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第百七十九話 老い先短いのに遠いところへ来たというもの
「うるさーい!」
「「おう!?」」
「わふ!?」
「クルル!?」
あまりにもなにを言っているか分からないので僕はつい大声を上げてしまった。
その場に居た全員の口が止まる。
シルヴァとフォルテは僕がこんな大声を出したことがないのでびっくりしていた。
「ふう……。あ、大丈夫だよ。あはは! くすぐったいって!」
なんだかよくわからないけど二頭が僕の頬を舐めたり頭を擦り付けてくる。とりあえず落ち着かせてから咳ばらいをして話し出す。
「えー、まず落ち着いてください皆さん。話は一人ずつ聞く方向でいいですね?」
「う、うむ、ワシはそれで構わないぞ」
「わ、わかったぜ」
「申し訳ありません」
セカーチさんとグラフさん、それとヨグスさんがそれぞれこくこくと頷いて承諾してくれた。
さて、それじゃあ先にセカーチさんの話からかな。最初に話していたからね。
「ラースさん、どうぞ」
「ん? お、おお」
僕がさっと手を翳すと、困惑しながら返事をするラースさん。頭を掻きながらセカーチさんへ質問を投げかけた。
「で、ウッカーリはどうしたんだ? 俺はあいつに頼んだはずだぞ」
「うむ。もうすぐ子供もできるあいつを寄越すのは酷だと思い、老い先短いワシが来たのだ」
「え、ホントか!? そりゃ悪い時に頼んだな……。いや、言ってくれれば頼まなかったのに」
「あいつは人が良すぎるからな。その分、嫁が強いからワシらは安心なのだが」
なるほど、口ぶりからするとラースさんの友達っぽい感じがする。だけどすでに既婚で子供も産まれるそうだから代わりに祖父であるセカーチさんが来たとのこと。
「でも、おばさんを一人にしていいのかい? 彫刻だけならそんなにかからないと思うけど、遠かったはずだ」
「居ますよ?」
「おばさんっ!?」
馬車の荷台から凄く上品な女性が出てきた。後、ラースさんがこういうリアクションを取るのは珍しい。
「なんでまた……」
「うふふ、旅行だと思って来ちゃったわ。久しぶりねラース君」
「ええ、お久しぶりです……サーラさん」
「初めまして、ウルカです!」
「あら、可愛い坊ちゃんね。あなたが依頼主だったかしら。しばらくお世話になるからよろしく」
「はい! 後でお家を作りますね」
「?」
ニコニコしながら首を傾げるサーラさん。そこでラースさんが口を開く。
「今は忙しいんで俺はあまり応対ができませんけどいいですか?」
「構わん。この子が依頼者なのだろう? ウルカ君と一緒に仕事をするさ」
「お願いします! 報酬は――」
「ああ、よいよい。ラースから貰うのでな」
「ええ?」
そう言って微笑むセカーチさん。ラースさんを見るとウインクをして返してくれた。いいのかな……?
「なら家は別荘として使ってください」
「お構いなくね」
サーラさんも微笑み無理しないでと言ってくれた。しかし、控えている冒険者さん達を見て僕は考えを巡らせる。
「ラースさん、ごめん。転移魔法の習得はまたでいい?」
「ん? どうした?」
「ハリヤーはまだ大丈夫だと思うけど、今日はこの人たちが寝るところを作らないといけないよね。ちょっとボルカノと宿と家を増築しないと」
「ああー」
確かにとラースさんが手をポンと打った。
冒険者さんも十五人くらいいるけど、ここまで来るのにキャンプ生活だったはずだ。ここまできてさらにテント生活というのはよろしくない。
「じゃあ、みなさんは少しお待ちください。えっと次はグラフさん達かな? 僕に話があるっぽい?」
「ん? ……おお、なんか黙っていないといけないと思ってた。下水道もだけど水道ってやつも考えているんだろ? この空気を押して水をあげる部品ってどうするんだ?」
「あ、それか」
水道を捻ると弁が開いて圧力から解き放たれた水が出てくる。しかし地下に水があってそれを押し上げるための水上げポンプが必要なのだ。
現代だと電気とかでやっているっぽいけどこの世界にはそれがない。
なので魔石と部品でなんとかしようというところなのである。
「そのことはさっき思いついたからこれでいこう」
「ん? さっき?」
「うん。そしてこれはキールソン侯爵様にプレゼントするものにも直結するんだ」
「お、それはすごいな。なんだい?」
僕は急いでシルヴァに乗って家へ戻り、倉庫から金属を取り出す。そして再び戻りそれを作成する。
「<クリエイト>」
「お……!?」
「ほおう」
金属が徐々にねじれていきとある形を作り出す。
それは――
「これでいこう」
「こいつは……なんだ?」
「スプリングって名前。ちなみにこうやると縮むんだ」
「あ、面白いですねこれ」
ポヨンと跳ねたスプリングを見てヨグスさんが眼鏡をくいっと上げる。それを見てグラフさんがハッと気づいた。
「なるほど、こいつで押し上げるのか! で、水を止めると自動的に戻る仕組みを作れるな……!」
「さすがグラフさん。これでいい?」
「いける……! これはすげえものが作れるぜ! 下水道も解決するかもしれねえ、いくぜ!」
「ええ」
「よろしくー」
やる気のグラフさんとヨグスさんの二人を見送る僕達。そのままラースさんへ話しかけた。
「それじゃボルカノを借りていいかな?」
「ああ。呼んでくるよ」
「ワシらはどうすればいいかのう?」
「それじゃ家と宿を作るまで僕の家でくつろいでください。お風呂もありますよ」
「風呂……?」
その場にいた全員が顔を見合わせて首を傾げた。
とりあえずハリヤーの様子を見てからボルカノとお仕事をしようか。
「「おう!?」」
「わふ!?」
「クルル!?」
あまりにもなにを言っているか分からないので僕はつい大声を上げてしまった。
その場に居た全員の口が止まる。
シルヴァとフォルテは僕がこんな大声を出したことがないのでびっくりしていた。
「ふう……。あ、大丈夫だよ。あはは! くすぐったいって!」
なんだかよくわからないけど二頭が僕の頬を舐めたり頭を擦り付けてくる。とりあえず落ち着かせてから咳ばらいをして話し出す。
「えー、まず落ち着いてください皆さん。話は一人ずつ聞く方向でいいですね?」
「う、うむ、ワシはそれで構わないぞ」
「わ、わかったぜ」
「申し訳ありません」
セカーチさんとグラフさん、それとヨグスさんがそれぞれこくこくと頷いて承諾してくれた。
さて、それじゃあ先にセカーチさんの話からかな。最初に話していたからね。
「ラースさん、どうぞ」
「ん? お、おお」
僕がさっと手を翳すと、困惑しながら返事をするラースさん。頭を掻きながらセカーチさんへ質問を投げかけた。
「で、ウッカーリはどうしたんだ? 俺はあいつに頼んだはずだぞ」
「うむ。もうすぐ子供もできるあいつを寄越すのは酷だと思い、老い先短いワシが来たのだ」
「え、ホントか!? そりゃ悪い時に頼んだな……。いや、言ってくれれば頼まなかったのに」
「あいつは人が良すぎるからな。その分、嫁が強いからワシらは安心なのだが」
なるほど、口ぶりからするとラースさんの友達っぽい感じがする。だけどすでに既婚で子供も産まれるそうだから代わりに祖父であるセカーチさんが来たとのこと。
「でも、おばさんを一人にしていいのかい? 彫刻だけならそんなにかからないと思うけど、遠かったはずだ」
「居ますよ?」
「おばさんっ!?」
馬車の荷台から凄く上品な女性が出てきた。後、ラースさんがこういうリアクションを取るのは珍しい。
「なんでまた……」
「うふふ、旅行だと思って来ちゃったわ。久しぶりねラース君」
「ええ、お久しぶりです……サーラさん」
「初めまして、ウルカです!」
「あら、可愛い坊ちゃんね。あなたが依頼主だったかしら。しばらくお世話になるからよろしく」
「はい! 後でお家を作りますね」
「?」
ニコニコしながら首を傾げるサーラさん。そこでラースさんが口を開く。
「今は忙しいんで俺はあまり応対ができませんけどいいですか?」
「構わん。この子が依頼者なのだろう? ウルカ君と一緒に仕事をするさ」
「お願いします! 報酬は――」
「ああ、よいよい。ラースから貰うのでな」
「ええ?」
そう言って微笑むセカーチさん。ラースさんを見るとウインクをして返してくれた。いいのかな……?
「なら家は別荘として使ってください」
「お構いなくね」
サーラさんも微笑み無理しないでと言ってくれた。しかし、控えている冒険者さん達を見て僕は考えを巡らせる。
「ラースさん、ごめん。転移魔法の習得はまたでいい?」
「ん? どうした?」
「ハリヤーはまだ大丈夫だと思うけど、今日はこの人たちが寝るところを作らないといけないよね。ちょっとボルカノと宿と家を増築しないと」
「ああー」
確かにとラースさんが手をポンと打った。
冒険者さんも十五人くらいいるけど、ここまで来るのにキャンプ生活だったはずだ。ここまできてさらにテント生活というのはよろしくない。
「じゃあ、みなさんは少しお待ちください。えっと次はグラフさん達かな? 僕に話があるっぽい?」
「ん? ……おお、なんか黙っていないといけないと思ってた。下水道もだけど水道ってやつも考えているんだろ? この空気を押して水をあげる部品ってどうするんだ?」
「あ、それか」
水道を捻ると弁が開いて圧力から解き放たれた水が出てくる。しかし地下に水があってそれを押し上げるための水上げポンプが必要なのだ。
現代だと電気とかでやっているっぽいけどこの世界にはそれがない。
なので魔石と部品でなんとかしようというところなのである。
「そのことはさっき思いついたからこれでいこう」
「ん? さっき?」
「うん。そしてこれはキールソン侯爵様にプレゼントするものにも直結するんだ」
「お、それはすごいな。なんだい?」
僕は急いでシルヴァに乗って家へ戻り、倉庫から金属を取り出す。そして再び戻りそれを作成する。
「<クリエイト>」
「お……!?」
「ほおう」
金属が徐々にねじれていきとある形を作り出す。
それは――
「これでいこう」
「こいつは……なんだ?」
「スプリングって名前。ちなみにこうやると縮むんだ」
「あ、面白いですねこれ」
ポヨンと跳ねたスプリングを見てヨグスさんが眼鏡をくいっと上げる。それを見てグラフさんがハッと気づいた。
「なるほど、こいつで押し上げるのか! で、水を止めると自動的に戻る仕組みを作れるな……!」
「さすがグラフさん。これでいい?」
「いける……! これはすげえものが作れるぜ! 下水道も解決するかもしれねえ、いくぜ!」
「ええ」
「よろしくー」
やる気のグラフさんとヨグスさんの二人を見送る僕達。そのままラースさんへ話しかけた。
「それじゃボルカノを借りていいかな?」
「ああ。呼んでくるよ」
「ワシらはどうすればいいかのう?」
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とりあえずハリヤーの様子を見てからボルカノとお仕事をしようか。
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