死んで神を殴りたいのに死ねない体 ~転生者は転生先で死を願う!?~

八神 凪

文字の大きさ
27 / 48
ケース3: 結婚

1. クリス伝説SPECIAL

しおりを挟む
 
 サーニャ達の領を救ってから二週間が経過していた。

 クリスは、ゴロゴロと部屋で過ごす生活を繰り返していた。

 ……何故か?

 それでは、現在のクリスの状況をご覧いただこう




 ---------------------------------------------------

 カチッ

 「あー……」

 俺は日がな一日ゴロゴロしていた。ドラゴンの攻撃でも死ねず、毒でも死ねず、何となく八方ふさがり感が強くなったのがいけないのだろう。

 それと……

 俺が色々考えていると、トントンと部屋のドアがノックされた。
 
 「開いてるぞー」

 「ただいま学校から戻りましたわ、クリスお兄様。クロミアさん、またわたくしを乗せて飛んでくれませんか! 報酬はこれで……」

 するとピクッと耳を動かし、ベッドの上でぐでっとなっていたクロミアが目を覚ます。

 「アモルか! もちろんじゃ、わらわも退屈しておったからな! 早速行くのじゃ!」

 「お兄様はどうなさいますか?」

 「俺はまだ元気が無い……」

 「そうですか……また今日も一緒に寝ましょうね!」

 嫌な事を言いながら、クロミアと共に部屋を出て行った。
 
 そう、さっきの『それと……』に続く事がまずこれ。
 
 クロミアがちょくちょく遊びに来るようになった。

 イスマットで飯を食った後『好きにしろ』と言った意味を間違えて捉えたらしく、好きに遊びに来ていいという解釈をしたようだった。

 最低でも週一でバッサバッサと飛んできては家に侵入してくるのだ。

 たまに俺の部屋に寝泊りするので、アモルとは仲が悪くなるだろうと思ったが……妹はしたたかだった。
 クロミアが一緒に寝るなら自分もいいでしょ? と合法的(?)に潜りこんでくるようになったのだ。

 それで仲良くなり、今ではドラゴン形態のクロミアに乗って散歩をするのが趣味と化している……。

 そうなるとドラゴンがよくやってくる屋敷という事で噂になり、町を歩くと『ドラゴンナイト』だと騒がれる始末……。恥ずかしくて町を歩けず、引きこもっているという訳だ。

 幸いなのはオルコスが出てこないことか。あの日以来またしばらく出てきていない。

 「ロクでも無いことを考えてなければいいが……」

 俺だって無理に死にたいわけじゃない、あの馬鹿が居なくなれば平和に……過ごせるんだろうか?

 しかし、あまり引きこもっていても体に悪い。クロミア達が居ない今なら散歩もしやすいだろう。

 キングとオーク達がどうなっているかも気になるしな……。

 俺は念の為、眼鏡をかけて外出する事にした。

 ---------------------------------------------------


 「平和だな……」

 ついこの前、サーニャ達とバタバタしていたのが懐かしいくらいだ。
 
 ポルタさんもあの事件以来さらに元気になり、商売に精を出す毎日だとか。ウェイクに聞いた。
 女は怖い、俺はそんな事を思いつつ公園でボーっとしていると、子連れのお母さん達が多いなと眺めていた。

 「あああーん!!」

 その内赤ちゃんが泣き始め、お母さんがあやすが泣き止まず、ミルクをあげても泣き止む気配が無かった。

 「あらあら……おしめかしら……」

 それじゃあ、と帰っていくお母さん。

 「そういや、向こうの世界じゃオムツが主流だから、世の母親は便利だったろうな……」

 俺は結婚する事を考えていないからそこに気づかなかったな。子供が出来て、俺が死んだら妻も子供も可哀想だ。だったら俺は一人のままでいい。

 「でもオムツは流石に難しい……」

 子供のために作るのは吝かではないが、ポリマーだっけ? あれが良く分からんのだよなあ。

 「とりあえず森へ行くか」

 ゴブリンとオークの様子を見に森へと向かう。



 ---------------------------------------------------


 「これはクリス殿、森へ来るのは珍しい。どうされました?」

 森の入り口付近で警備をしているゴブリンに遭遇し、声をかけられる。この森……山は俺の所有物なので、こうして何事も無いように警備をお願いしている。
 
 採取はギルドで許可証を持ってくれば入ってもいいことにしているし、無茶な量、それこそゴブリンたちが困らなければガミガミ言う事はない。キングを窓口に紹介した時は驚かれた……のは一瞬で「ああ、クリス様の知り合いなら」とあっさり受け入れられたのが何か悔しい。


 「オーク達はどうだ?」

 「ああ、様子見でしたか。彼らはとても落ち着いているので、争いも無くうまくやっていますよ。正直、若いやつらにも見習わせたいくらいです。あ、私、今度子供ができるんですよ、是非名付け親になってください!」

 ははは、と最初俺の首を撥ねようとしたゴブリンが笑う。カタコトだった言葉もずいぶんうまくなったな、お前……。

 「なら良かった、ちょっと顔見せてくる。またな」

 手を振って別れ、オークの集落へ向かうと、グレイス山の時と違いかなり立派な家を建造していた。ゴブリンは穴倉だというのに……。

 「おや! クリス様! どうしたんですか今日は」

 集落の入り口で立ち尽くしていると、村長の息子であるニックが話しかけてきた。手には鍬を持ち、首にはタオル。完全に畑仕事スタイルだな。

 「いや、ちょっと顔見せにな。どうだ、ここの生活は?」

 「問題が無さ過ぎて怖いくらいですよ、ゴブリン達も良くしてくれますし、キノコや薬草も豊富で、魔物も居るから肉も皆で分けられる……何より土がいいですね。これ、畑で採れたピーマンです、持っていってください」

 「お、いいな。野菜炒め作ってもらうか……」

 「ほう、それは何ですか? 私達もクリス殿の知恵にあやかりたいものです。あ、そうそう今度子供が出来るんですよ、是非名付け親になってください! お願いします!」

 「お、おう……」

 ピーマンの入った籠を持って集落を後にする俺。

 「むう、どういつもこいつも出産ラッシュ……これは何かの陰謀か? 何て、誰が画策するんだって話だよなー。まあ相手の居ない俺には関係の無い話……さて、次の死地を探すかぁー」


 ---------------------------------------------------

 <あの世>


 <ところがどっこい聞いてるのが私、そして画策者、オルコス>

 <一応、『アンタ』が干渉しなければ生涯全うしてくれそうじゃない。子供を見る目が妙に優しかったわ。意地張らないでドラゴンの子かサーニャってのと結婚すればいいのに……。で、オルコスは干渉、もう止めといたら? オムツ開発したらまたポイント入るんでしょ>

 <そんなチンケなポイントでどうするんですか。もっとドサっと……そうですね、乗り物系はポイント高かった気がします。あなたの担当している方はどこでしたっけ?>

 <ちょっと苛酷な環境なんだよね、近くに火山があるし>

 ピコーン(電球)

 <ほう、どうやって二人を引き合わせるか悩んでいましたがこれはいいかもしれませんね>

 <?>

 ---------------------------------------------------
 


 所有の山にゴブリンとオークを住まわせ、環境維持ができている事を確認したクリス。

 結婚出産ラッシュを目の当たりにして、考える。

 そして、オルコスの計画が発動する。

 次回『気持ち悪いオルコス』

 ご期待ください。

 ※次回予告の内容とサブタイトルは変更になる可能性があります。予めご了承ください。
しおりを挟む
感想 52

あなたにおすすめの小説

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

消息不明になった姉の財産を管理しろと言われたけど意味がわかりません

紫楼
ファンタジー
 母に先立たれ、木造アパートで一人暮らして大学生の俺。  なぁんにも良い事ないなってくらいの地味な暮らしをしている。  さて、大学に向かうかって玄関開けたら、秘書って感じのスーツ姿のお姉さんが立っていた。  そこから俺の不思議な日々が始まる。  姉ちゃん・・・、あんた一体何者なんだ。    なんちゃってファンタジー、現実世界の法や常識は無視しちゃってます。  十年くらい前から頭にあったおバカ設定なので昇華させてください。

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

俺得リターン!異世界から地球に戻っても魔法使えるし?アイテムボックスあるし?地球が大変な事になっても俺得なんですが!

くまの香
ファンタジー
鹿野香(かのかおる)男49歳未婚の派遣が、ある日突然仕事中に異世界へ飛ばされた。(←前作) 異世界でようやく平和な日常を掴んだが、今度は地球へ戻る事に。隕石落下で大混乱中の地球でも相変わらず呑気に頑張るおじさんの日常。「大丈夫、俺、ラッキーだから」

処理中です...