30 / 43
World 1
1-24 動き出す人々
しおりを挟む「どうぞ」
「ゴクリ……」
ごついおっさんの声を聞いて俺達は緊張した面持ちで中へと入る。綾香とフィリアが俺を盾にし、喉をならす。おい! お前等ずるいぞ!?
「二日ぶりですかな、姫。シルト殿はお久しぶりですな」
と、椅子から立ち上がった人物は筋肉隆々、色黒で髭面のおっさんだった。核弾頭を持っていった少佐のような声から思い描く騎士団長そのままだった。
「やっぱり!?」
「当たったわね……」
「? 何を言ってるんだい?」
シルトが振り返って不思議そうな顔をするが、それを伝えたところで分かってもらえるはずも無いので俺達はニコーっと愛想笑いをするのが精一杯だった。そんな胸中はつゆ知らず、プリム姫が話を進めていた。
「グライドさん、町はどうですか?」
「問題ありません……表向きは」
「表向き……?」
フィリアが疑問を口にすると、グライドさんは微笑み俺達に声をかけてくれた。
「やあ、君達が勇者だね。俺はグライド、元王国騎士団長だった男だ。今はこの城下町の長をしている。立たせたままですまなかったね。姫様もこちらへ……」
見た目はいかついが言葉は丁寧で気遣いが感じられる。俺達は別室のテーブルとイスがある部屋へ案内された。
「ふぉれで表向きとは?」
綾香が出されたお菓子を貪りながら再度質問をする。学校だと美少女で通っているが、こいつの本性はこんなものだ。俺の前でしかこういう姿を見せることは無い。
「ああ、町の交易や生活自体はそれほど変化がないんだが、最近、奴隷商が幅をきかせるようになってね。どこからから仕入れてくるのか分からないが店に並んではすぐ売れている……」
「奴隷……まさか……」
俺は紅茶を飲んでいるフィリアに目を向ける。俺の視線に気づいたフィリアが顔を赤くして、髪を整える仕草をする。いや、そこはどうでもいい!
「オッパムの町でこいつが誘拐されそうになったことがありました。もしかしてそのまま攫われていたら売られていた……?」
「だろうな。オッパムは向こうの大陸か……そんなところまで……しかし、この話はここからが本番だ。どうも売れ行きがいいのは城が極秘で買っているからだそうだ」
それを聞いたプリム姫がガタっと椅子を倒しながら立ち上がる。
「それは本当ですか……!」
「はい、城には私の手の者がおりますが、夜間に子供を連れた集団が城の裏へ回るのを見たそうです」
「なるほどね。何をしているか分からないけど、あまりいい事ではなさそうだ」
女の子ならハーレム、男なら労働力といったところか。だけど世界を潰す為にする行為にしてはしょぼい……何か見落としていないか……?
「この世界を消すつもりなら子供をさらってしまえばどんどん人類は滅びると思うけど、いくらなんでも気が長すぎるわよね?」
「そうだな。言っても神様の刺客だしまさか食べたりしてないと思うけど……」
「た、食べる……」
フラっとプリム姫が倒れそうになり、シルトがそれを支えた。そのままシルトは言葉を続ける。
「まあ、そこは憶測で話しても仕方がない。で、姫が話したと思うけど、今、城に居る王は偽物なんだ。それを倒しに来たんだけど、何とか潜りこむ方法は無いかい?」
「その事なんですが、私にいい考えがあります」
「うん、そのフレーズは多分ロクでも無い事になるやつだ」
「?」
「あ、こっちの話です。続けてどうぞ」
「あ、ああ。姫様が……」
今までの話しからこうなるだろうな、と思っていたけど、グライドさんの話でそれが確信に変わる。その方法とは……
---------------------------------------------------
「ほう、中ボスを退けましたか」
薄暗い部屋の中で、豪奢な衣装を身に包んだ男が机の上の水晶を見つめて呟く。その水晶には陽達と会話した神が映っていた。今回はナイトキャップではない。
『ああ、恐らくそっちに向かっているはずだ。見つけ次第殺して構わん。神共の見せしめにするから遺体は俺のよこせよ。あ、黒髪の女がいるが、そいつは生かして捕えろ』
「は、仰せのままに。世界を破壊するに至る主人公であるシルトを逃がしたのは痛かったですが、誘拐騒ぎを起こし、動きが無いか見ておりますのでもう少しお待ちを」
『おう、期待しているぞ……って、後ろにいるのは女の子ばっかりだな……』
「勿論。どうせ世界を壊すのですから、楽しませてもらいますよ。国王という立場はすこぶるいいですぞ、金を積めば魂集めも快楽も得る事が出来ますし」
『まあそこはお前に任せているからなんでもいいが……しくじるなよ? 主人公は世界を壊す鍵だが、同時に強力な存在だ。勇者共と協力されたら流石にきついぞ』
「はっは、そのためのこいつらです」
ジャラ……
偽の王は首に鎖をつけた女の子を引っ張り、舌舐めずりをする。今日のメインディッシュというところだろう。
「うう……」
『色事にかまけすぎて、気付いたらもう目の前に勇者が居た、ってことはないようにな』
「は、お任せあれ」
ぶつんと、水晶が切れ偽の王は再び女の子へ嫌らしい目を向ける。
「さて、お楽しみタイムの始まりだ! 叫んでも誰も来ない。ここは地下だからな。どれ……」
「くっ……!」
首に巻かれた鎖を乱暴に引っ張った時、それは起きた!
メコ……!
「がっ……!?」
引っ張られることに抵抗せず、女の子は自ら偽の王へと身を躍らせ、膝蹴りを股間に食らわせたのだ! 悶絶する偽の王の懐から鍵を取り出し首の鎖を外す。他の女の子を救おうと鍵を外そうとするが、焦っていてうまくいかない。
「わ、私達はいいから助けを……! 助けを呼んで!」
「うぐぐ……使い物にならなくなったらどうする……!」
「!」
偽の王の目が赤く、怪しく光ったのを危険と感じ、自分の首についていた鎖を偽の王へと投げつける。それはキレイな弧を描き、股間へ命中した。
「ぎゃああああ!?」
「早く逃げるのよ!」
こくんと、解放された女の子が頷き地下の扉を出る。逃げられると思っていなかったのか扉に鍵はかかっていなかった。
「……外に……」
女の子がきょろきょろと廊下を見渡す。
「……こっち……」
かすかな風を感じ、女の子は地下牢を走り去って行ったのだった。
0
あなたにおすすめの小説
異世界召喚は7回目…って、いい加減にしろよ‼︎
アノマロカリス
ファンタジー
『おぉ、勇者達よ! 良くぞ来てくれた‼︎』
見知らぬ城の中、床には魔法陣、王族の服装は中世の時代を感じさせる衣装…
俺こと不知火 朔夜(しらぬい さくや)は、クラスメートの4人と一緒に異世界に召喚された。
突然の事で戸惑うクラスメート達…
だが俺はうんざりした顔で深い溜息を吐いた。
「またか…」
王族達の話では、定番中の定番の魔王が世界を支配しているから倒してくれという話だ。
そして儀式により…イケメンの正義は【勇者】を、ギャルっぽい美紅は【聖戦士】を、クラス委員長の真美は【聖女】を、秀才の悠斗は【賢者】になった。
そして俺はというと…?
『おぉ、伝承にある通り…異世界から召喚された者には、素晴らしい加護が与えられた!』
「それよりも不知火君は何を得たんだ?」
イケメンの正義は爽やかな笑顔で聞いてきた。
俺は儀式の札を見ると、【アンノウン】と書かれていた。
その場にいた者達は、俺の加護を見ると…
「正体不明で気味が悪い」とか、「得体が知れない」とか好き放題言っていた。
『ふむ…朔夜殿だけ分からずじまいか。だが、異世界から来た者達よ、期待しておるぞ!』
王族も前の4人が上位のジョブを引いた物だから、俺の事はどうでも良いらしい。
まぁ、その方が気楽で良い。
そして正義は、リーダーとして皆に言った。
「魔王を倒して元の世界に帰ろう!」
正義の言葉に3人は頷いたが、俺は正義に言った。
「魔王を倒すという志は立派だが、まずは魔物と戦って勝利をしてから言え!」
「僕達には素晴らしい加護の恩恵があるから…」
「肩書きがどんなに立派でも、魔物を前にしたら思う様には動けないんだ。現実を知れ!」
「何よ偉そうに…アンタだったら出来るというの?」
「良いか…殴り合いの喧嘩もしたことがない奴が、いきなり魔物に勝てる訳が無いんだ。お前達は、ゲーム感覚でいるみたいだが現実はそんなに甘く無いぞ!」
「ずいぶん知ったような口を聞くね。不知火は経験があるのか?」
「あるよ、異世界召喚は今回が初めてでは無いからな…」
俺は右手を上げると、頭上から光に照らされて黄金の甲冑と二振の聖剣を手にした。
「その…鎧と剣は?」
「これが証拠だ。この鎧と剣は、今迄の世界を救った報酬として貰った。」
「今迄って…今回が2回目では無いのか?」
「今回で7回目だ!マジでいい加減にして欲しいよ。」
俺はうんざりしながら答えた。
そう…今回の異世界召喚で7回目なのだ。
いずれの世界も救って来た。
そして今度の世界は…?
6月22日
HOTランキングで6位になりました!
6月23日
HOTランキングで4位になりました!
昼過ぎには3位になっていました.°(ಗдಗ。)°.
6月24日
HOTランキングで2位になりました!
皆様、応援有り難う御座いますm(_ _)m
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった
ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。
学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。
だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。
暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。
よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!?
……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい!
そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。
赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。
「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」
そう、他人事のように見送った俺だったが……。
直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。
「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」
――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする
初
ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。
リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。
これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。
前世で薬漬けだったおっさん、エルフに転生して自由を得る
がい
ファンタジー
ある日突然世界的に流行した病気。
その治療薬『メシア』の副作用により薬漬けになってしまった森野宏人(35)は、療養として母方の祖父の家で暮らしいた。
爺ちゃんと山に狩りの手伝いに行く事が楽しみになった宏人だったが、田舎のコミュニティは狭く、宏人の良くない噂が広まってしまった。
爺ちゃんとの狩りに行けなくなった宏人は、勢いでピルケースに入っているメシアを全て口に放り込み、そのまま意識を失ってしまう。
『私の名前は女神メシア。貴方には二つ選択肢がございます。』
人として輪廻の輪に戻るか、別の世界に行くか悩む宏人だったが、女神様にエルフになれると言われ、新たな人生、いや、エルフ生を楽しむ事を決める宏人。
『せっかくエルフになれたんだ!自由に冒険や旅を楽しむぞ!』
諸事情により不定期更新になります。
完結まで頑張る!
世界最強の七賢者がお世話係の俺にだけはデレデレすぎる件
Y.
ファンタジー
国の頂点に君臨し、神にも等しい力を持つ『七賢者』。
火・水・風・土・光・闇・氷の属性を極めた彼女たちは、畏怖の対象として国民から崇められていた。
――だが、その「聖域」の扉を一枚隔てた先では、とんでもない光景が広がっていた。
「アルトぉ、この服脱がせてー。熱いから魔法で燃やしちゃった」
「……アルトが隣にいないと、私、一生布団から出ないから」
「いいじゃない、減るもんじゃないし。さあ、私と混ざり合いましょう?」
彼女たちの正体は、私生活が壊滅的にポンコツで、特定の一人に依存しきったデレデレな美少女たちだった!
魔法の才能ゼロの雑用係・アルトは、世界で唯一「彼女たちの暴走魔力に耐えられる」という理由で、24時間体制の身の回りのお世話をすることに。
着替え、食事の介助、添い寝(!?)まで……。
世界最強の7人に取り合われ、振り回され、いじり倒される。
胃袋と心根をガッチリ掴んだお世話係と、愛が重すぎる最強ヒロインたちによる、至福の異世界ハーレムラブコメ、開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる