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第九章:ラストバトル
その149:悪あがき
しおりを挟む「冥空剣!」
「デッドリーゲイル!」
『無駄なことを! 魔王連撃斬!』
「おっと、それは僕が引き受けるよ。<リフレクトキャッスル>」
『全部弾くだと!? 賢者がぁぁぁ!』
クロウラーとの激戦が開始されて数十分。
俺達は絶え間なく攻め続けていき、クロウラーを押していた。
以前の戦いでは配下でも苦労していたフェルも、魔族化と修行の末、手に入れた力により攻撃を受けつけないレベルに達していた。
正直、勝てないわけだとも感じるほど強い叔父である。
「ヴァルカンクロウ!!」
『邪魔だ!』
フェルのリフレクトキャッスルで仰け反ったクロウラーにヴァルカンの燃える爪が襲い掛かる。
それを剣の腹で捌いて回避するが、マルクスの槍が心臓へ狙いをつけ、螺旋を描きながら突きかかる。
「コォォォォ!」
『鳥頭め……! 見え見えの狙いなぞ当たるものか、くらえ!』
「ぐっ!? ザガム!」
「ああ」
『貴様!』
槍は届かず、肩口に剣を突き刺して反撃したクロウラー。
しかしマルクスも負けてはおらず、血を吐きながら魔王剣を掴んで俺を呼ぶ。
「はあああああ!」
マルクスの背後から飛び上がり、脳天を狙ってブラッドロウを振り下ろす。
腕でガードしても腕ごと持っていく勢いで力を込めていたが、
『させるか!』
「ぐぬ……!? この!」
「ぐあ!?」
俺を裏拳で吹き飛ばし、マルクスを蹴って引きはがす。
魔王剣の一撃をブラッドロウで返して着地するが、殴られた顔に痛みが走る。
「ザガム! マルクスさん! <マクスヒーリング>」
「ありがとうルーンベル」
「さすがに強いですね……」
「それでも攻め続けていればいつかは倒せるレベルだ、見ろ」
吹き飛ばされた俺達の下へ、ロックワイルドの防御壁と一緒に駆けつけて来たルーンベルに回復魔法をかけてもらいながらクロウラーへ目を向ける。
「……」
「抉れ<エグゼキューター>」
『ぐおおお!?』
「ふむ」
「わ!? み、見えませんよザガムさん!?」
ヤツはスケルトンに背中を斬られ、フェルの魔法で臓物をまき散らしていた。
グロいのでファムの目を塞いでいると、クロウラーが魔王剣を振り回しながらフェルへ叫ぶ。
『馬鹿な! 復活して力が完全ではないとはいえ、ここまでやられるものか!? どういうことだ!』
「僕は君の配下を元に魔族化した。それなりに対抗できていたんだ、魔族になれば対等にもなるだろうさ」
『ぬかせ……! 再びこの技で朽ち果てろ! ‟カオスクラッシュ”!』
「フェル!」
「大丈夫だよザガム。<ディストラクションズファング>!」
「きゃ……!?」
魔王剣とフェルの魔法がぶつかり合い、大きな振動と共に衝撃波が走る。
俺達はロックワイルドの防壁へと逃れて収まるのを待った。
煙が立ち込める中、反撃を警戒しつつ目を凝らすと――
『ぐが……がはぁ……!?』
「くっ、伊達に大魔王を名乗っていないね。今の僕に傷を負わせるとは」
クロウラーの体には右胸から腹部へかけて三本の爪痕が深く刻み込まれ、フェルは右肩が千切れんばかりの勢いで斬られていた。
「やったぜ、メギストス様……!!」
「ヴァルカン、トドメに行くぞ! キルミスもいけるな!」
「わあ、ザガム様からの告白……! やああああ!」
「オグレ手伝え」
「ショ……ウ……チ」
飛び出した俺達にぎょろりと目を向けてくるヤツだが、四方からの攻撃は回避できまい。斬撃、打撃、延焼と様々な攻撃が繰り出されると、魔王剣を握り……俺に仕掛けてきた。
『ザガム、お前の体を寄越せ……!! 血を分けた息子なら……!!』
「体を乗っ取る……なるほど、そのために母と交わったか! だが、それは出来ん相談だな、冥哭斬翔……!」
『ぐが……!?』
「こっちにも居るわよ!」
「ヴァルカンクロウ……!!」
俺の剣がクロウラーの眉間を捉えた瞬間、キルミスとヴァルカンの拳と爪が突き刺さり、スケルトンが胴を薙いで真っ二つになった。
『おのれ……許さん……ぞ! テラクラッシュ!!』
「みんな防御しろ!! <プロテクション>!!」
急速な魔力の収縮に、俺の脳内が激しく警鐘を鳴らしたので小柄なキルミスは俺が引っ張り、防御魔法の展開を行う。
その直後、クロウラーを中心に大爆発を引き起こした。
「ぐ……ファム、ルーンベル、イスラ……!」
「こっちは大丈夫――」
響く轟音と共に視界が真っ白になる。
ファムが叫んでいたが最後まで聞くことができず、身体が大きく吹き飛ばされる感覚があった。
「……っく」
「あ、ありがとうございます……ザガム様……」
衝撃波と壁に叩きつけられた反動でしばらく動けなかったが、数分でなんとか立て直すことができた。
庇っていたキルミスを降ろしてから膝をつくが、状況を把握するため周囲を見渡すことにした。
「……全部吹き飛んだのか、なんて威力だ。ファム達は?」
「あそこですよ! ……チッ、勇者は生きていたか……お嫁さんはあたしの」
「ザガムさーん……ぺっぺ……」
「いやあ、びっくりしたわね」
「うう……ブレイブ君、大丈夫ですか……」
「ぴぎゃ……」
頭から瓦礫に突っ込んでいるイスラ以外は尻もちをついたりしていたが無事のようだ。スカートを引っ張って助けようとするワイバーンが健気だな。
「危なかったね。最後になにかあると思って最後のアタックは止めといたけど正解だった。ザガムが叫んでくれたおかげで全員無事だ」
「これで終わりですかね大魔王様」
マルクスが肩に槍を乗せて息を吐く。
そこでヴァルカンが石像のようになったクロウラーに近づきながら口を開く。
「……大したことなかったな。いや、まあこれだけの戦力でいけば負けはしねぇか」
「ここには【王】が全員いるし、オグレも居る。猛攻をあれだけ捌いていただけ凄いと思うしかないな」
イルミスがスケルトンの腕を取りつけながら呟いていた。
俺もその意見に賛成だが、勇者を倒した大魔王がこの程度で終わるだろうか?
そんな予想を裏切らず、ヴァルカンがぴくりと反応して拳を突き出した。
『チッ……馬鹿そうなヤツから殺してやろうと思ったのだがな……』
「誰が馬鹿だ!? トドメを刺してやるぜ!」
『ふん、この体はもうダメか……ザガム、その体はまだ預けておくぞ!』
「なんだと? ……む!」
人の姿がびしびしと割れ、中から巨大な芋虫のようなものが現れる。
さらにそこから人の上半身が飛び出し、不敵に笑う。
「それが貴様の真の姿か」
「いやあ、醜悪だねえ」
『なんとでも言え。しかしこの姿を引っ張り出すとは、ユランでも出来なかったこと。誇って良いぞ』
「いやいや……君、そんなことを言って脅かしているけど、その姿はかなり力を落としている状態だよね?」
『……』
図星なのか、クロウラーは口を憮然とした形に曲げて黙り込む。
ならば逃がさずここで倒すしかあるまい。
「フェル、どっちでもいい。これで最後だ、倒すのみ」
『くくく……できるかな……?』
「なんだと?」
クロウラーが笑った瞬間、背後で悲鳴が聞こえた。
「ひゃあ!?」
「な、なにこれ地面から!?」
「ブレイブ君、飛んで――うひゃああああ!?」
「ファム、ルーンベル、イスラ!」
床を突き破った触手が彼女達の足元から出てきて捕えられたのだ。
触手を斬ろうと迫るが、驚くべきスピードで振り下ろす場所にファムの顔が現れ、慌てて手を止める。
もちろんその場にいた全員が動いたが、イスラとルーンベルもおもちゃにされて盾となっていた。
「くっ……!?」
「ザガムさん、構いませんこのままやっちゃいましょう!」
「しかし……」
『くくく……この触手の精度は速さも器用さも高いぞ。斬りかかれば女たちの首は飛ぶ』
「逃げるつもりか」
「ザガムさん……」
後ずさるクロウラーの意図が読めた俺が口を開くと、ヤツは大声で笑う。
『その通りだ。今は貴様等に勝てんだろうが、女どもを使い力を取り戻す……人間どもを生贄にすれば容易いことよ。ついでに子も作るとしようか。勇者の子であればザガム、お前に対抗できる力になるだろうしな』
「……」
くだらないことをべらべらと喋るクロウラーにイラっとする俺。
ヤツよりも速く振り抜けばいいだけの話……ここで逃がすわけにはいかない……俺がそう考えて剣を握ると、ファムがにたりと笑い、ルーンベルがため息を吐く。
『フフ、やっぱりこう来たでしょう?』
「ですね。まあ、活躍の場があって良かったと思うべきでしょうか?」
「この天才美少女魔法使いの力……見せてあげましょう」
『なんだ? 貴様等いったいなにを――』
クロウラーが訝しんだ瞬間、ルーンベルが懐から‟偽典”を取り出し、詠唱を始めた――
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