俺のスキルが回復魔『法』じゃなくて、回復魔『王』なんですけど?

八神 凪

文字の大きさ
227 / 253
第八章:エスペランサ動乱編

第二百十九話 決着後と最後の封印へ

しおりを挟む


 「さて、影人の遺体も埋めたし、ガリウスも拘束できたな」

 「ええ、後は戻ってルルカ達を助けるだけですね」

 「しかし、この人達をどうする?」

 ガリウス率いるヘルーガ教徒達を制圧した俺達は今後の相談を行っていた。というのも、この要塞は人がずっと暮らしていくには気候も建物も厳しいからだ。さっきから爬虫類の親戚であるファライディはガタガタと震えているし。みんなで悩んでいると、イヨルドが手を上げて俺に進言してくる。

 「……とりあえず、魔王様達は急ぐんだろ? 後は俺が何とかする。先に金をもらった仲間に合流すれば、何とかなるだろう」

 すると芙蓉が肩を竦めてイヨルドに言う。

 「あのくらいのお金じゃ、ここに居る人達まではまかなえないわよ。私の身内がしでかしたことだから何とかしてあげたいけど渡せるお金は今持ってないのよね」

 「ううむ……エリン、いくらある?」

 「残念だけど、燃える瞳の財政状況は良くないわね」

 グランツが財布を預かるエリンに尋ねていたが、無しのつぶてのようだった。俺が出してもいいか、と考えていると、リンデという女の子がイヨルドの腕を取って笑顔で話しだした。

 「なら一旦私の村に来ませんか? 若い人や単純に人手があると助かるんですよ」

 「いいのか?」

 「もちろんです! ……というか、こんなところまで来て収穫なしはおじいちゃんに悪いので……」

 俺が聞くと、そんな返答があった。さっきナルレアに聞いたけど、どうやら『魔王のフェロモン』にあてられて着いて来たのが切っ掛けらしい。

 「悪かったな、俺のせいで」

 「本当ですよ! 私と村を盗賊から助けてくれたのは感謝していますけど、まさかまったく覚えていないなんて……でも、ずっとカケルさんのことが気になっていたのに、今はすっきりしています! べーだ!」

 「はは、でもいい男を掴まえたみたいだからいいじゃないか」

 「……ですね! さ、みんなに伝えに行きましょう!」

 「……」

 イヨルドが黙って顔を赤くし、大人しく引っ張られていた。フェロモンの効果は相手に直接その気がないとハッキリ言うことで切れるようで、スキルの説明が増えていた。隠しステータスだったけど、それも表に出てきたようだ。これで三人を呪縛から解き放てるので、リンデは大手柄といえた。

 イヨルド達が向こうへ行ったのを見計らって、今度は爺さんがこっちへ歩いてくる。

 「話はまとまったようじゃな。では、村で変なことを考えんとする輩が居らんよう、わしとクロウが引率をする」

 「いいのか爺さん?」

 「うむ。今のところ脅威と言える存在はエアモルベーゼじゃが、動きは無い。城に行っても手持無沙汰じゃろうから修行がてら歩くわい」

 「え!? ぼ、僕、早くアニスに会いたいんだけど……」

 クロウが困惑して爺さんに抗議するとポカリと拳骨をもらった。

 「いった!?」

 「そりゃわしもじゃ! ……いいから着いて来い、馬鹿弟子よ」

 「くっそう……強引だ……カケル、ルルカさん達をちゃんと助けるんだぞ! 僕がこんなに頑張ったんだ、失敗したって言ったらぶん殴るからな!」

 「ああ、絶対に助ける。ありがとな、クロウ」

 「! ……お礼なんかいい……僕はもっと助けられてる――ああ、いや、今の無し! 師匠、待って!」

 【……】

 クロウが慌ただしく爺さんを追っていき、グラオザムが無言でクロウと爺さんについて行く。

 「それじゃ、馬車はクロウ達に任せよう。ファライディ、この人数いけるか?」

 【ガウガウ(オッケー。あ、女の子は背中の中心あたりでお願いします! あっしも頑張ったんでこれくらいは……へへ……)】

 「軽いなぁ……まあいいけどな。それじゃ、ヘルーガ教徒達を見送ってから出発だ!」

 「はい! トレーネが助かるぞ、良かったなへっくん」

 「~♪ ~♪」

 「吾輩の背中で踊るな!」

 グランツがチャーさんの背中でくるくると器用に踊っているハニワを撫で、エリンもニコニコとしていた。何かこう、今回は本当に申し訳ないな……

 

 ――そして

 クロウ達を見送り、俺、芙蓉、ティリア、グランツ、エリン、フェルゼン師匠にチャーさんとへっくんというハニワが残された。人がいなくなればここも寂れていくに違いない。影人の墓標には使っていた刀を墓石替わりに突き立てておいた。

