俺のスキルが回復魔『法』じゃなくて、回復魔『王』なんですけど?

八神 凪

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第六章:ヴァント王国の戦い編

第百四十三話 計画崩壊

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 「みんな、やつらが来るわよ」

 「ペリッティさん!」

 ゴーレムが移動を始めたのを見届けたペリッティは回り込み先に海岸付近に潜んでいたグランツ達のところへ戻る。引き潮で出てくる洞窟ということは聞いていたため先に洞窟を発見し、見晴らしのよい崖の上に陣取って待機していた。

 「挨拶は後よ。まず戦力だけど、黒ローブの数が4人でゴーレムが6体。ゴーレムは戦えるかどうかは不明。さらに人質が30人。トレーネちゃんとアンリエッタちゃんは目を覚ましているけど、他の子はおねむよ」

 「……厳しいな。犠牲が確実に出るぞ」

 ニドが報告を聞いて腕を組んで呟くと、グランツが少し考えて口を開く。

 「すみません、分かればでいいんですが、やつらはどういう陣形で歩いていますか?」

 「いい質問よ。先頭にゴーレムを操る男が歩いていて、一番最後列に残り三人が居るわ」

 グランツがそれを聞いて一瞬目を瞑り、ニド達へ声をかける。

 「洞窟の入り口に差し掛かかる……そう、一番先頭の男が洞窟に踏み入ったところを後方からニドと俺が奇襲をかけよう。エリンは弓で援護、コトハさんはニドの後ろについて呪術を。アルとドアールさんは交戦に入った時点でヤツラの目は俺達に向くだろうから、ドアールさんが横から俺達の援護、アルは先にいる男を抑えて欲しい」

 「へえ……」

 言葉を漏らしたのはアルだった。歳は若いが、きちんと考えていると思ったからだ。実際、カケルと会うまではジャイアントビーに殺されかけるなど失態をやらかしているので当時はあまり作戦というのを考えることは少なかった。だが、カケルの機転を見ていたり、学院の授業でグランツの能力が開花され、どういった方向性で敵と戦うか? というのを自然と考えられるようになっていたのだった。

 「いいと思う。時間差で攻めると相手は動揺するしな」

 「私は?」

 作戦にペリッティが入っていないことを尋ねると、グランツは笑って答えた。

 「はは、ペリッティさんは自由に動いてください。アルの援護か子供達の回収がいいですけど」

 「そ。なら、状況を見て動くわ。 ……!? (何、この気配……段々近づいてくる!)」

 「どうしました?」

 エリンがバッと別の方を見たペリッティへ声をかけると、首を振って答える。

 「……何でも無いわ」

 月明かり中、林の中に身を隠しているとペリッティが戻ってきた方向から灯りがチラチラと見えてきた。

 「……あれか。エリン、ニド、コトハさん。行こう」

 「おう。離れるなよコトハ」

 「ええ、昨日は遅れをとったけど、今度は締め上げてやるんだから」

 怖い怖いとニドが笑い、グランツの後を追って行く。アルとドアールも崖下の茂みに身を隠した。

 そして――


 ◆ ◇ ◆



 「見えて来たな」

 「ああ、ある程度数を揃えてとんずらすれば邪魔が入らないし、この調子なら残りもうまくいきそうだぜ」

 最後方でボルドとガルド、そしてゴルヘックスが無言でついていくという、ペリッティが見た形のままここまで来ていた。

 「まったくだ! ガリウス様とザグリアス様もお喜びになる! この子供達がどうなって生贄となるのか……神託ではそこまで教えてくれなかったからな……」

 「……お前のその感覚だけは理解できんな……」

 先頭を歩くパンドスがゴーレムに抱えられている子供を見ながら光悦した表情を見せる。この男パンドスは元々冒険者だった。それもゴーレムを創り出せるような特殊な能力を持つ珍しいタイプの。
 だが嗜虐心が強く、どこにも、誰にも受け入れられず腐っていたところをガリウスに拾われたのだった。ボルドやガルドのように『破壊こそが人類の救済』と思っている訳ではないので、味方でも嫌悪感を示されてしまっていた。

 「そら、到着だ」

 パンドスが指さすと、そこにぽっかりと空いた洞窟が目の前にあった。ゴーレムをギリギリ通れる大きさに調整してから、パンドスはニヤリと笑って松明をつけ、洞窟へと身をおどらせる。

 「ちゃんと着いてこいよ」


 「分かっている」

 だが、ここで『彼等にとって』予想外の出来事が起こる。カルモの町で冒険者と戦ったことを忘れていた訳ではない。だが、この短期間でこの場所を突き止められるはずがないという油断があった。まさか一介の冒険者が『鍵』を盗んだ王族と連絡を取れる間柄であることなど微塵も考え付かなかったのだ。

 ――そして、その小さな偶然がグランツ達の奇襲を成功させた!


 ブシュ……!

 「ぬぐあ!? な、なんだ!? うあああ!?」

 闇の中から急に現れた白刃でバッサリと背中を斬られるボルド! 横では同じく、ガルドが肩を斬られて呻いていた。

 何事かと、下がりながら振り向くとそこには最後の子供を連れ去る時に戦った冒険者が追撃をかけてきていた!

 「借りを返しにきたぞ!」

 叫んだのはグランツだった。逃げられまいと確実に前進し、斬りかかる。

 「き、貴様等はあの時の!? どうしてここが……うぐ! ≪風雷≫!」

 「おっと! それを教える必要は……ない! お前達はここで終わりだ!」

 グランツが剣を構えてそう言うと、ニドがヒュー、と口笛を吹いて喋り出す。

 「熱いなグランツ」

 「チクショウ、ここまで来てやらせるかってんだ! パンドス! 俺達に構うな、行け!」

 懐からナックルガードを取り出し、ニドへ殴り掛かるのはガルド。それを剣で受け流しながらガルドに向かって言う。

 「ああ、それでいい。お前達は俺達の相手をしてもらうぞ! ……む!」

 ブオン!

 「ニド!?」

 「大丈夫だ! こいつ、こんなでかい斧を軽々と……!」

 ガルドと戦っていたニドを襲ったのは無言の黒ローブ、ゴルヘックスだった。何を考えているか分からないが、味方を守る行動はしっかりやるようだ。さらに縦に振りかぶるが、何かに気づき一歩引いた。

 ヒュ……!

 「あたしもいるからね! グランツ、さっさとそのおじさんを倒しちゃってよ!」

 ゴルヘックスはエリンの矢を回避したのだ。そのまま次々と矢を放ち援護をすると、ゴルヘックスは矢を撃ち落しながら前進する。

 「恐ろしい奴だ、並の冒険者より強いぞこいつ……! すまん、コトハはそっちの男を頼む。俺はこいつをやる!」

 「任されて!」

 ニドの後ろからコトハが飛び出し、横に並ぶ。その手にはトゲが無数についた鞭が握られていた。

 「呪術士が調子に乗りやがって! くそがぁ……死にやが――」

 前に出たコトハに激昂し、襲いかかろうとするガルド。だが、コトハにその攻撃が届くことは無かった。

 「おっと、お前さんはド素人ってやつだな? 町の喧嘩自慢がいいところだ」

 「うがあああああ!?」

 影から飛び出したドアールが剣でガルドの足を貫いていた! 作戦通り、意識が三人に向いているため気配に気づかなかったのだ。血を出しながら地面を転がるガルド。それを見てボルドが叫ぶ。

 「ガルド! うぐあ!? ……お、おのれ……ここまで来て!」

 だが、グランツもボルドを追いつめていた。

 「お前達は殺さない。まだ聞きたいことがあるからな」

 マナが尽き、魔法を使うことができなくなったボルドを拘束するグランツ。これで残るはゴルヘックスのみとなった。

 「……まだだ」

 今まで無言だったゴルヘックスが、一言呟いた。



 ◆ ◇ ◆


 一方、先に洞窟へ踏み入ったパンドスがボルドの言葉を聞きつけて洞窟から外に出る。

 「なんだ!? どうしたというのだ!?」

 「なあに、簡単だ。お前達は失敗したんだ!」

 「ぷあ!?」

 洞窟から出た瞬間、アルに顔面を殴られ吹き飛ぶパンドス。一瞬何が起きたか分からなかったが、敵が来たということだけは分かった。即座に近くにいたゴーレムへ攻撃命令を出す。

 「ガキどもを捨ててこいつを攻撃しろ……!」

 ゴゴゴ……と、子供を落とし殴りつけようとしたが、その瞬間、グラリと体が傾いた。

 「甘いわね、ゴーレムは無力化させてもらったわよ」

 ペリッティがダガーで片足を薙ぎ、子供が下敷きにならない方向へと倒していた。並んで歩いていたゴーレムも片足をついて崩れる。

 「ぐ、ぐぐ……おのれぇぇ……!」

 地団太を踏むパンドス。

 追いつめたかに見えた状況に安堵するペリッティとアル。

 だが、パンドスとゴルヘックスが最後の悪あがきを始めた……!
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