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その37 ゆっくりのんびり
しおりを挟む「うわらば!?」
「あ、目が覚めた?」
「みゅー♪」
「みゃー!」
「あ、あれ? 俺はなんで……」
周囲を見れば俺に宛がわれた家だった。どうしてここに、と思ったがフローレをからかってナスで顎を打ち抜かれたことを思い出し、首をこきっと鳴らす。
「そういえばそうだったな……今何時だ……? げっ!? 21時過ぎてんのかよ」
確かまだ夕方だったはずだから結構気絶していたらしい。子ネコ達が俺の胸によじ登ろうとするのを阻止していると、ネーラが顔を覗き込んできて口を開く。
「ごはんはどうするの? ここで食べるならお野菜を使って何か作るけど」
「そうだな……ネーラはもう食べたのか?」
「私はスミタカについていたからまだね、それとフローレも」
「お」
「お、起きましたか……すみません、ナスが粗相を……」
「ナスのせいにすんな!? ……まあ、俺も悪ふざけが過ぎたな、すまん。で、ふたりも飯を食ってないなら、一緒に何か食うか」
まあ明日は自由時間だし、今日はゆっくりキャンプ気分でも味わいたいと思っていたのでそれをやるのも悪くない。
「もちろん!」
「わたしも食べますー!」
俺は部屋を見渡すと、持ってきた道具がきちんと置かれていることを確認し、それを漁ると少々の炭、網、そして炭を入れるステンレスの焚火台を用意しセットしていく。
「ふふ、なんかカッコいいわね。スミタカの部屋にあった道具みたい」
「だろ? ここに炭を入れて火をつけるんだ」
「わ、魔法じゃないのに火が……!」
チャッカマンを見たフローレが目を丸くして驚くのが微笑ましいなと思いながら火を拡大していく。その間にクーラーボックスを開けて食材を取り出す。それはもちろん肉だ……!
今回は何人か集まってきそうだったし、牛バラ肉を600g、豚肉300g、鶏肉200gを用意した。それを見た瞬間、ネーラが寄って来て目を輝かせる。
「それはお肉……!!」
「うむ。キャンプには欠かせない肉だ。野菜はさっきのナスを切るとして、畑の野菜を……と思ったけど、バーベキューに合う野菜は玉ねぎくらいかな」
「あ、わたし採ってきますよ! ふふふ……肉……お肉……!!」
「お、悪いな」
いつもの調子に戻ったかな? 軽い足取りで畑へ向かうフローレに少し安堵した俺は網を乗せ、少し油を塗る。
「後は網が熱くなったら焼いていくぞ。もっと食材があればみんなと食べるんだけどな」
「そういえば前にスミタカがもってきた料理も美味しかったわね! 楽しかったし、また一緒に食べたいわ」
「そうだな……今度はたくさん買ってくるか」
パチパチと炭がいい音を立てだし、ゆらゆらと火の灯りが俺達の顔を照らす。そろそろ焼くか、と思っていると、笑い声と共にベゼルさんが現れた。
「はっはっは! 様子を見に来たら楽しそうなことをやっているじゃないか! これは肉か? ふむ、エルフにも焚火で肉を焼くが、この金属の網は面白いね?」
「ああ、この上で焼くんだ、こうやってな」
俺が網の上に肉を置くと、ジュウ! という小気味よい音がして肉が焼けるいい匂いがしてきた。ああ、キャンプに行くのは難しいかと思っていたけど、こんな近隣でできるなんてなあ。
「よし、ベゼルさんも食べるかい? ネーラとベゼルさん、それとフローレの分をっと」
「これは?」
「肉につける……たれ、んーソースって言った方がいいか? 後、箸は使えるか?」
ネーラに箸を渡すと、俺の真似をしながら口をへの字にしてわきわきさせていた。するとそこで、ベゼルさんが口を開く。
「いいのかい? なら今日獲って来た猪の肉を出してみようか。まだ起きているエルフもいたら混ざっていいかい?」
「そうだな……もう一組炭火焼セットがあるから、こっちを囲んでくれれば」
「オッケー、ちょっと行ってくるよ」
ベゼルさんが立ち、ネーラと子ネコ達がこの場に残された。肉を見てみゃーみゃー言っているので、やはり本能で肉を欲するようだ。そんな子ネコを膝に乗せ、俺は肉をひっくり返して自分とネーラの皿に置き、一口食べる。
「くー……! 美味い! やっぱり外で食べる肉は最高だ!」
「わ、私も……。 ん! 美味しい! このソース? すごくお肉に合うわね」
ネーラも口を押えて目を見開くと、もぐもぐと咀嚼しながら舌鼓をうつ。市販品のタレだけど、エルフには刺激的だろうなあ。
「しかし本当に肉を美味しそうに食うなあ」
「たまにしか食べられないから仕方ないじゃない! ……スミタカが来てからまだ少しだけど、もう色々な衝撃を受けたわ」
「まあ、危うく殺されかけたけどな」
「そ、それは言わないでよ……」
「はは、悪い悪い。ほら、肉だ。後はこれも飲むか」
クーラーボックスに入れて冷やしおいた缶ビールを取り出し、プルトップを開けると、一気にあおる。三分の一くらいを飲むんだところでぷはーっと息を吐いて感動する。
「ふう……うますぎる……」
「それは何?」
「ああ、こいつはビールといって麦から作る酒なんだが、エルフって酒は無いのか?」
「お酒かあ。最長老様やお父さんなんかは飲んでいるわね。果実で作ったお酒だけど、結構おいしいわよ」
と、俺のビールをキラキラした目で見るネーラに、俺は缶を差し出して言う。
「……飲んでみるか?」
「いいの?」
俺は無言で頷くと、ネーラは缶を手に取り口をつける。
実はコーラで酔っぱらっていたネーラにビールはどうなるのか、という好奇心からだ。ここならベゼルさんもいるし、フローレもいる。何かあっても大丈夫だろう。
「うえ……苦いわねこれ……こんなのが美味しいの?」
「あれ?」
「どうしたの?」
「いや……」
缶を返してもらうとそこそこ減っていた。コーラの時はすぐ酔っぱらっていたのに……
「何ともないのか?」
「ええ、苦かったけど、何ともないわ」
「そ、そうか……」
何となく拍子抜けをした俺はビールを一口。ちょうどそこでフローレが戻って来て歓喜の声を上げた。
「わわ、いい匂いですねえ! ナスと玉ねぎを持って来ましたよ!」
「おお、助かる。それじゃそれは俺が切るから……こいつで肉を食ってくれ」
「わーい」
「美味しすぎるから気を付けてね」
ネーラがふふんと鼻を鳴らし先輩風をふかし、フローレが肉をほおばり満面の笑みを浮かべる。そこで俺はもうひとつ試したいことがあったので、クーラーボックスからまたひとつ缶を取り出す。
「フローレ、こいつ甘い飲み物なんだけどどうだ?」
「ふえ? 美味しいんですか?」
「俺は好きなやつだぞ」
「……! で、では、ありがたく頂きましょう……」
「?」
何故か顔を赤くして俺から缶を受け取るフローレ。プルトップは開けておいたのですぐ飲めるようにしてある。もちろん中身は……コーラだ。ネーラが特殊なのか、エルフはみんなそうなのか? 検証してみたかったのだ。
すると――
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