魔兵機士ヴァイスグリード

八神 凪

文字の大きさ
80 / 146
第三章

第79話 ここが再出発の場所

しおりを挟む
「お、でかい山が見えてきたぞ、もしかしてあれがザラン山か?」
「……」
「そ、そうね……」
<メンタル低下傾向にあると思われます。アウラ様はこのまま気ぜ……睡眠を取ってもらいましょう>

 ――なんだかんだで行軍は進み、現在九日目となっていた。
 丘陵を越えた後はだだっ広い草原になり、林といった程度の場所も通って来た。
 商人や冒険者が使う街道があるので道はそれほど悪くない。

 だが、人数の多さと魔兵機《ゾルダート》の小回りの利かなさという悪条件が重なり、かなり遅れての到着となっている。
 幸いグライアード兵には見つかっていないけど、デッドリーベアとかいう妙にでかい熊や集団で襲ってきたグロースホーネットといった魔物には遭遇していたのも遅れた原因としては大きい。

「疲れた……」
「頑張れシャル、あと一息だ」
「うん……」

 熊はヴァイスが追い払えるけど蜂のように空を飛んでいる相手はそうもいかない。
 町の人を守るため、騎士やガエイン爺さん、シャルといった戦闘要員が迎撃にあたっていた。そのため、いつも元気なシャルもコクピット内でグロッキーになっているというわけだ。
 アウラ様は普通に疲労だと思う。

<村人もいずれ集合するみたいですし、早く到着したいですね>
「だな。一旦腰を落ち着ければみんなも活気を取り戻すだろ」

 途中でいくつかあった村にも経緯を説明していて、サクヤの言う通りいずれアウラ様の立ち上げる拠点へ来るとの回答があったそうだ。
 まあ、人数が増えると責任も重くなっていくのでアウラ様は知らず心労を受けていたのかもしれない。

「町の人たちも限界が近いから慎重に行くぞ」
<はい>
「まあ、それでもサクヤのメディカルチェックだっけ? あれのおかげで病気の人が悪化せずに済んだのは大きいけどね」
<薬は現地の方々のものなので、私は知識を出しただけですが>

 シャルの言うメディカルチェックで熱が上がっている子や馬の体力が落ちているなどといった管理をしていたので早期発見、早期治療を徹底していた。
 ちなみに採れる薬草などから成分を分析し、お手製の薬を作るなども。もちろん町民には医者も居たのでその人に調合してもらった。

「お医者さん、驚いていたわよねえ」
「もっと教えてくれって張り切ってたよな」
<落ち着いて素材を持ってきてくれれば分析は可能です。ともかく行きましょう>
「ああ」

 正直、この長旅で俺も知らないヴァイスの機能がいくらか明らかになった。メディカルチェックに放熱による外気を吸って暖房にするエアコンのような機能といった生活に必要なものが。
 こういう地上で遭難した時のため用らしいが、あったっけかなというのが正直なところだ。タブレットのマニュアルを見ると書いていたので俺が忘れていただけのようだ。

「電子レンジとかも胴体周りに収納されていたのはなんの魔法なんだろうなあ……」
<……>
「あれいいわよね。すぐ温まるし」

 現代アイテムを見てはしゃいでいたシャルがそのことを思い出して少し持ち直していた。
 そんなことを考えながら見える山へと足を運び――

◆ ◇ ◆

「到着じゃ……!!」
「「「「うおおおおおおおお!!!」」」

 ガエイン爺さんが高いところに上って腕組みをしながら完遂したことを町の人達に告げた。男衆は感極まって泣きながら抱き合い、女性は呆れながら笑っていた。

「やったぜ父ちゃん……!!」
「おお、息子よ! よく頑張ったな!」

 そんな中、子供たちが耐えたことも称賛に値する。
 我儘はいくつかあったけど、町が破壊される惨状を目の当たりにしているせいか年上の子が年下の子をなだめるといったこともあり、概ね余裕があったと言える。

「大きい兄ちゃん、これからどうするんだ?」
「今日からこの辺りが俺達の縄張りになる。家とか建てるぞ」
「おー! あたしお部屋欲しいー!」
「はは、土地はあるから好きに作ればいいさ。俺とあっちのでかいのが手伝うからな」

 俺が少し遠くに居るビッダー機に手を上げると、向こうの手を上げて返してくれた。それを見た子供たちが拳を握っていう。

「かっけえよな! 俺もそのでかいのに乗ってグライアードの奴等と戦いてえよ。町を取り返すんだ!」
「お、威勢がいいな。でも大きくなってからだぞ? 今は親父さんやお母さんの手伝いを頑張るんだ。そしたら部屋が広い家を作ってやる」
「「らじゃー!!」」

 子供たちはここまで疲れなど無かったかのようにはしゃぎ回る。そこでシャルがコクピットから顔を出して周囲を確認していた。

「……緩やかな傾斜に手ごろな崖がいくつかあるわね。すぐに攻められない場所を選んでいるのはさすが師匠ってところかしら」
「ああ。地形探索をしたが500メートルくらいのところに洞窟があるみたいだ。浅かったら倉庫やシェルターにできるかもしれない」
<とりあえず陽はまだ高いのでマスターたちは地ならし。町の方や騎士様はキャンプというところでしょうか>
「そうじゃな。ワシはその辺の木を切り倒してくるわい。その後、家を建てられるようにしてくれ」

 話が聞こえていたらしいガエイン爺さんが斧を肩に担いでニヤリと笑う。元気な爺さんだぜ。
 そこでアウラ様が目を覚ました。

「ふあ……!? い、いつの間にか眠ってました!? こ、ここは!?」
「到着したわよお姉さま。旅はここで終わり……ここがあたし達の拠点になるのよ」
「シャル……そう、ついに到着したのですね」

 シートベルトを外してからアウラ様がコクピットから山の風景を見てそう呟く。
 そう、旅は終わり。
 ここから彼女達の本当の戦いが始まる。抵抗、そして反攻をするための。

 ……俺はいつか元の世界に戻れるのだろうか? それとも、このままか?

 いずれにせよ、俺はできることをやるだけか。そう思いながら二人と同じ景色を見るのだった。
しおりを挟む
感想 263

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

ハズレ職業の料理人で始まった俺のVR冒険記、気づけば最強アタッカーに!ついでに、女の子とVチューバー始めました

グミ食べたい
ファンタジー
現実に疲れた俺が辿り着いたのは、自由度抜群のVRMMORPG『アナザーワールド・オンライン』。 選んだ職業は“料理人”。 だがそれは、戦闘とは無縁の完全な負け組職業だった。 地味な日々の中、レベル上げ中にネームドモンスター「猛き猪」が出現。 勝てないと判断したアタッカーはログアウトし、残されたのは三人だけ。 熊型獣人のタンク、ヒーラー、そして非戦闘職の俺。 絶体絶命の状況で包丁を構えた瞬間――料理スキルが覚醒し、常識外のダメージを叩き出す! そこから始まる、料理人の大逆転。 ギルド設立、仲間との出会い、意外な秘密、そしてVチューバーとしての活動。 リアルでは無職、ゲームでは負け組。 そんな男が奇跡を起こしていくVRMMO物語。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

処理中です...