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第九章:ラストバトル
その147:突入
しおりを挟む「む、あれは――」
「す、凄いですね……」
フェルディナントの放った魔法が地上の魔法生物を一掃していくのを見てファムが冷や汗をかきながら呟く。
俺との戦いでも使ったことが無い魔法だ。あれほどの威力をもつ魔法を隠していたか。
「ザガムさーん、そろそろこっちも打ち止めかもしれませんよ」
「よし、このまま進むぞ」
「いよいよ決戦ね」
「こっちも片付いた」
俺が黒竜に乗り込むと、ルーンベルとマルクスも合流してきた。
「助かる。大丈夫だったかルーンベル?」
「ええ、マルクスさんが強かったからね」
「うむ、こいつは俺の友人で、腕は確かだ。だからお前を預けても安心できる」
「よせよ、恥ずかしい……」
マルクスが肩を竦めて照れているのがわかり、俺はフッと笑う。
この違いが認識できるようになったということは、やはり俺は変わったのだろう。なるほど、感情というものは生きることを豊かにするのだと思う。
そんなことを考えていると、霧がかっている目の前に巨大な城が浮かび上がってきた。
「大きい城……叔父様のお城の何倍あるんだろ……」
「到着したみたいね」
「そのようだ。<ブラックフレア>」
「あ、いきなり撃っちゃうんですね」
イスラの言う通り、俺はさっさと城を破壊するため魔法をぶっ放した。
着弾すると一部が崩れ、特に魔法障壁などがないことが分かる。
「なるほど、あまり脅威では無さそうだな。デッドリーゲイルで破壊してやろうか」
「黒竜のブレスで焼き払ってもいいんじゃない?」
マルクスとルーンベルがやる気だな。俺もその案には賛成だと思っていると、ファムが下を見て声をかけてきた。
「あ、ザガムさん、下で叔父様が呼んでますよ」
「一旦合流しろ、か。みんな、降下するぞ」
「はーい」
地上の魔法生物はまだ生み出されているようで、兵士の魔族が対応に当たっていた。
ただ、それほどの戦力ではないので面倒という点を除けば、まあ負けることはないだろう。
「やあ、ザガム。上は落ち着いたみたいだね」
「ああ。しかしどうする? 空が手薄のようだが、上から攻めるか?」
「んー、そうだね。だけど、僕の予想だとそっちは罠だと思う。あまりにあっさりしすぎているからねえ」
「なるほど……その可能性は確かにあるな」
フェルいわく、地上に比べて空が手薄すぎるというのが気になるのだと。
言われてみれば魔法生物以外で突撃してきた以外はあっさり倒せたし、すでに出てきていないのが証拠かとも思う。
「では、このイスラちゃんがちょっと攻撃を仕掛けてみましょう。行きますよブレイブ君!」
「ぴぎゃー!」
「おい、一人で行く気か。俺も行くぞ」
「大丈夫ですよ、危なかったらすぐに戻りますし!」
小回りが利くワイバーンなら逃げれるか?
上昇していくイスラを見届けていると、不意に彼女が魔法を放ち、先ほどと同じく見事に城を破壊する。
「……大丈夫そうね?」
「黒竜で破壊を――」
そう呟いた瞬間、城の中から触手のようなものが飛び出してきてイスラとワイバーンを拘束した!
「いかん! <ブラックフレア>!」
「<デッドリーゲイル>!」
「では僕はこっちへ。<クリムゾンランス>
俺とマルクスが同時に触手へ魔法を撃ち、フェルが城へと真っ赤な槍を打ち込んでくれた。
イスラとワイバーンはすぐに離脱して俺達の下へ降りて来た。
「うわあああああん! めちゃくちゃ怖かったんですけど!!」
「よしよし、危なかったわね。あのまま引きずり込まれていたらあんなことやこんなことになっていたかもしれないわね……」
「やめてくださいよ!? ……アレが絡んだ瞬間、気持ち悪さを感じたんですから……」
「イスラさんが真面目にそういうの珍しいです……」
「人をなんだと思ってるんですかね!?」
三人がそんな会話をしている中、フェルは俺達に指示を出す。
「このまま僕達は城へ突入する。【王】全員が居れば恐らく勝てるはずだ」
「地上はどうするんです?」
「……酷なようだがこのまま兵士たちに任せることとする。魔法生物相手なら勝てるだろう」
「それを承知で来てもらっていますから、彼らも本望でしょう」
真の姿を見せたユースリアが神妙な顔つきで告げ、俺達が頷くとフェルを先頭に入り口にある巨大な門へと向かう。
「さて、素直に開いてくれますかね……っと!」
「手伝うぞヴァルカン」
「へっ、仕方ねえ手伝わせてやるよ」
俺、ヴァルカン、ロックワイルドの三人で開門にかかる。しかし、全力で押しても引いてもびくともしない。
「開錠が必要なのか? ……いや、二人とも下がってくれ」
「あん? どうした」
「試したいことがある」
俺は二人にそう言うと、フェルをチラリと見る。
あの男が叔父なら、ご先祖様の魔法は俺にも使えるはず。
「ふう……」
先ほど見せてもらった魔法をイメージし、俺は両手を組み合わせて放つ。
「<ドラゴニックブレイズ>!!」
「あ! さっきの!」
「はは、なるほどね」
瞬間、青白い巨大な竜を模した魔力が門を直撃し――
「す、すごいですね……大魔法使いのわたしも初めて見ました……」
「まあ、規格外ってやつよね……」
「ルーンベルさんも結構凄いですけどね! それじゃ、行きましょうか!」
ファムの声で開いた扉から突入する俺達。
中はほどほどに明るく、逆に薄暗さが薄気味悪さを主張しているようにも見える。
「うう……ゴーストが出そうです……」
「ここに居るけどな」
「わあ!? って、霊王の子じゃないですか。スケルトン?」
「そうよ! こいつ、あんたなんかよりずっと強いんだから。ザガム様の嫁に相応しいのはわたしよ!」
「謎の理屈です!? でも、かっこいい剣を持ってますね」
【霊王】の片割れ、イルミスと共に並走するスケルトンがファムに少し頭を下げる。
……手練れだな、生前は相当な使い手だぞあれは。
「ゴーストが出たらその時は私かその子がなんとかするでしょ……っと、それ以上の相手が先に出たわね」
「……そのようだ」
階段に差し掛かったその時、ルーンベルが上を見て口を開く。
そこには――
『我らが黒武王を倒すとは……以前とは違うようだな、大賢者』
「そうだね、今の僕には仲間が多い。そして僕自身も君たちに合わせて強化させてもらったよ」
『では、その力見せてもらおう……!!』
金髪の女と、銀髪の女が二人、激高して飛び掛かって来た。
「よし、ここは俺が止める。フェル達は先へ行け!」
「ダメよロックワイルド。ここは私がやるわ」
「え、ええー……?」
ユースリアに尻を叩かれて納得いかないと言った顔をするロックワイルド。
しかし、オーダーは決まっていたようで、銀髪をユースリアが、そして金髪をメモリーが対峙する形になっていた。
「同じ女性同士、仲良くしましょう? そうよね、メモリー」
「ま、どっちでもいいんだけどー? でも、輝羽のベリファ、あんたには借りがあるからここで返させてもらうわね」
『その顔……勇者一味の者か……! あ、こら待て貴様等!?』
「待つ馬鹿が居ると思うか? ……任せたぞ二人とも」
『こういうのは決着がついてから次でしょうが! ……おっと、手癖、いや触手癖が悪いわね、あんた』
銀髪が呟くのを尻目に、俺達は先へ進む。
まだ配下がいるか? クロウラー。それでも俺はお前のところに必ず辿り着いてやる。
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