251 / 253
特別編
集う身内(あいつに出番はあるのか?)
しおりを挟む「クリスマス?」
「あ、いいわねそれ。私こっちじゃそんな余裕無かったから思いつかなかったわ」
ルルカの疑問顔に対して、芙蓉は笑顔でパンと両手を合わせて喜んでいた。芙蓉の発言通り、俺はクリスマスを企画することにした!
「……と言っても料理くらいだけどな」
「うーん、それだとクリスマス感が無いわねぇ」
「ねえクリスマスって何?」
「わしも気になるぞ」
ルルカに続き、メリーヌも参加。幸いというか、トレーネはティリアの出迎えに行っているのでここには居ない。
「クリスマスって言うのはね――」
芙蓉が一通り説明をすると、ルルカが鼻息を荒くして飛び上がった。
「なるほど! ならお城の入り口にある大きな木を飾りつけしない? 絵があればボクがパパっと作るし」
「お、流石は賢者。できるな」
「えへへー」
「……賢者が安っぽい感じに聞こえるわね……でもルルカさんにお願いしようかな。料理はメリーヌさんに任せていい? 私とトレーネで飾りつけに回るわ」
「うむ。クリスマスケーキとやらを作ってみようぞ」
「よろしくー! クリスマスークリスマス―♪」
メリーヌがぐっと腕をまくると、芙蓉が鼻歌を歌いながらルルカを連れて厨房を出ていった。さて、それじゃ料理をするか。
「あ、そうだ。メリーヌ、数はたくさん作ってくれ。レシピは……これで」
「結構種類が多いのう。『ろーすとちきん』とやらは美味しそうじゃ」
「ああ、食材はたくさんあるし、取りかかろうぜ」
ステーキにグラタン、パスタに餃子、肉まんやサラダと、色んな料理を手掛けていく俺とメリーヌ。だがそこへ助っ人が登場する。
「あれ!? カケルが厨房にいる! ってことはまた異世界料理を作ってるな? 俺も混ぜろよ。……これがレシピか?」
「あたしも手伝おうかね。王妃にやらせてっちゃコックの名折れだよ」
そう、芙蓉が持っていた船の乗組員、ツィンケルとシャルムの夫婦だ。この二人、というかあの船に乗っていた数人はこの城で雇っていたりする。残りはロウベの爺さんと共に船に残り、貿易船としてあちこちに出ているのだ。
「お飾りみたいなもんじゃから気にせんでええぞ。しかし、わしが挨拶でヴァントに行った時のジャネイラの顔は忘れられんわい……若返って王妃になったからあやつとしては悔しかろう」
思い出してぷふっと笑うメリーヌ。自暴自棄になっていたあのころに比べればかなり丸くなったなと思う。さて、残りをどんどん作っていきますかね!
◆ ◇ ◆
「ベル、お星さま、金と銀の何か丸いやつ……綿……うん、こんな感じかな?」
「おおー、ルルカは魔法以外の工作も得意なのね」
「まあ、芙蓉が教えてくれるから。……でも、良かった。こうして皆で過ごせて。三年前は本当に辛かったんだよ」
結婚してから芙蓉とルルカは互いを呼び捨てにするようになっていた。誰のモノ、という争いも無くなったので嫁達はギスギスしないで穏やかに過ごしていた。
「ありがとう。あの時、水の中でもうダメだと思ったんだけど、気付いたらカケルが最初にこの世界に降り立った場所で、二人倒れていたの。もう三年が経っていてびっくりしたわ」
「なんで三年経ってからここへ帰って来たんだろうね? で、不老不死はもうないんだっけ」
「ええ、助かっただけでラッキーなのよ実際。カケルも『生命の終焉』はもう無いんだって言ってたわ。まあこれ以上脅威はないだろうしいいけどね」
芙蓉がそう言ってウインクすると、ルルカもにっこりと笑う。そこへ――
コンコン……
「はーい」
部屋がノックされたので、芙蓉が返事をするとガチャリと扉が開け放たれ、少し大人びたウェスティリアが顔を覗かせていた。
「芙蓉さん! ルルカ! お久しぶりです!」
「あ、ティリア! 久しぶりね! あ、トレーネも一緒だったんだ」
芙蓉が後から入ってきたトレーネに声をかけると、扉を絞めながら頷く。
「そう。カケルに頼まれて引き取りに行ってきた。そしたら先に芙蓉達に会いたいって言うからこっちに来たの」
トレーネが淡々と言うと、ティリアが口を開く。
「はい! とりあえず謁見の間に行きましょうか? 一応、王族に会いに来たわけですし……」
「そういう堅苦しいのは要らないわよ、魔王様♪」
「王妃様に言われたくはないですけど……それ、何ですか?」
ウェスティリアは困った顔をしながら返事をし、芙蓉達がもっているオーナメントを指差し尋ねる。
「明日はクリスマスっていう地球のイベントをやろうってカケルが言い出したのよ。で、外の大きな木に飾りつけをするの」
「面白そうですね! 空を飛べるわたしなら上の方は任せてください!」
「お、頼もしいね! じゃ行こう行こう!」
「リファは来てないの?」
「お見合いがですね――」
三人が廊下へ出て外の大木を目指して歩き出す。すると、廊下でクロウとアニスがエドウィンに連れられて向こうから歩いてくるのが見え、アニスが笑いながら走ってきた。
「ただいま、ルルカお姉ちゃん、芙蓉お姉ちゃん! それと久しぶりティリアお姉ちゃん!」
「あら、帰ってきてたの? カケルは多分厨房にいるわよ。いいタイミングで帰って来たわね、喜ぶわ!」
アニスが芙蓉に抱きついて笑う。かつて感情を失くしたアニスはもうどこにも居なかった。その後に成長したクロウが続く。
「アニス、嬉しいのは分かるけどルルカさん達が困るだろ?」
「いや、全然。むしろクロウも来なさい!」
「カモン!」
芙蓉とルルカが腕を広げて待つが、クロウは顔を真っ赤にして大声を上げる。
「出来る訳ないだろ!?」
「そうねえ、クロウ君にはできないよねえ。まあ、抱きついたらロッドでゴツンだけど」
「止めてくれよ……」
「いい尻のしかれっぷりですね! カケルさんみたいに!」
「余計なお世話だよ!? ったく、王様なのに厨房にいるの? 相変わらず意味が分からないな……」
クロウがため息を吐きながら呟くと、アニスがポンポンと肩を叩いてにっこり笑う。
「カケルお兄ちゃんだから仕方ないよねー。また美味しいもの作ってるんじゃないかな? ところでお姉ちゃんたちはどこか行くの?」
「あ、うん――」
ルルカと芙蓉がアニスに説明すると、アニスは目を輝かせて両手を握りしめる。
「ひあー! それわたしもやりたいやりたい! クロウ君! カケルお兄ちゃんのところへ行くのは任せた! 美味しいものを強奪してくるように」
「ああ、行ってきていいよ。久しぶりだからテンション高いな……昔は大人しかったのに……」
「人は成長するのだよ、クロウ君。あ、チャーさん!」
「にゃーん」
