俺のスキルが回復魔『法』じゃなくて、回復魔『王』なんですけど?

八神 凪

文字の大きさ
191 / 253
第七章:常闇と魔王の真実編

第百八十三話 不幸中のわいわい

しおりを挟む
 ――というわけで、ユニオン経由でグランツ達へ伝言を残した俺はベアグラートの城にしばらく厄介になることになった。

 「ゆっくりしていってくれ。俺は敵ながら武人であるフェアレイター殿と稽古をして、エアモルベーゼの復活に備えよう」

 「フフフ、よくぞ言った! クロウ共々わしが鍛えてくれるわ!!」

 「クロウ君頑張れ」

 「う、うん……」

 「ふぁ……クロウ少年、死ぬなよ?」

 やる気満々の爺さんに、すでに後悔をし始めているクロウ。チャーさんがアニスの頭の上であくびをしながら不穏なことを言っていた。

 さて、爺さんも油断はならないが、一週間も城の中に居るのは勿体ない。刺客が来るという心配もあるが、ここは少し散歩をするのがいいかと思い準備を進めていた。そこへティリア達がやってくる。

 コンコン

 「ぜ、全裸じゃありませんよね? カケルさん起きてますかー?」

 「おう、丁度でかけるところだ。どうした、みんな揃って?」

 見れば、ティリアにルルカ、リファに師匠、芙蓉も俺の部屋になだれ込んできた。……改めて女性ばかりだな
と感じてしまう……俺がそんなことを考えていると、リファが嬉々として話しかけてきた。

 「ここのところ破壊神関連で緊張の連続だったから久しぶりに羽を伸ばそうと思ってな。折角だしカケルを誘いにきたんだ!」

 なるほど、考えることはみんな一緒ってことか。どうするかな、たまには一人になりたいときもあるんだけど。

 「芙蓉さんが言うには獣人の作った服屋さんとか、デザートとかあって結構面白そうなんだよね。みんなデートみたいでいいかなーって」

 ルルカがニコニコと俺の袖を引っ張りながら言うと、師匠も珍しく乗り気な様子で誘ってくる。

 「わしはヴァント王国から出たのはアウグゼストが初めてでな、ここにも成り行きでとはいえ他国に来るのは初めてなのじゃ。たまには旅行気分を味わいたいと思う年寄りのわがままを聞いてはくれぬか?」

 「えー……ここで歳のことを言うのかよ……」

 「フッフッフ、こう言えば断りづらかろう?」

 そのとおりです師匠。

 しかし固まって動くのもなぁ……刺客に一網打尽にされたりしないだろうか。

 「カケルさんは例のことを心配しているみたいだけど、私もティリアさんもいるし大丈夫だと思うわよ?」

 「まあ、新旧魔王&勇者だしな……よし、考えていても仕方ない! 行くか! 俺も気になるし!」

 そしてぞろぞろと城を後にする俺達。チラリと庭を見ると、クロウが走っているのが見え、アニスが手を振って見送ってくれた。

 ……何か土産でも買っていってやるか。でもあいつらの好きなものってよく分からないんだよな。チャーさんとアニスにいたってはまだ会って間もないし……

 それにしてもいい天気だ。これは絶好の散歩日和だと空を仰ぐ。ゆっくり散策するかな。



 などと平和なことを考えていた俺は、この後すぐ、とんだ騒動に巻き込まれることになるなんて、この時は思いもよらなかった。

 「(はぐれたふりをして二人きりに……)」

 「(わざとはぐれて、雰囲気の良い公園にでもしゃれこむのじゃ!)」

 「(最近、私の出番が少ないからここらでアピールを……! 城に戻った時に紹介できるように!)」

 「(んふふ、みんな虎視眈々と狙っているのかしらね? でも残念……カケルさんと二人きりになるのは私よ! ……というか、話したいこともあるしね……)」

 「(夕ご飯はカケルさんの作ったご飯が食べたいですね……疲れていると思うから言いだしにくいです……! チャンスがあれば……!)」


 「「「「「(フフフフフ……)」」」」」




 ◆ ◇ ◆


 「いってらっしゃーい」

 「出かけるみたいだな」

 アニスが手を、チャコシルフィドが尻尾を振って門へと向かうのを見届けていた。

 「はぁ……はぁ……ま、待ってくれ! 僕も……!」

 クロウがカケル達の姿を見て、手を伸ばしながら追いかけようとするが、Tシャツの襟首をフェアレイターに掴まれ宙づりになる。

 「ならん。今は我慢するのじゃ」

 「ちぇ、分かってるよ。でも急にどうして僕を鍛えるなんて言いだしたんだ?」

 しぶしぶクロウが納得し、地面に着地をするとフェアレイターはクロウの目を見て口を開く。

 「……あやつら、特にあのカケルという男はこの先、必ず災厄に見舞われると思っておる。その時はクロウ、お主も戦わねばならん時が来るじゃろう」

 「そりゃ、カケルはお人よしでよく巻き込まれるし、復讐者なんてのにも狙われているみたいだから当然じゃないの? もちろん僕も戦う覚悟はできているよ」

 クロウがそう言うと、フェアレイターはクロウの頭を撫でながら微笑む。

 「そういった類の災厄では無さそうでな……いや、それはよいか。なにより力はあったほうがいい。幸か不幸か、クロウよ、魔王の力を得たお前は今飛躍的に強くなっておる。しかし、それを返すと元通りの貧弱坊主に戻ってしまう」

 「だ、誰がだよ!?」

 クロウが抗議の声をあげるが、フェアレイターは構わず話を続けた。

 「だが、魔王の力がある内に鍛えれば全体レベルの底上げができる。その為には旅立つ前の今が一番良い。アニスは明日からメリーヌと言ったか? あの者と賢者に魔法を鍛えてもらうつもりじゃ」

 「……どうして敵の爺さんがそこまで……」

 「わしの敵はわしがそう思った者に限られる。エアモルベーゼの力は授かったが、やつがわしの障害になるならこの身が朽ち果てようと倒しにかかるぞ? それと、わしもいつ消えるかわからん。わしの技を残したいとも思っておる……う! ごほ、ごほ……」

 「爺ちゃん、しっかり」

 「お、おい……」

 「うむ、すまぬなアニス。カケルにも技を伝えようとは思っておる……じゃが、まずはお前じゃ。わしの技、覚えてくれるか?」

 「わ、分かったよ! 老い先短い爺さんの頼みくらい聞いてやる! 走ればいいんだな?」

 「まずは基礎体力を上げるのじゃ。ゆけ、クロウよ!」

 フェアレイターの声でクロウは走り出す。後ろに回り込んだチャコシルフィドがぼそりと呟いた。

 「達人、ケチャップ……」

 「フッフッフ、バレたか」

 「爺ちゃんずるい。私、心配したよ?」

 「すまんすまん。だが、やる気を持ってもらわねば強くはなれんのでな」

 アニスが頬を膨らませるのをみて苦笑するフェアレイター。しかし胸中では――

 

 「(カケルを見てから嫌な予感がおさまらん。わしがエアモルベーゼと対峙した時とよく似ておるわ。この先、あやつに何か起こる……わしの勘がそう告げておる。次の国は光の力を持つ者の国……何事もなければ良いが、芙蓉よ、大丈夫なのか?)」
 
しおりを挟む
感想 586

あなたにおすすめの小説

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

【完結】487222760年間女神様に仕えてきた俺は、そろそろ普通の異世界転生をしてもいいと思う

こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
 異世界転生の女神様に四億年近くも仕えてきた、名も無きオリ主。  億千の異世界転生を繰り返してきた彼は、女神様に"休暇"と称して『普通の異世界転生がしたい』とお願いする。  彼の願いを聞き入れた女神様は、彼を無難な異世界へと送り出す。  四億年の経験知識と共に異世界へ降り立ったオリ主――『アヤト』は、自由気ままな転生者生活を満喫しようとするのだが、そんなぶっ壊れチートを持ったなろう系オリ主が平穏無事な"普通の異世界転生"など出来るはずもなく……?  道行く美少女ヒロイン達をスパルタ特訓で徹底的に鍛え上げ、邪魔する奴はただのパンチで滅殺抹殺一撃必殺、それも全ては"普通の異世界転生"をするために!  気が付けばヒロインが増え、気が付けば厄介事に巻き込まれる、テメーの頭はハッピーセットな、なろう系最強チーレム無双オリ主の明日はどっちだ!?    ※小説家になろう、エブリスタ、ノベルアップ+にも掲載しております。

~クラス召喚~ 経験豊富な俺は1人で歩みます

無味無臭
ファンタジー
久しぶりに異世界転生を体験した。だけど周りはビギナーばかり。これでは俺が巻き込まれて死んでしまう。自称プロフェッショナルな俺はそれがイヤで他の奴と離れて生活を送る事にした。天使には魔王を討伐しろ言われたけど、それは面倒なので止めておきます。私はゆっくりのんびり異世界生活を送りたいのです。たまには自分の好きな人生をお願いします。

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

【本編完結】転生隠者の転生記録———怠惰?冒険?魔法?全ては、その心の赴くままに……

ひらえす
ファンタジー
後にリッカと名乗る者は、それなりに生きて、たぶん一度死んだ。そして、その人生の苦難の8割程度が、神の不手際による物だと告げられる。  そんな前世の反動なのか、本人的には怠惰でマイペースな異世界ライフを満喫するはず……が、しかし。自分に素直になって暮らしていこうとする主人公のズレっぷり故に引き起こされたり掘り起こされたり巻き込まれていったり、時には外から眺めてみたり…の物語になりつつあります。 ※小説家になろう様、アルファポリス様、カクヨム様でほぼ同時投稿しています。 ※残酷描写は保険です。 ※誤字脱字多いと思います。教えてくださると助かります。

Shining Rhapsody 〜神に転生した料理人〜

橘 霞月
ファンタジー
異世界へと転生した有名料理人は、この世界では最強でした。しかし自分の事を理解していない為、自重無しの生活はトラブルだらけ。しかも、いつの間にかハーレムを築いてます。平穏無事に、夢を叶える事は出来るのか!?

転生社畜、転生先でも社畜ジョブ「書記」でブラック労働し、20年。前人未到のジョブレベルカンストからの大覚醒成り上がり!

nineyu
ファンタジー
 男は絶望していた。  使い潰され、いびられ、社畜生活に疲れ、気がつけば死に場所を求めて樹海を歩いていた。  しかし、樹海の先は異世界で、転生の影響か体も若返っていた!  リスタートと思い、自由に暮らしたいと思うも、手に入れていたスキルは前世の影響らしく、気がつけば変わらない社畜生活に、、  そんな不幸な男の転機はそこから20年。  累計四十年の社畜ジョブが、遂に覚醒する!!

おっさんが雑魚キャラに転生するも、いっぱしを目指す。

お茶飲み人の愛自好吾(あいじこうご)
ファンタジー
どこにでも居るような冴えないおっさん、山田 太郎(独身)は、かつてやり込んでいたファンタジーシミュレーションRPGの世界に転生する運びとなった。しかし、ゲーム序盤で倒される山賊の下っ端キャラだった。女神様から貰ったスキルと、かつてやり込んでいたゲーム知識を使って、生き延びようと決心するおっさん。はたして、モンスター蔓延る異世界で生き延びられるだろうか?ザコキャラ奮闘ファンタジーここに開幕。

処理中です...