146 / 253
第六章:ヴァント王国の戦い編
第百三十八話 レリクスの違和感
しおりを挟む<ヴァント城>
『燃える瞳』と『ブルーゲイル』のメンバーが出会っていたころ、城では――
◆ ◇ ◆
コンコン――
「ペリッティかな? 入っていいよ」
自室で本を読んでいたレリクスがノックの音を聞き、声をかけると『失礼します』という返事と共にメイドが入ってきた。ティーセットを手に学習机とは別のテーブルにお菓子とお茶を用意しながらレリクスに話しかけた。
「王子、トーベンさんから『ブルーゲイル』というパーティに誘拐事件の解決依頼を頼んだと連絡がありました」
「ブルーゲイル? 聞いたことが無いパーティだね」
メイド服を着た暗殺者、ペリッティがトーベンから聞いた内容をレリクスへと報告を行う。するとレリクスは読んでいた本から顔を上げてペリッティへ尋ねた。
「ええ、外からの冒険者ですね。次の報告が驚きなのですが、あのカケル様と接触したパーティメンバーだそうです」
カケルの名を聞き、レリクスは立ち上がり、目を見開いて叫んだ。
「カケルだって!? 彼は今どこにいるんだ!」
「落ち着いてください。ブルーゲイルの話によると、エリアランドで依頼を一緒にこなしたそうです。そして今は恐らく聖華の都に居るとのことでした」
「アウグゼストか。どうしてまたそんなところに……」
レリクスが顎に手を当てて考えると、ペリッティが微笑み、解答を出す。
「ここからが本題なのですが、カケル様がエリアランドに行ったのは偶然だったそうです。そして、偶然からエリアランドで起こっていた「異種族狩り」を解決したのだとか」
「……相変わらずだね。ウチだけでなくエリアランドも救うなんて」
「そこまでなら、まあカケル様だな、ということで片付くのですが……」
「まだ何かあるのかい?」
レリクスの言葉に、真面目な顔をしてペリッティは頷いた。
「はい。『女神アウロラの封印』を見つけたそうです」
「『女神の封印』だって? もしかしてその封印を……!?」
「そうです。不可抗力だったそうですが、デヴァイン教徒の手により封印は解除。その結果、何と破壊神の力の一部が復活したそうです」
「それは……本当かい? ブルーゲイルというパーティが嘘をついている可能性は?」
「トーベンさんの話ではそういったことは見受けられないそうです。彼等は破壊神の力の一部、グラオザムという男に殺されそうになったとか。それを助けたのもカケル様で、その後彼はデヴァイン教本部へ赴き、封印について調べると旅立ったみたいです」
レリクスは渋い顔になり、乾いた口の中を潤すためお茶を一口飲む。
「なるほどね。それでアウグゼストか……で、ブルーゲイルがこの国に来たのは王族の知り合いである僕にそれを知らせるため、ってところかな」
「フフ、流石は王子。彼等は独自に封印を調べるつもりだったみたいですが、カケル様が『この国に立ち寄ることがあれば燃える瞳と王子へ伝えれば力を貸してくれるだろう』とか言ったみたいです」
「ふう……荒らすだけ荒らして逃げたくせに、よく言うよ」
「その割には楽しそうですね?」
「もちろんさ。死んではいないと思ったけど、僕を頼ってくるなんて嬉しいじゃないか」
「王子はボッチ……いえ、友達が居ませんからね」
「いるよ!? 学院での生活は知ってるだろう! それにまったく濁せてないからね!?」
ティーカップをテーブルに置きながら怒鳴るレリクスは、椅子には座らずそのまま扉へと向かっていた。
「どちらへ?」
「父上のところさ。代々国王になる者は『封印』について伝承されるんだ。先代から、今は父上が何か知っているはずさ」
「ではお供します」
「頼むよ」
レリクスとペリッティは国王の部屋へと向かい、すぐに到着する。
「父上、いらっしゃいますか?」
「レリクスか。入れ」
失礼します、とレリクスが入り、続いてペリッティが頭を下げながら入室する。国王の自室に入るのは初めてではないが、やはり緊張するなと、レリクスは思っていた。すると、国王は微笑みながら口を開く。
「私の部屋に来るとは珍しいじゃないか。小さい頃は『父上、父上』とよく来たのになあ……」
「しみじみ言うには父上はまだ老いていませんよ。実はお願いがあって来たのです」
「お願いだと? 明日は大雨か? 小遣いなら母さんに言ってくれ、私が出そうとすると怒られるんだよ、甘やかすなって……」
国王が久しぶりに息子が部屋にきたことに喜びを隠せないでいるのをレリクスは苦笑して聞いていたが、ふと真顔になり父へと告げる。
「お願いと言うのは父上、『封印』についてです」
「……!」
レリクスの言葉に眉をあげて言葉を詰まらせる国王。レリクスはそのまま話を続けた。
「エリアランドの封印が解かれたと、ある筋から情報が入りました。その時、破壊神の力の一部が魔物として現れ、その時遭遇した冒険者を死の淵まで追い込んだ、と」
「……」
国王は肘をついて、レリクスの目をみながら黙って聞いていた。横からペリッティも口を開く。
「その時、アウロラ様の力も戻ったようですが、同時に脅威も拡散されています。破壊神の力の一部は、冒険者の手により致命打を受け逃走したと聞いています」
「何か知っていることがあればお聞かせください。対抗策を練れるかもしれません」
レリクスがもう一度そう言うと、国王は少し考えた後話しはじめた。
「……むう、話が本当なら恐るべきことだ。封印については王位継承時に伝えるものだが、内密というわけではない。エリアランド以外の主要6国には言うとおり、アウロラ様の封印がある。一説によれば、破壊神を封印するのにそれだけの力を使う必要があった、と聞いているな」
「破壊神が復活する、というのは?」
「それは聞いたことが無いな……確かに破壊神を封印しているのだから、解けばいずれ復活するだろう。だが、力の一部が出てくると言うのは初めてだ」
ここでレリクスはペリッティに聞いた時に感じた違和感を国王へ話す。
「……僕は『アウロラ様の封印』というキーワードがどうしても気になるのです。どうして『破壊神の封印』と名をつけなかったのでしょうか?」
「む、確かに。『アウロラ様の封印』と聞けば『アウロラ様』が復活するように聞こえるな……」
そこでペリッティが、なるほどとうなずいた。
「『破壊神の封印』なら、ヘルーガ教は別として、誰も怖がって封印を解こうとしませんね」
「そう。最初に聞いた時、僕はその部分に違和感を感じたんだ。あたかも封印を解くよう仕向けている、そんな気がするってね。父上、何か封印について書かれた書物などは残っていないのですか?」
「……ある。封印されている遺跡の鍵と一緒に残されている」
「見せていただいても?」
「ペリッティはダメだが、お前は構わんだろう。ついてこい」
国王は椅子から立ち上がり、レリクスを奥の部屋へと案内した。書斎のような部屋で、特定の場所にある本をいくつか抜き取ると、隠し扉が現れ、その先に地下へと降りる階段があった。
「面白い仕掛けですね。ペリッティはここで見張りを」
「はい」
「お前なら食いつくと思ったぞ。こっちだ」
国王とレリクスが降りていくと、祭壇のような机があり、その上に箱がぽつんと置かれていた。
「これだ。この中に遺跡の鍵と書物が……」
と、国王が箱を開けた時、驚きの声を上げた。
「な、無い!? 遺跡の鍵がないぞ!?」
「なんだって!? ……これが本……父上お借りします」
「う、うむ! それよりも鍵だ!」
「落ち着いて父上。ここのことを知っているのは?」
レリクスが国王の肩に手を置いて、ゆっくりと話しかけると、国王は汗を拭いながら口を開いた。
「わ、私と……先代……それと、母上の三人だ……」
「他はいない、と? 遺跡の場所は分かりますか?」
「……遺跡は、今二人がいる別荘の近くにある海底洞窟だ。潮が引いた時だけ入り口が見える」
「分かりました。父上は別荘へ騎士達を回してください、別荘が遺跡付近ならおじい様達が危ない」
ああ、と頷くのを見て、急いで階段をかけあがるレリクス。そして入り口に立っていたペリッティへ叫ぶ。
「ペリッティ! 急ぎだ! おじい様達が居る別荘に向かってくれ! 封印の遺跡を解くための鍵が盗まれた!」
「畏まりました。カギはどういった形を……?」
「それは……」
と、レリクスが言おうとした瞬間、後ろから国王が答えた。
「赤いルビーだ。くぼみにはめ込むようにしてセットすると開くようになっている。通常のルビーより真っ赤な色をしているからすぐにわかるはずだ」
「承知しました。燃える瞳とブルーゲイルにはこのことを?」
「僕からトーベン経由で知らせる。すぐに向かわせるから頼む」
「……では!」
それだけ言うと、ペリッティはメイド服を脱いで漆黒の衣装に着替えた瞬間、姿を消した。
「しかし一体誰が……」
国王が呟くと、レリクスは険しい顔をして仮説を立てる。
「……恐らくおじい様かおばあ様のどちらかでしょう……何があったか分かりませんが、不審者をペリッティが感じていない、不審者の目撃者もなく、さらに父上に危害を加えず持ち出せるとすればその二人しかいません。もし、おじい様が別荘から帰ってきていて城を歩いていても不思議には思わないでしょう?」
「ぬう……」
「(問題は『なぜ』というところだね。こればかりは本人たちに聞くしかないか。さて、こうしちゃいられない、僕も動こう)」
レリクスは部屋に国王を残し、ウェハーの町へ馬車を走らせるのだった。
そして、再び舞台はカルモの町へ――
12
あなたにおすすめの小説
無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す
紅月シン
ファンタジー
七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。
才能限界0。
それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。
レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。
つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。
だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。
その結果として実家の公爵家を追放されたことも。
同日に前世の記憶を思い出したことも。
一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。
その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。
スキル。
そして、自らのスキルである限界突破。
やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。
※小説家になろう様にも投稿しています
老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!
菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは
「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。
同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと
アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう
最初の武器は木の棒!?
そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。
何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら
困難に立ち向かっていく。
チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!
異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。
話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい!
****** 完結まで必ず続けます *****
****** 毎日更新もします *****
他サイトへ重複投稿しています!
勝手にダンジョンを創られ魔法のある生活が始まりました
久遠 れんり
ファンタジー
別の世界からの侵略を機に地球にばらまかれた魔素、元々なかった魔素の影響を受け徐々に人間は進化をする。
魔法が使えるようになった人類。
侵略者の想像を超え人類は魔改造されていく。
カクヨム公開中。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
精霊の森に捨てられた少女が、精霊さんと一緒に人の街へ帰ってきた
アイイロモンペ
ファンタジー
2020.9.6.完結いたしました。
2020.9.28. 追補を入れました。
2021.4. 2. 追補を追加しました。
人が精霊と袂を分かった世界。
魔力なしの忌子として瘴気の森に捨てられた幼子は、精霊が好む姿かたちをしていた。
幼子は、ターニャという名を精霊から貰い、精霊の森で精霊に愛されて育った。
ある日、ターニャは人間ある以上は、人間の世界を知るべきだと、育ての親である大精霊に言われる。
人の世の常識を知らないターニャの行動は、周囲の人々を困惑させる。
そして、魔力の強い者が人々を支配すると言う世界で、ターニャは既存の価値観を意識せずにぶち壊していく。
オーソドックスなファンタジーを心がけようと思います。読んでいただけたら嬉しいです。
役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !
本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。
主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。
その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。
そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。
主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。
ハーレム要素はしばらくありません。
ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者
哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。
何も成し遂げることなく35年……
ついに前世の年齢を超えた。
※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。
※この小説は他サイトにも投稿しています。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる