俺のスキルが回復魔『法』じゃなくて、回復魔『王』なんですけど?

八神 凪

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第二章:異世界人は流される編

第三十五話 燃える瞳

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 俺の『地獄の劫火』の件は王子がきたことによりうやむやになり、クラスメイトからの質問攻めから逃れる事ができていたのは幸いだった。

 『魔』を上げ過ぎると威力はあがるけど、ちょっとレベルに見合わないものが発動することが分かったのは良かったかもしれない。
 
 何故か?

 この依頼がどう転ぼうと俺は二週間後にはこの学院から居なくなるからである。できるだけ色々試しておくのも悪くないとの考えからだった。

 ……決してあのゴリラに目にも見せるためだけではない。

 それはともかく次は戦闘訓練になるので、ステータスを戻してネーレ先生の話を聞く。

 「それじゃあ二人ずつ戦ってもらいますね~! 武器はこの木で出来たものを使ってください~」

 「杖で殴るのは苦手」

 「まあお前は魔法主体だしな。魔法も使っていいのか?」

 「ええ、あくまでも『戦闘』を主とした訓練ですから弱い威力のものであれば大丈夫ですよ」

 「それにしてもソシアもやるのね? 領主様の娘だし、次期王女だったらいらないと思うけど」

 人差し指を立てて説明してくれるソシアにエリンが疑問を口にする。

 「さっきいらっしゃったレリクス王子もそうだけど、貴族は冒険者並の力を持つ必要があるわよ? 最後の最後で身を守るのは自分自身しかいないんだから」

 「むう、そういうものかなのね……」

 「もし城に嫁いだら自由もあまりないし、自由に生活できるエリン達が羨ましいわ」

 しかし、そこは女の子なエリンは『いやあ、きれいなドレスとか憧れるじゃない……』などロマンに憧れる話をしていた。それを横で聞きながらクジを引き、訓練の順番を決めていった。

 「この中だと俺が最初ですね。戦闘訓練で挽回してきます!」

 「おう! 頑張ってな!」

 「兄貴、頑張れ」

 「かっこいいとこ頼むわよ!」

 一応、男子と女子では分かれており、まずは男子からだ。珍しくトレーネがグランツを応援しエリンがリア充っぽいことを言う。エリンもソシアに負けないくらいに可愛いので男子からの嫉妬を一身に受けての対決だ。

 正直、俺も羨ましい。彼女、欲しいなあ……と、チラリとトレーネを見る。

 「……」

 「? カケルどうしたの? 兄貴が戦う」

 トレーネは間違いなく俺の事が好きだが、この三人とはこの依頼が終わったら別れることになるだろう。なのでこいつの攻撃からは逃れているのだ。後、眼鏡が可愛いけど妹っぽいんだよなやっぱ

 「何でもない、見ようぜ」

 「? うん」


 グランツが戦闘訓練用にしつらえた闘技場のような場所へ上がり、対戦相手もそれに続く。グランツの得物は当然、剣。相手は……同じく剣だ。

 「ククク……編入生、運が悪かったな……まさか初戦で俺に当たるとはな!」

 「この気迫……!」

 異様な雰囲気を醸し出す男子生徒に剣を構えるグランツ。確か三列の席の一番右の三番目の席のヤツだ。

 「はじめ~い♪」

 気が抜けそうなネーレ先生の掛け声で開始される。そして前から三番目のヤツが先に動いた!

 「あんなに可愛い彼女連れで編入してくるとか嫌みか! お前を倒してエリンちゃんは俺にメロメロになるのだぁぁ!」

 (相当)私怨が入っているようだが踏み込みは鋭い! だが、メロメロは古い! この世界じゃどうか分からないけど。

 「フッ!」

 カン!

 「やるな」

 木剣の交差する音が小気味よく響き、グランツがわずかに押される。だが、スピードを使っての押し込みのため、足を止めての打ち合いになると……。


 カンカンカン! ドス!

 「ぐ、うおお!?」

 「はあ!」

 徐々に前から三番目の男子が押されていく。すでに冒険者として働いているグランツとでは体幹が違うし、経験もグランツが上だ。

 「どうした! 俺を倒してエリンを振り向かせるんじゃないのか!」

 「く、くそお!」

 打ち合いの末、手がしびれたのか、前から三番目の男子が両手に剣を持ち、ヤケクソに振りかぶる。それをグランツは見逃さなかった!

 「胴体ががら空きだぞ!」

 ずどむ!

