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World 2
2-4 重大な事実
しおりを挟む「やや、チェイロさんではありませんか! ……あのお方に呼ばれましたか?」
「ええ。それより町は大丈夫ですか?」
「はい、とりあえずまだ少ないので――」
門にはお決まりのように門番がいて、顔見知りであろうチェイロが話をしているのを横で聞いていた。どうにも急いでいたのは『あのお方』によるところが大きい?
「ではそちらの方々は?」
「私を助けてくれ……ようとしたの。悪い人達ではないと思うけど……ねえハル、身分を明かすものは無い? 冒険者カードとか」
「お? おお……一応、これでいいか?」
俺は最初の世界で作ったカードを取り出すと、目を丸くしてチェイロと門番がきょとんとしていた。
「……これは確かにカードのようだけど、どこのだい? こういうの持ってないかな?」
チェイロが取り出したカードはプラスチックっぽい質感をしたもので、俺は馴染がないけど車の免許証のような顔写真付きである。ちなみにチェイロのは冒険者カードではなく、医師免許みたいなものだったけど。
「いや、持ってない……」
「もちろん私も……」
「わたしもですね」
「ええ!? 冒険者なら持っていると思ったけど……」
訝しんできたので、俺は慌てて声を荒げて弁解する。
「あ、あー! 俺達はその、冒険者になるために町に来たんだ! あいにく田舎者で右も左も分からないんだ。良かったら教えてくれるか?」
門番が少し眉を上げたが、チェイロがやれやれと肩を竦めて口を開く。
「そういうこと。じゃあ、仕方ないわね。案内してあげたいけど、私は急いで行かないといけないところがあるの。ギルドはこの門をくぐってから左の道をまっすぐ行くと大きな看板があるから分かるわ。それじゃ、ありがとうハル!」
そう言ってチェイロが走っていくと、門番のおっちゃんも頭を掻きながら通してくれた。
「ほら、通っていいぞ。チェイロさんの顔に泥を塗るような真似はするなよ? 何かあったら叩きだすからな」
「大丈夫ですよ! わたし達は世界を救いにきた――」
「ありがとうございますー! ほら陽、いこ」
「あ、ああ」
フィリアの口を塞いでずるずると引きずって行く綾香を追いかけて俺は門番のおっちゃんに、愛想笑いをしながら軽く会釈をしてその場を立ち去る。ナイスだ綾香と思ったのは実に275日ぶり(適当)だ。
程なくして人通りが少ない場所へ行き、俺と綾香で説教タイムが始まる。
「ごめんなさい……」
「最初の世界で中ボスが領主に成り代わったりしてたんだから、どこに敵が居るか分からないんだ、気付かれて毒でも盛られたらアウトなんだぞ?」
えぐえぐと泣きながら俺の裾を掴んで歩くフィリアがこくこくと頷きついてくる。ひと段落したところで綾香が俺に言う。
「とりあえずルアさんに通信しないとダメじゃない? 日が暮れる前に宿を取りましょうよ」
「んー、そうだな。別に今すぐギルドに行く必要もないし、急に送られたからゆっくりしたいのもあるな」
そして宿を探しさ迷い歩くこと小一時間――
意外と広い町だなと思いつつ、ようやく宿を発見し中へと入った。
「いらっしゃい。部屋は空いているよ」
受け付けにいる、顔は無愛想だが口調は普通のおっちゃんに声をかけられ、俺はとりあえず宿代を確認することにした。
「三人で。部屋は二つあるかな? あと値段を聞きたいんですけど」
「ああ、部屋は一緒じゃなくていいのか? べっぴんさん二人も連れてるのに」
「べっぴんさん……! そうですね、お金が勿体ないし一部屋にしましょう。三人一部屋ってありますか?」
「お、おい!?」
「もちろんだ。一泊は部屋代金でもらっている。一日20”セリア”だ。どうする?」
ん? ちょっと待て……と、疑問が浮かんだところで止める間もなくフィリアがごそごそと財布を取り出してテーブルにお金置いた。
「はい、これでいいですか?」
「……なんだ、これ?」
「え?」
「え?」
「あ!? す、すみません! ちょっと出直してきますー!」
フィリアと宿屋の男性がきょとんとしているところで、俺は重大な事実に気づき、慌ててお金とフィリアと綾香を連れて宿を後にし、途中にあった広場まで戻ってくる。
「ど、どうしたのよ陽? そんなに慌てて」
「……どうもこうもない……よく考えて見ろ、俺達はパーティ会場から呼び戻されてすぐここにきた。そうだな?」
「はい。ゆっくりしている暇がありませんでしたね……」
「そこはいい。重要なのはここに何も準備せずにきたことなんだ……」
「? ……あ!?」
聡明な綾香はすぐに気付いたが、フィリアはまだ困惑顔だったので、俺は回答を口にする。
「……俺達は……無一文だ……」
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