何故かドヤ顔で腕組みをするアニスを追い払うと、いつの間にかチャコシルフィドがアニスの足に頬ずりをし、抱っこされると、そのまま女性陣だけで入り口へ向かい、クロウは厨房へと歩き出した。
「……カケルに会うのも久しぶりか……後で手合せを……いや、国王だし、止めとこうかな。でも強くなったのは見せたいし……」
ぶつぶつと、一人葛藤しながらグラオザムの残したマントを揺らすのだった。
------------------------------------------------
【後書き劇場】
書くことが多すぎて三話になってしまいました……
クリスマス回はなんとか明日仕上げます!
5
あなたにおすすめの小説
無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す
紅月シン
ファンタジー
七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。
才能限界0。
それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。
レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。
つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。
だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。
その結果として実家の公爵家を追放されたことも。
同日に前世の記憶を思い出したことも。
一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。
その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。
スキル。
そして、自らのスキルである限界突破。
やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。
※小説家になろう様にも投稿しています
老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!
菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは
「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。
同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと
アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう
最初の武器は木の棒!?
そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。
何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら
困難に立ち向かっていく。
チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!
異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。
話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい!
****** 完結まで必ず続けます *****
****** 毎日更新もします *****
他サイトへ重複投稿しています!
勝手にダンジョンを創られ魔法のある生活が始まりました
久遠 れんり
ファンタジー
別の世界からの侵略を機に地球にばらまかれた魔素、元々なかった魔素の影響を受け徐々に人間は進化をする。
魔法が使えるようになった人類。
侵略者の想像を超え人類は魔改造されていく。
カクヨム公開中。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
精霊の森に捨てられた少女が、精霊さんと一緒に人の街へ帰ってきた
アイイロモンペ
ファンタジー
2020.9.6.完結いたしました。
2020.9.28. 追補を入れました。
2021.4. 2. 追補を追加しました。
人が精霊と袂を分かった世界。
魔力なしの忌子として瘴気の森に捨てられた幼子は、精霊が好む姿かたちをしていた。
幼子は、ターニャという名を精霊から貰い、精霊の森で精霊に愛されて育った。
ある日、ターニャは人間ある以上は、人間の世界を知るべきだと、育ての親である大精霊に言われる。
人の世の常識を知らないターニャの行動は、周囲の人々を困惑させる。
そして、魔力の強い者が人々を支配すると言う世界で、ターニャは既存の価値観を意識せずにぶち壊していく。
オーソドックスなファンタジーを心がけようと思います。読んでいただけたら嬉しいです。
役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !
本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。
主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。
その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。
そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。
主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。
ハーレム要素はしばらくありません。
ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者
哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。
何も成し遂げることなく35年……
ついに前世の年齢を超えた。
※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。
※この小説は他サイトにも投稿しています。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる