「ぶっ!?」」
 「おい、大丈夫かルーンベル、イスラ」
 
 魔族を集めた宴の席でフェルが募集を始め、二人が酒を吹いた。
 俺とファムで拭くものを渡していると、ルーンベルがせき込みながら口を開く。

 「げほ……いやいや、この席で全員に言っちゃう!?」
 「たくさん集まっているし、面倒が無くていいだろう?」
 「ああ……親戚だってわかりますねえ……」

 イスラが呆れたようにそう言い、俺は首を傾げる。
 そんなフェルの言葉を皮切りに宴は開始され、会場となった大魔王城の庭と周辺は大騒ぎとなった。

 「ザガム様、自分探しの旅楽しかったですか!?」
 「嫁を探しに行ったんだって、ほら美人ばっかり連れているだろ」
 
 「違うわ! 真の嫁はあたしなのよ!」
 「はいはい【霊王】のお嬢さんはもうちょっと成長してからだなあ」
 
 「ぬぁんですってぇ!? 来いアンデッド!」
 「はいはい、なんですか? 楽しい席なんだから勘弁してくださいよ」
 「飲んでんじゃないわよ! ……って、お酒漏れてんじゃない」
 「スケルトンですし」

 「【炎王】良かったですね、ザガム様が帰って来て! ライバルが居ないって寂しそうでしたもんね」
 「……死ね!」
 「ぎゃぁぁぁぁぁ!?」

 まあ、そんな感じで能天気な魔族達との宴は進む。
 
 そして段々と落ち着き始めたころ、庭に集まった魔族が綺麗に整列し、別に卓を囲んでいる俺達の前に立った。

 「我が魔王軍の精鋭は全員ここに居ます。150年前の遺物、大魔王クロウラー討伐のため極北へお供します」
 「……敵は強大だ。死ぬかもしれないよ?」
 「それでも、ですよ。俺達や親は今の大魔王、メギストス様に助けられた者ばかり。悲願は大魔王様だけではないということです」
 「皆さん……」
 「ああ、ファム様お気になさらず。死ぬつもりはありませんから! はははは!」

 魔族達が一斉に笑い、場が和む。
 全てを話したらしく、フェルが元人間であの戦いで先陣を切って戦ったことを知る年老いた魔族も居たらしい。

 メギストスという存在がどこから現れたのか? 急に現れ魔族達を引き連れてこの領地を作った……それは誰にも知る術がなかったが、今回、明らかにされたというわけだ。

 年老いた魔族が泣きながら感謝しているのを見て、魔族も人間も変わらないのだろうと思う。母も叔父も本当にお互いの種族を大切にしていたのだとも。

 俺は人間と魔族、それも大魔王の血をも引く者だが、案外魔族と人間のハーフなんて珍しくなくなるのかもしれないな。

 「絶対、勝たないとですね。私の中に入ったお母様もそう言っています」
 「……そうだな」
 「あんたが頼りなんだから、しっかりしなさいよ? サポートはやるからさ」
 「死にたくないので、是非お願いします」
 「お前、一人でそんなにハンバーグを……」

 ファムやルーンベル、ハンバーグを馬鹿みたいに皿へ乗せたイスラが俺を囲んで決起する。その様子に俺は笑みが零れた。

 「ザガムはようやく自分を取り戻したって感じかな。ただ、クロウラーは自分の後継にザガムを選んでいたらしいし、注意すべきは君達四人かもしれないね」
 「かもしれん。が、それほど俺達はやわでもない」

 ……終わったら本当に結婚するのか、俺は……?

 ◆ ◇ ◆


 ――極北――

 『クロウラー様、お加減はいかがでしょう?』
 『ふむ、悪くない。完全復活とまではいかないが、久しく耐えていた人間を食らったおかげでこうして体を動かすことができる』
 『それはなにより……。それとゼゼリックが帰還しました。なにやら土産があるとのこと』
 『ほう』

 極北にある城で頬杖をつきながら目の前に膝をつく青い肌の魔族の言葉に興味を示すクロウラー。
 復活して10年ほど暗躍し、配下を放って力を蓄えていた彼が、帝国へ潜り込んだゼゼリックの土産が楽しみだとほくそ笑む。
 神霊の園から送られてい女は性行為と共に魔力を奪い、抜け殻となった者は配下に慰み者として放っていた。

 『……戻りました』
 『む、ゼゼリックよどうした、随分力が落ちているようだが?』
 『は……これから話すことと繋がっているのですが――』

 一応、人型を保ってはいるが、下半身を切り離したゼゼリックは半分以下の力しか残していなかった。あのまま戦っていればヴァルカンに倒されていたであろう。

 それはともかく、とザガムや勇者ファムのこと、ヴァラキオンのことといった知り得た情報を全て。

 『ふ、くく……ザガム! ついに見つかったか。アレは大魔王の俺と勇者であるユランの血を受け継いだハイブリッド。魔族を率いるには力だ、ヤツはそれだけの力を有するはず……必ず捕えるのだ。それと勇者とやらも女か、俺とザガムの子を産ませる道具にするかな』

