俺のスキルが回復魔『法』じゃなくて、回復魔『王』なんですけど?

八神 凪

文字の大きさ
136 / 253
第五章:疑惑の女神と破壊神編

第百二十八話 聖女とお話し合い

しおりを挟む

 「せ、聖女様!?」

 と、クロウが大声を上げて片膝をついた。俺達はクロウと女の子を交互に見た後、呟く。

 「え、聖女ってこの子が……!?」

 「うん……」

 クロウが俺の言葉に頷く。まあ今から話を聞く、という名目で集まっているのだから当然と言えば当然なのだが……

 「ここにある気がするけど開かない……」

 水色の髪の聖女は俺のカバンを開けようと必死だった。近くで見れば確かに綺麗な肌や身なりをしており、顔も整っていた。

 というか……

 「人のカバンを勝手に触るんじゃありません!」

 「あう」

 俺がカバンを引っ張ると、あっさり床に転がる聖女。それをクロウが慌てて抱き起こす。

 「ちょ!? カケル、なんてことをするんだ! 何でもいい、何か食べ物を分けてくれないか?」

 「あ、クロウ君だ」

 「今気付いたんですか!?」

 目を細めてじっとクロウの顔を見ていたと思ったらそんなことをいう。ボーっとしているように見えてボーっとしているようだ。

 「何かあったかな……お、ホットケーキの作り置きがあったぞ」

 「カケルさんもたいがい優しいよね」

 「困っている人間を助けるのが趣味みたいなやつじゃからのう」

 何かルルカと師匠がやれやれと言った感じでため息を吐いていた。そんな事は無いと思うんだが……・

 さて、ホットケーキをとりだしたのだが、時間経過が無いのでまだホカホカである。今更だが勝手に食材や道具、素材といったカテゴリ分けがされている点も見逃せない。アウロラがくれたアイテムの中ではこれが一番信用できる。
 
 早速ホットケーキを皿に盛りつけて渡すと、ボーっとした目が見開いた。

 「これは……きっと美味しい……!」

 「僕も食べましたがかなりでしたよ」

 「やはり……!」

 しかしテーブルは無いため手で持って食べることになる。そこで、聖女がきょろきょろと何かを探し、テーブルになりそうなものの上にホットケーキを置いて手を合わせた。

 「いただきます」

 「あ、あの、聖女様……そこは……」

 「くっく……面白いじゃないか」

 「ん~……♪」

 クロウが冷や汗をかきながら聖女へ声をかけ、レヴナントが苦笑する。だが、ご満悦の表情でクロウの声に聞く耳を持っちゃいない。
 味わっているのか、のんびり食べているのか分からないが、ようやく半分を食べたところで玉座裏の扉から神経質な足跡と、声が聞こえてきた。

 「聖女様! 聖女様はこちらですか! 部屋にいらっしゃるようにとあれほ……」

 ガチャリと入ってきたのは先程俺達と話していた枢機卿のエドウィンだった。ずかずかと玉座の前に回り込んだ瞬間、言葉が止まり、固まった。

 「エドウィン。これ、美味しい。明日から朝食はこれで」

 にこっと笑う聖女とは裏腹に大量の汗を流しながらエドウィンは叫んだ。

 「せ、聖櫃の上で何か食べてるー!?」

 食べてるー!?

 食べてるー……

 

 
 ◆ ◇ ◆




 「よく、無事で戻ってきましたねクロウ」

 「は、はい……ありがとうございます……」

 「それに入信者の皆様も。ご存じかもしれませんが、私はデヴァイン教の聖女、ユーティリアと申します」

 にこっと笑う顔は可愛いが、俺は気になっていることを口にする。

 「口の周りを拭け」

 「貴様、聖女様になんて口を聞くのだ!」

 聖女っぽい感じで取り繕ってはいるが、さっきの惨状を見る限りもう神秘的な感じで見ることはできなかった。こう、ちょっと期待していたんだけどな。ごしごしと口を擦り、納得したように頷くとまた神秘的な感じでクロウへと尋ねる。

 「それで成果は?」

 「は、エリアランドにあるという封印を無事発見し、解くことができました」

 「そうでしたか、偉い偉い」

 「や、やめてくださいよ」

 「ではアウロラ様の神託はお間違えでは無かった、ということだな」

 エドウィンも満足気に頷くが、クロウはスッと真顔になり、話を続ける。

 「いえ、この話には続きがあります。封印は確かに解けたのですが、まずその時にトロベルが瀕死の重傷を負い、さらにその直後『破壊神の力』の一つと名乗る者が現れました」

 「な、何、破壊神だと!? 聖女様、そのことは……」

 「聞いていませんね」

 エドウィンがユーティリアに顔を向けると首がちぎれんばかりの勢いで首を振っていた。

 「続けます。彼のもの……グラオザムは私達を攻撃し、全滅の危機に陥りました。ですが、そこにいるカケルという冒険者のおかげで九死に一生を得、何とか退けることができました」

 「な、何と……では入信したいというのは……」

 「嘘だ」

 俺がクロウの横に立ち、そう言うとユーティリアが玉座から立ち上がって頭を下げた。

 「せ、聖女様……!?」

 「クロウ君達を助けてくれてありがとうございました。彼等の代わりになる者はいませんから、心より感謝します」

 「ま、乗りかかった船だったしな。で、ついでと言っちゃなんだが、俺達から聞きたいことがある。時間はあるか?」

 するとエドウィンが少し腕を組んでから目を瞑ると、俺に目を向けて頷いた。

 「……よかろう、破壊神の手の者を退けるほどの者だ。本日の礼拝は聖女様抜きで行ってもらおう。手配してくるから、待っていてくれ」

 「ああ」

 「……くれぐれも私の居ない間に話を進めるんじゃないぞ? 帰ってきて進んでいたら怒るからな?」

 「……心配するなって」

 エドウィンが扉から出たのを見計らって俺は口を開く。

 「で、話というのは……」

 その直後、玉座後ろの扉がバーン! と、開かれて怒号が飛んできた!

 「だから待ってろって!!」

 そしてまた扉の向こうへ消えて行った。

 「あのおっさん面白いな」

 「可哀相だから止めてあげなよ」

 ルルカが苦笑いしながら俺にそう言い、横を見るとクロウとユーティリアが笑っていた。

 「え、エドウィンがあんな叫ぶなんて! あははは! カケルはやっぱり面白いよ」

 「珍しいですねー」

 そして数分後、エドウィンが戻り、情報交換が始まった。









 ◆ ◇ ◆








 『カケルさんが聖女と接触したわね。ここまでは想定内……』

 アウロラが池から見えるカケルを見ながら呟きティーカップに口をつける。

 『さて、どう誤魔化そうかしら? あの聖女、ボーっとしているから神託だとちょっと伝わらないかもしれないし』

 腕を組んで考えた後、目を開いてニヤリと笑う。

 『そういえばこれがあったわね。もう一回役立ってもらいましょう』

 そういうアウロラの手には、以前封印を解いた時に使ったガラケーが握られていた。

 残念なことに、アウロラはスマホを使いこなせなかったので、仕方なくガラケーを使っていた。

 『電話ができればいいしね。携帯は電話機なんだし』

 使いこなせない負け犬の遠吠えをしながら、アウロラは電話帳を押した。
しおりを挟む
感想 586

あなたにおすすめの小説

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!

菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは 「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。  同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう  最初の武器は木の棒!?  そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。  何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら 困難に立ち向かっていく。  チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!  異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。  話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい! ****** 完結まで必ず続けます ***** ****** 毎日更新もします *****  他サイトへ重複投稿しています!

勝手にダンジョンを創られ魔法のある生活が始まりました

久遠 れんり
ファンタジー
別の世界からの侵略を機に地球にばらまかれた魔素、元々なかった魔素の影響を受け徐々に人間は進化をする。 魔法が使えるようになった人類。 侵略者の想像を超え人類は魔改造されていく。 カクヨム公開中。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

精霊の森に捨てられた少女が、精霊さんと一緒に人の街へ帰ってきた

アイイロモンペ
ファンタジー
 2020.9.6.完結いたしました。  2020.9.28. 追補を入れました。  2021.4. 2. 追補を追加しました。  人が精霊と袂を分かった世界。  魔力なしの忌子として瘴気の森に捨てられた幼子は、精霊が好む姿かたちをしていた。  幼子は、ターニャという名を精霊から貰い、精霊の森で精霊に愛されて育った。  ある日、ターニャは人間ある以上は、人間の世界を知るべきだと、育ての親である大精霊に言われる。  人の世の常識を知らないターニャの行動は、周囲の人々を困惑させる。  そして、魔力の強い者が人々を支配すると言う世界で、ターニャは既存の価値観を意識せずにぶち壊していく。  オーソドックスなファンタジーを心がけようと思います。読んでいただけたら嬉しいです。

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

処理中です...