俺のスキルが回復魔『法』じゃなくて、回復魔『王』なんですけど?

八神 凪

文字の大きさ
118 / 253
第五章:疑惑の女神と破壊神編

第百十一話 帰ってきたあの人

しおりを挟む
 

 「とりあえずクロウ達は一緒に戻るってことでいいのか?」

 「ああ、僕達はエリアランドの封印を解くということを依頼されていただけだからね。戻れるなら一緒に戻りたいところだよ」

 「こっちとしても死にかけたわけだし、聖女様にお話を聞かないと納得はできないしね」

 レオッタが肩を竦めて言う。

 「まったくだ……知っていたなら最神官様も教えてくれれば良かったものを……」

 大男……名前を聞いてないなそう言えば……が、ぶつぶつと呟いていた。

 ……気絶している男ですらトロベルという名前を知っているのに。

 まあ別に気にならないのでいいか。今更聞くのも恥ずかしいし、そのうち誰か言うだろ。


 「で、エルニーに着いたらどうするんですか?」

 ルルカが御者台にいる俺に近づいて来て尋ねてくる。そうだな、今言っておいた方が後々楽になるか。

 「ティリア」

 「はい。まずは私達が出発した港町フルスへ向かいます。そこから出ている船でアウグゼスト行きの船に乗り換え、リファとルルカはそこから城へ行き、国王様へ状況を報告しに戻ってください」

 「は……? え!? も、戻るんですか!? 私達も行きますよ!」

 「リファ、手綱手綱!?」

 びっくりして立ち上がるリファを慌てて座らせると、ルルカも横から口を尖らせて言ってくる。

 「ボクはカケルさんと一緒に行くって言いましたよね? それにリファと戻ったらボクがあの兄上に怒られるじゃありませんか!」

 そこかよ……よほどか? と、思いながら俺がティリアに代わり説明をする。

 「リファは王女だ。国王に今回の件を話すのはうってつけだろ? それに封印について探すなら賢者であるルルカの人脈を期待すると考えれば最適だと思う」

 「まあ確かにそうだけど……」

 「世界の危機なら仕方ない……いや、しかし……!」

 渋々と納得しつつある二人をよそに一旦野営を挟む。

 食事は俺の記憶から作った野菜たっぷりの豚汁とライスを振る舞った。

 「これも美味しい……やはりカケルと離れるのは……」

 「(お嬢様もいつカケルさんに惚れるか分からないし二人にさせるのは危険だよねえ)」

 リファがぶつぶつと、ルルカが俺とティリアを交互に見つつ、とりあえずは大人しくしてくれているようで何よりだ。

 「……僕はもう一杯欲しい」

 「お、食え食え。食材はあるからな。ティリアを見習え」

 「はい! やっぱりカケルさんのご飯は美味しいですね!」

 そう言うティリアはもう6杯目である。食いしん坊魔王は容赦がなかった。

 一応、トロベルは目を覚ましてご飯に参加したものの、死にかけた以外の情報は無かったので割愛しておく!

 
 そして久しぶりに港町へと戻ってきた。


 「やっぱ行ってたか」

 「仕方ないです。とりあえずフルス行きの便の時刻を調べましょう」

 「あ、それなら任せていいか? 俺はちょっとユニオンに用事がある」

 「分かりました。それでは私達も後からユニオンへ向かいます。リファ、ルルカ、行きましょう」

 「はーい……」

 「……さて、どうする……密航……ぶつぶつ……」

 覇気のない二人を連れてティリアは船着き場へと向かい、俺とデヴァイン教徒でユニオンを目指す。

 「……ふう……やっと居なくなったか……」

 「どうしたクロウ?」

 「……なぜかボクに構いたがるんだよあの人達は……おかげでおっぱいが……お、おっぱいが……」

 羨ましそうな悩みだが、13歳には刺激が強すぎたのかもしれない。しばらくそっとしておいた方がいいような気がする。ユニオンの扉を開けると、出発の時に居た受付のお姉さんを見つけた。