 「うげえ……ま、まいった……」

 「そこまでぇ~グランツ君の勝利~」

 「やった」

 ぐっと拳を握るトレーネ。やはり兄が勝つのは嬉しいのだろう、その兄は前から三番目の男子を助け起こしていた。

 「最初の踏込は驚いたよ。もしかしてショートソードやダガーの方が向いているんじゃないかな」

 「そ、そうか? へへ、お前強いな! また戦ってくれよ」

 「勿論だ! でもエリンは渡さないからな!」

 「ちょ!? グランツ!?」

 「キャー! 羨ましいー♪」

 熱血濃度があがり、相手の男子が看過されがっちりと握手をし、さらにエリンを辱めた。熱いやつはこれがあるから怖い。や、嫌いじゃないけどね巻き込まれなければ。

 その後は女子と男子が交互に壇上へあがりとんとんと戦いは進んでいく。そもそもクラスは20人+俺達なので、一人あぶれるのだが、今回はソシアさんがネーレ先生と戦うそうな。

 「じゃあ行ってくる」

 「頑張れよトレーネ」

 「カケルの応援があれば無敵」

 ふんす、と鼻息を荒くして出て行ったものの……


 「勝負あり~!」

 「負けた……」

 真ん中の列の一番前の席の子と戦いあえなく敗北。

 「そんなに落ち込むな、刺突剣の騎士希望の子は相手が悪い。『小さき火花』とかうまく使ってただろ」

 刺突剣……レイピアを使うだけあって素早い動きが特徴的な子だった。杖で間合いを取りつつ、火魔法で攻めていたけど、タイマンは魔術士には厳しい現実が待っていた。ジグザグに動きながら確実に間合いを詰めての場外。

 「ほらほら、次はエリンだ。応援しようぜ」

 「……うん」

 頭を撫でてやり少し元気が出たようだ。そしてエリンが壇上へ上がっていくのを見届ける。相手は俺の前の席の女の子だ。

 「弓か、てっきりショートソードかと思ったんだけどね。背格好が私と似てるし」

 「ふふん、あたしの弓はちょっとしたものよ? あなたもその構え……慣れてるわね」

 俺の席の前の子は(『の』が多いな)は、エリンと同じくポニーテール。武器はショートソードに小盾だこの戦いもトレーネと同じく一方的な戦いになるかと思われたが……。


 「素早いっ……!」

 「それそれ!」

 エリンの『速』は相手より上なのだろう、壇上の上を軽々と走り回って前の席の子をひらりとかわし、柔らかい素材が先っぽについた(スライムっぽい?)矢を次々と当てていく。

 「なら動きを読んで!」

 「あら、回り込まれちゃった? でも、弓で近接ができないって訳じゃないのよ?」

 弓を持ち替えて弦を相手の顔に振る。

 「あっぶな!? この!」

 「あいた!? やったわね!」

 弓に弾かれて頬が赤くなった女性徒がショートソードでエリンの頬をぶった! それにお怒りのエリンが弓を捨て掴みかかった!

 「同じ髪型で被ってるのよ! 降ろしなさい!」

 「何よ! ポッと出の編入生のくせに!? あんたが降ろしなさいよ!」

 ああ……さっきまであんなに格好良かったのに、髪を引っ張ったり、引っ掻いたり……今は完全なキャットファイトに変わってしまった……。

 そのまま二人はゴロゴロと転がり、壇上から落ちてしまった。

 「それまで~! 二人とも場外で引き分け~! ってええ~!?」


 「彼氏がいるとか何様よ! このこのこの!」

 「へへーん! どうだ! 痛っ!」

 ネーレ先生も声は聞こえなかったようで、そのまま戦い続けている二人。そろそろ生傷が絶えなくなってきたのでグランツと止めに入る。

 「エリン!? 貴族のお嬢様だぞ、止めないか」

 「ほら、あんたもよせよ」

 「うううう!」

 グランツがエリン、俺が前の席の子をひょいっと引きはがし、ヒールをかけた。

 「あ、ありがと」

 「貴族のお嬢さんって元気なんだな」

 「い、いいでしょ別に! (この人、結構たくましいわね……)」

 「へいへい……」

 俺が解放すると顔を真っ赤にして去って行った。怒ってるなぁ。

 「ほら、エリンにもヒールだ」

 柔らかい光がエリンを包むと傷があっという間に消え去る。

 「ご、ごめんねー……カケルさんにヒールを使ってもらうのも二回目ね! 痛っ」

 何故か嬉しそうに言うエリンに、ため息を吐きながらグランツが小突いていた。まあグランツもエリンもトレーネも冒険者をやっているだけあって動きは学生に比べればやはり良い。キチンと魔法などを使ってやっていればエリンとトレーネも勝てると思う。

 「後はカケルだけ。頑張って」

 「おう、応援よろしく頼むぜ」

 そして他の生徒も消化が進み、俺の出番になり壇上へと向かう。すでにそこには赤いつんつん髪の男子生徒が剣を持って立ち、俺を睨んでいた。

 「……もうスタンバイOKってか。やる気があるな」

 「うるせえ、さっさとやろうぜ。……お前は気に入らねぇ、叩きのめしてやるぜ……!」



 そういや何度かこいつと数人が俺達を睨んでいたなあ。

 さて、何が気に入らないか分からないけど売られた喧嘩は買わないとな。

 そういやこういう荒事は削夜が得意だったな。大学でよく巻き込まれていたし。あいつ元気でやってるかな。
 
 ふと思ったけど俺が死んだ後、元の世界じゃ俺の扱いどうなっているんだろう。体は死んだままだったらダンプにすりつぶされてグロ注意になっている可能性が高いんだが……体ごとならよくある存在事消えたって感じかな?
 ま、考えても仕方ないか。

 そんな事をだいたい0.5秒くらい考えてから、俺は槍を肩から降ろし構えた。
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