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第九章:ラストバトル
その150:嫁たちの一撃
しおりを挟む『なにを企んでいるか知らんが、今の力でも女どもより俺の方が上だぞ?』
「足を吊るしたくらいでいい気になっていることを後悔なさい。ファム、イスラ、行くわよ」
「はい!」
「任せてがってん!」
「どうするつもりだ……?」
迂闊に動けない俺達をよそに、ファム達はやる気に満ちていた。
ルーンベルを起点になにかをするつもりだと思った瞬間、懐から偽典を取り出して詠唱を始めた――
「『閉ざされた扉の向こう側にあるモノ。その大いなる力は我が前に現在するすべての源を打ち砕き、崩壊へと誘わん……あるべき場所へ。<サージュ・オブ・レクイエム>……!」
『魔法詠唱……? それがどうか――な、んだと!?』
「なんだあれ!?」
マルクスが目を見開いて声をあげるがそれも無理はない。
偽典のなにかを詠唱した瞬間、本から白い光が無数にほとばしりクロウラーの身体を貫いて拘束したのだ。
『ぐっ……だがこんなもの、すぐに!』
「甘いです! あなたを倒すためにずっと、長いことこの世にとどまっていたユランさんの想いを受けてください! ユランさん!」
ファムが叫ぶと、顔つきと声が変わり手に持っていた剣を両手で構えて口を開く。
『クロウラー、あんたはこの世界を破滅に導く存在。あの時に果たせなかったことを今……!!』
『ユラン……! くっ、空いている触手を!」
「援護しますよユランさん! わたしの最大魔法を受けなさい! <フレイムファランクス>!」
イスラがロッドを振るうと、その軌跡から炎の槍が浮かび上がる。
規則正しく並んだ数百本の槍は、
「ブレイク!」
イスラの掛け声を受けて触手を撃ち落としていった。
「すげぇな!?」
ヴァルカンも驚くほどの制御と魔力。
さらに、捕まえられた触手を切り裂いた母が飛び上がり、炎の槍を足場にしながらクロウラーの胸に剣を突き立てた。
『奥義、シューティングディザスター!!』
『ぐあ……!? ま、まだだ……! その力を取り込んでやる!!』
刺した剣を振り抜き、胴を半分ほどもっていくが、クロウラーは千切れそうな体のまま、肩から触手を伸ばして母を拘束。
吊り上げられたその時、俺に目を向けて口を開いた。
「ザガムさん! トドメを! その剣で最後の一撃を……!!」
「……ファム!」
「ぐ、ううう……負担が凄いわねこの魔法!」
ルーンベルも脂汗を書きながら偽典を握り、イスラもワイバーンに乗って波状攻撃を仕掛けていた。
「僕達も加勢する。本体はザガム、任せたよ」
「……ああ!」
『き、貴様等……! も、もういい、勇者を食らって力を回復すれば一網打尽だ!』
「……!」
【王】全員が芋虫の身体を攻撃し始め、クロウラーの口が大きく開き、ファムを食らおうとした。
ファムは剣を前に出し睨みつけて口へと向かう。食われればアウト。
だが、そんなことさせる俺ではない……!!
「人の嫁を食らおうだなどと、許すわけにはいかんな! 消えてなくなれ……冥王煉獄殺――」
『あ……?』
「わ!? ……えへへ、ザガムさんありがとうございます!」
触手を燃やしファムを救出すると、クロウラーの身体にいくつもの亀裂が走り、燃え、消えていく。
斬った端から燃え上がっていく煉獄殺は再生も回復させることなく、受ければただ消滅するのみ。
『消える!? 体が……! 馬鹿な俺は大魔王……歴代最強の力を持つ大魔王クロウラーだぞ!? それがこんな簡単に――』
「見苦しいよクロウラー。あの時、150年前のあの時に……お前は負けていたんだ。僕という復讐者を残し、ザガムというお前の息子では無く、姉さんの忘れ形見を産んだお前はね」
『フェルディナントぉぉぉぉぉ!!!』
『さようなら、クロウラー。他種族と共存できなかった憐れな大魔王。吐き気を催したけど、ザガムが生まれたことだけは感謝しているわ』
「母さん」
俺の腕の中に居るファムが母さんと代わり、一言、添えた。
『ユラン……! 貴様、わざと……』
「じゃあな。父親だといえど、母を殺したお前には何の情も沸かないものだ」
「ありがと、ザガム」
「う、ブレイブ君は便利ですけど、抱っこしてもらえないのはちょっと残念ですねえ」
ルーンベルを捕まえていた触手も焼き切れたので俺は片手で抱き上げると、イスラもワイバーンに乗って俺の横に並び、地上へと降りていく、
そしてついに、芋虫の身体は消え去り上半身のみとなった。
『あああああああ!? 消える……消えてしまう!? おのれ……俺の魔族の国を世界を――』
最後に悲鳴のような声を上げながら、クロウラーは完全に消滅した。
冥界へ行くか、魂ごと焼失したか……もはや知る由も、必要もない。
「やりましたね……!」
「今度こそ終わり。……ぷはっ! 疲れたあ……」
「ひゅう! 流石わたし達ぃ!」
三人がハイタッチしながら笑うのを眺めていると、フェル達が寄ってくる。
「終わったね」
「ああ。だけど、フェルがトドメを刺したかったんじゃないのか?」
「僕はあいつが倒せればなんでも良かった。逆に言えば、弄ばれた姉さんとザガムが倒すべきだとも思っていたからね」
「最初は強いと感じたが、最終的にはそれほどって感じだったなあ……」
ヴァルカンが頬を掻いて肩を竦めると、キルミスも唇に指を当てて言う。
「うんうん。あたし達じゃ簡単には勝てなかったかもだけど、ザガム様やメギストス様なら一人でも勝てたかもね?」
「オグレでも行けたと思う」
「……まあ、150年も経てば魔族も人間も変わる。僕が人間から魔族になったように、剣も魔法も、過去のままでは無い。それがヤツには分からなかっただけさ」
封印されていた間も、復活してからも驕りがあったクロウラーが俺達に勝てる道理は無かったということ。
「ふう……」
「あれ、珍しいですね、息をつくなんて」
「なんだかんだで、かたき討ちだ。緊張もする……向こうも終わったようだな」
「あ、ユースリアさん」
奥の階段からユースリアとメモリーが上がってくるのが見え、ルーンベルが手を振る。訝しみながらこちらへ来ると、ユースリアが腰に手、いや足を置いて口を開いた。
「天井がないじゃない。ってことは終わったのね?」
「ああ。そっちもお疲れさんだったな」
「余裕よー。ぎったぎたにしてやったわ……」
くくく……と首を掻っ切る仕草をしながら笑うメモリーに苦笑していると、魔族の兵士も上がって来た。
「大魔王様! 魔法生物が全て消えました、ご無事ですか!?」
「おっと、クロウラーを倒したら全部消えたみたいだな……さて、それじゃ帰ろうか」
「だな」
『はあ、ようやく終わったわね……』
「母さんもお疲れさんだ」
『ふふ、ありがとザガム♪」
「ファムの顔で言われると複雑だな……」
「あはは、お母さんとお嫁さんが一緒ですもんね」
俺達は笑いながら極北を後にし、魔族領の大魔王城へと帰還を果たす。
過去の清算は……これで本当に終わったらしい。
そして大魔王を倒した俺達は――
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