 「帰って来たよ。イクシルは?」

 「あ! お久しぶりです! マスターですね、少々お待ちください」

 「あんた、ユニオンマスターとも知り合いなの? もしかして凄い人?」

 「凄くは無いと思うけどな。お、来た来た」

 レオッタの言葉を受け流しながら奥を見ていると、相変わらずの仏頂面でイクシルが歩いてきた。

 「戻ったか、新い……いや、カケル。異種族狩りのオーダーが流れなくなったがお前達の仕業だな?」

 「ま、そんなところだ。色々と面倒があったけど何とかチェルも親元に帰ったよ」

 「……そうか、まあ私は恨まれているだろうから別にどうでもいいさ」

 「本当は助けたかったんだろ?」

 実際檻を仕掛ける際に複雑な表情を見せていたからな。仕事とはいえやりたくなかったのだろうと思っていた。

 「さあな。それより、報酬だ。デブリンの素材を含めて10万セラだ」

 俺に封筒を差し出し、中身を確認するとお札が10枚入っていた。ハインツ国王から50万もらってるから少なく感じるなあ……いつか大出費する時まできちんと取っておこう。

 「で、イクシルだけに話したいことがある」

 
 俺は今回の経緯を話しておくことにした。他言は必要ならばしてもいいという約束で。

 そして女神の封印と破壊神については情報を集めて欲しいことを伝えて、ニド達にもお願いしていることを告げた。

 「了解した。厄介ごとだが、見ぬふりも出来ん。何か分かれば伝えよう」

 イクシルが忙しくなる、と、呟きながら引っ込んだのと入れ替わりにティリア達がユニオンに入ってきた。適当なテーブルとイスに腰掛けて船の時間を聞くことにした。

 「どうだった? すぐ行けそうなのはあったか?」

 「それが……三日後まで船がありませんでした」

 三日か……たかが三日、されど三日。できれば急いでおきたいところにこれは痛い情報だ。とはいえ、船以外の方法は無いので待つ以外にないのだが……。

 「仕方ない、とりあえずチケットだけ買って待つとしよう。お前達お金はあ「お兄さん、お困りのようですね……? るのか?」

 と、俺がクロウ達に聞こうとした矢先、俺達の後ろに座っていた女性が割り込んできた。

 「困っているけど、大した悩みじゃない。船がすぐに出ないだけだからな。よし、とりあえず宿も取るか」

 俺はそう言って席を立とうとしたが、その女性に制された。

 「船なら私が用意しましょう!」

 「……はあ?」

 俺が間の抜けた声を出すと、リファが女性に話しかけていた。

 「個人で船を持つのは難しいはずだぞ? どうして貴女のような人が持っているのだ? カケル、行こう、めちゃくちゃ怪しい」

 「あ、ああ」

 全員立ち上がり、ユニオンを出て行こうとする

 「あ、あー!? 怪しい者ではありませんよ! ……ですよねカケルさん」

 「俺の名前を……?」

 俺が振り返ると、女性はニヤリと笑いながら口上を始めた。

 「ある時はドジっ子メイド……またある時は怪しい船の仲介人……しかしてその正体は!!」

 自分で怪しいって言っちゃったよこの人!? そしてバサ! と、スカートをまくり上げた! 周りからおおー! と言った声があがる! 

