103 / 253
第四章:風の国 エリアランド王国編
第九十六話 黒ローブの策略
しおりを挟むカケル達が散開した頃、突撃したクリューゲルは徐々に部隊の後方へと近づいていく。元は大隊長。勝手知ったるなんとやらで、編成の癖や動きはよく分かっていた。
「乱れが無いいい動きだ。訓練は怠ってい無いようだ……だが、やはり少し遅れがあるな、マイティ!」
「え……? ク、クリューゲルさん! うわあ!?」
キュエ!?
後ろから声をかけられると思っていなかったマイティと呼ばれた騎士が、クリューゲルに奇襲をかけられ墜落を始める。横に居た騎士が慌てて前方に声をかける。
「て、敵襲! く、クリューゲル大隊長です! 迎え撃……ぐふう!?」
「いい判断だ。だが、喋りながら手を動かせよ? この高さなら死ぬことはあるまい、安心して墜ちろ」
騎士は最後まで言えず、槍の背で突かれてワイバーンから落された。ワイバーンは主人を助けに慌てて追いかけていく。だが、最後まで言えずとも脅威は伝わったようで、サっと数組のワイバーンが旋回して取り囲むように編成を変えた。
「だ、大隊長だ!? ど、ドラゴンに乗っているぞ……!?」
「マジだ……」
「ど、どうするよ?」
「倒すしかねぇべ!」
姿を見た騎士達は各々好き勝手なことを言い合っていると、前方から凄い勢いで青い鎧の騎士が槍を構えて向かってきた。
「あっはっはっは! 大隊長ぉぉぉぉぉ!」
「イグニスタか!」
ファライディと同じくらいの大きさの赤い竜に乗ったイグニスタが笑いながら突撃し、クリューゲルがすれ違い様に受け流すと、そのまま旋回して戻ってきて横に着いた。
「腕は落ちていませんな! 空の散歩というにはサンデイは少々物騒ではありませんか?」
「ぬかせ。俺がここにいる理由は分かっているだろうに」
「……まあ、そうですな。国王様ですか?」
「ああ、止めに来た」
「なるほど、逃げたあなたが何かできるとでも?」
「エルフの大虐殺を見ぬふりはできまい。操られていましたから許してください、とは言えまい? だからその前に止める。お前も分かっているのだろう? できれば攻撃したくない、通してくれ」
「自信がおありのようで、以前の大隊長らしさを感じれます……しかし……」
イグニスタがニヤリと笑うと、ビュ! っと、槍で横に居るクリューゲルを攻撃してきた!
「……! お前……!」
「チッ、外したか……操られているのは知っていますぜ? それはそれで好都合だ、あの黒ローブを招き入れたのは誰だと思う?」
「まさか……!?」
「そのまさかよ! 俺様はエルフを皆殺しにした後、国王を失脚させてその椅子に座る。そう言う手筈だ!」
イグニスタは黒のローブ達とフィアムと結託して、国王の座を奪うつもりだと告白した。エルフの集落は魔王を倒した後フィアムが掌握するらしい。
「エルフを皆殺しにしたら、そのフィアムとやらはエルフの集落は手に入らないのではないか?」
クリューゲルも槍で反撃をしながら尋ねると、イグニスタは捌きつつ答える。
「それは俺の知ったことじゃあないですな。封印を破りに行ったが、帰ってきたらエルフが全滅……どんな顔をするだろうかね、あの野郎は!」
がははと笑ったあと、すぐ真顔になり、イグニスタは攻撃号令をかける。
「一番から三番までは俺と共に逆賊クリューゲルを始末するぞ! 四から六番は国王の護衛につけ!」
「し、しかし……ぎゃあ!?」
「口答えは許さん。俺が国王になった暁には金も酒も女も自由だ! 続け!」
イグニスタが国王が操られていると発言したため、騎士達はざわついていた。反論をしようとした騎士を刺し、イグニスタはクリューゲルに攻撃を仕掛ける!
「お、俺は大隊長と戦うなんてできねぇ!?」
「馬鹿、ここでゴマすっとけば……!」
「やるなら全力で来い。死ぬ覚悟も持てよ?」
「ひ、ひい!?」
クリューゲルの言葉で数人は戦域を離脱。それを見たイグニスタが舌打ちをしながら呟く。
「チッ、腰抜けどもが……俺に続けぇ!」
鼓舞しようとするイグニスタに槍を繰り出しながら、今度はクリューゲルが笑う。
「フッ、騎士達よ。身の振りはよーく考えた方がいいぞ? こちらには協力な仲間がついている……ほら、お出ましだ!」
ドドドドド!
編隊から向かって左側が魔法で光り輝き、ドラゴンの咆哮があがった。その方向でイグニスタは驚いて声をあげる。
「どうしたぁ!?」
「た、隊長!? 左からドラゴンに乗った男女が凄い勢いで攻撃を仕掛けてきています!?」
「何だと!?」
さらに驚愕の事態がイグニスタの耳に入る。
「ほ、報告です! 右方向にもドラゴン! 背に乗った女騎士と魔法使いが攻撃を仕掛けてきました……!」
「くっ、ドラゴンを出すとは……姫の後押しか……」
「そういうことだ! お前のくだらない野望はここで潰える! 魔王相手では勝ちめはないぞ」
「ま、魔王だと……!? くそ! こいつらを倒せば俺が一生の生活を保障してやる! 続け!」
「馬鹿いうでねぇ! 命がいくつあってもたりんわ!」
「俺は手を出しません!」
「いや、むしろクリューゲル大隊長を助けた方がよくね?」
と、八割方攻撃を止めるが、血気盛んな若い騎士や、は元々クリューゲルを嫌っていた騎士はイグニスタに与していた。
「死ね、クリューゲル!」
「やってみるがいい。国王は俺が必ず助ける……!」
壮絶な空中戦が始まった!
◆ ◇ ◆
<エルフの集落上空>
国王と黒のローブを乗せたドラゴンが集落の上で待機し、様子を伺っていると、騎士が報告に飛んでくる。
「やはり結界が邪魔をしてこちらの攻撃は通りません」
騎士達が弓や魔法で攻撃するも、弾かれ、逆にエルフから手痛い反撃を受けていた。
「……」
「国王様……?」
まだ操られていることを知らない騎士が虚ろな目をした国王に声をかけると、わざとらしく黒ローブが声をあげた。
「さあて! 僕の出番だね!」
「は、何かなされるので……?」
訝しんで聞く騎士へ、黒ローブの男がゆっくりと頷く。
「あの結界を無くすよ。……これでさ」
すっと袖から真っ黒な玉を騎士に見せる。
「……何ですかこれは?」
「これは『抑止の秘宝』って言ってね、目標へ触れさせるとあらゆる効果を霧散させることができる超レアアイテムなんだよ! 身体強化だろうが、それこそ結界だろうがね」
「それはすごいですね……ではこれを結界へ?」
「そう! だけど、ちょっと協力が必要なんだよね。頼んでいいかな? 国王の力になりたいでしょ? こっちへ来てもらえるかい?」
「ええ、出来ることであれば……」
胡散臭さを感じていた騎士だが、国王のためと言われれば無下にもできず、ワイバーンを近づけて黒ローブの男に近づく。
「それじゃ、これを持って」
「は、はあ……」
しぶしぶ真っ黒な玉を受けとった騎士を見て、黒ローブは口元をゆるませた後――
「≪漆黒の刃≫」
「え?」
ワイバーンの首を刎ねた。
「な、何を!?」
落ちそうになる騎士が国王のドラゴンに飛び移ろうとしたが、黒ローブの男は騎士を突き飛ばした。
「あ……? ……ああああああああ!?」
「いや、悪いね。協力してくれるって言うからさ!」
落ちていく騎士へ、鋭い速さでダガーを投げつけた。
ドッ!
「が、がああああ!?」
ダガーは喉に刺さり、騎士は秘宝を持ったまま結界へと落ちて体をバウンドさせる。騎士から流れ出した血が秘宝に付着し、鈍い輝きを放ち始める。それを上から見ていた黒ローブが隙間から見せる目をニタリとさせ、成り行きを見守っていた。
そして血をすすった秘宝が結界を打ち消し始めた……。
「さ、これでどこからでも攻撃できるよ? 皆殺しと行こうか! あは! あははははは!」
異変を感じて駆けつけてきたバウムを見ながら、黒ローブは笑いながら騎士達に総攻撃の合図を送った!
21
あなたにおすすめの小説
うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました
akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」
帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。
謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。
しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。
勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!?
転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。
※9月16日
タイトル変更致しました。
前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。
仲間を強くして無双していく話です。
『小説家になろう』様でも公開しています。
【完結】487222760年間女神様に仕えてきた俺は、そろそろ普通の異世界転生をしてもいいと思う
こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
異世界転生の女神様に四億年近くも仕えてきた、名も無きオリ主。
億千の異世界転生を繰り返してきた彼は、女神様に"休暇"と称して『普通の異世界転生がしたい』とお願いする。
彼の願いを聞き入れた女神様は、彼を無難な異世界へと送り出す。
四億年の経験知識と共に異世界へ降り立ったオリ主――『アヤト』は、自由気ままな転生者生活を満喫しようとするのだが、そんなぶっ壊れチートを持ったなろう系オリ主が平穏無事な"普通の異世界転生"など出来るはずもなく……?
道行く美少女ヒロイン達をスパルタ特訓で徹底的に鍛え上げ、邪魔する奴はただのパンチで滅殺抹殺一撃必殺、それも全ては"普通の異世界転生"をするために!
気が付けばヒロインが増え、気が付けば厄介事に巻き込まれる、テメーの頭はハッピーセットな、なろう系最強チーレム無双オリ主の明日はどっちだ!?
※小説家になろう、エブリスタ、ノベルアップ+にも掲載しております。
~クラス召喚~ 経験豊富な俺は1人で歩みます
無味無臭
ファンタジー
久しぶりに異世界転生を体験した。だけど周りはビギナーばかり。これでは俺が巻き込まれて死んでしまう。自称プロフェッショナルな俺はそれがイヤで他の奴と離れて生活を送る事にした。天使には魔王を討伐しろ言われたけど、それは面倒なので止めておきます。私はゆっくりのんびり異世界生活を送りたいのです。たまには自分の好きな人生をお願いします。
転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。
コイツは何かがおかしい。
本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。
目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。
【本編完結】転生隠者の転生記録———怠惰?冒険?魔法?全ては、その心の赴くままに……
ひらえす
ファンタジー
後にリッカと名乗る者は、それなりに生きて、たぶん一度死んだ。そして、その人生の苦難の8割程度が、神の不手際による物だと告げられる。
そんな前世の反動なのか、本人的には怠惰でマイペースな異世界ライフを満喫するはず……が、しかし。自分に素直になって暮らしていこうとする主人公のズレっぷり故に引き起こされたり掘り起こされたり巻き込まれていったり、時には外から眺めてみたり…の物語になりつつあります。
※小説家になろう様、アルファポリス様、カクヨム様でほぼ同時投稿しています。
※残酷描写は保険です。
※誤字脱字多いと思います。教えてくださると助かります。
Shining Rhapsody 〜神に転生した料理人〜
橘 霞月
ファンタジー
異世界へと転生した有名料理人は、この世界では最強でした。しかし自分の事を理解していない為、自重無しの生活はトラブルだらけ。しかも、いつの間にかハーレムを築いてます。平穏無事に、夢を叶える事は出来るのか!?
転生社畜、転生先でも社畜ジョブ「書記」でブラック労働し、20年。前人未到のジョブレベルカンストからの大覚醒成り上がり!
nineyu
ファンタジー
男は絶望していた。
使い潰され、いびられ、社畜生活に疲れ、気がつけば死に場所を求めて樹海を歩いていた。
しかし、樹海の先は異世界で、転生の影響か体も若返っていた!
リスタートと思い、自由に暮らしたいと思うも、手に入れていたスキルは前世の影響らしく、気がつけば変わらない社畜生活に、、
そんな不幸な男の転機はそこから20年。
累計四十年の社畜ジョブが、遂に覚醒する!!
おっさんが雑魚キャラに転生するも、いっぱしを目指す。
お茶飲み人の愛自好吾(あいじこうご)
ファンタジー
どこにでも居るような冴えないおっさん、山田 太郎(独身)は、かつてやり込んでいたファンタジーシミュレーションRPGの世界に転生する運びとなった。しかし、ゲーム序盤で倒される山賊の下っ端キャラだった。女神様から貰ったスキルと、かつてやり込んでいたゲーム知識を使って、生き延びようと決心するおっさん。はたして、モンスター蔓延る異世界で生き延びられるだろうか?ザコキャラ奮闘ファンタジーここに開幕。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる