最強魔族の俺が最弱の女勇者を鍛えるワケ ~魔王軍二番手の冥王は人間界でもSランク冒険者のようです~

八神 凪

文字の大きさ
151 / 155
第九章:ラストバトル

その148:大魔王クロウラー

しおりを挟む

 「……他に護衛は居ないのか?」
 「静かすぎますね、罠もたいしたことないですし」

 ファムが壁から突き出てくる槍を破壊しながら感想を漏らす。
 いう通り、ここまで敵も出て来ておらず罠もお粗末なものばかり。
 
 正直、拍子抜けするが、構わず階段を駆け上がり、迷路のような城内を移動していると、やがて大きな扉の前に到着した。

 「ここ、かしら? これみよがしにでかい扉だけど……」
 「ま、大魔王ってのは威厳を示すためにこういうのをやりたがるものだからね」
 「フェルの部屋もそうだったしな」
 「あれは女の子ともにょもにょするための部屋だよ? 僕の部屋はこじんまりとしている」
 「聞きたくな――」

 どうでもいい話だと思った矢先、扉の向こうからとてつもない魔力を感じて俺達は扉に視線を合わせた。すると次の瞬間、男の声が聞こえてくる。

 『ふん、ついにここまで来たか。入るがいい』
 「扉が開きましたよ」
 「ぴぎゃー」

 イスラがごくりと唾を飲みこみ、それを合図に俺とフェルが先頭となり中へ。
 
 「真っ暗だな、火をつけるか?」
 「放火魔みたいことを言うなヴァルカン。……見ろ」
 「ふん、おでましか」

 真っ暗闇の中でヴァルカンが物騒なことを言いながら手から炎を出していると、灯りが灯り、真っすぐに伸びた赤い絨毯が目に入る。
 
 そしてその奥には――

 『ようこそ、我が城へ! 知っての通り、俺の名はクロウラー。この世界の大魔王だ』
 「僕が大魔王フェルディナント。よろしく、旧世代の大魔王」
 『……貴様、ユランと共にいた仲間か』
 「お、ちゃんと覚えていたのかい? 性欲しかないような頭でさ」
 『……』

 フェルの挑発に目を細めて黙り込むクロウラー。
 なるほど、体はでかいし魔力も高そうだ。
 そして俺の父親、か。
 挨拶をしておきたいところだが、俺は気になったことをフェルに言う、

 「いや、お前もだろう。さっきもにょもにょしていると言っていたしな」
 「……さっきのもにょもにょがエッチなことなんですか? そうなんですか……?」
 「最低ね」
 「ちょっと離れて貰えますかね?」
 「黙ってたら分からなかったのに!?」
 『ええい、やかましい!』

 やり取りを黙って見ていたクロウラーが激高して目から光を放ってきた。
 それが俺とフェルの足元を焼き、さらにクロウラーは続ける。

 『ふん、相変わらず軽い男だ。しかし、お前には感謝している』
 「ほう?」
 『我が息子ザガムをここまで育ててくれたことと、女を献上しに来てくれたことをな』

 ニタリと笑みを浮かべながら俺とファム達に視線を合わせてくるクロウラーだが、ファム達は嫌悪感丸出しでひそひそと話す。

 「ザガムさんと似てませんね」
 「お母さん似なんでしょ? 髪も違うし」
 「そもそもあのエロ顔がわたし気に入りません」
 『聞こえてるぞ貴様等!? いいだろう……ユランもそんなことを言っていたが、その嫌悪感のある相手の子を孕ませてやる……だが、その前にザガムよ』
 「なんだ?」

 クロウラーが真顔で俺に声をかけて来た。何事かと思い返事をすると、ヤツは選択を迫ってくる。

 『どうせ俺には勝てん。どうだ、こちらに協力するのであれば部下を殺したことと、命だけは助けてやってもいい。人間達を蹂躙するには戦力も必要だ。いや、一人でもできるんだがな? 大勢いた方が――』
 「断る。<ギガファイア>」
 『うお!? き、貴様……!? 話している途中で魔法を撃つとは酷いことをする!』
 「うるさい行くぞ。ファム達はバックアップを頼む」
 「よし、僕達もいくよ」
 
 とりあえず聞いていても仕方がないので魔法を放ち、前傾姿勢で一気に詰める。後続にフェルとヴァルカン、マルクスにイルミスのスケルトンとキルミスが続く。

 「ロックワイルドは防御が固い、ファム達を頼む」
 「お、おう! ……さっきから地味じゃないか俺!?」

 ロックワイルドがなにか叫んでいたが、クロウラーが目の前に迫ったのでブラッドロウでまずは先制を取る。

 「ぬん!」
 『バカ息子が、叩きのめして躾けてくれる! 魔王の剣よ!』
 「つぁぁ!!」

 どこからともなく出した巨大な剣で俺の攻撃をガードする。そのままゼロ距離でブラックフレアを叩き込むため片手を向けると、足を払われ関係ない方向へ魔法が飛んでいく。

 「チッ」
 『まだまだだ……ぐあ!?』
 「いやいや、ザガムだけじゃないんだからさ」
 『賢者……! ならば貴様から死ぬか? 今度こそその首と胴体を切り離してやる』

 俺に掴みかかろうとしたクロウラーに側面に回り込んでいたフェルがプライマルファングを叩きつけていた。
 左腕がざっくりと切り裂かれるが、煙を立てて再生をするのが確認できる。
 大魔王は伊達ではないかと思っていると、フェルに襲い掛かろうとしたクロウラーにスケルトンが立ちはだかる。

 「いけ、オグレ!」
 「……!」
 『ぐぬ、骨ごときが邪魔をするか!』
 「あたしも居るわ! くらえっ」
 『うぬ……!』

 魔王剣を防いだスケルトンが反動で下がらせる間に、キルミスの拳がヤツの顔面に突き刺さる。顔の形が変わる打撃を受けつつも、拳をでキルミスを振り払おうとした。

 『小娘が! 捕えておもちゃにしてやろうか!』
 「おっと、そうはさせねえよ。こいつはコギーの遊び相手になってもらうんだからよ! ‟ヴァルカンブロウ”!!」
 『ぐっ……! 舐めるな!』
 「がはっ! ……ザガム!」
 「任せろ」

 ヴァルカンの背中を踏んで頭を割るため剣を振り下ろす。
 しかし、ヴァルカンを蹴り飛ばしてから俺を迎撃しようと大剣を盾とし、再生が終わりかけた左手に魔力を集中させるクロウラー。

 『小賢しい! <ボルケイ――>』
 「こちらに何人いると思っているのだ? デッドリースピン!」
 『ぐがあ!?』
 「隙が出来た、助かるマルクス」
 『おのれ……! <ギガクラッシャー>!!』
 「む、みんな防御に徹しろ!」

 フェルが叫んだ直後、クロウラーの全身から魔力の波動がほとばしり俺達を包み込む。まずい、と思いガードをすると俺の体がはじき返され、地上へと着地する。

 「ふう、流石は大魔王を名乗るだけあるか」
 「だ、大丈夫ですか!?」
 「服は焦げたが、大したことは無い」

 他の者も体から煙は上がっているものの、大したダメージではなさそうだ。
 だが、若干一名、大きくショックを受けている者が居た。

 『ば、かな……!? 俺のギガクラッシャーを受けてその程度で済んでいるだと……!?』
 「うーん、そのようだね。はっはっは! 僕は無傷だよ」
 『なんだと!? 前の戦いではこれで瀕死になったはず……』
 
 目を丸くするクロウラーに、珍しく邪悪な笑みでフェルが口を開く。

 「……あの頃は人間だったからねえ。それに封印されていた君と違い、僕達は150年、鍛えることができた。クロウラー、君がその強さまで至ったのは年月だ。その差を埋めることができないとでも?」
 『ぐ、ぬ……! ふざけるな! 俺は大魔王、勇者をも退けた歴代最強だぞ! 貴様らごとき木っ端魔族に負けるはずが――』
 「ではなぜ貴様の部下は俺達を誰一人倒せず破れたのだ? お前は置いて行かれたのだ、時という牢獄の中でな」
 『おのれ、愚息が! 八つ裂きにして従わせてやる!』

 激高するクロウラー。
 だが、取り囲んだ俺達に負けはないと確信する。

 そして最後のアタックが開始された――
 

 
しおりを挟む
感想 304

あなたにおすすめの小説

理想の男性(ヒト)は、お祖父さま

たつみ
恋愛
月代結奈は、ある日突然、見知らぬ場所に立っていた。 そこで行われていたのは「正妃選びの儀」正妃に側室? 王太子はまったく好みじゃない。 彼女は「これは夢だ」と思い、とっとと「正妃」を辞退してその場から去る。 彼女が思いこんだ「夢設定」の流れの中、帰った屋敷は超アウェイ。 そんな中、現れたまさしく「理想の男性」なんと、それは彼女のお祖父さまだった! 彼女を正妃にするのを諦めない王太子と側近魔術師サイラスの企み。 そんな2人から彼女守ろうとする理想の男性、お祖父さま。 恋愛よりも家族愛を優先する彼女の日常に否応なく訪れる試練。 この世界で彼女がくだす決断と、肝心な恋愛の結末は?  ◇◇◇◇◇設定はあくまでも「貴族風」なので、現実の貴族社会などとは異なります。 本物の貴族社会ではこんなこと通用しない、ということも多々あります。 R-Kingdom_1 他サイトでも掲載しています。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる

僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。 スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。 だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。 それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。 色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。 しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。 ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。 一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。 土曜日以外は毎日投稿してます。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

異世界翻訳者の想定外な日々 ~静かに読書生活を送る筈が何故か家がハーレム化し金持ちになったあげく黒覆面の最強怪傑となってしまった~

於田縫紀
ファンタジー
 図書館の奥である本に出合った時、俺は思い出す。『そうだ、俺はかつて日本人だった』と。  その本をつい翻訳してしまった事がきっかけで俺の人生設計は狂い始める。気がつけば美少女3人に囲まれつつ仕事に追われる毎日。そして時々俺は悩む。本当に俺はこんな暮らしをしてていいのだろうかと。ハーレム状態なのだろうか。単に便利に使われているだけなのだろうかと。

ペットたちと一緒に異世界へ転生!?魔法を覚えて、皆とのんびり過ごしたい。

千晶もーこ
ファンタジー
疲労で亡くなってしまった和菓。 気付いたら、異世界に転生していた。 なんと、そこには前世で飼っていた犬、猫、インコもいた!? 物語のような魔法も覚えたいけど、一番は皆で楽しくのんびり過ごすのが目標です! ※この話は小説家になろう様へも掲載しています

アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。 ふとした事でスキルが発動。  使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。 ⭐︎注意⭐︎ 女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。

処理中です...