 「芙蓉、行こうか」

 「うん……今度こそさよなら、兄さん……」

 全員がファライディに乗り、ゆっくりと浮上を始めると、地上で大きな音が聞こえてきた。

 ゴゴゴゴゴ……

 「あ……!」

 「要塞が……」

 それは雪崩の音だった。俺が屋敷で放った地獄の業火で山が崩れてきたようだ。もう少し出発が遅れたり、あのまま元教徒が住んでいたら、みんな巻き込まれていたかも……

 「完全に雪に覆われたわね」

 「これで良かったのかも……さ、それじゃ帰りましょ! ファライディ、よろしくね!」

 【ガウガウー!! (合点承知!)】

 芙蓉がファライディの頭近くまで移動し大声をあげ、ファライディが応える。だけど俺は気付いていた。涙を隠すためだったことを。

 「じゃあな、月島……」

 俺も地球から続く因縁が、ようやく終わったと実感した――




 ◆ ◇ ◆


 
 「ふう……ふう……」

 「島にこんな火山があるなんて……」

 「こっちであってるのかい、魔王様?」

 「無論だ。この俺に間違いなどあるはずがない」

 「俺達を嘘つき呼ばわりして牢に入れようとしたくせに……」

 「はっはっは、些細なことだ」

 「うわ、腹立つー」

 と、燃えたぎる溶岩や熱気に当てられながら火山を登っているのは、ニド率いる”ブルーゲイル”の面々だ。フエーゴまで辿り着いたニド達は、女神の封印を解くべく『火焔の魔王』リオヘイドへ謁見をおこなったのだ。

 初めはレリクスのことや、破壊神の力のことを説明してもまったく聞き耳を持たなかったが、何とかユニオン経由で事実だと言うことが分かってもらえ、封印のある”ギブソン火山”へ赴き、登っているところだった。

 「それにしても女神と破壊神が同時に封印されて、復活も同時になるとは流石の俺も驚いた。魔王がそれぞれ協力すれば負けることはあるまいが」

 「しかし土刻の魔王であるフェルゼンさんや、光翼の魔王、ウェスティリアさんでも相当苦戦していた。リオヘイド殿はどれくらいのレベルか聞いてもいいですかね?」

 自信満々のリオヘイドに、少し不安を覚えたニドは失礼ながらも尋ねてみると、驚きの返答があった。

 「聞いて驚け。俺のレベルは118ある! フェルゼンほどではないが、エリアランドのバウムよりは強いぞ? 俺に頼るといい。はっはっはっは!」

 「(俺達よりは確実に高いけど微妙なレベルだな……)」

 「(カケルみたいにレベルが低いのに強い! みたいな方がインパクトいいよな)」

 ドヤ顔で進むリオヘイドは散々な言われようだった。

 「お前等静かにしろ! 魔物がお出ましだ、ファイアビートルの群れだぜ」

 「へいへい、魔王様は下がっていてください。いざというときのために力を残しておいて欲しいんで」

 「む、そうか。分かっているなお前。帰ったら私の側近になるか?」

 「間に合ってます! オイラから行くぜ! (レベルアップのために前に出られたら困るもんな)」

 この後、一行は難なく進み、封印された神殿へと到着する。そこで待ち受けている破壊神の力とは――
しおりを挟む
感想 586

あなたにおすすめの小説

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!

菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは 「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。  同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう  最初の武器は木の棒!?  そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。  何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら 困難に立ち向かっていく。  チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!  異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。  話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい! ****** 完結まで必ず続けます ***** ****** 毎日更新もします *****  他サイトへ重複投稿しています!

勝手にダンジョンを創られ魔法のある生活が始まりました

久遠 れんり
ファンタジー
別の世界からの侵略を機に地球にばらまかれた魔素、元々なかった魔素の影響を受け徐々に人間は進化をする。 魔法が使えるようになった人類。 侵略者の想像を超え人類は魔改造されていく。 カクヨム公開中。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

精霊の森に捨てられた少女が、精霊さんと一緒に人の街へ帰ってきた

アイイロモンペ
ファンタジー
 2020.9.6.完結いたしました。  2020.9.28. 追補を入れました。  2021.4. 2. 追補を追加しました。  人が精霊と袂を分かった世界。  魔力なしの忌子として瘴気の森に捨てられた幼子は、精霊が好む姿かたちをしていた。  幼子は、ターニャという名を精霊から貰い、精霊の森で精霊に愛されて育った。  ある日、ターニャは人間ある以上は、人間の世界を知るべきだと、育ての親である大精霊に言われる。  人の世の常識を知らないターニャの行動は、周囲の人々を困惑させる。  そして、魔力の強い者が人々を支配すると言う世界で、ターニャは既存の価値観を意識せずにぶち壊していく。  オーソドックスなファンタジーを心がけようと思います。読んでいただけたら嬉しいです。

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

処理中です...