35 / 253
第二章:異世界人は流される編
第三十話 そして始まる緊張の学院生活
しおりを挟む「は~い、皆さん~今日は新しいお友達がこの教室に来てくれました~! さ、入ってらっしゃい~」
――前回までのあらすじ……マジだった!
……という冗談はさておき、俺達は『リスペルン学院』のとある教室へと入っていく。ボーデンさんの提案は本当の本気で、あれよあれよと制服の採寸・仕立て・編入までが本当に「あっ!?」という間に終わっていた。だいたい二日くらいで。貴族すげぇ。
で、職員室にあたる『教務室』に行って最終手続きをし、編入されるクラスに来ていると言う訳である。まあ、その……自己紹介ってやつだな。
「さあさ~お名前を言ってね~」
まるで園児を引率していそうな、ゆるーい喋り方をしているのは、俺達の担任でネーレ先生という。緑のロングヘアで垂れ目が特徴的だ。
「じゃあ俺から……カケル=ジュミョウです。冒険者ですが、縁あってこの学院へ編入することができました。よろしくお願いします」
(うーん60点?)
(私はアリかな? 75点)
(ちょっと老けてない?)
余計なお世話だ。
ちなみにこのリスペルン学院は共学である。男の自己紹介ではやはり女子がざわつくのか……すでに点数がつけられている小声を耳にする。そして辛い。それならと、続いてグランツにバトンタッチだ。
「お、俺は……い、いや私はグランツ、です! カケルさんと同じく、冒険者ですが、縁あって編入しました! 仲良くしてもらえると嬉しいです!」
おーおー、固いねえ。
(ねえ、ちょっと可愛くない?)
(田舎っぽさがあるけど、優しそう)
(85点! あれは結婚するには最適と見たわ!)
(チッ、男はいいんだよ、早く女の子を紹介してくれよ)
(男子うるさい!)
グランツは青髪でキリッとした眉だからカッコいい系だと思ったが、意外にも「優しそう」とひそひそしている辺り本質を見抜いているのかもしれない。決して俺は老け顔ではないが。そしてエリンの番になるが、ここでは男子が湧いた。
「エリンです! あたし、こういう豪華な学校って初めてで緊張してます! 色々教えてくださいね?」
首をコテンと傾げて微笑むその顔は男子の心に突き刺さったらしい、目がハートマークになっているヤツらがいるな。
(おいおい、貴族じゃないんだろ? でも結構可愛いじゃん!)
(健康そうな子っていいよね)
(げ、元気っ子……ふひひ……)
(色々……むふ……)
うむ、エリンならうまく躱すだろうけど、グランツに気を付けてもらっておくべきだな。グランツ鈍そうだし。そして最後はトレーネの番だ。
トレードマークの帽子を取っているので身長の低さが目立つ。口をへの字に曲げてボーっと突っ立っていたが
エリンに突かれて我に返る。
「私はトレーネ。魔術士。よろしく。後、カケルは渡さない」
「おいおい……」
グッと拳を握って高らかに宣言するトレーネ。それを聞いてざわつくかと思ったが……
(かわいいーー! ウチの妹と変えて欲しいわ!)
(渡さないって大人びちゃってもうーなでなでしたい……)
(後でお菓子あげようかな?)
(あんなにハッキリ言えるなんて羨ましい……)
概ね女子に好評だった。
仲良くなるならまず同性がいいし、ひとまず安心だな……しかしトレーネのやつどういうつもりなんだろうな? まあ、そう言っておけば寄り付かなくなるだろうから調査はしやすいか。
俺がそんな事を思いながら教室を見ていると、一番後ろの窓際席でソシアさんがにこやかに手を振っていた。同じクラスになるのも確定事項だろうから不思議ではない。
「は~い! 四人ともありがとう~♪ それじゃあ席はぁ~ソシアさんの近くに空いている席があるから好きな所に座ってね~」
「適当か!? ……分かりました」
ぽやっとしていそうで、本当にぽやっとしているんだな、と思いつつ俺達はぞろぞろと席に着く。ソシアさんの横に俺、後ろにエリン。そして俺の右横にトレーネで俺の後ろにグランツという布陣だ。トレーネをソシアさんの右にとも思ったが、一応俺が護衛依頼のメインだから俺が横に着くことにしたのだ。
(ソシア様の横……羨ましい……!)
(あの男……カケルとか言ったな……呪呪呪……)
うん、失敗だった。
「それじゃ~朝の連絡事項です~――」
俺のそんな気持ちはさておき、朝の連絡事項を経ると早速授業だった。それぞれ自前のカバンから教科書を取り出し勉学に励むことにした。
何故か?