 「お、お前!?」

 「そう! 美少女大盗賊! その名もレヴナントちゃんです!」

 出てきたその人物は、メリーヌ師匠との一件で敵かと思えば、俺の逃走を手助けしてくれたレヴナントだった! 相変わらず顔は隠していた。


 「お前……!」

 「ふふふ、驚いて声も出ませんか、お久しぶりで……」

 「女だったのか」

 ガクっと膝を崩すレヴナント。胸ないし、俺はてっきり男だと思っていた。

 「どこを見てるんですか?」

 「別に」

 レヴナントがさっと胸を隠す動作をしながら言うが、俺はスルーした。そこにティリアが声をかけてきた。

 「お知り合い、ですか?」

 「知り合いといえばそうだな。自分で名乗ったから紹介は要らないと思う」

 「してくださいよ!? ……まあ、これから一緒に行動するわけですし、その辺りは後々で」

 「そういや船を持っているのか?」

 俺が聞くと、レヴナントは待ってましたとばかりに

 「ええ! 盗賊稼業だけではやはり難しいので、次は海賊かなと思い、買ったんですよ! ダーリンなら特別価格10万セラでレンタルしましょう!」

 「あ、金はとるんだ」

 テントとか一式を調達してもらった時にも請求して来たし特に違和感はない。しかし渡りに船とはこのことか、直行できるなら10万セラくらい安いものだ。

 「ダーリン……?」

 「気にするな、あいつの冗談だ」

 「んふふ♪」

 若干何名か不穏な空気に陥るが、ややこしくなる前に宥めておく。そのまま俺はレヴナントへ告げる。

 「10万セラ払おう。行き先は……」

 「アウグゼスト、ですね?」

 「む……」

 「実は最初に送ったメリーヌ女史と連絡がつかなくなりましてね。部下を通じて連絡はもらっていたんですけど、丁度、一週間前にぷつりと。カケルさんにお知らせしようと思いましてね。で、フエーゴ行きの船がぽしゃったと聞いたのでカケルさんがここに居るかもと思ってきたらビンゴというわけです。そして連れているのはデヴァイン教徒……となると次の目標はアウグゼストですよね?」

 口元をニコリとさせてレヴナントが笑う。どこかで見ていたのか、というくらい予想がしっかりできていた。

 「お前の予想通りだ。メリーヌ師匠と連絡が取れなくなったというのも気になる、急げるか?」

 「はいはいー♪ 勿論ですよ! 港には停泊できませんからボートで船まで行きましょう、こちらです」

 俺達を案内しようとしていた矢先、よく見れば冒険者達がこっちを見ていることに気付く。何やらぼそぼそと喋っているのを耳を澄ませて聞いてみると……

 (今、あいつ大盗賊とか言わなかったか?)

 (マジで? 手配中の?)

 (捕まえたら100万セラじゃなかったっけ……?)

 (間違いならそれはそれで……とりあえず捕まえてみないか)

  俺はスッとレブナントから離れた。

 「あれ? どうしたんですかカケルさん?」

 「……いや、とりあえず外に出たら何か変装した方がいいぞ」

 「? そうですか? やっぱり美少女は目立ちますからね!」

 
 ――その後は大変だった。

 外に出た途端、冒険者がレヴナントに襲いかかり阿鼻叫喚の地獄絵図。もちろんレヴナントが捕まるわけはないのだが、俺達が仲間だと認定され、俺達も追われる羽目になったりした。イクシルが諫めてくれてその場は何とかなったのはまた別の話。

 何はともあれ、俺達は船を手に入れることができたのである!
しおりを挟む
感想 586

あなたにおすすめの小説

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!

菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは 「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。  同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう  最初の武器は木の棒!?  そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。  何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら 困難に立ち向かっていく。  チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!  異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。  話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい! ****** 完結まで必ず続けます ***** ****** 毎日更新もします *****  他サイトへ重複投稿しています!

勝手にダンジョンを創られ魔法のある生活が始まりました

久遠 れんり
ファンタジー
別の世界からの侵略を機に地球にばらまかれた魔素、元々なかった魔素の影響を受け徐々に人間は進化をする。 魔法が使えるようになった人類。 侵略者の想像を超え人類は魔改造されていく。 カクヨム公開中。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

精霊の森に捨てられた少女が、精霊さんと一緒に人の街へ帰ってきた

アイイロモンペ
ファンタジー
 2020.9.6.完結いたしました。  2020.9.28. 追補を入れました。  2021.4. 2. 追補を追加しました。  人が精霊と袂を分かった世界。  魔力なしの忌子として瘴気の森に捨てられた幼子は、精霊が好む姿かたちをしていた。  幼子は、ターニャという名を精霊から貰い、精霊の森で精霊に愛されて育った。  ある日、ターニャは人間ある以上は、人間の世界を知るべきだと、育ての親である大精霊に言われる。  人の世の常識を知らないターニャの行動は、周囲の人々を困惑させる。  そして、魔力の強い者が人々を支配すると言う世界で、ターニャは既存の価値観を意識せずにぶち壊していく。  オーソドックスなファンタジーを心がけようと思います。読んでいただけたら嬉しいです。

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

処理中です...