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第六章:ヴァント王国の戦い編
第百四十話 救出作戦と封印
しおりを挟むガチャガチャ……
「食料は必要か?」
「馬車で行けばいいから大丈夫だと思う。軽いものを持って行こう」
ゴソゴソ……
「洞窟ならランタンは必要ね。油は……」
「……私が持ちます」
「あ、サンちゃんだっけ? ありがとう♪ コトハさん、ポーションはこっちが持ちましょうか?」
ブルーゲイルと燃える瞳はユニオンで封印のある海底洞窟へ行くための準備を行っていた。道具類はレムルがお小遣いを使って用意し、馬車も全員が乗れる大型ものを手配していた。
「急いでくださいな! こうしている間にも子供達が危ない目にあっているかもしれません!」
レムルがパーティをせっついていると、グランツが馬車の荷台から飛び降りて声をかける。
「よし、これで積み込みは終わった。いつでもいけるよ、レムル様」
「結構ですわグランツさん。それでは行きましょう」
「ちょ、ちょっと待ってレムル様!? あなたはダメですよ!」
「? どうしてですの? お友達の危機に駆けつけないわけにはいかないでしょう?」
さも当然とばかりに首を傾げるレムルに、グランツが言う。
「レムル様は残ってください。もし俺達が戻ってこないようであれば援軍をお願いします。もうすぐ夜なので声をかける冒険者が帰ってきたら人を集めてくださると助かります。レムル様なら俺達より人を集めるのが難しくないと思いますし」
するとレムルは渋々頷いた。
「……仕方ありませんわね。このレムルの人徳で必ず援軍を送りこんで見せますわ! おーっほっほっほ!」
「そういえばツォレはどうしたんですか?」
「彼は少し里帰りをしていますわ。いれば一緒に行ってもらうんですのに」
そこでエリンがグランツへと耳打ちをする。
「(うまいこと言ったわねグランツ。レムル様に何かあったら私達も困るしね)」
「(ああ、こういっておけば着いてくるより色々できそうだと思ってくれるだろうしね)」
「では、お気をつけて! わたくしはユニオンで受付と人を集める準備に入ります」
レムルがユニオンの中へと消えたのを確認し、グランツはブルーゲイルのメンバーへと向き直って口を開く。
「それじゃ道を知っている俺が御者台に座ります。後は……」
「俺が隣を使わせてもらう。シーフの俺なら索敵もしやすいしな!」
「ありがとうございます!」
アルが早々に御者台の一つに座り、グランツへウインクする。残りのメンバーは馬車の荷台へと乗り込み、出立した。
「馬二頭に、ポーションがこんなに……王子と知り合いな上に、貴族のお嬢さんとも知り合いって凄いな」
木箱に詰められたポーションを一つ手に取りながらドアールがエリンに向かってそんなことを言う。するとエリンが弓の弦を張りなおしながら答える。
「うーん、本当はわたし達って低レベル冒険者の典型だったんだけど、カケルさんに命を救われた後は人生がこう……ぐんと変わったのよ」
ジャイアントビー討伐で死にかけ、そこを助けられた後、レムルとは別の貴族のお嬢様の護衛をすることになったことや学院での生活、そしてエリンの父を治すためのお金を工面してくれたといった話をし、そこからの縁で繋がっていることをブルーゲイルに言う。
そのお返しにブルーゲイルもカケルとの出会いを燃える瞳の二人に語っていた。
「……ゴブリンの亜種、デブリンを倒すとは思わなかったですね」
「うーん……まさかデブリンを倒せるようになっているとは……俺も修行をしないと……」
「グランツ達は村に戻らないのかい?」
サンがアルとグランツに飲み物を渡すため荷台から御者台へ顔を出して話をしていた。馬車内ではニドがグランツにも聞こえるように、エリンの父親のこともあるから戻らないのかと聞く。
「ええ、グランツとはいずれ結婚したいですし、そうなると村で過ごすことになると思います。だから、その前に一度カケルさんに会ってから今後のことを考えようと話しあったんです。借りたお金をかえすために、貯めて追いかけるつもりです。トレーネもカケルさんに会いたいとずっと言っていますし」
「なるほどな。カケルの旦那も隅におけねえや。あんなキレイどころを連れていてまだ好かれている女がいるなんてな」
キレイどころ、と聞いてエリンとグランツの耳が大きくなる。
「どういうことですか……? まさかカケルさんは女性と旅を……?」
「あ? 言ってなかったっけ? 『光翼の魔王』様と、おっぱいの大きい剣士、それに可愛い賢者と一緒にいたんだぜ! あれは羨ましかった……」
ドアールが肩を竦めて言うと、エリンがゴクリと唾を飲みこみ呟いた。
「その中の誰かが恋人とかだったら……惨劇が起こる……」
その様子にドアールが少し慌てた様子で首を振った。
「い、いや、恋人って感じじゃなかったから……大丈夫、だと思う。ま、惨劇になるのは勘弁だがそのためにもトレーネちゃんを助けに行かないとな」
「……すまない、囮になるつもりだったのに」
「気にするなよ。子供達はイレギュラーだった。で、これから助ければいい」
ニドが楽観的なことを言うが、悲観的になっても思考が鈍るだけだと経験から知っての言葉だった。それをグランツも分かっており、顔をあげて馬に鞭を振るう。
「その通りだ! 急ぐからしっかり捕まっててくれ! 別荘までは半日はかかる。やつらも簡単には到着しないはずだ」
ガラガラとスピードを上げて、夜の街道を走り抜ける一行であった。
◆ ◇ ◆
一方、少しだけ舞台はエリアランドのボウフウン山――
「……兄さん、そろそろ下山しないか? もう何も見つからないんだろ?」
「黙って手伝え」
「そろそろ木の実だけの生活とか飽き飽き何だけ……ど!?」
ぶつくさと文句を言いながら神殿探索と石碑を調べているのは、風斬りの魔王バウムとその弟フィアムである。カケル達と別れた後、山に戻り探索を続けていたがあまり手ごたえは感じられず、町で生活していたフィアムは食事に不満を抱いていた。
「痛い!?」
「お前がうるさいからだ。国王につきださなかっただけでもありがたく思えよ? それより、この石碑の解読ができそうだ」
「本当かい? ちなみに神殿跡にはガラクタの一つも無かったよ」
「そうか……本当に封印しただけなんだな。しかし、アウロラ様がわざわざ六つに分けて封印したのだろうが、一体どうやって? まあこれが解読できれば――」
そうしてバウムは石碑の掘られている文字の法則を見つける。
分かればそれほど難しいものではなく、隣の文字とくっつけたり、一字を削って読むことで文章になるというものだった。そして導き出された文章を見て、バウムは納得する。
「――そういうことか。だから封印を解くには人間が必要……それにこれは私達魔王のことか?」
「気になるなあ……」
バウムがメモにすらすらと文字を書き込むと、フィアムに振り向いて言った。
「戻るぞ。ハインツ国王に報告しておく必要がある」
「国王に……?」
フィアムが訝しんでいると、バウムはスタスタと出口へ向かい始めた。
「ちょ!? 待ってくれよ兄さん! まずは飯を食おう!」
バウムはチラリと後ろを見た後、すぐに前を向いて歩きはじめた。
「(書いてあることが本当なら、封印を解こうとするカケルにも知らせねばならん……どうするか……)」
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