俺がこの世界に来て一番危惧しているところは歴史や人物、地域といった世界に関することに疎い事だ。カルモの町やネギッタ村みたいな田舎であれば誤魔化しもできようが、今後旅をするにあたって今回のように結構な人物から依頼を受けたりするときにボロが出る可能性が高い。そのためにはやはり知識だろう。
もし図書館があれば時間がある時に行ってみたい気はするが、とりあえず今は目の前に授業に集中しよう。
そして昼休み……。
「ぶはあ!? ケツが……ケツが痛い……!?」
「カケル、私がさすってあげる」
「嫌だよ!? 何のプレイだよ!?」
久しぶりに授業に出ると凄く疲れるものだと悟った……大学と高校じゃ授業のあり方が違うせいだろうけど。するとグランツが興奮した様子で俺に話しかけてくる。
「俺はこの依頼に声をかけてくれたカケルさんに猛烈に感謝しています! 田舎の学校も良かったですが、この生徒数、熱気……! やはり町は違います! 勉強も面白いですし」
「ふふ、喜んでいただけて良かったです! それではお昼に行きましょう、私はいつも食堂で食べていますけど、それでいいでしょうか?」
「え!? 領主様の娘なのに食堂!? ……なんですか?」
「ここでは敬語でなくても大丈夫ですよ。お父様の教育の一つでして、貴族だけの集まりだと毒されてしまい、庶民を蔑にしてしまいがちになるそうなんです。この学院は貴族も庶民も関係なく入れるので、色々な人を見て勉強しなさいと言われています」
だいたい物語の貴族って嫌なヤツか偏屈が多いもんな。ボーデンさん達はそうでもないけど、領主……というか領にとって大事なのは人だって理解しているのは好感が持てるな。
「あ、ソシア様食堂ですか? ご一緒させてもらっても?」
「ごめんなさい、今日はこの方たちが初日なので案内を兼ねてますので、またの機会に……」
「うーん、残念! 今度紹介してくださいね!」
と、行く先々でソシア様、ソシア様と声をかけられている所に遭遇する。思ったよりも環境はいいみたいだけど、嫌がらせがあると聞いていたからには生徒達にも注意を払わねばなるまい……。
と、食堂へ行くまで警戒していたのだが……。
「今日はいらっしゃるようね、ソシアさん!」
甲高い声がどこからともなく聞こえてきた!
「何者だ!」
「何者? いつの間にやら取り巻きを手に入れているとはそれでこそわたくしのライバル! わたくしの名前を知らないとは無礼ですが、わたくしは優しいので名乗ってあげましょう! わたくしの名はレムル……レムル=ミナカルシュですわ! オーーッホッホッホ!」
「カケル、あそこ」
バッ! と、廊下の角から現れたその姿は、スミレ色のロングの髪に、朱色のカチューシャを備え、赤いワンピース型ドレスのスカートを翻し、口に手の甲をを当て高らかに笑っていた。顔はツリ目がちだが整っており、泣きホクロがある、いわゆる美人タイプ。さらにその横には取り巻きと思われる女の子が三人……そして、優男風の男子が一人、付き従うように立っていた。
「な、なんてこった……!」
俺がレムルと名乗った女の子を見て驚愕する。俺の驚きに気をよくしたレムルと名乗った女の子がニヤリと笑う。くっ……やはりこいつは……。
「どうしたんですかカケルさん?」
「ハッ!?」
グランツに声をかけられ我に返り、俺は叫ぶ。
「どうしたもこうしたもあるか……あの登場、仕草、喋り方……そして取り巻き……間違いない、あいつは……あいつは悪役令嬢だ……!!」
「ふえ?」
場の空気がサッと冷え込む気配がする。しかし言わざるを得なかった……この短期間で死にかけるわ、町を追い出されるわ、領主の娘を助けるわでイベント盛りだくさんだったのにここに来て悪役令嬢とは……。
俺はもう一生分イベントを行った気がし、お腹いっぱいになっていた。
23
あなたにおすすめの小説
無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す
紅月シン
ファンタジー
七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。
才能限界0。
それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。
レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。
つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。
だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。
その結果として実家の公爵家を追放されたことも。
同日に前世の記憶を思い出したことも。
一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。
その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。
スキル。
そして、自らのスキルである限界突破。
やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。
※小説家になろう様にも投稿しています
老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!
菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは
「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。
同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと
アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう
最初の武器は木の棒!?
そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。
何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら
困難に立ち向かっていく。
チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!
異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。
話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい!
****** 完結まで必ず続けます *****
****** 毎日更新もします *****
他サイトへ重複投稿しています!
勝手にダンジョンを創られ魔法のある生活が始まりました
久遠 れんり
ファンタジー
別の世界からの侵略を機に地球にばらまかれた魔素、元々なかった魔素の影響を受け徐々に人間は進化をする。
魔法が使えるようになった人類。
侵略者の想像を超え人類は魔改造されていく。
カクヨム公開中。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
精霊の森に捨てられた少女が、精霊さんと一緒に人の街へ帰ってきた
アイイロモンペ
ファンタジー
2020.9.6.完結いたしました。
2020.9.28. 追補を入れました。
2021.4. 2. 追補を追加しました。
人が精霊と袂を分かった世界。
魔力なしの忌子として瘴気の森に捨てられた幼子は、精霊が好む姿かたちをしていた。
幼子は、ターニャという名を精霊から貰い、精霊の森で精霊に愛されて育った。
ある日、ターニャは人間ある以上は、人間の世界を知るべきだと、育ての親である大精霊に言われる。
人の世の常識を知らないターニャの行動は、周囲の人々を困惑させる。
そして、魔力の強い者が人々を支配すると言う世界で、ターニャは既存の価値観を意識せずにぶち壊していく。
オーソドックスなファンタジーを心がけようと思います。読んでいただけたら嬉しいです。
役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !
本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。
主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。
その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。
そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。
主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。
ハーレム要素はしばらくありません。
ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者
哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。
何も成し遂げることなく35年……
ついに前世の年齢を超えた。
※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。
※この小説は他サイトにも投稿しています。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる