異世界を8世界ほど救ってくれって頼まれました。~本音で進む英雄譚~(仮)

八神 凪

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World 1

1-24 動き出す人々

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 「どうぞ」

 「ゴクリ……」
 
 ごついおっさんの声を聞いて俺達は緊張した面持ちで中へと入る。綾香とフィリアが俺を盾にし、喉をならす。おい! お前等ずるいぞ!?

 「二日ぶりですかな、姫。シルト殿はお久しぶりですな」

 と、椅子から立ち上がった人物は筋肉隆々、色黒で髭面のおっさんだった。核弾頭を持っていった少佐のような声から思い描く騎士団長そのままだった。

 「やっぱり!?」

 「当たったわね……」

 「? 何を言ってるんだい?」

 シルトが振り返って不思議そうな顔をするが、それを伝えたところで分かってもらえるはずも無いので俺達はニコーっと愛想笑いをするのが精一杯だった。そんな胸中はつゆ知らず、プリム姫が話を進めていた。

 「グライドさん、町はどうですか?」

 「問題ありません……表向きは」

 「表向き……?」

 フィリアが疑問を口にすると、グライドさんは微笑み俺達に声をかけてくれた。

 「やあ、君達が勇者だね。俺はグライド、元王国騎士団長だった男だ。今はこの城下町の長をしている。立たせたままですまなかったね。姫様もこちらへ……」

 見た目はいかついが言葉は丁寧で気遣いが感じられる。俺達は別室のテーブルとイスがある部屋へ案内された。
 
 「ふぉれで表向きとは?」

 綾香が出されたお菓子を貪りながら再度質問をする。学校だと美少女で通っているが、こいつの本性はこんなものだ。俺の前でしかこういう姿を見せることは無い。

 「ああ、町の交易や生活自体はそれほど変化がないんだが、最近、奴隷商が幅をきかせるようになってね。どこからから仕入れてくるのか分からないが店に並んではすぐ売れている……」

 「奴隷……まさか……」

 俺は紅茶を飲んでいるフィリアに目を向ける。俺の視線に気づいたフィリアが顔を赤くして、髪を整える仕草をする。いや、そこはどうでもいい!

 「オッパムの町でこいつが誘拐されそうになったことがありました。もしかしてそのまま攫われていたら売られていた……?」

 「だろうな。オッパムは向こうの大陸か……そんなところまで……しかし、この話はここからが本番だ。どうも売れ行きがいいのは城が極秘で買っているからだそうだ」

 それを聞いたプリム姫がガタっと椅子を倒しながら立ち上がる。
 
 「それは本当ですか……!」

 「はい、城には私の手の者がおりますが、夜間に子供を連れた集団が城の裏へ回るのを見たそうです」

 「なるほどね。何をしているか分からないけど、あまりいい事ではなさそうだ」

 女の子ならハーレム、男なら労働力といったところか。だけど世界を潰す為にする行為にしてはしょぼい……何か見落としていないか……?

 「この世界を消すつもりなら子供をさらってしまえばどんどん人類は滅びると思うけど、いくらなんでも気が長すぎるわよね?」

 「そうだな。言っても神様の刺客だしまさか食べたりしてないと思うけど……」

 「た、食べる……」

 フラっとプリム姫が倒れそうになり、シルトがそれを支えた。そのままシルトは言葉を続ける。

 「まあ、そこは憶測で話しても仕方がない。で、姫が話したと思うけど、今、城に居る王は偽物なんだ。それを倒しに来たんだけど、何とか潜りこむ方法は無いかい?」

 「その事なんですが、私にいい考えがあります」

 「うん、そのフレーズは多分ロクでも無い事になるやつだ」

 「?」

 「あ、こっちの話です。続けてどうぞ」

 「あ、ああ。姫様が……」

 今までの話しからこうなるだろうな、と思っていたけど、グライドさんの話でそれが確信に変わる。その方法とは……

 ---------------------------------------------------

 「ほう、中ボスを退けましたか」

 薄暗い部屋の中で、豪奢な衣装を身に包んだ男が机の上の水晶を見つめて呟く。その水晶には陽達と会話した神が映っていた。今回はナイトキャップではない。

 『ああ、恐らくそっちに向かっているはずだ。見つけ次第殺して構わん。神共の見せしめにするから遺体は俺のよこせよ。あ、黒髪の女がいるが、そいつは生かして捕えろ』

 「は、仰せのままに。世界を破壊するに至る主人公であるシルトを逃がしたのは痛かったですが、誘拐騒ぎを起こし、動きが無いか見ておりますのでもう少しお待ちを」

 『おう、期待しているぞ……って、後ろにいるのは女の子ばっかりだな……』

 「勿論。どうせ世界を壊すのですから、楽しませてもらいますよ。国王という立場はすこぶるいいですぞ、金を積めば魂集めも快楽も得る事が出来ますし」

 『まあそこはお前に任せているからなんでもいいが……しくじるなよ? 主人公は世界を壊す鍵だが、同時に強力な存在だ。勇者共と協力されたら流石にきついぞ』

 「はっは、そのためのこいつらです」

 ジャラ……
 
 偽の王は首に鎖をつけた女の子を引っ張り、舌舐めずりをする。今日のメインディッシュというところだろう。

 「うう……」
 
 『色事にかまけすぎて、気付いたらもう目の前に勇者が居た、ってことはないようにな』

 「は、お任せあれ」
 
 ぶつんと、水晶が切れ偽の王は再び女の子へ嫌らしい目を向ける。

 「さて、お楽しみタイムの始まりだ! 叫んでも誰も来ない。ここは地下だからな。どれ……」

 「くっ……!」

 首に巻かれた鎖を乱暴に引っ張った時、それは起きた!

 メコ……!

 「がっ……!?」

 引っ張られることに抵抗せず、女の子は自ら偽の王へと身を躍らせ、膝蹴りを股間に食らわせたのだ! 悶絶する偽の王の懐から鍵を取り出し首の鎖を外す。他の女の子を救おうと鍵を外そうとするが、焦っていてうまくいかない。

 「わ、私達はいいから助けを……! 助けを呼んで!」

 「うぐぐ……使い物にならなくなったらどうする……!」

 「!」

 偽の王の目が赤く、怪しく光ったのを危険と感じ、自分の首についていた鎖を偽の王へと投げつける。それはキレイな弧を描き、股間へ命中した。

 「ぎゃああああ!?」

 「早く逃げるのよ!」

 こくんと、解放された女の子が頷き地下の扉を出る。逃げられると思っていなかったのか扉に鍵はかかっていなかった。

 「……外に……」

 女の子がきょろきょろと廊下を見渡す。

 「……こっち……」

 かすかな風を感じ、女の子は地下牢を走り去って行ったのだった。 

 
 

 
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