 クロウラーが顎に手を当ててほくそ笑むと、ゼゼリックが頭を上げずに口を開く。

 『御意に。とりあえず私は帝国の人間どもを一人残らずここへ連れてきました。私も力を回復させるために力を頂きますが……後はいかようにでも』
 『助かるぞゼゼリック。ヴァラキオンが殺られて女が供給されなくなったからな。さて、極北で待つのも退屈だ、帝国とやらの椅子をもらうとするか』
 『そうですね、手配をしましょう。息子様は逃がしません』
 『人間どもの恐怖に浮かぶ顔を見るのが楽しみだな――』

 そこへ、伝令が駆け込んでくる。

 『会談中申し訳ございません! て、敵襲……! この極北に向かって大群が!』
 『なんだと……?』


 ◆ ◇ ◆


 「体調に不安は無いか?」
 「はい! 私達は黒竜さんでいいんですかね?」
 「残りは船で行くみたいだし、いいんじゃない? ユースリアさんが先導するなら転覆もないだろうし」

 ファムとルーンベルが黒竜の背に乗ってそんな話をしていた。
 すでに俺達は出発し、あと少しで極北とやらへと到着する予定となっている。
 ファムの装備は少しいい物へ変更し、ルーンベルとイスラも魔力を底上げする装飾品やローブをフェルが用意し、装いは変わっていた。
 倒すなら全力でやるべきだとの意見により即実行となったわけだ。 

 「イザールさん達も行くんですね」
 「ああ。俺の部下だ。それにあいつらの戦力は頼りになる。イザールはフェンリアーという狼族のエリート。ルックネスはドラゴン族でも屈指の実力者だ」
 「ウチのブレイブ君もなかなかですけどね」
 「ぴぎゃー!」

 魅了効果はもうないはずだが、ワイバーンを飼いならしているイスラに関心していると、目の前に氷で覆われた大地が見えてきた。

 「……あれか」
 「いよいよね。ん? なんか黒い影が……」
 「気づかれたか、楽にはいかないようだな」

 黒い影は敵。
 どうやら、奇襲とまではいかないようだ。
 
 「よし、黒竜で先制するぞ。ガイ、オル、マス、頼むぞ」
 「「「グォォォォン!!」」」
 「張り切ってます!」
 「ハンバーグが美味しかったんですよきっと」
 「いや、名前をつけてもらったからじゃない? ま、いいか! それじゃ大火球をおみまいしてやりなさい!」

 ルーンベルの乗った黒竜、ガイが先制攻撃を放ち、戦いが始まった――
しおりを挟む
感想 304

あなたにおすすめの小説

理想の男性(ヒト)は、お祖父さま

たつみ
恋愛
月代結奈は、ある日突然、見知らぬ場所に立っていた。 そこで行われていたのは「正妃選びの儀」正妃に側室? 王太子はまったく好みじゃない。 彼女は「これは夢だ」と思い、とっとと「正妃」を辞退してその場から去る。 彼女が思いこんだ「夢設定」の流れの中、帰った屋敷は超アウェイ。 そんな中、現れたまさしく「理想の男性」なんと、それは彼女のお祖父さまだった! 彼女を正妃にするのを諦めない王太子と側近魔術師サイラスの企み。 そんな2人から彼女守ろうとする理想の男性、お祖父さま。 恋愛よりも家族愛を優先する彼女の日常に否応なく訪れる試練。 この世界で彼女がくだす決断と、肝心な恋愛の結末は?  ◇◇◇◇◇設定はあくまでも「貴族風」なので、現実の貴族社会などとは異なります。 本物の貴族社会ではこんなこと通用しない、ということも多々あります。 R-Kingdom_1 他サイトでも掲載しています。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる

僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。 スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。 だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。 それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。 色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。 しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。 ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。 一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。 土曜日以外は毎日投稿してます。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

異世界翻訳者の想定外な日々 ~静かに読書生活を送る筈が何故か家がハーレム化し金持ちになったあげく黒覆面の最強怪傑となってしまった~

於田縫紀
ファンタジー
 図書館の奥である本に出合った時、俺は思い出す。『そうだ、俺はかつて日本人だった』と。  その本をつい翻訳してしまった事がきっかけで俺の人生設計は狂い始める。気がつけば美少女3人に囲まれつつ仕事に追われる毎日。そして時々俺は悩む。本当に俺はこんな暮らしをしてていいのだろうかと。ハーレム状態なのだろうか。単に便利に使われているだけなのだろうかと。

ペットたちと一緒に異世界へ転生!?魔法を覚えて、皆とのんびり過ごしたい。

千晶もーこ
ファンタジー
疲労で亡くなってしまった和菓。 気付いたら、異世界に転生していた。 なんと、そこには前世で飼っていた犬、猫、インコもいた!? 物語のような魔法も覚えたいけど、一番は皆で楽しくのんびり過ごすのが目標です! ※この話は小説家になろう様へも掲載しています

アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。 ふとした事でスキルが発動。  使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。 ⭐︎注意⭐︎ 女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。

処理中です...