16 / 253
第一章:厳しい現実編
第十三話 嫉妬とスキルと祝いと寿命
しおりを挟む「どうしました? 私の顔をじっと見て? もしもーし!」
「ハッ!?」
目の前に手をかざされ、俺は我に返る。だが、ミルコットさんの頭上にある寿命:580年はそのままだった。俺は恐る恐る尋ねてみる。
「……失礼を承知で聞くけど、ミルコットさんって長生きしたり……します?」
するとキョトンとした顔をした後、ぷっと噴き出して俺に答えてくれた。
「急にどうしたんですか? んーそうですね、長生きすると言えばそうですね、私はエルフですから」
長い髪を耳からたくし上げて俺に耳を見せてきた。確かにエルフ耳……! でも、ラノベ等と違いそこまで長くはないので髪から少しはみ出るくらいのものだった。
「でもよくわかりましたね? 偏見とかはないですけど、わざわざ言うほどのものでもないので黙っていたんですけど。あ、やっぱりこの魅力が……」
「いや、全然違う」
「全然違うってなんですか!? 魅力がないって言いたいんですか」
「ああ!? そういうわけじゃないんだ! スキルでちょっとな? ミルコットさんは可愛いと思うよ」
「ふえ!? きゅ、急に言うのは反則じゃないですかね!? ……こほん、まあいいです。とりあえず、フォレストボアを解体した金額になります!」
「ありがとう、えーっと……」
紙幣をもらい数えると……
「お、おお? 一万二千セラもある……!? ま、間違いじゃないのか?」
「いいえ、正当報酬ですよ? 流石に命がけで倒しにいくんですから当然です! 状態も良かったですしね、皮が二千セラ、肉が六千セラで、牙が三千セラに他の細かい素材が残りってところですね」
なるほど、依頼料が安いと思ったけど素材を売って上乗せするのか。これなら頑張れば暮らしていけるかもしれないな。
「一番安い宿の値段って分かるかな?」
「ご飯が無くていいなら五日で六千セラってとこですね。ユニオンの簡易ベッドなら一日五百セラでお貸ししてます! まあ雑魚寝ですから落ち着けないデメリットがありますが……」
ふむ、女性には不向きだろうけど俺みたいなヤツには丁度いいかもしれないな。アンリエッタの家でご飯を頂いたら考えてみるか。
「サンキュー、とりあえずお金に余裕がなくなったら考えてみるよ。別の依頼も見ておきたいし」
「そうですね、明日も養成所がありますので、是非いらしてください」
「そうさせてもらうよ、それじゃまた!」
俺は手を振ってユニオンを出ていく。さて、アンリエッタのお祝いとやらは昼なのか夜なのか分からないが一度行ってみるかな。時間がありそうならスキルのチェックをしたいし。
外に出ると太陽の光で眩しくなり瞼が重くなる。さて、と、歩き出そうとしたところで俺は重大な事実に気づいた。
「……色んな人の寿命が見える……!」
行きかう人の頭の上に数字が出ており、とても見苦しい……! 例えばゲームのキャラの頭上に表示されているような感じと言えば分かるだろうか。
「消せるのかな……『生命の終焉』」
そっと呟いたら、フッと綺麗に数字が消えた。なるほど、オンオフが可能ということなら問題ないな! ……しかし、寿命を見て何の意味があるというのか……名前がかっこいいだけにガッカリ感もすごい。
「あ、そうだTIPSを使ってみようかな」
そもそもTIPS単体がスキルというのも意味が分からないが、使ってみて損はないだろう。何気に回復魔法はMPを使うのにスキルはMPを使わないんだよな。俺がTIPSを使おうとしたとき、遠くから俺を呼ぶ声が聞こえてきた。
「あ! カケルー! 終わったみたいね!」
広場の屋台が並ぶ一角にアンリエッタが敷物を広げてリンゴを売っていた。誰かと話しているようだが、呼ばれたのなら無視するわけにもいくまい。
「おう、何だリンゴを売ってるのか? 言ってくれれば朝一緒に運んだのに」
「朝はフォレストボアがいたから一回帰って持ってきたのよ。お店に卸す分もあったし。あ、そうそう、この子は私の幼馴染のビーンよ!」
アンリエッタに言われた目の前にいた人がすっごい不機嫌そうな顔で振り向いた。ああ、間違いなくビーンだ。すると俺を見ながら口を開く。
「ハジメマシテ……」
「え? お前さっき……」
「あー! あー!」
俺が口を開こうとすると、慌てて俺の口を塞ぎ、小声で話しかけてきた。
「(くっ……あんたに頼むのはしゃくだが、アンリには俺が養成所に通っている事は内緒にしてくれ……)」
「(何か事情があるのか? まあいいけど)ハジメマシテ……」
「(……助かる)」
「ビーンは町で村を出て暮らしているから、こうしてリンゴを売りに来たときに話すの。さて、それじゃ家へ戻りましょうか」
「ん? 話すなら待ってるからいいぞ? 腹は減ったけど、リンゴでもかじってるし」
ビーンが輝く笑顔でうんうんと頷く。あー、アンリエッタに惚れているんだなこいつ。どこで見てたんだかわからんけど一緒にいる俺を妬んでの事だろう。しかしアンリエッタは無情にも……。
「ううん、お母さんも待ってるし、露店も今日はそれほどお客さんが来ないからいいわ。それじゃビーン、またね!」
「あ、ああ……」
いそいそと片付け始めるアンリエッタをよそに、酷くがっかりした表情でビーンが立ち尽くす。不憫になったので俺は耳打ちしてやることにした。
「(俺は別にアンリエッタの事が好きとかそういうことはないから安心しろ。アンリエッタに助けられたのは事実だけど、たまたま一緒にいるだけだよ)」
「……ふん!」
俺がそういうと、目を細め、口をへの字にして鼻をならし、すたすたと歩いて行った。が、いったん立ち止まって首だけ振り返って俺に言う。
「フォレストボアに困っていたのを助けてくれたみたいだな……その点については感謝している」
それだけ小さくつぶやくと、再び歩いて立ち去って行った。うーむ、不器用なやつなのだろうか?
「お待たせ! ビーンは?」
「ん? 帰ったみたいだぞ?」
「そうなんだ、折角だから久しぶりに呼ぼうと思ったのに。ま、いいか今度で。行きましょう」
哀れ、ビーン!
◆ ◇ ◆
程なくして俺たちはアンリエッタの家へと到着する。
「ただいまー」
「おかえりなさい、それじゃ料理を温めなおしましょうか」
中へ入ると、ニルアナさんがニコニコしながら席を立ち、入れ替わりに俺が座らせられる。親子二人で台所でわいわいやっているようだった。
「はい、お昼だけど今日は奮発してみましたー」
ドン! と、500gはありそうなステーキが俺の目の前に置かれた! じゅうじゅうとガーリックの匂いがすきっ腹に刺さる……! で、朝食べたコーンスープに白いパン、サラダにほのかにリンゴの匂いがする飲み物がずらりと並ぶ。さらに大きな……オムレツだろうか? 綺麗に焼きあがった楕円の卵が置かれた。
「これ、ウチのリンゴで作ったお酒なの! ……お酒、大丈夫だった?」
「ああ、好き嫌いはないから大丈夫だ。しかしすごいな……」
するとニルアナさんが席につきながら話しかけてくる。
「カケルさんがフォレストボアを倒してくれたから、またリンゴがたくさん採れるようになりますからね。ここ三か月は本当に荒らされて売り物にならないリンゴばかりで……」
三か月も前から居たのか……!?
「何でもっと早く依頼しなかったんだ?」
「村長がいつか居なくなるからって渋っていたのよ……。結局、果樹園が滅茶苦茶になる一方だから昨日、依頼を出しに言ったってわけ。でも、その日に解決するとは思わなかったからほんっっとにうれしいのよ!」
引きちぎらんばかりでステーキを切るアンリエッタは本当に嬉しそうだった。そう言ってもらえると俺も寿命を減らしたかいがあったというものだ。
俺もオニオンソースと焦がしガーリックの味がうまいステーキにかぶり付いた。うん、うまい!
「この酒もうまいな……」
「でしょ? 町の酒場で作って売ってるのよ!」
そんな他愛ない話で盛り上がりながら、食事も終わろうとしていたころ、アンリエッタがスープをすすりながら俺に聞いてくる。
「そういえばフォレストボアを倒したんだからレベル上がったんじゃないの?」
「おお、そうそう。レベルが4になったんだ! スキルも覚えたぞ」
「いいじゃない、どんなスキルなの?」
「聞いて驚け……その人の寿命を見ることができる……!」
ミルコットさんとの会話を説明し、俺はドヤ顔で鼻を鳴らす。すると、アンリエッタとニルアナさんが俺の顔をじっと見て、すぐに噴き出した。
「ぷ……あははは! 何それ! 人の寿命を見れるようになって、それでどうするのよ!」
「ふ、ふふ……そうね、聞いたことがないスキルだわ……ふふ……」
くそう! やっぱりそうなりますよね! 俺も他人が覚えたって言ったらたぶん冷やかす……しかしニルアナさんは笑いながら少し寂しそうに口を開く。
「でも、寿命が分かればもしかしたら寂しい思いをしなくて済むのかも……死ぬときは……突然だから」
「お母さん……」
「……それは、旦那さんの?」
「ええ、二年ほど前に村の男の人達で動物を狩りに行ったときに崖から落ちて……亡骸はとても拾えるところじゃないらしくて死に目にも会えなかったんです」
そうだったのか……どおりで親父さんを見ないはずだ。そこでアンリエッタが明るい声で俺に話しかけてくる。
「ほら、お祝いの席なんだからしんみりしちゃうから駄目よ! なら、カケル、私の寿命を見てよ! どうせ私は長生きするんでしょうけどね!」
「もう、アンリったら……ちょっと怖いけど、見てもらおうかしら?」
フフ、と笑うニルアナさん。ならば、と俺はスキルを発動させる。
「『生命の終焉』」
「なあにそれ? スキルの名前? ちょっとかっこ良すぎない、寿命を見るだけなのに。あれ? カケル、目が赤いわよ? 疲れてる?」
「言うな、俺もそう思う……いや、疲れてはいないけど……お、出たぞ! どれど……れ……」
「?」
「わくわく……」
確かにスキルは発動した。ミルコットさんや町の人と同じく、名前と寿命の数字も。
だが、そこに現れたのは……。
『アンリエッタ
寿命残:36時間』
『ニルアナ
寿命残:36時間』
二人の頭上に赤い文字が浮かんでいた。
22
あなたにおすすめの小説
無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す
紅月シン
ファンタジー
七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。
才能限界0。
それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。
レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。
つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。
だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。
その結果として実家の公爵家を追放されたことも。
同日に前世の記憶を思い出したことも。
一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。
その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。
スキル。
そして、自らのスキルである限界突破。
やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。
※小説家になろう様にも投稿しています
老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!
菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは
「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。
同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと
アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう
最初の武器は木の棒!?
そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。
何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら
困難に立ち向かっていく。
チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!
異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。
話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい!
****** 完結まで必ず続けます *****
****** 毎日更新もします *****
他サイトへ重複投稿しています!
勝手にダンジョンを創られ魔法のある生活が始まりました
久遠 れんり
ファンタジー
別の世界からの侵略を機に地球にばらまかれた魔素、元々なかった魔素の影響を受け徐々に人間は進化をする。
魔法が使えるようになった人類。
侵略者の想像を超え人類は魔改造されていく。
カクヨム公開中。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
精霊の森に捨てられた少女が、精霊さんと一緒に人の街へ帰ってきた
アイイロモンペ
ファンタジー
2020.9.6.完結いたしました。
2020.9.28. 追補を入れました。
2021.4. 2. 追補を追加しました。
人が精霊と袂を分かった世界。
魔力なしの忌子として瘴気の森に捨てられた幼子は、精霊が好む姿かたちをしていた。
幼子は、ターニャという名を精霊から貰い、精霊の森で精霊に愛されて育った。
ある日、ターニャは人間ある以上は、人間の世界を知るべきだと、育ての親である大精霊に言われる。
人の世の常識を知らないターニャの行動は、周囲の人々を困惑させる。
そして、魔力の強い者が人々を支配すると言う世界で、ターニャは既存の価値観を意識せずにぶち壊していく。
オーソドックスなファンタジーを心がけようと思います。読んでいただけたら嬉しいです。
役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !
本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。
主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。
その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。
そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。
主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。
ハーレム要素はしばらくありません。
ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者
哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。
何も成し遂げることなく35年……
ついに前世の年齢を超えた。
※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。
※この小説は他サイトにも投稿しています。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる