最強魔族の俺が最弱の女勇者を鍛えるワケ ~魔王軍二番手の冥王は人間界でもSランク冒険者のようです~

八神 凪

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第八章:過去の清算を

その143:圧倒的じゃないか新魔王軍は

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 「ザガムさんがんばれー!」
 「言われるまでもない」
 『女の声援くらいで張り切っちゃってさあ!!』
 
 先制はヒャッピアン。
 青白いロングソードを激しく、小刻みに繰り出してくる。
 適当に見えるが力を入れている部分は急所を狙っているので、剣技の精度は高いようだ。
 だいたいの動きは掴んだので攻撃の手を止めるため、ブラッドロウでせり合う形に持っていき、金属の響く音が空に拡散された。

 「鋭いが、相手が悪かったな。この程度なら他の【王】にも勝てんぞ?」
 『くく……触れたな? このフリーズブレイドの力を見ろ!』
 「む」
 「ああ、剣から氷がほとばしっていますよ!」
 「ぴぎゃぎゃ!」

 イスラの言う通りブラッドロウが触れている部分が凍り始め、剣を引いたもののすぐに腕まで氷におおわれてしまう。

 『今更気づいても遅いんだよ! クロウラー様のご子息だが、痛めつけさせてもらうぜ!』
 「ふむ、これは剣の性質か? それともお前の能力か?」
 『そんなことはてめぇで確かめろ、ズタズタにしてやるぜ!』
 「あの剣、欲しいですねえ。今のもいいんですけど」

 ファムが呑気にそんな感想を抱いたところで、ヒャッピアンのにやけた表情になり、攻撃が激しくなる。

 『ふん、女にも心配されねえとはな! 避けるんじゃねえ!』
 「別に応援してくれていないわけではないぞ? 俺が勝つと思っているからだな。……くらえ」
 『んな!?』

 剣で喉を突いてきたと同時に、俺は凍った右腕でブロック。
 そのまま振り払い、氷の塊を頭上に落としてやる。

 『ぐおおおお!?』
 「おっと、手が滑った。氷だけにな」
 『舐め――ぐあ!?』

 俺は凍った右腕でヤツの剣をガードしつつ殴打を繰り返す。
 天然の盾になった上に武器にもなる。これはありがたい。
 
 「ぐぬぬ……ザガムさん、やりますね……! こおりゃまいった! ……弱いか……。邪魔ですよ<ギガファイア>!」
 「イスラさんはなにと戦っているんですか!?」

 つまらないことを言いながらも飛んでくる魔族を魔法で倒すあたり、イスラもなかなか侮れない。ファムもしっかりツッコミを入れつつ剣で遊撃をしていた。

 『はああ……! ごほ!? ぐえ……』
 「諦めろ、お前では俺には勝てん」
 『ば、馬鹿な……勇者と大魔王様の血はこれほどなのか……!?』
 「大魔王の血は不本意だが、まあ、そういうことだ。さて、もう一度問うぞ? 降参するか、ここで死ぬか」
 『ケッ、降参なんてするかよ。魔族の誇りである死を選ぶね』
 「死んでどうにかなるものでもあるまい。大魔王は必ず倒す。無駄な殺しはしたくないのだが、俺の配下にならないか?」

 俺がそういうと、ヒャッピアンは目を見開いた後に大笑いする。

 『だはははは! おもしれえな! さすがは大魔王様のご子息……。だが、今のあんたは大魔王様の敵だ。そっちが下るってんなら配下になってもいいが?』
 「交渉決裂だな」

 徹底抗戦の意思を見せたので、俺は氷ついた腕に魔力を込めて粉々に吹き飛ばしてやると――

 『さあ、来やがれ。フリーズブレイドで今度は全身を凍らせてやるぜ』
 「惜しかったな。初手でそれをやっていれば勝てただろうに。‟冥空斬翔”」
 『んな……!? この距離で――』
 
 遠距離からの斬撃。さらに追い打ちで踏み込んでから十字斬により、バラバラになっていく。
 落下していく様を見ながら、俺はヤツに言う。

 「忠誠心に免じて、最高の業で葬ってやる。冥界で他の仲間と仲良くな」
 『チッ……遊ばれていたってのか……この俺が!? ……くそ、おらよ』
 「こいつは……」
 『フリーズブレイドだ。てめぇにくれてやる。いつか出会ったら今度こそ殺し――』

 俺に剣を投げつけた後、ヒャッピアンの体は灰となり風に乗って消えた。
 主のため死を恐れぬ心は見事だが、それで掴めるものはなにも無い。
 
 「やりましたねザガムさーん!」
 「ああ」

 ……俺は皆のために死ぬわけにはいかない。
 それがお前と俺の決定的な差だ。

 さて、マルクスと地上もパーティが始まったようだ、雑魚を一掃しようか。
 
 ◆ ◇ ◆

 
 「手伝う?」
 「いや、問題ない。ザガムの下へ向かってもいいぞ」
 「ちょーっと動きが怪しいっぽいわよ?」
 「……なるほど、ザガムの嫁って感じだな」
 『……』
 
 さて、ザガムの方はファムとイスラが居るので特に問題はないわね。
 勇者の力まで手に入れたザガムが簡単に死ぬことは無いでしょうし。
 
 問題は【天王】のマルクスさんと私の前に居るこの陰気な魔族。
 ゼゼリックやさっきぶん殴られて落ちた奴とは雰囲気が違うので、あえてこちらに残ったわけだけども……

 『我の名は紫煙のプラチオ。貴様も死ぬ前に名乗っておくが良い。そちらの女は頂いていくが』
 「俺は【天王】マルクス。大魔王メギストスが腹心。死ぬかどうかはお前達次第だな」
 『……お前が我を倒そうとしているように聞こえるが?』
 「そう言ってんだよ」

 一触即発。
 言葉は丁寧だけどお互い不敵な態度だ。

 「ホーリー……」
 「ルーンベルと言ったか? 援護は不要だ。行くぞプラチオとやら……!!」
 「あ、ちょっと!」

 私の援護は無用とマルクスは大きな槍を手にし、一瞬でプラチオに迫る。
 槍の間合いに入ったところで渾身の一撃を繰り出した。

 「ぬん!」
 『奇遇だな、我も得物は槍でな』
 「むう、先端を合わせてくるとは……!」

 マルクスの突き出した槍に対し、同じく槍で同じ動作をして攻撃を封じてきたけど、針の穴に糸を通すほどの難しさをあっさりとやってのけたことに戦慄する。

 「大丈夫かしら」
 「任せろ、まだここからだ!」
 『愚かな……!』

 マルクスが槍を引くと、距離を取って斬撃に切り替える。
 プラチオは変わらず突きかかってくるので状況的には不利かも……。

 そう思っていたけど空の戦いは上下左右、全ての角度から襲ってくるし、襲われる。
 そこは天王と言われる所以か、戦いに慣れてくると縦横無尽に攻め立てることができるようになった。
 
 「おおおお!」
 『なんの!』
 「チッ、掠ったか! くらえ!」
 『ぬう、やる……!』

 頭上から急襲したマルクスを迎撃すべく動いたプラチオの槍が脇を掠めたけど、こちらの攻撃は肩口に刺さった。

 「流石ね、これなら勝てるわ!」

 蓋を開けてみれば腕前はほぼ互角か、マルクスの方が上。
 プラチオの攻撃は掠る程度だけど、マルクスは空中殺法をこなしていく。

 「もらったぞ、プラチオ! ……うぐ……」
 『……はあ!』
 「ぐあ!?」
 「どうしたの!?」

 最後のトドメとばかりに攻撃を仕掛けたマルクスが急に苦しみだし、攻撃を受けていた。
 
 『くく……そろそろ効いて来たか。我が血は毒。槍の先に塗っておけば少しずつ体がマヒするのだ……』
 「くっ……! 不覚……」
 『調子に乗った貴様の負けよ! 食らえ!』
 「マルクス!」

 叫ぶ私を彼は手で制し、問題ないと目が訴える。目は死んでいない。

 そして――
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