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第九章:ラストバトル
その148:大魔王クロウラー
しおりを挟む「……他に護衛は居ないのか?」
「静かすぎますね、罠もたいしたことないですし」
ファムが壁から突き出てくる槍を破壊しながら感想を漏らす。
いう通り、ここまで敵も出て来ておらず罠もお粗末なものばかり。
正直、拍子抜けするが、構わず階段を駆け上がり、迷路のような城内を移動していると、やがて大きな扉の前に到着した。
「ここ、かしら? これみよがしにでかい扉だけど……」
「ま、大魔王ってのは威厳を示すためにこういうのをやりたがるものだからね」
「フェルの部屋もそうだったしな」
「あれは女の子ともにょもにょするための部屋だよ? 僕の部屋はこじんまりとしている」
「聞きたくな――」
どうでもいい話だと思った矢先、扉の向こうからとてつもない魔力を感じて俺達は扉に視線を合わせた。すると次の瞬間、男の声が聞こえてくる。
『ふん、ついにここまで来たか。入るがいい』
「扉が開きましたよ」
「ぴぎゃー」
イスラがごくりと唾を飲みこみ、それを合図に俺とフェルが先頭となり中へ。
「真っ暗だな、火をつけるか?」
「放火魔みたいことを言うなヴァルカン。……見ろ」
「ふん、おでましか」
真っ暗闇の中でヴァルカンが物騒なことを言いながら手から炎を出していると、灯りが灯り、真っすぐに伸びた赤い絨毯が目に入る。
そしてその奥には――
『ようこそ、我が城へ! 知っての通り、俺の名はクロウラー。この世界の大魔王だ』
「僕が大魔王フェルディナント。よろしく、旧世代の大魔王」
『……貴様、ユランと共にいた仲間か』
「お、ちゃんと覚えていたのかい? 性欲しかないような頭でさ」
『……』
フェルの挑発に目を細めて黙り込むクロウラー。
なるほど、体はでかいし魔力も高そうだ。
そして俺の父親、か。
挨拶をしておきたいところだが、俺は気になったことをフェルに言う、
「いや、お前もだろう。さっきもにょもにょしていると言っていたしな」
「……さっきのもにょもにょがエッチなことなんですか? そうなんですか……?」
「最低ね」
「ちょっと離れて貰えますかね?」
「黙ってたら分からなかったのに!?」
『ええい、やかましい!』
やり取りを黙って見ていたクロウラーが激高して目から光を放ってきた。
それが俺とフェルの足元を焼き、さらにクロウラーは続ける。
『ふん、相変わらず軽い男だ。しかし、お前には感謝している』
「ほう?」
『我が息子ザガムをここまで育ててくれたことと、女を献上しに来てくれたことをな』
ニタリと笑みを浮かべながら俺とファム達に視線を合わせてくるクロウラーだが、ファム達は嫌悪感丸出しでひそひそと話す。
「ザガムさんと似てませんね」
「お母さん似なんでしょ? 髪も違うし」
「そもそもあのエロ顔がわたし気に入りません」
『聞こえてるぞ貴様等!? いいだろう……ユランもそんなことを言っていたが、その嫌悪感のある相手の子を孕ませてやる……だが、その前にザガムよ』
「なんだ?」
クロウラーが真顔で俺に声をかけて来た。何事かと思い返事をすると、ヤツは選択を迫ってくる。
『どうせ俺には勝てん。どうだ、こちらに協力するのであれば部下を殺したことと、命だけは助けてやってもいい。人間達を蹂躙するには戦力も必要だ。いや、一人でもできるんだがな? 大勢いた方が――』
「断る。<ギガファイア>」
『うお!? き、貴様……!? 話している途中で魔法を撃つとは酷いことをする!』
「うるさい行くぞ。ファム達はバックアップを頼む」
「よし、僕達もいくよ」
とりあえず聞いていても仕方がないので魔法を放ち、前傾姿勢で一気に詰める。後続にフェルとヴァルカン、マルクスにイルミスのスケルトンとキルミスが続く。
「ロックワイルドは防御が固い、ファム達を頼む」
「お、おう! ……さっきから地味じゃないか俺!?」
ロックワイルドがなにか叫んでいたが、クロウラーが目の前に迫ったのでブラッドロウでまずは先制を取る。
「ぬん!」
『バカ息子が、叩きのめして躾けてくれる! 魔王の剣よ!』
「つぁぁ!!」
どこからともなく出した巨大な剣で俺の攻撃をガードする。そのままゼロ距離でブラックフレアを叩き込むため片手を向けると、足を払われ関係ない方向へ魔法が飛んでいく。
「チッ」
『まだまだだ……ぐあ!?』
「いやいや、ザガムだけじゃないんだからさ」
『賢者……! ならば貴様から死ぬか? 今度こそその首と胴体を切り離してやる』
俺に掴みかかろうとしたクロウラーに側面に回り込んでいたフェルがプライマルファングを叩きつけていた。
左腕がざっくりと切り裂かれるが、煙を立てて再生をするのが確認できる。
大魔王は伊達ではないかと思っていると、フェルに襲い掛かろうとしたクロウラーにスケルトンが立ちはだかる。
「いけ、オグレ!」
「……!」
『ぐぬ、骨ごときが邪魔をするか!』
「あたしも居るわ! くらえっ」
『うぬ……!』
魔王剣を防いだスケルトンが反動で下がらせる間に、キルミスの拳がヤツの顔面に突き刺さる。顔の形が変わる打撃を受けつつも、拳をでキルミスを振り払おうとした。
『小娘が! 捕えておもちゃにしてやろうか!』
「おっと、そうはさせねえよ。こいつはコギーの遊び相手になってもらうんだからよ! ‟ヴァルカンブロウ”!!」
『ぐっ……! 舐めるな!』
「がはっ! ……ザガム!」
「任せろ」
ヴァルカンの背中を踏んで頭を割るため剣を振り下ろす。
しかし、ヴァルカンを蹴り飛ばしてから俺を迎撃しようと大剣を盾とし、再生が終わりかけた左手に魔力を集中させるクロウラー。
『小賢しい! <ボルケイ――>』
「こちらに何人いると思っているのだ? デッドリースピン!」
『ぐがあ!?』
「隙が出来た、助かるマルクス」
『おのれ……! <ギガクラッシャー>!!』
「む、みんな防御に徹しろ!」
フェルが叫んだ直後、クロウラーの全身から魔力の波動がほとばしり俺達を包み込む。まずい、と思いガードをすると俺の体がはじき返され、地上へと着地する。
「ふう、流石は大魔王を名乗るだけあるか」
「だ、大丈夫ですか!?」
「服は焦げたが、大したことは無い」
他の者も体から煙は上がっているものの、大したダメージではなさそうだ。
だが、若干一名、大きくショックを受けている者が居た。
『ば、かな……!? 俺のギガクラッシャーを受けてその程度で済んでいるだと……!?』
「うーん、そのようだね。はっはっは! 僕は無傷だよ」
『なんだと!? 前の戦いではこれで瀕死になったはず……』
目を丸くするクロウラーに、珍しく邪悪な笑みでフェルが口を開く。
「……あの頃は人間だったからねえ。それに封印されていた君と違い、僕達は150年、鍛えることができた。クロウラー、君がその強さまで至ったのは年月だ。その差を埋めることができないとでも?」
『ぐ、ぬ……! ふざけるな! 俺は大魔王、勇者をも退けた歴代最強だぞ! 貴様らごとき木っ端魔族に負けるはずが――』
「ではなぜ貴様の部下は俺達を誰一人倒せず破れたのだ? お前は置いて行かれたのだ、時という牢獄の中でな」
『おのれ、愚息が! 八つ裂きにして従わせてやる!』
激高するクロウラー。
だが、取り囲んだ俺達に負けはないと確信する。
そして最後のアタックが開始された――
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